鉄と磁石の起源
いちです。おはようございます。今回のエピソードの音は、鉄と磁石の物語、トロイア戦争からイッテルビー村の奇跡までについてお送りをします。
このポッドキャストは、僕が毎週お送りしているニュースレター、スティームニュースの音声版です。
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スティームニュースは、スティームボート乗組員のご協力でお送りしています。
改めましていちです。このエピソードは、2024年12月19日に収録しています。
このエピソードでは、スティームニュース第210号から鉄と磁石の物語、トロイア戦争からイッテルビー村の奇跡までについてお届けをします。
伝説によると、神々の戦い、トロイア戦争によってアナトリア、これは現在のトルコですね。
このアナトリアにあった鉄の製法、鉄の作り方がヨーロッパへと持ち出されました。
鉄の存在は、磁石の発見へとつながります。
そしてスウェーデンのイッテルビー村で見つかった鉱石は、磁石をより強力なものにする手助けをしました。
イッテルビー村では次々と新しい元素が見つかったために、後にイッテルビー村の奇跡という風にね、呼ばれるようになります。
奇跡はミラクルの方ですね。輝く石という意味も重ねてもいいのかなと思うのですが、歴史上はイッテルビー村の奇跡、ミラクルという風に呼ばれています。
鉄の利用と製法
このエピソードでは、これから鉄と磁石のお話をしていきます。
人類がいつ頃から鉄を使い始めて、そしてまたいつ頃から磁石の存在に気づいていたかは、よくはわかっていません。
ただ、紀元前1000年から紀元前2000年の間頃、おそらくはアナトリア、現在のトルコの人々が鉄を使い始めて、そしてまた磁石の存在に気づいていたようなんですね。
そして地球自身が磁石であることに気づいた科学者とエンジニアたちは、磁気、磁石の系と書いて磁気ですね。磁気の研究を飛躍的に進めて、現代の磁石文明を作り上げます。
そうなんです。現代は磁石文明なんです。
これにはスウェーデンのイッテルビー村に起こった奇跡も深く関係しています。
ところで地球の主成分は鉄なんですね。重量比で言うと地球の3分の1は鉄からできています。
これは地球誕生から46億年の間変わっていません。
地球のことを水の惑星と呼びますが、実際には鉄の惑星と呼ぶべきかもしれません。
しかし人類が鉄を利用できるようになるまでには、長い長い年月が必要でした。
地球に海が生まれてからこの方、地表の鉄は海へ溶けていきました。
およそ25から30億年前にシアノバクテリアが海中で初めて光合成、光合成を始めると海水に酸素が供給されるようになりました。
そして海に溶けた鉄は酸素と結びついて海底に堆積するようになります。
この海底が長い時間をかけて陸地になったのが現在の大地に見られる鉄鉱床、鉄の鉱床ですね。
人類が鉄を掘り出せるのも太古の生物のおかげと言えます。
このようにして地上に鉄が現れはしたのですが、地域によっては紀元前1200年頃までは人類がまだ地上の鉄を使えなかったと考えられます。
地上の鉄は不純物が多くそれらを取り除く火力をまだ人類が持っていなかったからなんですね。
例えば紀元前1335年に即位したエジプトの王、ツタン・カーメン。
彼は鉄製の剣を持っていたのですが、それは宇宙からやってきた鉄、つまり陰鉄を加工したものでした。
地上の鉄を鍛える技術がエジプトにはまだなかったんですね。
陰鉄というのは隕石に含まれる鉄のことで、これは非常に純度が高い鉄なんですね。
一方のこの地上で取れる鉄というのは不純物がたくさん混じっていますし、
錆びていたりとかそれから炭素がまばらに溶け込んでいたりとかして、
非常に高温で一度溶かさないといけなかったんですが、当時その高温にして鉄を溶かすという技術がなかったために、
この強い鉄というものを作ることが地上の鉄からはできなかったということですね。
ツタンカーメンの剣に関しては、どうやら隕石由来の鉄、陰鉄を溶かして鍛え直したものだったようです。
アナトリア地方、現在のトルコの辺りにあたるのですが、文明の発達というのが非常に早かった上に、
偶然にも豊富な鉄鉱床があったことから、古代エジプトより早く、紀元前2000年代し、紀元前1500年頃から原始的な鉄の加工を始めていたようなんです。
鉄を加工して作った鉄器は武器として、当時他の地域で使われていた精銅器よりも優れており、また農具としても硬い土を掘り返せますから、
鉄を持った民族は鉄を持っていない民族に比べれば圧倒的に有利になります。
トロイア戦争の影響
つまり戦争には強いし、それから農業の生産性も高いということになるわけですね。
アナトリアの筆体と王国は、紀元前1700年頃までに優れた鉄加工技術を持っていたとする説があります。
この説、諸説あって、いや、そこまで優れた鉄加工技術はまだ持ってなかったんじゃないのとも言われてはいます。
ただですね、僕の同僚で、高校調査チームのメンバーなんですが、
彼が筆体との調査を行った時に、こんなことを言ってました。
彼はですね、筆体とには、現在のトルコですね、非常に豊富な鉄鉱床、鉄鉱石が出てくる地層が広がっていて、
そりゃあ鉄使うやろうっていうようなことを言っていました。
そう言われてみると、例えば日本でね、このオタク文化なんかが生まれるのも、
やっぱりこのオタクカルチャーに触れることが多いから、つまりインプットが多いから、それでアウトプットも多くなるのかなっていうようなことを思いました。
鉄を普段から見ていれば、これなんか加工できないかなとか思ったんじゃないかということで、
それは一人のエンジニアとしても思います。何かこうインプットが多ければアウトプットも多くなるんだろうなというようなことはね、感じます。
紀元前1286年頃、古代エジプトとヒッタイトが現在のレバノンシリア国境のあたりで、カデシュの戦いと呼ばれる戦争をします。
この戦争はですね、両者引き分けとなり、世界初の平和条約が結ばれています。
鉄製の武器と青銅器製の武器では、ライフル銃と豆鉄砲ぐらいの違いですから、この時ヒッタイト王国だけが鉄製の武器を持っていたと考えるのは、僕は難しいかなと思います。
エジプト側に鉄を使ったという記録がないので、おそらくエジプト側は青銅器ということは、ヒッタイトもまだその鉄をある程度扱えたにしても量産はできなかったんじゃないかな、主力兵器は青銅器だったんじゃないかなとは思います。
ここらへんね、また考古学者の見解も聞いてみて皆様にご報告したいと思います。
ところで紀元前1200年頃、これ謎の滅亡シーズンが地中海世界を襲うんです。ヒッタイトもエジプトも被害に遭っています。
歴史書によると海の民という謎の民族が襲ってきたみたいなことが書かれているんですが、実際には何があったのかわかりません。
ただこの時鉄の製造技術が古代エジプトや古代ギリシャへと伝わっていき、そしてまたヒッタイトは消滅するんです。
本当にねこの時何があったのかというのは謎に包まれているんですが、紀元前1200年頃のカタストロフというふうにも呼ばれています。
一説によると、これは数ある説の中の一つではあるのですが、この時アナトリア地方のトロイヤに対して
ギリシャ連合軍が起こしたトロイヤ戦争によって鉄を作る技術、製鉄技術がこのアナトリアからギリシャへと持ち帰られたとも言われています。
こちらもですねまた断定することはできないのですが、トロイヤ戦争、これもともとは神々の戦争、神話上の戦争と言われていたものの実際にあった戦争であるということが考古学調査によってわかっているものです。
この神話上のトロイヤ戦争は、古代ギリシャの詩人ホメロスによるジョジシ、イリアスとオデュッセイアによって長く語り継がれてきました。
この戦争の発端はパリスのシンパンという事件で、もちろん神話上の事件なのですが、神々の女王ヘイラ、知恵の女神アテーナ、そして愛と美の女神アプロディーテの3人の女神のうちで、
誰が最も美しいかを羊飼いの青年パリスが判定させられた事件です。神々の女王ヘイラというのは、大神ゼウスのお妃様ですね。英語名はジュノー。
大神ゼウスはローマの神ユピテル、英語名ジュピターになりますから、ジュピターの奥さんジュノーということになりますね。
そして知恵の女神アテーナは英語名ミネルバ、愛と美の女神アプロディーテ、あるいはアプロディーテの英語名はヴィーナスになります。
この3人の女神なんですが、これ美神とも言います。美女の神ですね。3美神のうちね、誰が最も美しいかを青年パリス、羊飼いの青年パリスが判定させられるというね、恐ろしい事件があったわけですよ。
なぜかというとこれはフワの女神エリスがですね、リンゴをこの神々の集まりの中に投げ込むのですが、このリンゴに最も美しい女神へ、テューダフェアレスという風に書いてあったという風に言われるんですね。
で、この3人の女神たちが自分たちが最も美しい、自分たちじゃないですね。自分が最も美しいというので喧嘩になって、その審判をする青年パリスにそれぞれこの買収をしようとするんです。
で、愛と美の女神アフロディーテはなんとこのパリスに、もし私を選んだらお前に最も美しい女性を与えようと言うんですね。
もし僕がパリスならアフロディーテを選びます。で、パリスもアフロディーテを選びました。で、アフロディーテがじゃあパリスに与えようとしたこの世で最も美しい女性、これ実は人妻だったんです。
それもただの人妻ではなかったんです。スパルタの王様の奥さんだったんです。そりゃあ戦争になりますよね。というわけでトロイヤ戦争が起こりました。
有名なトロイの木場というね、逸話もこのトロイヤ戦争の中で起こったエピソードです。トロイヤ戦争は長い間神話だけのことと信じられていましたが、ドイツの国学者ハンリー・ヒッシュリーマンがトロイヤを掘り返したことで、
紀元前1200年頃までにトロイヤで戦争があったことが裏付けられました。
製鉄技術が地中海世界に広まった時期とトロイヤ戦争の時期が重なるために、トロイヤ戦争によって製鉄技術がトロイヤからギリシャへ持ち帰られたとする説もあるわけなんですね。
トロイヤ戦争が神話として永遠に語り継がれたのは、古代ギリシャ、そしてヨーロッパにとってそれだけ重要な戦争だったからかもしれません。
鉄器を持ち帰った、あるいは製鉄技術を持ち帰った戦争であるならば、いろいろな理由をつけて後世に残したかったのだろうなと僕は想像をします。
ところでアナトリアのマグネシア地方には、お互いひっついたり反発しあったりする石があったそうなんです。
今でいう天然磁石だったんでしょうね。
紀元前6世紀古代ギリシャの哲学者タレスが、このマグネシアの石が鉄をもひきつけることを書き記しています。
また紀元前5世紀の哲学者プラトンもマグネシアの石について語っていますし、
磁石の歴史と発展
紀元前1世紀古代ローマのダイプリニウスも著書博物誌にマグネシアの石伝説を書き記しています。
ダイプリニウスはイオニアの羊飼いマグネスが見つけた石というふうに書いていますが、
イオニアとマグネシアは近いあるいは同じ地域なので、かなり正確に伝説を伝えているんだと思います。
ただしマグネシアの石こと磁石の使い道はずっと見つからずじまいでした。
古代ギリシャ人アメジスト、紫水晶をヨイザマ氏というふうに使っていたので、ひょっとしたら磁石も何かの使い道、例えば肩こりをほぐすとか、ピップエレキバーみたいな使い方をしたかもしれないのですが、
人類がおそらく最初に磁石を実利用したのは、これはアジアですね。中国宗の時代に発明されたホイジシン、シナンジョ、南を指す魚、あるいはシナンジャク、南を指す石だったと思うんですね。
このホイジシン、コンパスはヨーロッパへ伝えられ、人類は大航海時代を迎えます。マグネシアの石がついに人類史を変えたわけですね。
1820年4月21日、コペンハーゲン大学のハンス・クリスチャン・エルステッド教授は、実験用のホイジシンが近くの電池のスイッチをオンオフさせると向きを変えることに気づきました。
電気が磁気に影響を与えることに人類が初めて気づいた瞬間です。電気をオンオフする、つまり電気を変化させると磁気も変化するとしたら、磁気の変化も逆に電気を変化させるでしょうか。
エルステッドの発見からおよそ10年後にアメリカのジョセフ・ヘンリーとイギリスのマイケル・ファラデーによって独立に電磁誘導という物理現象が発見されています。
電池と違って磁石はオンオフできませんが、その代わりこのヘンリーとファラデーそれぞれですね、磁石を上下とか左右に動かしてみたんですね。電線の横で。
そうすると電線に電気が流れた、つまり電流が起こったんです。
こうして磁石に新しい使い道が見つかったんです。電線の側で磁石を動かすとその電線に電流が流れるんです。
当時のイギリスの財務大臣ウィリアム・グラッドストーンはファラデーの実験を見学してこう聞いたそうなんです。
で、それは何の役に立つのかね。
ファラデーはこう答えました。
かっか、あなたはいつかこれに税金をかけることができるんですよ。
実際エルステッドの発見は電動機、モーターへとつながり、ヘンリーとファラデーの発見は発電機へとつながりました。
もちろん電力会社は今電気の流れに利用料を貸して、政府はその電力会社に税金をかけています。
電動機も発電機も電線と磁石からできています。
ということはより高性能な電線、高性能な磁石が必要になってきたわけですね。
電線のことは今回のエピソードではひとたび置いておくとして、磁石の方についてお話を進めたいと思います。
天然磁石が重力が弱いため、エンジニアたちによってより優れた人工の磁石が作られてきました。
磁石の開発には日本人エンジニアの名前がしばしば出てきます。
三島徳七はアルニコ磁石を、加藤横朗と竹井武はフェライト磁石を発明しています。
そして現代最強の磁石であるネオジム磁石は佐川雅人によって発明されています。
特にネオジム磁石の存在には鉄工所に並ぶもう一つの地球の軌跡、イッテルビー村の軌跡が関係しています。
スウェーデンのイッテルビー村ではガドリン石、ガドリナイトという特別な鉱石が採れました。
イッテルビー村のガドリン石からはエルビウム、テルビウム、イッテルビウム、イットリウム、ガドリニウム、ホルミウム、スリウムが見つかったとされています。
名前はすべてイッテルビー村及び関連する地名から取られています。
それどころかイッテルビー村のガドリン石からは後になって、スカンジウム、ジスプロシウムも分離されています。
一箇所の鉱床からこれだけの元素が地球に発見された例というのは他にないので、イッテルビー村の軌跡と呼ばれるわけですね。
そしてこれらの元素はみんなキド類元素、つまりはレアアースだったんですね。
佐川博士はネオジムに同じキド類元素であるジスプロシウムを添加することで、従来の磁石よりも飛躍的に高性能なネオジム磁石を開発しています。
ネオジム磁石は産業用に幅広く応用されているほか、文房具なんかにも使われています。
ホワイトボードにペタッと貼り付けるマグネットなんですが、接着力の強いものですね。カチッとくっつくの、おそらくネオジム磁石だと思います。
イッテルビー村の軌跡の石が、現代の磁石文明を支えているんです。
イッテルビー村の影響
これが鉄から磁石へとつながる現代の文明を作り上げた物語でした。
いかがでしたでしょうかね。
僕は実はこのネオジム磁石を発明された佐川雅人博士とお会いしたことがありまして、
というのは、とあるイベントで佐川雅人博士が講演をされて、その司会者を務めさせていただいたんですね。
こちらは英語での講演だったので、司会も英語でさせていただいたのですが、
ご紹介するのに、ドクター佐川というふうにね、お話をしないといけないところ、
直前に、なぜかちょっと一瞬ですね、お名前が飛んじゃったんですね、頭の中で。
で、とっさにお話ししたのが、皆様ご紹介します。
ドクターマグネットですって言っちゃったんですが、今思うと、アメリカのね、
この参加者ね、アメリカから出席される方も多かったんですが、
アメリカのね、ハリウッド映画にX-Menというのがありまして、その中にマグニートというね、博士が出てくるんですよ。
博士だったかな。ちょっと風貌もね、佐川雅人先生と似ていらっしゃるキャラがいらっしゃって、
マグニートって強い人がいるんですけれども、
ひょっとしたら、ドクターマグネットっていうのは当たらずといえど、十から十かななんてことをちょっと思って、今は思っています。
こんな話をしてすみません。
というわけで、今日も最後まで聞いてくださってありがとうございました。
お相手はSteamFMのイチでした。また次のエピソードでお会いしましょう。
では!
次のエピソードでお会いしましょう!