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2023-05-12 24:58

世界一短い論文【第129号音声版】 #131 #科学系ポッドキャストの日

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1️⃣科学にとって「論文」とは知見を後世に伝える重要なメディアです

2️⃣ワトソンとクリックの「DNA論文」はとても短いながら多大な影響を与えました

3️⃣世界一短い論文もご紹介します

科学系ポッドキャストイベント(2023年5月)👉 https://note.com/tatsu_kono/n/n8fcd41cd2993

新分野を拓いたNature論文10選👉 https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v17/n1/%E6%96%B0%E5%88%86%E9%87%8E%E3%82%92%E6%8B%93%E3%81%84%E3%81%9FNature+%E8%AB%96%E6%96%8710%E9%81%B8/101650

最短の学術論文(Colorless Green Ideas)👉 https://id.fnshr.info/2015/05/02/shortest-paper/

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金谷一朗(いち)

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論文の必要条件と作読審査
自分のIQなんて知りませんよ。それを自慢する人たちは負け犬です。
スティーブン・ホーキング
いちです。おはようございます。
このポッドキャストは、僕が毎週お送りしているニュースレター、
STEAMニュースの音声版です。
STEAMニュースでは、科学、技術、工学、アート、数学に関する話題をお届けしています。
STEAMニュースは、STEAMボート乗組員のご協力でお送りしています。
冒頭でご紹介したのは、天才科学者、スティーブン・ホーキングのSTEAMな言葉。
本当だといいですね。
ちなみに、僕のIQは70。
改めましていちです。
このエピソードは、2023年5月11日に収録しています。
このエピソードでは、STEAMニュース第129号から論文をテーマにしたお話をお送りします。
このテーマは、2023年5月の科学系ポッドキャストイベントに連動しています。
今回も25分間どうぞお付き合いください。
steam.fmエピソード115、科学という方法を支える3要素では、
科学は次の3つの要素が必要というお話をさせていただきました。
このエピソードでは、科学には適切な証拠、明確な結論、証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程が必要というお話をさせていただきました。
この3点のうち1点でも欠けていたら、科学とは呼べません。
そして、科学的な発見を科学者へ伝え、後世に残す役割を担うのが論文という文章です。
科学論文には必ずこの3点、適切な証拠、明確な結論、証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程が入っています。
論文って何?についてより詳しく知りたい方は、ぜひですね、僕の大好きなポッドキャスト再演トークのエピソード60、
論文ってそもそも何だっけ?をお聞きください。
こちらでは学術論文と一般的な書籍や記事との違いとして、
学術論文には作読というプロセスがあるということを詳しく説明されています。
作読というのは同業の科学者による記事の審査ですね。
掲載前の審査です。
多くの論文がここで落とされてしまったり、修正を指示されたりしています。
さて、論文には先ほどの3点、適切な証拠、明確な結論、
史上最も短い論文とその影響
そして証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程が必ず入っているという前提のもと、
論文はどこまで短くなれるのか、このエピソードでは探っていきたいと思います。
論文の長さ、こちらはですね、僕の経験上、
和文でも英文でも、つまり日本語でも英語でも、
6ページ未満というのはなかなかお目にかかることはないと感じるんですね。
多くの論文師が最低限のページ数ということを決めているという事情もあります。
しかし従来の科学をひっくり返すような紙論文が信じられないくらい短かったということが歴史上あるんですね。
そんな論文の一つをご紹介します。
イギリスの著名論文師ネイチャーが、新聞屋を開いたネイチャー論文10選という記事の中で、
一本目に選んだのが、DNAの構造を明らかにした、
ジェームス・ワトソンとフランシス・クリックの論文でした。
DNAが二重螺旋構造をしているということを報告した論文ですね。
1953年4月25日に掲載されたこのワトソン・クリック論文は、わずか2ページの長さでした。
これ原文を見ていただくと、うまくレイアウトすると1ページにも収まりそうな長さなんですね。
この論文は当時知られていなかったDNAの立体構造を明らかにする画期的なものでした。
DNAが遺伝物質であると突き止められたのは、この論文の1年前の1952年のことで、
その当時は遺伝物質はタンパク質だろうという考えが、生物学者の間で一般的だったそうです。
しかし論文強調者のクリック、そしてこの発見に決定的な役割を果たしたモーリス・ウィルキンス、
そしてロザリンド・フランクリンは、生物学ではなく物理学出身でした。
生物学の常識にとらわれなかったことが大発見につながったのかもしれません。
物理学者リチャード・ファインマンは、ワトソン・クリック論文に触発されて、
1955年の全米科学アカデミーでの講演で、無視することの大切さということを説いています。
たった2ページというより、ほぼ1ページで世界を変えてしまった論文、恐るべしですね。
ワトソン・クリック・ウィルキンスは、1962年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。
これは個人的な感想なのですが、ロザリンド・フランクリンこそノーベル賞にふさわしかったのではないかなという感想を持っています。
ここはですね、メールでお送りしているニュースレター、スティームニュースの第23号シュレディンガー博士の異常な愛情という号にですね、少し詳しく書かせていただいています。
2本の短い数学論文の紹介
STEAM.fmのエピソード67がその音声版になりますので、もしご興味があれば再生してみていただければなと思います。
さて話を論文の短さに戻しましょう。
ブログカラーレスグリーンアイディアズに最短の学術論文という記事があります。
この記事で紹介されている論文はどれも面白いのですが、その中から2編の短い学術論文をご紹介したいと思います。
まずは1本目です。
ランダー・パーキンによる1966年の論文。
等しい累乗の和に関するオイラーの予想に対する反例。
というですね、これは数学の論文なのですが、どういうことかご説明したいと思いますね。
この論文のタイトルをもう一度繰り返すと、等しい累乗の和に関するオイラーの予想に対する反例という風になっています。
タイトルはちょっと長く感じますね。
この等しい累乗の和に関するオイラーの予想というのは、現代ではオイラー予想という風に短く呼ぶことも多いです。
オイラー予想というのはいくつかあるのですが、そのうちの一つに関する論文なんですね。
どんなオイラー予想を扱った論文かというと、
Aの5乗足すBの5乗足すCの5乗足すDの5乗イコールEの5乗となるような自然数ABCDEは存在しないという予想でした。
ABCDEって5つも変数が出てきて、3つのバージョンもあるんです。
Aの3乗足すBの3乗イコールCの3乗となるような自然数ABCは存在しないというのも、これもオイラーの予想の一つです。
このオイラーの予想はフェルマーの最終定理の特殊な場合で、これは証明されています。
このようなABCという自然数は存在しないということが証明されています。
では、Aの5乗足すBの5乗足すCの5乗足すDの5乗イコールEの5乗となるような自然数ABCDEは存在しないのかということが問題になるんですが、
ランダーとパーキンはこの論文でこんな式を紹介しています。
27の5乗足す84の5乗足す110の5乗足す133の5乗は144の5乗。
これつまり半例になっているわけですね。
この論文はたったの2文でこの半例を示しています。
多分なのですが、著者のランダーとパーキン、どやーっていう感じでたった2文にまとめたんじゃないかなと思います。
本論文の明確な結論はオイラー予想の否定で、適切な証拠は本文に掲載されているこの5乗の式ですね。
証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程ですが、
何々は存在しないというテーマを否定するためには何々の一例を示せば十分なので、
適切な証拠がそのまま結論を指し示す妥当な推論過程になっています。
では2本目に行きましょう。
2本目の論文はデニス・アッパーによる1974年の、これは医学論文ですね。こんなタイトルです。
執筆の行き詰まり症例に対する自己治療の失敗。
本文はなんと空白です。
本当になんかこう執筆に行き詰まってしまった人が書いた、書いたというか書けなかった論文なんですね。
この論文なんですが、ジャーナルオブアプライドビヘイビアアナリシスという論文誌に本当に掲載されているんです。
つまり空白が掲載されているんです。タイトルが書いてあって、著者名が書いてあって、その後が空白になっているんです。
そしてですね、その空白の下に御丁寧に1973年10月25日、
修正なく掲載とも書かれています。
本論文には、さどくしゃ、先ほどね、ご説明させていただいた論文を掲載するに値するかどうかを判定するさどくしゃからのコメントも添えられているんですが、それがまた古っているんです。
デニス・アッパーの医学論文
こんな風に書かれています。
私はこの原稿をレモン汁とX線で丹念に調べたが、デザインにも書き方にも一点の欠陥も見出せなかった。
私はこのまま修正なしで掲載することを編集者に提案する。
本論文は私がこれまで見た中で最も簡潔な原稿であることは明らかであるが、
他の研究者がアッパー博士の失敗を再現するのに十分な詳細が含まれている。
編集者から送られてくる複雑な詳細が書かれている他の原稿に比べ、この原稿はさどくが楽しかった。
きっとこの論文をジャーナルに掲載する場所が白紙ページの隅っこにあるはずだ。
これどうなんですかね。
さどく者は明らかに逆下の意図を持ってこのジョークを書いていますよね。
編集者が間違って載せてしまったのか、あるいはここまで来たらもう載らなきゃ損と思ったのかもしれません。
野望承知で解説をしてみます。
本論文の明確な結論はタイトルにある通り、執筆の行き詰まり症例に対する自己治療の失敗で、その適切な証拠は本文が空白であることです。
では、証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程はどうなったでしょうか。
この証拠と結論を結ぶ妥当な推論過程を著者は書こうとしたのだが、執筆の行き詰まりによって書けなかったと。
まあそういうことなんでしょうね。
おそらくなんですが、著者本人もまさか掲載されるとは思わなかったんじゃないかと僕は思います。
最後にですね、全く個人的な思い出話を恐縮ながらさせていただきたいのですが、
実はですね、僕も空白の発表論文をとある学会へ提出したことがあるんです。
しかもタイトルが無題だったんです。
二文字、む、だい、むだい。
確かですね、僕の記憶によれば仮の提出をしてそのまま消し忘れていたという事故でした。
タイトルが無題で本文が空白。
で、そこまでならよかったのですが、なんと大変恐ろしいことに
その後学会から既伝が投稿された論文無題は厳選なる作読の結果再録となりましたという通知をいただいてしまったんですね。
僕もまだ20代だったのでもう本当に焦ってですね、慌てて取り下げました。
もしそのまま放置していたら、僕も今頃世界一短い論文の著者リストに名前を残せたかもしれません。
以上個人的な思い出話でした。
さて番組後半です。
メールニュースと最短テッドトーク
メールで送りしているニュースレターsteamニュースでは毎週今週のテッドトークをご紹介しているのですが、
このエピソード131でご紹介したsteamニュース第129号では短さにこだわって最短のテッドトークをご紹介してみました。
短いテッドトークというとおそらく皆さんはデリックシバーズのムーブメントの起こし方というトークを思い出されるんじゃないかなと思います。
こんなトークです。
どうでしょう、これこれというふうに思い出された方もいらっしゃるかもしれません。
確かに3分未満という驚異的に短いテッドトークなのですが、このトーク2分53秒ありました。
実はこれ手動でテッド.comに上がっているトークを全部見ていってですね、短いのを選び出してみたんですね。
ひょっとしたらまだ抜けがあるかもしれないのですが、テッドウェブサイトに掲載されているテッドトークでスピーカーが顔出しをしているという条件で探してみました。
もっと短いトークいくつかありました。そのトップ3をご紹介します。
第3位2分8秒。アイザック・ミズラヒによるボタンが変革したファッションとは?という動画です。
アイザック・ミズラヒで調べてみてください。これね本当に勉強になるトークでした。
第2位2分2秒。マレー・ゲルマンの言語の祖先について。
これ僕自身も意外な発見だったんですが、マレー・ゲルマンって物理学者なんですね。
この言語の祖先についてを発表している同じ年に物理学について結構長いトークをされていたんです。
そちらの方は僕も知っていたので、まさかねこんな短いトークをしかも言語なんていうねトピックを扱ってというのでびっくりしました。
こちらが第2位でした。そして第1位なんですがこちら同率1位が2つありました。
最も短いテッドトーク2本紹介
長さは1分59秒。ついに2分を切りました。
1つ目がマット・ウォーカー不眠症を治して睡眠を手に入れる方法。
マット・ウォーカーは他にも睡眠に関するトーク、こちらも短いトークを上げているのですが、
この不眠症を治して睡眠を手に入れる方法というタイトルのトークが2分を切る1分59秒ということで堂々の1位。
僕調べなのですが1位になっていました。
そしてもう一つ同率1位がモナ・チャラビ天気予報はどこまで正確なのかというタイトルのトークでした。
こちらも1分59秒で内容的には少し教育コンテンツに近いテッドエッドに近い内容だったのですが、
こちらも短い顔出しのトークだったのでご紹介をさせていただきました。
なんてことを紹介している間にあっという間の25分でした。
ぜひリスナーの皆様も科学系ポッドキャストを引き続きお楽しみください。
1位でした。
2位でした。
24:58

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