霊媒の起源と有名な霊媒師
いちです。おはようございます。STEAM.fm、今回のエピソードは、メディウム〈霊媒〉についてお届けします。
霊媒、霊魂の媒体ですね。このトリックを見抜こうとして泥沼にはまっていった科学者もいるんです。
改めましていちです。このポッドキャストは、僕が毎週メールでお送りしているニュースレター、
スティームニュースの音声版です。スティームニュースは、科学、技術、工学、アート、数学に関するニュースレターです。
スティームニュースは、スティームボートのりくみのご協力でお送りしています。このエピソードは、2023年8月3日に収録しています。
このエピソード、スティームニュース第141号から、メディウム〈霊媒〉の話をお届けします。
冒頭でご紹介した通り、この霊媒というのは霊魂の媒体という意味なんですね。
メディウムというのは、もともとメディアという英単語の単数形になります。
使者の言葉を伝えるメディア、それが霊媒なんですね。
18世紀後半にイギリスで始まった産業革命は、蒸気船を使った世界的な貿易を可能にしました。
イギリスはキャラコ、つまり布地、こちらをですね、植民地インドから大量に輸入したのですが、
その結果でしょうね、インドで発生したこれらがイギリスへと飛び火します。
19世紀半ばとなる1853年から1854年にかけて、
ロンドンでは1万人以上がこれらで命を落としたと言われています。
この時のこれらは大西洋を超えてアメリカでも大流行しています。
当時はこれらの原因がわかっておらず、予防方法も知られていなかったため、おそらくは大変な恐怖だったと思うんですね。
何せ敵が目に見えないわけですから。
そしていつの時代だって社会不安があるところにオカルトが入り込んでいきます。
19世紀のイギリスやアメリカで霊能力への信仰が大流行したのは、もしかしたら必然だったのかもしれません。
そんな中で特に死者と話す霊媒術、これは英語ではミディアムシップというふうに言います。
そして死者と話す能力を持つ霊媒、あるいは霊媒師、これは英語ではミディアムあるいはメディウムと呼びますが、こちらが大人気となりました。
英語の発音としてはミディアムの方が正しいのですが、日本語では特に美術関係の方はメディウムという発音、
これはラテン語の発音なのですが、こちらを好む方が多いので、このポッドキャストの中でも霊媒を意味する英語をメディウムというふうに発音していこうと思っています。
そんな代表的な霊媒にアメリカのフォックス姉妹がいます。
フォックス姉妹は3姉妹なのですが、次女のマーガレッタ、通称マギーと、3女のキャサリン、通称ケイトが霊媒として有名です。
彼女たちは死者の霊が鳴らす音、つまりラップ音を通して霊と交信できると主張しました。
1848年3月の夜、2人の姉妹はベッドの中で火をたたくような音に気づきます。
霊が語りかけているに違いないと考えた姉妹は、母親を呼びに行きます。
母親のフォックス夫人はまさかと思い、霊にこう尋ねてみました。
私の子供は何人かしら。驚くべきことに、その霊は正しい回数だけラップ音を鳴らしたんです。
姉妹の霊媒術はたちまち近所の話題となり、
1849年11月14日にはニューヨーク州ロチェスターで公開デモンストレーションを行うまでになりました。
それと同時に、姉妹の除霊術が陰知きではないかと疑う人たちも現れました。
バッファロー大学の3人の調査員たちは、ラップ音の正体を彼女たちが間接を鳴らした音だと結論づけました。
1888年10月21日、ロチェスターでの公開デモンストレーションから39年後、
マギーはこれらが陰知きであったことを暴露します。 彼女はニューヨーク音楽院に集まった2000人の聴衆を前に、一紙立合の下、
彼女が好きなタイミングで、つま先の間接を鳴らせることを証明してみせました。 この時ケイトも同席していました。
なおマギーは1889年11月に暴露を撤回しています。 暴露には1500アメリカドルのスポンサーがついていたことも白状し、
経済的な理由や精神的に不安定だったことからデモンストレーションを引き受けてしまったと発言しました。
1888年の1500ドルは、現在の価値で言うとおよそ4万8千ドル。
換算すると700万円ほどになりますから、金に目がくらんだという主張は一応は通ります。
科学者たちのスピリチュアル傾向
ただし、マギーとケイトをその後も礼拝として信じる人たちは急速に減っていきました。
一方で、霊の存在を疑ってかかった19世紀後半の科学者たちの中には、 やがてスピリチュアル系に傾倒していった人たちもいます。
イギリスの物理学者ウィリアム・クルックスは、 クルックス管という実験装置を発明し、
人類で最初に電子の存在を可視化した人物です。
クルックスは当時有名だった自称霊媒、 ダニエル・ダングラス・ヒュームを調査したのですが、
インチキの証拠をつかめず、かえって霊の存在を信じるようになりました。
科学者なのにと非難するのは後自衛というものかもしれません。
クルックスは電子という目に見えない物質の発見者でもあるのですから、
ひょっとしたら彼にとっては、見えない現象への探求の一環だったのかもしれません。
なお、この霊媒・ヒュームは生涯を通して、 大やけには一度もトリックを見抜かれたことがありませんでした。
記録によると、プライベートでは何回かトリックを見抜かれていたそうです。
いずれにせよ非常に巧妙なトリックを使っていて、 東大切手の物理学者クルックスも騙し通したということになるんでしょう。
ノーベル物理学賞を受賞している物理学者ピエール・キュリーは、 当時未解明だった磁力の研究をする中で、
超常現象の調査が役に立つかもしれないと考えるようになりました。
彼は1905年にパリで開かれたイタリア人霊媒、 ユーサピア・パラディーノによる
高齢術の会に出席しています。 彼もまた磁力や放射能など目に見えないものを探求していたのですから、
霊媒に興味を惹かれたのも自然な成り行きだったかもしれません。 もっとも彼は科学者としての一線は守り通し、
実験で再現できない現象を公然と支持することはありませんでした。 推理小説シャーロック・ホームズシリーズで普及の名作を残し、
また自身も探偵として2件の冤罪事件を解決したこともある アーサー・コナンドイルは
晩年、心霊主義にのめり込んでいきます。 彼は1917年に撮られた妖精の写真を本物と信じ込み、
生涯にわたって擁護し続けました。 こちらどんな写真かというのを
メールでお送りしているニュースレター、スティームニュースの方にお送りしていますので、よかったら無料でお読みいただけますので、ぜひ登録して読んで
見てみてください。 可愛らしい写真ですよ。
この妖精の写真なのですが、撮影されたのは1917年、そして
1983年にこれが捏造であったことが明かされています。
見えない現象を追いかけるものは時にありもしない現象さえも追いかけてしまうという教訓、
ミラトリがミラになるというのはこのことかもしれません。 この教訓は
科学者にとってはひょっとしたら ラップ音よりも恐ろしい現象かもしれません。
いかがでしたでしょうか。実はここで皆さんに告白しないといけないことがあります。 このエピソードを収録中に、僕は今のヘッドフォンをして収録をしているんですが、
ヘッドフォンから突然他の人の声が流れてきたんですね。 映媒の話をしている時に
他人の声が聞こえてくるってもう 心臓止まるかと思うほどびっくりしました。
で、すぐに原因はわかったのですが、これ前回のエピソードで僕テッドスピーカーのテリームーアの声を一部収録に入れていたんですね。
そのトラックが残っていたんです。 いやもうびっくりしました。
本当に映媒が現れたのかと思いました。
いやなんかこんな雑談で尺を使っている場合ではないですね。 先ほどの冷媒メディウムのお話に戻りたいと思います。
冷媒関連の書籍紹介
メールで送りしているニュースレター、スティームニュースのこの冷媒についてお届けしている号、第141号では、
今週の書籍、そして今週のテッドトークとしてそれぞれご紹介している内容があります。
今週の書籍は、藍澤佐子の
メディウム 冷媒探偵 上塚翡翠
僕もですね、ニュースレターのこのメディウムの号を執筆する傍ら読んだのですが、
もうめちゃくちゃ面白いというかですね、 尊いという言葉はこういう時のためにあるんじゃないかと思うぐらい
ドハマリしました。ついついね、執筆がおろそかになってしまった作品です。
コミック版もあって、僕はコミック版の方も冒頭読んだんですが、コミック版もいいですね。
この収録が終わったらコミック版の方も読んでいこうかなと思っています。 冷媒、メディウムというのは
死者の言葉を伝える人ですから、 推理小説や探偵小説にこの冷媒が出てきてしまったら、探偵の仕事なくなっちゃうんじゃないの?
と思われるかもしれないんですが、 そこがもう見事に構成されていて、
本当にね、 尊い作品になっていました。
もう一つの本週のヘッドトークのコーナーでは、 こちらをご紹介しています。
ジェームズ・ランディー。 心霊詐欺に対するジェームズ・ランディーの
痛烈な批判。 こちらはですね、ランディー爺さん、僕はお親しみを込めてランディー爺さんと呼ばせていただきたいんですが、
白髪のおひげふさふさのかっこいい爺さんなんですね。 残念ながらお亡くなりになっているのですが、彼の2007年のヘッドトークから、
彼はですね、 冷媒をはじめとするオカルトを生涯に渡って批判し続けた人物です。
彼はですね、ヘッドのステージで18分のトークをするんですが、その冒頭で32条の睡眠薬を飲んで見せます。
この睡眠薬なのですが、ホメオパシー睡眠薬で実際には何の効果もないんですね。
それを証明するために、 致死瘤と言われる32条のホメオパシー睡眠薬を飲んで見せています。
また彼は本当の冷媒がいるなら証明してみせてくれ。 もし証明してみせてくれたら、100万ドルを支払うとも言っていました。
この企画は2015年には終了しているのですが、 誰も
この企画で100万ドルを手にすることはできませんでした。 ランディー爺さんは
冗談も上手でですね、 別の講演でこんな言葉を残しています。
この中で超能力を信じる人はいますか? もしいらっしゃったら
私の手を挙げてください。 テッドトークでもよく見かけると思うのですが、
何々と思う人は手を挙げてくださいという呼びかけ、 これ英語では
raise your hands っていうふうに呼ぶんですが、 このランディー爺さんは
raise my hand 私の手をあなたの力で挙げてくださいっていうふうな
冗談を言ってるわけですね。 そんな彼のテッドトークをご紹介しています。
よかったらこちらもニュースレターでチェックしてみてください。 さてこのエピソード後半ではこの1週間僕が特に印象に残った話題をお届けしていこうと思います。
映画バービーと映画オッペンハイマーのネットミーム
アメリカで映画バービーと映画オッペンハイマンが同日に封切られました。
そのためか、これらの映画を同じ日のうちに2本続けてみようという運動がネットを中心に起こったんですね。
映画バービーと映画オッペンハイマンをつけてバーベンハイマーというネットミームが誕生したんです。
映画オッペンハイマーはアメリカの物理学者で原爆の父と呼ばれたロバート・オッペンハイマーを描いたクリストファー・ノーラン監督による思い作品で、これを見るのにですね。
同じ日のうちに明るいタッチで希望の持てる作品バービーを一緒に見ましょうということに、僕は全く異論はないんですね。
ただ、このネットミームバーベンハイマーの中で、とあるツイッター、現在ではXの投稿で、バービーの背後にピンク色のキノコグモを描いた作品が投稿されて、それをバービーの公式Xアカウント、言いにくいですね、ツイッターアカウントでいいですよね。
公式ツイッターアカウントがそれにリプライをつけていたんですね。どんなリプライかというと、忘れられない夏になるわよ。キスマーク、ハートマークと書かれていたんですね。
これはあまりにも日本の被爆者たち、そしてその子孫たちを冒涜しているんじゃないかなと思って、僕はその場で、いつもね、長崎よりっていうふうにリプライをしておきました。
大半は日本からだったのですが、多くのアカウントから、バービー公式アカウントへ批評、非難のポストが流れていきまして、その後ですね、ワーナーブラザーズが正式な謝罪をして、元のツイート、Xのポストですね、これを削除しました。
ただ、この件に関しては、僕はこの8月13日に僕が主催するイベント、TEDxデジマEDの中で、アリ・ビーザーというアメリカ人ジャーナリストと組んで、新しいメッセージを発信しようと思っています。
アリは、彼のおじいさんが広島、長崎上空にいた、上空を飛んでいたというジャーナリストで、このネットミームにもアメリカ人として心を痛めている一人です。
今週も最後まで聞いてくださってありがとうございました。毎月10日の科学系ポッドキャストの日、2023年8月は、ポッドキャスターが集まって、会談の話をしようということになりまして、
そこでSteam.fmでは、冷媒メディウムのお話をお届けしました。
最後に、大変厚かましいお願いで恐縮なのですが、Steam.fmではコーヒーの差し入れを受け付けております。
無料配信を維持するために、よろしければ、ポチッと400円からご支援いただけますので、ご検討いただければと思います。
では、暑い日が続きますが、良い週末をお迎えください。Steam.fmのイチでした。
ご視聴ありがとうございました。