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  2. 佐渡金山【第64号音声版】 #50

日本政府がユネスコに世界遺産候補として推薦する「佐渡金山」は,推薦理由が「かなり弱い」のです.本号ではその理由や,ノーベル賞の金メダルにまつわる驚きのストーリー,そして佐渡金山を開発した謎のアーティスト兼エンジニア大久保長安についてお話しします.

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[音楽]
おはようございます、いちです。
このポッドキャストは僕が毎週お送りしているニュースレター、
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[音楽]
改めましていちです。
このエピソードは2022年の2月3日に収録しています。
今週ですね、右予直接の末に、ついに日本政府による佐渡金山のユネスコ世界文化遺産、
通称世界遺産への推薦が決まりました。
バンザーイと言いたいところなんですが、少し複雑な事情があります。
むしろですね、日本の多くの文化遺産研究者、それから関係者の方ですね、
またか!っていうね、思いがあると思うんですね。
佐渡金山の世界遺産登録については、韓国政府が反対を表明しています。
長崎の群漢島の世界遺産登録の時も、韓国政府が韓国人に対する強制労働があったことを理由に反対して、
なおかつですね、展示方法をめぐってユネスコ国際連合教育科学文化機関がですね、
後に強い遺憾の意を示すという事態になっています。
しかしですね、これが関係者、研究者のまたか!の理由ではないんですね。
そうではなくて、これだけ大事な文化遺産なんだったら、
国連あるいはユネスコという権威を借りずに、日本政府がこれは世界的な文化遺産ですと、もっと国内外に主張すべきだと思うんですね。
そこをですね、またも世界遺産の名前を取りに行ったのかという楽談があるわけなんですね。
また国内の旅行者もユネスコをミシュランガイドのように扱わずに、
もうちょっとね、自分たちの意思でどこを見るべきかというのを選ぶべきなんじゃないかなと、
これは研究者の思い上がりではあるんですけれども、そういった感情を持ってしまいがちなんじゃないかなとも思います。
いやそんな、世界的な文化遺産って自分たちで言っていいの?と思われるかもしれないんですけれども、それでいいんですね。
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徹底的に調査して考えて検証して歴史を積み上げていけばですね、それは十分自信を持っていくことだと思うんですよ。
そのための人文学だと思いますし、そのための日本の大学研究機関だと思うんですね。
いやちょっとオープニングから苦しく語ってしまってすいません。
あのついついね、どうしても僕自身が世界遺産を研究しているので、世界遺産とか文化遺産を研究しているので、
あの思いがね、強く出てしまいました。
このポッドキャストのエピソードでは、まあそんな佐渡金山を中心に、化学物質の金、ゴールドですね。
それから世界遺産という精度、そして江戸時代の謎の天才エンジニア、大久保長和についてね、お話をしたいと思います。
エジプトのナイル川の上流にアブシンベル神殿という巨大な神殿があります。
紀元前1264年頃からおよそ20年かけて、エジプト新王国第19王朝のラムセス2世によって建設されました。
僕も現地に足を運んだことはあるんですけれども、とにかく巨大な神殿なんですね。
この神殿は1960年代のアスワンハイダムの建設計画によって、水面下に沈む可能性が出てきました。
当時発足したばっかりだったユネスコによって、この歴史的分解産を何とか保存しようという活動が開始されました。
資金面、技術面でも大変な苦労伴ったんですけれども、資金面では50カ国が国際協力をし、
技術面ではですね、スウェーデンのエンジニアリングチームがなんと遺跡を分割して運び出して再びくっつけるというですね、
信じられない仕事をやってのけて、遺跡はダムでできたナセルコのほとりに鎮座することになりました。
これね、本当に大変な仕事だったと思います。
アブシンベル神殿の保存を契機に国際的な援助が要請される遺産について、国連が保護を呼びかけようという機運が決定的になりました。
1970年、ユネスコで普遍的価値を有する記念工作物建造物群及び遺跡の国際的保護のための条約という条約案が提出されることになったんですね。
本条約最終的には1972年に世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約、通称世界遺産条約として採択されました。
このようにですね、世界遺産というのはもともとある意味ややこしい遺産の国際的保護のための条約だったんですね。
紛争地域にあるとか、地元政府に十分な資金や技術がないとかの理由で、自国政府で保護できない遺産を国際的に保護しようという目的があったんですね。
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世界遺産の対象が広がった現在は、同目的のために危機にさらされている世界遺産というリストが管理されています。
ヨーロッパのように歴史上何度も国境が変化している地域では、国をまたいだ統一基準というのはあった方が便利なんだと思います。
例えば時代によってその土地の宗教が変わってしまっているという時に、以前の宗教の祈りの場であるとか、宗教建造物であるとか、新しい宗教の人たちにとっては価値がないということもよくあるわけなんですけれども、
そういったものも歴史的価値を認めて保存しましょうというのを相互にやりとりするという意味では、この世界的な統一基準、世界条約となった方がいいと思うんですが、
日米のように比較的国境が安定した先進国では、世界標準に合わせなくても、合わせることはいいんですけれども、合わせるために無理することはないんじゃないかなと、僕個人は思います。
さて、茶道金山の話に戻りますね。茶道ヶ島では金の他に銀も算出したんですね。むしろ銀の算出量の方が多かったわけなんですが、そこで正確には茶道金銀山と呼ぶんですけれども、このエピソードの中では金について取り上げていきたいと思います。
茶道金山が開発されたのは江戸時代初期の1601年、関ヶ原がご案内の通り1600年ですからすぐですね関ヶ原の直後ですね。1601年で当初は年間400kg以上の金が算出したとされています。
これは当時世界最大です。年400kgですからね。普通金というのは、そうですね1トンの金鉱石掘り出して、1g、2g取れればいいほど。
当時の技術では、もう少し金が含まれてないと採算が合わないので、もう少し取れたと思うんですが、それでもですね、1トンあたり10g、20g取れればいい方だったんじゃないかなと思います。ものすごい労働力ですね。
江戸時代の古板なんですけれども、1万円あたりおよそ金が16g程度含まれていました。ということで毎年古板25000万枚、25000両分を算出した。すごいことですね。
江戸時代初期の1両というのが現代の10万円ほどという風に言われてますから、25億円規模の鉱山だったわけですね。
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記録によるとこれに銀の方ですね。銀が1万冠出たそうなんですね。これは現代換算で120から160億円に相当するそうなので、金と銀合わせるとどうなるんでしょうね。
200億円まではいかないにしても、150から180億円ですか。いやもう想像でする額になると思います。
関ヶ原の合戦に勝利した直後の徳川家康はすぐに佐渡を抑えてるんですね。なかなかの目利きという風に言えるんじゃないでしょうか。
佐渡金山の採掘なんですが、1989年平成元年まで三菱グループ企業によって続けられました。
1989年というとね、映画の大ハード一作目の年なんです。なんかずいぶん昔のような最近のような、なんかよくわかんない例えをしてしまいました。
ところで皆さんは金を食べられたことありますか。金も銀も食品添加物として認められてるんですね。
金箔入りのお酒だったりとか、高級なチョコレートでちょっと金があしらってあったりとかするの見かけられたりとか、ひょっとしたらね、見せ上げたことあるかもしれません。
食用金箔の最大の生産国って日本ではあるんですが、ヨーロッパでも16世紀から金箔入りのお酒というのを作られていたりとか、インドでも金箔を食品に乗っけたりという習慣があったりとか、世界中に見られるようです。
で、金の大味の方なんですけれども、金には味がありません。
というのも金は溶けないんですね。口の中で全く溶けないので、未来を刺激するということがないんですね。
それどころか胃に入っても溶けることはありません。腸で吸収されることもありません。
ということはつまり、トイレに直行するわけですね。なんかもったいないですよね。金食べてそのまんまトイレ流しちゃうっていうのね。
金はですね、水にはもちろんのこと、ほとんどの液体に対しても溶け出すことはありません。
農塩酸と農醤酸を3対1の比率で混ぜた、黄水という液体があるんですけれども、これが金を溶かすことができる数少ない液体で、イスラムの錬金術師、ジャーヴィルブンハイアーンによって発明されたと考えられています。
ドイツの物理学者、マックスフォン・ラウエは1914年にノーベル物理学賞を受賞しています。
同じくドイツの物理学者、ジェームズ・フランクは1925年にノーベル物理学賞を受賞しています。
2人ともノーベル賞の金メダルを持っていました。しかし2人ともこの時代ナチスに反対していたのですね。
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なので、ノーベル物理学賞の金メダルを奪われてしまうのではないかと恐れて、国外にあたるデンマーク・コペンハーゲンの科学者、ヘフェシーという方に金メダルを預けるのです。
「ちょっと持ってて」と言って。
特に、この2人目のジェームズ・フランクというのはユダヤ系ドイツ人だったので、迫害を恐れて1934年にアメリカへ亡命しています。
その後、第二次世界大戦が始まって、デンマークはナチスドイツによって占領されてしまいます。
2人分の金メダルを預かっていたヘフェシーなんですが、彼もスウェーデンへ亡命するんですけれども、亡命前に金メダルを隠そうとします。
最初は土に埋めようと考えるんですけれども、掘り返されたら奪われてしまうと思って、なんとその大水に溶かしちゃうんです。液体にしちゃうんです。
2人分の金メダルを溶かして、液体として隠しておいたんですね。
終戦後、ヘフェシーはデンマークに戻ります。そして金を溶かした大水から再び金を生成して、ノーベル財団に依頼して2人のメダルを作り直してもらいました。
またヘフェシーは、第二次大戦中の1943年に自身のノーベル科学賞を受賞しています。
こんなことってあるんですね。ヘフェシーはハフニウムという金属を見つけたりとかの優秀な科学者ではあったんですけれども、こういったノーベル賞金メダルの裏にこういうストーリーがあったんですね。
僕はふと思ったんです。この話を聞いて。
もしヘフェシーが日本人だったら、メダルを金箔にして食べて亡命したらよかったんじゃないかなと思ったんですけれども、
当時のですね、ノーベル賞のメダルって23金で、つまりほぼ純金ですよね。
それで重さも平均175gあったそうなんです。
175gってどのぐらいかなと思って、Amazonで売ってる一般的な食用金箔を調べてみたんですね。
金の米っていう製品があったんですけれども、それがですね1本0.05g入りだったんですね。
0.05gでも何回も振りかけられますから、それがですね、ノーベル賞の金メダル1個が3500本分になるということで、
2人分だから7000本分?ちょっと食べるのは無理かなと思って、やっぱりねヘフェシーのように大粋に溶かすというのが正解だったんじゃないかなと思います。
さすがですね、ノーベル賞学者ですね。話を佐渡金山に戻したいと思います。
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徳川家康が佐渡金山を幕府直轄領にしたのは1603年、慶長8年だったんですけれども、
それに先立つ1600年、慶長5年には岩見銀山を支配しています。
この時家康が岩見銀山に派遣したのが現代でいえば天才エンジニアの大久保長安でした。
彼は初代銀山武行として拉腕を奮い、家康の財政面を大いに助けました。
岩見銀山は山を崩したり森林を伐採したりせず、狭い高度を掘り進んで採掘するという環境に配慮した生産方式がユネスコに評価され、2007年に世界遺産に登録されました。
大久保長安はもともと猿学士の家系に生まれました。猿学というのは現代の文王ですね。
大久保長安自身も猿学士だったようですが、若き日に竹田信玄に才能を見出され鉱山開発を行うようになります。
竹田氏滅亡後は家康の配下に入り、現在の八王子市の開発に力を入れていきました。
八王子市には今でも大久保長安の功績を称えるような活動が続いているようです。
1600年、慶長5年、関ヶ原の戦いで西軍が敗れると家康はすぐに長安を岩見銀山、佐渡金山へと派遣します。
両方とも豊臣家が所有していたのですが、それを家康が奪い取った形になりました。
長安は鉱山開発だけでなく都市計画にも優れていたようで、関東における交通網の整備も手がけています。
ここまで来ると天才エンジニアと言えると思うんですね。
猿学士でもあったわけですから、現代で言えば農学士ですね。
アーティスト兼エンジニア、それに政治家も兼ね備えていたということで、なかなかの才能の持ち主だと思うんですね。
こういった人物、僕はガハハ系の人物と呼んでいるんですけれども、やっぱり政治力を使いすぎたりとか、お金の計算がきっちりできなかったりとかで、晩年には揺り戻しが来るというのが典型的な人生だと思います。
奥保長安はですね、幸い亡くなるまで性的に倒されるということはなかったんですが、奥保長安は慶長18年亡くなっているんですけれども、その直後ですね、家康によって葬儀の中止が命ぜられ、後に長安の子供男子7名、切腹が命ぜられています。
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これで家計は断絶しています。
表向きの理由は、金山銀山からの金銀を不正蓄財したということになっているんですが、それもあったと思います。
あったんでしょうけれども、他にも色々ね、政治的な理由もあったと思います。
実はですね、この奥保長安が優秀だったことが、逆にですね、この佐渡金山の世界遺産登録にマッターをかけている可能性もあるんですね。
これどういうことかというと、奥保長安が開発を手がけた上見銀山がまず世界遺産になってますよと。
同じく彼が手がけた佐渡金山が、これから世界遺産に推薦されることになっているんですが、
この世界遺産というのは、文化的伝統または文明の存在を伝承する仏像として、無二の存在であることが条件なんです。
無二の存在でなきゃいけないんです。
ところが、この佐渡金山というのは、いわみ銀山の二番煎じじゃないかというふうに、ユネスコから言われてしまう恐れがあるんですね。
これは同じく奥保長安が開発を手がけたというので、いわみ銀山で開発した技術を佐渡金山で応用したからということも言えますし、
佐渡金山じゃなくて、いわみ銀山の方が、都市開発、鉱山開発については非常に優れた成果を残しているんですね。
いわみ銀山が世界遺産に選ばれた理由、これは、
当時、銀の生成というのは大量にエネルギーが必要ですから、木を切り倒して薪として使って銀を生成するというのは常識だったんですけれども、
この奥保長安がいわみ銀山でやったことは、持続可能な鉱山開発をやっているんです。
木をできるだけ切らずに、木を切ったらその分植林して、自然を保ったまま銀を掘り出すということを挑戦しているんですね。
なので、佐渡金山が無二の存在かというと、残念ながらこの奥保長安がいわみ銀山をうまくやりすぎたせいで霞んでしまうんじゃないかなということにもなります。
おそらく日本政府はこれから知恵を絞って、佐渡金山が世界的に見て、稀有な存在であるということを、いろいろ理屈を考えていくと思うんですが、
僕ね、そこにエネルギーを注ぐんじゃなくて、そうじゃなくて、例えば文化庁が日本遺産という制度をやってるんですね。
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文化庁は周りの省庁に気を使って、日本遺産というのは、例えば世界遺産であるとか国宝であるとか、国指定の重要文化財であるとかとは、
かぶる制度じゃありませんよという、これはちょっと違う種類ですよと頑張って言ってるんですけども、そうじゃなくてもかぶってもいいというか、かぶせて、日本遺産ですよというふうにガツンと押していくというのが大事なんじゃないかなと思います。
と、まあですね、国に文句だけ言ってると、もう盛んなる評論家になってしまうので、僕自身もですね、推しの文化遺産というのをもっともっと発信していこうと思います。
僕がね、日本遺産って日本名乗るわけにはいかないと思うので、何遺産にしましょうかね。
僕1なんで、1推しにしときましょうかね。
僕はYouTubeで世界遺産の旅という番組やってたんですけれども、やってた時今もやってるんですけれども、月2回やらせてもらってるんですけども、
ちょっと反省しました。このポッドキャストのエピソードを撮りながらですね、リアルタイムに反省しました。
今度から1推しっていうのをどっかに入れるようにします。
いやーこのエピソードの冒頭で、世界遺産はミシュランガイドじゃないぞと。
まあていうかですね、ミシュランガイドなんかに踊らされるなとか、まあ偉そうなこと言ったんですけれども、実は僕自身、
あのミーハーで、ついつい乗ってしまうんですね。ミシュランガイド乗ってたらやっぱり行ってみたいなと思いますし、
三ッ星のお店とかは行けないですけれども、ほら大阪のたこ焼き屋さんとか、
でもあれはミシュランガイド乗る前から行ってましたからね、まあそれOKかな。
まあでも世界遺産って登録されたらやっぱり行ってみようかなってなりますし、
まあ僕自身ミーハーなので、すいません偉そうなこと言って。
ただまあ、権威に自分の意見を合わせるんじゃなくて、少しは自分の意見を入れても、
まあそれはね、自己責任で行ってみてがっかり、食べてみてがっかりということもあるわけなんですけれども、
まあそれも冒険と思って、経験と思ってやってみるのもいいんじゃないかなと、僕個人は思います。
今回も最後まで聞いてくださってありがとうございました。
また次のエピソードで皆様とお目にかかれることを楽しみにしています。
いちでした。
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