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ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。
前回は人の祖先をめぐる時間軸の話をしました。
今回は原型言語の話をしたいと思います。
ただその前に、まどろっこしいようなんですが、まず動物の言語について話さなくてはなりません。
例えば、チンパンジーやゴリラ、サルの仲間は、いわゆる言語は持たないですが、声を使用したコミュニケーションはとっています。
サルとかチンパンジーはキーキー鳴きますよね。
縄張りを守るために威嚇の声を上げるし、捕食者が近づいたら危険を知らせる叫び声を上げます。
これはコールと呼ばれる音声コミュニケーションで、原型言語のさらに前の段階のものです。
コールから原型言語へと言語が進化したというわけですが、
なぜ初期人類は原型言語が必要だったのか、コールではいけなかったのかというのが、まず最終の論点となります。
アメリカの神経科学者マーリン・ドナルドは、「現代精神の起源」という本の中で、ミメシスという概念を出してこれを説明しました。
余談なんですが、哲学者のプラトンもミメシスという概念を使っていますが、プラトンでいうミメシスとは別の概念です。
このミメシスの定義は、意図的ではあるが言語的ではない表現行為を意識的自発的に行う能力というものです。
要は言語的ではないコミュニケーションということですが、今の僕たちも非言語コミュニケーションは当たり前に使っているよね。
声の調子とか表情、目の動き、手でのサインや手振り、体の姿勢、各種のパターン化した体全体の動きなどなどですが、
もうちょっと具体的に言うと、例えば悲しそうな声、嬉しい時の声の調子、申し訳ない時に不死身がちになる様子などは、全世界共通なんですよ。
あとは、ちょっととか少しを表す時に親指と人差し指を小さく開けるジェッシャーをするのも、これも言語関係ない全世界共通だし、
たくさんとか広いを表す時に腕を胸の前で大きく広げるジェッシャーをするのも、これも全世界共通の非言語コミュニケーションです。
こういったものがミメシスです。
ミメシスには言語ほどの厳密さはない一方で、知覚した世界、知覚した世界の様々な側面を表現できる幅広さがあります。
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簡単に言うと、目の前の人が顔を赤くしていたとして、同じ顔を赤くするという現象であっても、怒ってるのか恥ずかしがってるのかっていうのは見ればわかりますよね。
見ればわかるということは、僕たちは思っている以上に非言語的なミメシスから情報を読み取っているということです。
で、先ほどのマーリン・ドナルドは、ホモ・エレクトゥスなどの初期人類がミメシスを用いていたとして、
これがサルと現代人のコミュニケーション形式の橋渡しなのではないかと提唱しました。
ミメシスを使うことで、初期人類は新しい土地、遠くのフロンティアへ移住したり、新しい種類の道具を作ったり、火を用いたり、大型の獲物を飼ったりできるようになったのではないかという説です。
これらはいずれも、ミメシスを使わない、もっと以前の人類の祖先には不可能でした。
ゆえにドナルドは、ミメシスを重視して、100万年以上に及ぶ初期人類の生活はミメシスの文化であるというふうに言っています。
はい、ただ説明としてはまだまだ途中です。
ミメシスが想像以上の情報量を伝達可能なコミュニケーション形式だということはわかったんだけど、
それがどう言語へとつながるのかっていうのが、ここがまだ説明としてはミッシングリンクになっています。
なので次回はその辺をちょっと言語学っぽい話として説明してみたいと思います。
まだまだ次回に続きます。