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ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。
前回は、歌と言語の起源は、大人数用の音声によるグルーミングだっていう話をしました。
ただ、分かりやすさを優先して、ちょっと単純化してしまったので、もう少し詳しく改めて説明してみたいと思います。
人類学者のアイエロとダンバーは、音声によるグルーミングを使用するのは、人間だけではないと言っています。
他にもゲラダヒヒっていう猿も、鳴き声、コール音をリズムとメロディーにして使用することで、音声によるグルーミングをやっているし、
人類の祖先も同様であっただろうと考えられます。
これは、グルーミングにも色々な形態があって、初期人類は毛づくろいをはじめとするような身体接触を基盤にした社会の絆を持っていましたが、
初期人類が進化するにつれて、徐々に音声・発声を基盤にした社会の絆を持つように移行していったというわけ。
それで、この議論の面白いところとして、音声コミュニケーションを代表するものとして、歌と言語とがあるじゃないですか。
で、発明されたのは、歌が先だったのか、言語が先だったのかっていう話を彼らはしています。
結論から言うと、歌が先であっただろうということです。
なぜなら、猿や初期人類が発するコールは、発声方法の数が少なく音の多様性が小さいからです。
その音の多様性を広げるものとして、また、より効果的な音声グルーミングとして歌が扱われていたと、こういう仮説が立てられています。
もっと直感的に言うと、音声グルーミングは身体的なグルーミングの代わりにならなくちゃいけないわけです。
マッサージと同じくらい気持ちよくなれなければいけなかった。
で、マッサージと同じくらい気持ちいいのは、喋りですか、それでも歌ですかっていうと、やっぱ歌だよね。
この気持ち良さってマジでバカにできないんですよ。
ホモサピエンスは、一緒に歌うことでグルーミングを受けるときと同じような喜びや満足を感じて、集団の絆が形成される。
そして大きな群れで活動できるようになって、どんどん強い種族になっていたっていうわけですから、はい。
実際、ファクトとして、ホモネアンデルターレンシス、いわゆるネアンデルタール人は、
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約25万年前に進化して氷河期の後半を生き抜いて、3万年前を過ぎた頃に絶滅しました。
一方でホモサピエンスは、約4万年前にヨーロッパへ拡散し、ネアンデルタール人絶滅の一員になったと言われています。
そして、1万年前に最終氷河期が終わると、ほぼ間を置かずに、世界の複数の場所で農業が発明されて、そこから最初の町、初期の文明が生まれました。
こうして考えると、めちゃくちゃ最近のことですよね。
1万年前に農業が発明されて、メソポタミア文明みたいなのが生まれて、ネアンデルタール人を絶滅させたのが3万年前ですから、
言語が発明されてからのホモサピエンスの進化スピードが、いかにエグいかがわかるかと思います。
簡単にまとめると、まず、動物的なコールがあり、次に身振り手振りを伴うミメシスがあり、そして歌がグルーミングとして使用されるようになり、最後に言語が喋られるようになったっていう話でした。
このポッドキャストを聞いている人は、文学とか芸術にある程度興味があるっていう人も多いのではないかと思いますが、
超そもそもの芸術の起源みたいなところとか、あるいは芸術が成立するためにはミメシスが必要ですし、
こうした人類学の話も興味深く聞いてもらえたのではないかと思います。
そうだったら嬉しいです。
では、歌と言語の起源の話はここまでです。
また次回もよろしくお願いします。