1. ストーリーとしての思想哲学
  2. #19 美術館と文化格差
2023-05-28 06:10

#19 美術館と文化格差

かつて富裕層に独占されていた芸術は、美術館の存在により一般市民に開放されました。しかしそれで「めでたしめでたし」となるわけではなかった。


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ストーリーとしての思想哲学
【思想染色】がお送りします。
前回、文化施設利用者は比較的裕福な層に偏っていて
裕福でない層はあんまり文化施設を使っていないという傾向にあるんだという話をしました。
で、格差の話なんですけど
文化施設の多くは税金が突っ込まれてるじゃないですか
そうすると何が問題かっていうと
税金っていうのはみんなから徴収したものですよね
だからみんなから徴収した税金が
富裕層向け施設に使われているっていう構造になるんですよ
そもそも政府の主要な役割の一つっていうのは
お金持ちからお金を取って貧しい人々に再分配をするっていうことにあります
だけど文化に関して言うと
貧しい人々に全然再分配ができていない
少なくともやろうとはしているんですけど
でもあんまりうまくいっていないと
ここ個人的には結構問題意識があって
この業界が本当に取り組まなきゃいけないよなっていう風に
僕は個人的に思ってます
鑑賞者開発とかどこも頑張ってやってはいるんですけどね
はい
で、この再分配の失敗っていう問題に関して論じている人がいます
アメリカのミルトン・フリードマンっていう経済学者です
よくM・フリードマンっていう風に記載されます
このフリードマンはバウチャー制度っていうものを提唱していて
このバウチャー制度っていう言葉自体は結構ね
例えば文化庁の資料とかにもよく出てきます
だからもしかしたら業界の人は結構見たことがあるかもしれません
で、フリードマンの言うバウチャーっていうのは
所得に連動するクーポン券みたいなもんで
国民一人一人、市民一人一人に配られるものです
そういうのをフリードマンは提唱してるんですけど
美術館を例にとりますけど
従来は美術館に対して税金が補助金という形で交付されます
これが普通です
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それを美術館に補助金としてゴソッとお金を渡すんじゃなくて
変動するクーポン券として市民一人一人に渡す
そうすることで美術館が来館者の獲得競争に晒されますから
競争原理が働かせられるっていう理屈なんです
このフリードマンは経済学者ですから
こういう競争原理っていう考え方をするわけですね
さらにこのバウチャーはただのクーポン券とは違って
個々人の所得と連動するんですよ
だから所得がちょい低い人のバウチャーには10万円の価値を持たせて
めっちゃ所得が低い人のバウチャーには
30万円の価値を持たせるみたいなことができるというものです
でもこのバウチャーっていうのは今まではほぼ机上の空論でした
そもそも美術館に対する補助金を全部カットして
全部バウチャーにするっていうのが
さすがにちょっと求心的すぎるっていうのもありますし
それに制度がすごい複雑になっちゃうんですよ
なんかすごい難しくって複雑な制度を新たに導入するっていうことになるので
だから巨大なバックオフィス
この人はいくらのバウチャー、この人はいくらのバウチャーにします
っていうそういう計算をする間接部門が必要になるし
さらに一人一人の経費生産を毎日毎日していかないといけませんから
だからすごく巨大な間接部門が必要となってしまいます
つまり事務的なコストがあまりに膨大で現実的ではなかったんです
だからこのフリードマンの言うバウチャー制度っていうのは
ちゃんと導入されているところっていうのはないです
でもそれは今までの話であって
もしかしたらこれが日本だったらマイナンバーカードもありますし
もしかしたらこれが実現するかもしれないと思ってます
所得の再分配と文化施設に対する競争原理の導入っていうのが
これから進んでいく可能性が、そういう可能性が想定されます
というわけで今回はここまでです
また次回もよろしくお願いします
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