1. ストーリーとしての思想哲学【思想染色】
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2024-07-28 06:30

#80 ブルデュー3 現代の権力闘争

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ストーリーとしての思想哲学【思想染色】がお送りします。
前回、ハビトスという概念を紹介しました。
ディスタンクシオンによると、趣味の良さ、つまり美的成功とは、客観的な安全性と距離等を前提とした、世界や他者に対する距離を置いた安全な関係の一側面であるといいます。
難しい言い方だから噛み砕いて言うと、普通の人は経済的必要性に束縛されています。
何としても生活するためのお金を稼がないといけないから、勉強するにしてもお金に直接結びつく勉強をしがちになります。
一方で上流階級はお金の心配をしなくていいから、世界や他者に対して安全に距離を取ることができます。
だから実学ではない、芸術や音楽、マナーなどを悠々と安全に勉強することができる。
そのね、経済的必要性の束縛からの最大の自由こそが美的成功、趣味の良さの正体なんです。
別の言い方をすると、美的成功とは、社会空間におけるある特権的な位置の表現であるともいいます。
そもそも経済力とは、何よりもまず経済的必要性を自分から放しておく力のことです。
だからこそ、それは代替において財産の破壊、これ見よがしの出費、浪費、あらゆる形での無償の贅沢を通して現れてきます。
この辺はジョルジュ・バタイユっていう哲学者が言う陶人、漢字は宝刀息子の陶に尽すって書きます。
陶人という概念に根拠があるんだけど、話がそれるから今は掘り下げません。
とにかく経済力というのは、代替において財産の破壊、これ見よがしの出費、浪費、あらゆる形での無償の贅沢を通して現れてくるものなんです。
ブルデューによると、芸術作品の物質的、象徴的浪費こそが、ゆとりの最も高度な表れの一つだそうです。
さっき言ったみたいに、ゆとりがないと芸術はできないし、美大受験もできないですよね。
いざ美大に行っても卒業した後食べていけない可能性を考えると、労働者階級はなかなか美大に進学するという選択肢は取りにくい。
もちろん個人としては、それでも美大に行くという人もいると思うけど、社会全体としてはそういう傾向があるよね、という話です。
というか、今でさえそういう傾向はあるんだけど、ディスタンクシオンが書かれた1979年のフランスは、階級格差がさらにエグかったということなんだろうね。
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さて、面白いのはここからです。
今まで趣味の良さとは、金銭的拘束を受けないこと、経済的必要性への距離が作り出すものだと話してきました。
必要性を克服した生活様式は、無償の贅沢やこれ見よがしの浪費といった手段を通して、
必要性を克服していない人々に対して、つまり金銭的拘束を受け、日常的利害に支配されている人々に対して、正当な優越性を持ちたいという黙論を常に含んでいるのだと言います。
これをブルデューは貴族的な黙論と表現しています。
言い回しがいちいち難解なので、めちゃくちゃ噛み砕いて言うと趣味の話です。
別々の趣味を持つ人同士っていうのは、お互いの趣味を否定し合います。
自分らの世界で完結するということはなく、趣味というのはお互いを否定し合う手段になるわけ。
まだマイルドなところで今風に言うと、音楽でロックやパンクが好きな人は大衆的なJ-POPを否定しがちだし、
美術絵画に詳しい人は印象派とかモネが好きって言ってる人を素人ってバカにしがちだし、
人文学が好きな人はライトノベルなんかを下に見がちです。
マイルドじゃない結構重たいところだと階級内結婚があると言います。
上流階級と労働者階級は結婚しない。文化資本豊かな人は文化資本が乏しい人と結婚しない。
結局のところ、自分の出身階層と同じ階層同士で結婚しがちです。
いずれもね、人は自分と異なる生活様式に嫌悪感を抱くっていうことなんですよ。
何らかの理由や理屈をこねながら、人っていうのは異なる生活様式を下に見るという挙動をするんです。
これが現代の権力闘争です。
上流階級は労働者階級のことを野蛮で無強要だと言って自らの正当性を強調するし、
逆に労働者階級も上流階級のことを刻ったらしくて中身のないボンクラーとか言って自らの正当性を強調します。
このような形で正当性を奪い合うという形で、現代の権力闘争は現れているんだということです。
はい、この構造を趣味、美的成功という補助線から説明したという話でした。
めちゃくちゃ面白いですよね。
現代の戦いっていうと、資本主義という板状で行われるマネーゲームが主流であることは間違いないと思うんだけど、
それだけじゃないよねということです。
人っていうのはどうしようもなく争い合う生物だから、権力闘争も別の板状で行われている。
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次回、この権力闘争の話から始めます。
では、次回に続きます。
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