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2025-02-16 07:03

#109 マイケル・サンデル1 実力も運のうち

サマリー

マイケル・サンデルは、能力主義と不平等について哲学的に考察し、アメリカ社会におけるエリート階級と中流・労働者階級の関係を探ります。彼の著書「実力も運のうち」では、メリットクラシーの影響と倫理的問題に焦点を当てています。

マイケル・サンデルの紹介
ストーリーとしての思想哲学
思想染色がお送りします。今回は、マイケル・サンデルの話をします。
マイケル・サンデルは、1953年生まれのアメリカの哲学者で、ハーバード大学教授です。
これを収録している2025年で、72歳の年の人ですね。
サンデルは、日本でもNHKのハーバード博熱教室っていう番組に出ていたり、これから正義の話をしようっていう本が100万部のベストセラーになっていたり、存命中の人の中でだったら、多分日本で一番人気のある哲学者なんじゃないかと思います。
まずは、実力も運のうち能力主義は正義か?という本を紹介します。
これは2020年に出た本で、この本もかなり売れました。
本のタイトルにある、実力も運のうち能力主義は正義か?の能力主義のことをメリットクラシーって言うんだけど、メリットクラシーという言葉を普及させたのはサンデルの功績だと思います。
実力も運のうちでは、徹底して不平等の話をしています。
特にアメリカでは、労働者階級、中流階級、そしてエリート階級という区分けがあって、労働者階級と中流階級がエリート階級に対して憎しみを募らせているという状況があります。
これはトランプ大統領の誕生とか、アメリカの分断とか、各所で言われていることだから、皆さんご存知のことだと思います。
じゃあ、エリート階級とそれ以外とか、どう不平等かというと、そもそも生まれた環境が違うじゃんということです。
もっと今風に言うと、いわゆる親ガチャのことですね。
アメリカはかつて、アメリカンドリームという、努力すれば成り上がれる、才能があれば階級上昇できるという感覚がありました。
でも今や、アメリカ人はアメリカンドリームを信じることができないでいます。
所得規模の少ない家庭に生まれた子は、ほとんどの場合、中流階級になることすらできません。
ただ、アメリカは割と所得の格差には寛容だから、格差自体が問題というわけではなくて、むしろ問題なのは、エリート階級がエリートではない人々を見下して侮辱しまくっているという倫理にあると言います。
そのエリートたちの倫理観がぶっ壊れた原因にメリトクラシーがあるという話なんだけど、これはどういうことかという話です。
本の中でそれを端的に表している箇所があるので引用します。
これはかつてのイギリスの貴族性社会を念頭に置いています。
上流階級の人物で、人生のある時点で次のことに気がつかない者がいたとすれば、極めて鈍感な人間に違いない。
すなわち、自分の連帯に所属する兵卒、自分の屋敷で働く羊や家政婦、タクシーやバスの運転手、鉄道の客車や郊外のパブで見かける、シワだらけの顔に鋭い目つきをしたミスボらしい労働者。
そうした人々の中に、知性や基地、知恵などで、少なくとも自分に劣らない者がいるということに。
かつての上流階級は、家柄とか親の影響力でエリートとなっていたという自覚があったから、ある意味で自分自身の能力に対して謙虚でした。
だから自分はエリートだけど、自分以上の能力を持った人は実際のところたくさんいる、生まれた環境が恵まれなかったばかりにエリートになれなかった、本当は能力のある人なんていっぱいいるという事実を自然に受け入れていました。
これは冷静に考えれば当たり前のことですよね。
でも能力主義、メリットクラシーが支配する社会においては、エリートは自分がエリート階級なのは自分自身の努力によるものだとナチュラルに考えます。
確かに受験勉強とか頑張ったのは事実だと思います。
でも実際のところ、アメリカのエリートであるIBリーグの学生の3分の2余りが、所得規模で上位20%の家庭の出身になっているわけです。
それは金持ちなら最高の教育を受けられるし、家の仕事の手伝いとかもやらされなくて勉強に集中できるし、環境の良さがエリート階級を再生産しているわけです。
これは自筆的に貴族の子供たちが、家柄の良さゆえにエリートになるっていう構図とかなり似ている構図にあるよね、という話をしています。
実際のところ、そもそも貴族だって自分の義務を果たすために結構努力してましたからね。
とはいえ、昔の貴族はさっき言ったように、生まれた環境が恵まれなかったばかりにエリートになれなかった、本当は能力のある人なんていっぱいいるという事実を自然に受け入れていました。
ところがメリットクラシーの規範に照らすと、自分がエリートなのは自分が努力したからだ。
エリートではない人間は努力していないからそうなのだ、ということになってしまいます。
ここにエリート階級が非エリート階級を見下すようになった土壌があるという話です。
と、まあサンデルはこんな感じの話をする人です。
ベストセラーのこれから正義の話をしようという本のタイトルにもあるように、サンデルは正義とか社会禅について論じる人です。
この実力も運のうちという本の紹介は実は本筋ではないので、一旦ここまでにします。
共同体主義の概念
実力も運のうちを解説したコンテンツってもう無限にあるから、詳しい解説はそっちを見るか、
あと、平易な文章で書かれためちゃくちゃ読みやすいやつなんで、興味があれば普通に本を読んでみてください。
僕としてはサンデルの本質は共同体主義という概念にあると思っています。
というわけで、次回は共同体主義、コミュニタリアニズムの話をしていきます。
次回に続きます。
07:03

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