1. ストーリーとしての思想哲学【思想染色】
  2. #60 人はなぜ戦争をするのか
2024-03-10 07:55

#60 人はなぜ戦争をするのか

戦争が発生するメカニズムをゲーム理論を用いて説明するモデルの話です。

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ストーリーとしての思想哲学【思想染色】がお送りします。
前回まで進化心理学を紹介してきましたが、その中で参考文献として示したギグリエリの
男はなぜ暴力を振るうかの中に、人はなぜ戦争をするのかという話があります。
これが面白かったので、ついでにそれも紹介します。
結論から言うと、ゲーム理論の話です。
ゲーム理論は、囚人のジレンマが有名です。
ご存知の方も多いと思いますが、一応説明しますね。
ゲーム理論とは、プレイヤーが協調と裏切りのどちらかを選べて、自分の利得の最大化を目指すというゲームです。
で、囚人のジレンマは最も単純なゲーム理論のモデルで、このゲームにはAとBという2人のプレイヤーが登場します。
単純なモデルだからプレイヤーは2名しかいないし、ゲームも1回しか行われません。
プレイヤー2名は刑務所で取り調べを受けている最中という設定です。
2人は別々の部屋で尋問されていて、プレイヤーAとプレイヤーBは自白するか自白しないかをそれぞれ選択できます。
だからあり得る組み合わせとして、Aが自白してBも自白する。
Aが自白しなくてBも自白しない。
Aだけ自白してBは自白しない。
Aは自白しないがBは自白するの4パターンがあり得ます。
それで2人とも自白した場合には共に懲役5年、2人とも自白しなければ共に懲役2年の刑が予想されています。
一方で片方が自白して他方が自白しなかった場合には、自白した方が常常釈量により無罪となりますが、自白しなかった方は懲役30年となります。
このような時、本来であれば2人とも自白しない、つまりプレイヤーが共に協調するという選択を取ることが合理的なはずなんだけど、
万が一片方が裏切った場合懲役30年になってしまうから協調するという選択が取れない。
一対一的にはお互い協調するべきなのに、相手の出方がわからない状態だと最適な選択が取れず縛られてしまうんだという理論です。
これは最も単純なゲーム理論ですから、単純ではないゲーム理論もあるわけです。
というのも、現実の世界では人間同士が信頼し合うことは可能だし、そもそもゲームをするのは1回限りではありません。
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このような集団では同じ相手と何回も会って相手が裏切るか協調するかを判断することもできます。
このような現実に近い複雑な条件を与えたゲーム理論ではですね、オウム返し戦略が基本的に一番強いんですよ。
まあ厳密に言うとゲーム理論のモデルって今でも更新されてますから最強の戦略が決定したわけではないんだけど、
あんまり数学的な厳密さはこの本の本筋ではなかったから置いておいて、基本的には何百回と試行回数があるゲーム理論でプレイヤー同士がバトルをした場合、
常に勝つのは自分からは先に裏切らず、相手が裏切ったら報復を行うという、こうしたオウム返し戦略を取るモデルが一番強かったということです。
オウム返し戦略は、応報戦略、報復に応じると書いて応報戦略とも言います。
まあ目には目を、歯には歯を的なやつですね。 ここから何が言えるかというと、
断固とした報復措置がオウム返し戦略には準備されていなければならないということです。
というのは、相手が弱くて報復してこないことが分かっている場合、裏切った方が期待値が高くなるから、長期的には必ず裏切られます。
もう一度言いますね。 つまり他者、あるいは他集団との協調関係を成立させるには、
断固とした報復措置があらかじめ準備されていなければならないということが、ゲーム理論によって証明されているということです。
これを人類の話に戻して、人類史には様々な集団がいたはずだけど、弱い戦略を取る集団は淘汰されて消滅するから、
結果的に強い戦略、応報戦略を取る集団が残ることになります。
こうした経過を経て、ほとんどの社会集団が臨戦態勢にある世界が簡単にできてしまうというわけ。
他集団と協調する必要はあるんだけど、常に臨戦態勢でなければ、他集団と協調することがそもそもできないから、必ずそうなる。
これは再現性のある現象だということですね。
そうすると、何かの弾みでバランスが崩れたとき、
例えば、何か突然変異で帝国主義的な侵略する集団、侵略者が出てきたとき、
あるいは、突発的な資源の欠乏によって、どうしても侵略をしなければ、集団が内側から崩れることがわかってしまったとき、
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他集団と協調するための必要条件として、臨戦態勢を取っている集団というのは、そのまま戦争へとスライドしていくことになります。
これを人類学者のシュムークラーが言うには、
もし、十の集団があって、そのうち九つが平和を熱望していても、
戦争を始めるには十番目の集団だけで十分であるとのことです。
一つでも侵略的な集団があれば、それによって他の九集団それぞれに抗戦するための戦闘力というのが誘発されます。
はい、ではどうすればいいかというと、人類学的には、戦争の発生を抑える唯一の手段は、
戦争をしたら多大な犠牲が発生する状態を作ることだそうです。
相手方を弱いと思えない場合には、野生のチンパンジーでさえ、
しばしば双方の攻撃を抑止するとのことですから、
やっぱり戦争が起こるメカニズムっていうのはゲーム理論なんですよね。
奥法戦略、相手方が先に攻撃してくるなら、どんな犠牲を払っても大規模に報復するという意思を知らしめることが最大の抑止力だという、
こういう構造があるよねという人類学的観点からの分析を紹介しました。
今回はここまでです。次回もよろしくお願いします。
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