ここはとある町にある小さなセレクトショップ、SLOW&STEADY。
国内外からセレクトされた洋服に囲まれた店内は、今日もたくさんの人で賑わっていましたが、閉店間際、今はBGMだけが響いています。
来週に、ちょっと待って、はい、あのー、こっち側ね。
いや、店の奥から誰かの声が。
そう、今日も店主の岡崎が残業がてら、ああでもない、こうでもないと、
洋服話に花を咲かせているのです。
フィッティングルームのさらに奥、SAF ONLYと書かれたその先にある狭くて小さなバックヤード。
今日もこのバックヤードからあなたのクローゼットへとお届けします。
改めてまたバックヤードで話すっていう流れでしょ、これ今日。
そうですそうですそうです。もう、僕のための会と言っても過言ではない。
岡崎さんが誕生日だったんですけど、来週僕、僕の彼女も誕生日なんですよ。
だから毎年僕9月はすごいやりくりしてるんですけど、
9月はすごいやりくりしてる。
お金をね、いっぱい飛ぶんでやっぱり。
いやいやいやいやいや、ちょっと待って。
はいはいはい。
あのすごいプレゼントを岡崎さんに買わないといけないみたいな感じでやめてもらっていいですか?
しかも岡崎さんのプレゼントはもう昨日あげてますからね、僕。
いや、すごいありがたい話で花束いただいてね、スポーツウェアっていうかね、いただきましたけど、
まあまあまあ、気持ちとしてはめっちゃありがたいけど、そこまで高額じゃない。
まあまあ、そうですね。
数千円の話よね、たぶんね。
まあそうですね、言ってしまえば。
1万円いかないぐらいでしょ。
ですね。
やりくり。
まあまあ彼女がいるからね。
まあそうなんですよ。
それもあってね、あれなんですけど。
まあそりゃそうだ。
結構、はい。
プレゼント買った?
買ってないんですよ、だから。
買ってないんですよ。
だから困ってるんです、僕は今。
違うんですよ、悩むじゃないですか、やっぱりプレゼントって。
うん。
ね?
うん。
悩みません?
悩むよね。
悩むじゃないですか。
うん。今までどうしてた?
今まではだから、それこそおととしとかは、スランド3でも一時期取り扱ってたブランドストーンの靴とかをあげたりとか。
去年はサラサちゃんの。
ああそうなんですよ。
ちょうどタイミングがね。
あったから、買おう、ちょうどいいやと思って。
ちょうどいいやっていうのがちょっと失礼な言い方的にちょっとあれですけど。
まあけど、それこそね、サラサさんもいらっしゃったじゃないですか、去年は。
だからサラサさんに女性、20代の前半の女性どういうのをつけてたらいいかなみたいなのをご相談して決めさせていただいて。
それめちゃめちゃ喜んでくれて、今もつけてるんですけど。
いよいよね、ちょっとこうどうしたらいいかがわからなくなってきて、今年困ってるっていう状況です。
で、彼女の誕生日が来週。
来週。
もう積んでるな、それ。
いやまだいけるでしょ。
まだオンラインとかも届きますよ。
なんか候補はあるの?
だからそれこそそのハイブランドと呼ばれるようなやつを無難にあげたらいいかなって思いつつ。
ちょっと待って、ちょっと待って、ちょっと待って。
聞き捨てならんけど、ハイブランドのものを無難にあげたらいいかなって。
そんなあなた不合なの?
違いますよ、違いますよ。
買えそうな範囲のものですよ。
けど、なんでじゃあ買ってないかっていう話になってくるんですけど、今まで。
やっぱり、その買い方って僕はあんまり、いいんかっていう。
仮にも、高級洋服店で働くスタッフ、高級セレクトショップで働くスタッフ、しかもいいもの、背景とか。
物語が詰まった洋服を売ってるスタッフとして、その買い方はいかがなものかと思ってる自分もいるから、
ちょっとここまで引っ張ってしまったっていうのもあるんですよ。
ハイブランドの何かを買うってことは?
そりゃそりゃ、そもそも。
買わんでいいじゃん。
どうしたらいいですか?
いや、どうしたらいいってか、いくらでもあるじゃんだって選択肢。
ほんまですか?あります?
いや、なんか、僕、お客さんにもそうだし、ユートにもね、プレゼントするときに、悩んだことないよ。
マジですか?
でもそうですね、だって岡崎さん、僕に誕生日プレゼントで香水、くださったこともありましたし、
何だったら、先週先々週くらいですかね、お客さんの誕生日にあげてましたもんね、香水とか。
香水もあるし、ゴールペンもあるし、いろんなのあげたよ。あげてるよ。
香水ってむずくないですか?
いや、そうかな、お客さんとの会話とか好みとか聞いてたら、なんとなくわかるじゃん。
それちょっと一旦置いとこう。
そんな話したら、してもしゃあないから。
今、彼女のプレゼントに困ってるでしょ?
で、まあじゃあ、ユートが今25歳。
25ですね。
彼女は?
彼女が僕の二甲舌なんで、今年23とかですかね。
予算いくらぐらい?4万5万ぐらい?
3から5万ぐらいですかね。
買えないでしょ?
買えるものもありましたよ。めちゃくちゃ選択肢ないですけど、やっぱり。
そりゃ当たり前ですけど。買えるものもありました。
ティファニーとかでしょ?
ティファニーとかありましたね。
ロエベとかもあったですかね。それぐらいのレンジのもの。
ありましたありました。4万の税込みぐらいのもの。
ほんま1、2個ですよ。
そりゃそうだろうな。
1、2個。
エルメスとかカルティに至ってはない。
絶対ないもん。
絶対ない。
エルメスのリンクとかだったら、ワンチャンギリギリいけるかなって感じだけど、
決してね、3、4万のプレゼントが安いものではないと思うよ。
まあそうですね、別に。
都市を考えたら頑張っている方だと思うし。
で、その中でハイブランドを選ぶとね、もう選択肢がほぼなくて。
もうほぼないっすね。
言ったらもうギリギリ1、2個買えるラインナップから買うみたいなことになるじゃん。
なりますなります。
それって良くなくない?
ちょっと僕も思ったんですよ。ちょっとこれは良くないかもなって。
だからちょっと悩んでるんですよ。
彼女は仕事してるんやっけ?
そうですね。今年から仕事してますね。
銀行って言ってたね。
そうですそうです。銀行員で働いてますね。
ってことは匂いのきつい香水とかもダメ?
まあそうですね。よろしくないですね。
よろしくないですよね。
ってなると何がいいんだろうね。
それこそさっきおっしゃっていただいたボールペンとか、銀行のジムって使うじゃないですか。仕事で。
いや使わんよ。
あんまり。
銀行のジムで仕事中に高級ボールペンパッてこれで書いてくださいはないよ。
まあほらお客さんにかかわる。
いやいやそういうことじゃなくて、銀行のジムで高級ボールペンってのは使いづらいと思うよ。
あーやっぱり。
まあでも持ってて使わないわけじゃないけど、めっちゃ喜んでくれるかって言ったら難しくない?
まあそうなんですよね。
じゃあ香水ダメ、ボールペンダメ、後の候補は?
それこそ僕も調べてましたけど、ジュエリーはやっぱ定番じゃないですか。
ジュエリー。
プレゼントとして。
そりゃそうですけど。
だからでもハイブランドってなったら選ぶのがないんですよ。
なんでハイブランド、ハイブランドする必要ないじゃん。
知らないですもん僕。
いやいやいやサンセちゃんのもあるしさ。
まあそうですね。
まあけど去年開けてるしね。
そうなんですよね。
けどそもそも去年のプレゼントがジュエリーなわけだろ?
ですね。
うん。だったらジュエリーじゃなくていいじゃん。
まあそうですね別になくてもいいっちゃいい。
なくてもいい、なんかありますじゃん逆に。
じゃあ今までの経験を生かして上げていくから。
はいはいはい。
コウホー。
はい。
ビビっときたら言って。
言います。
まずはルームウェア。
あールームウェア。
パジャマとかね。
はいはいはい。
とか。
はい。
あとジムとか行ってる?行ってない?
いやどうだったろうな。行ってるか行ってないかちょっと微妙ですね。
ちょっとどういうこと?
行き始めたみたいな。
だったらジム用品。
あー確かにですね。
ジムのトレーニングウェアスニーカーみたいな。
はいはいはい。
もの。
うーんあとは。
まあよくあるのはなんかこうドライヤー、ヘアアイドルみたいな。
あーはいはい。
もの。
はいはいわかりますわかります。
あとそうだね。え?一人暮らし?
いや実家だったかな。実家だった。
ちょっと待ってちょっと待ってさっきから彼女の情報がすごいあやふやなんやけど。
遠距離じゃないですか?遠距離。
いやじゃなくて遠距離だから一人暮らしか実家暮らしなんかもわからない。
いや実家実家実家です。実家です。
あーあーふわっとさせたいな。
ふわっとさせたいんです。
あーごめんごめんごめん。
ふわっとさせたいんです。
ねほりはほり聞くつもりはないけどさ。
実家。
あー実家ね。
実家。
だったらまあ家で使うアロマとかもちょっとご家族いたらまずいよね。
いやまあそうですね。
そっかそっか。
はい。
まあ単純になんかバッグとか。
あーバッグ。
バッグこそこれこそ。
いやいやいやだからなんでその脳がハイブランドになってるのか全然わからん俺。
確かにね。
ハイブランドのバッグなんてあげる人なかなか無理だと思うよ。
なかなかもうほんなん。
ちょっとびっくりしましたもん今回改めて調べて。
ハリー・ウィンストン?とかめちゃめちゃ高いんですねあれ。
高いよ。
びっくりしたんですけど。
誰が買うんですかあんなの。