言葉の特性
言葉というのは、形の側面と意味の側面と表裏一体というか、二つで一つということがよく指摘されます。
ここで言う言葉というのは単語と言い換えてもいいし、あるいは形態素と言った方がいいかもしれませんが、
言語の単位というのは形、形式の側面と意味、あるいは概念の側面と、その二つの側面があります。
ただ、この形と意味が常に一対一で対応しているわけではありません。
ちょっと具体的に考えてみると、スマホという単語はスマホという音の側面を持っています。
この音の側面のことをここでは形式とか形というふうに言っています。
それに対して、このスマホという単語には意味の側面もあって、
あり程に言えば、スマホという音が表している概念がスマホという機器であるということですね。
この辺は深く考えるとなかなか難しくて面白い側面もあるんですが、大体そのように考えていいと思います。
スマホというのはスマホに限らずですが、音の側面と概念の側面がある。
このスマホという単語に限って言えば、スマホという音が表しているのはスマホという一つの概念である。
そのように考えられます。
コーエクスプレッションの説明
が、そうとも言えない場合があります。
つまり、一つの音、一つの形式で複数の概念や意味を表すというケースもあるんですね。
逆もあります。
一つの概念が複数の形で表されるという、要は類義語と言われるようなものをですね、
座るという概念を座るという単語で表すこともあれば、着席するということもある。
こういったパターンもあるんですが、今回そっちはちょっと置いておいて、
一つの形が複数の概念を表す、そういう一対一対応ではないというケースを見ていこうと思います。
今回用いる用語は、コーエクスプレッションとシンエクスプレッションという二つのものがあるんですが、
これはマーティン・ハスペル・マートという言語学者によって最近提案されたものです。
このハスペル・マートという言語学者は、現代言語学において最も重要な言語学者の一人ではないかと思います。
特定の言語の記述というかね、文法書を書くということもしていらっしゃるんですけど、
今回のこのコーエクスプレッションとかシンエクスプレッションみたいな、
もうちょっと言語一般というか、あらゆる言語をひっくるめて議論するための概念であったり、
用語というのを整理する先生でもいらっしゃいます。
このコーエクスプレッションとシンエクスプレッションというのは、両方エクスプレッション、表現というのが含まれていて、
定訳があるのかもしれないんですが、今回はそのまま英語のまま用語を使います。
コーエクスプレッションのコーというのは、コラボレーションのコーと一緒で、一緒にみたいなことをですね。
一方シンエクスプレッションのシンの方は、シンクロのシンと一緒なので、
こちらも一緒にというか同時にみたいな意味が含まれています。
コーエクスプレッションとシンエクスプレッションは、どちらも一つの形式で複数の意味を表す、
そういったケースを表す用語なんですが、この二つは微妙に意味合いが違うんですね。
BGMです。
始まりました4月15日のツボ。
皆さんいかがお過ごしでしょうか。金田翔太郎です。
コーエクスプレッションとシンエクスプレッションのコーエクスプレッションの方からちょっと考えていこうと思います。
繰り返しですが、このコーエクスプレッションというのは、
一つの形式で二つの、あるいは二つ以上の複数の意味を表すという、そういった表現のことです。
例えば日本語の格助詞に、「で」というものがあります。
で。このでっていうのは何を表すかというと、
大学で学ぶというように場所を表すのが一つありますよね。
ただ別の意味として、トンカチで殴るとか電車で行くのように、道具や手段を表すこともあります。
こういったものがコーエクスプレッションと言われて、
日本語のでという、これは文法的要素ですけど、格助詞は、
同じ音で場所を表すこともあれば、道具も表すことがある。
これがコーエクスプレッションです。
一方シンエクスプレッションというのはどういったものかというと、
シンエクスプレッションの特徴
これも一つの形式で複数の意味を表すんですが、
それは同時に表されるというような場合です。
例えば英語で、動物の単語がオスとメスを区別するっていうことがよくあるんですよね。
ルースターっていうのはオスのニワトリのことで、ヘンって言ったらメスのニワトリ、
オンドリとメンドリっていう風に区別されるんですが、
ルースターという一つの単語がオスという意味とニワトリという意味を同時に表しています。
一方ヘンっていうのはメスという意味とニワトリという意味を同時に表してるんですね。
日本語のオンドリとメンドリっていうのは、これは一種の複合語ですので、
足し算ですよね。
オン、ドリ、メン、ドリ。
で、オンの方がオス、メンの方がメスっていう風に、
複数の要素の組み合わせでオスのニワトリ、メスのニワトリと表しているわけですが、
英語のルースターとヘンっていうのは、それ以上分割できない一つの形式で複数の意味を同時に表しています。
コーエクスプレッションとシーンエクスプレッションの違いは、
コーエクスプレッションの方は同時っていうことはないんですよね。
大学でといった場合、この大学というのが、
場所も表すし、同時に道具も表すということはないんですよね。
すなわちコーエクスプレッションというのは、
一つの文脈で一つの意味しか出てこないという、そういうことになります。
一方シーンエクスプレッションというのは必ず同時に表れるので、
ルースターというのは、ある文脈ではオスを表して、ある文脈ではニワトリを表すとか、
そういうことではなくて、必ずセットで表されることになります。
コーエクスプレッションにしろシーンエクスプレッションにしろ、
語彙的なものもあれば文法的なものもあって、
さっきのでは文法的で、ルースターとヘンは語彙的なものでしたけど、
例えば文法的なシーンエクスプレッションだと、
英語の三単元のsとかがそうですね。
likeに対してlikes、好きだとか言うときは、
このlikesのつづりで言うとsという形態層には、
三人称という意味と単数という意味と現在という意味と、
少なくとも3つの意味が同時に乗っかっているという感じなんですよね。
言語によっては三人称と単数と現在と別々に表示する、
そういった言語だってあり得るんですが、
英語の場合はそれがシーンエクスプレッションになっているということです。
言語の形式と意味というのは1対1で対応しているのが理想的な気がします。
が、実際にはあらゆる言語で
好エクスプレッションやシーンエクスプレッションという表現が見つかるんですね。
ではなぜそのようなことになるかというと、
好エクスプレッションの方で言うと、
一種の比喩表現みたいなのがモチベーション、動機づけになっていると考えられます。
例えば、人間の足と動物の足を、
日本語では同じ足という言い方をしますが、
別個の単語を使う言語だってあるんですよね。
ただ日本語の場合は、
人間の足と動物の足というのはかなり似ているものというか近しいものだと捉えて、
同じ足という形式で表しているということです。
一方シーンエクスプレッション、同時に表す方について、
一種の法則みたいなのがあるんですね。
それは、よく使う要素、
頻度が高い要素ほどシーンエクスプレッションになりやすいというのがあって、
例えば英語だと、
be動詞がそうですかね。
be動詞のamというのは、
これは一人称と単数と現在と、
少なくとも3つの要素があるわけですけど、
amを含めbe動詞というのは、
英語の中で使用頻度が高いので、
そういう区別した形を残しやすいと考えられているんですね。
あるいは、onceとかtwiceとかいうのもそうで、
1回、2回というのはonce、twiceと言いますが、
3回以上は3times、4timesというふうに、
3plustimes、4plustimesというふうに別個に表現するんですよね。
onceとtwiceは分割できない一つの形式で表されています。
これもやはりonce、twiceというのは使用頻度が高いから、
そういうシーンエクスプレッションで表されやすいのではないかという
仮説があるんですね。
というわけで今回は、
高エクスプレッションとシーンエクスプレッションについてのお話でした。
日本語含めいろんな言語で、
この2つを考えてみるのも面白いと思います。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。
番組フォローまだの方はよろしくお願いいたします。
お相手はシガ15でした。
またねー。