1. 【10分言語学】志賀十五の壺
  2. #798 標準・平均的ヨーロッパ..
2025-10-11 10:48

#798 標準・平均的ヨーロッパ語(SAE)の諸特徴 from Radiotalk

主要参考文献
松本克己 (2016)『ことばをめぐる諸問題: 言語学・日本語論への招待』東京: 三省堂.

おたより▶︎https://bit.ly/33brsWk
X▶︎https://x.com/sigajugo
オリジナルグッズ▶︎https://suzuri.jp/sigajugo
Instagram▶︎https://www.instagram.com/sigajugo/
LINEオープンチャット▶︎https://bit.ly/3rzB6eJ
note▶︎https://note.com/sigajugo
BGM・効果音: MusMus▶︎http://musmus.main.jp/

#落ち着きある #ひとり語り #豆知識 #雑学 #教育

サマリー

以前のエピソードでは、ベンジャミン・ウォーフが提唱した標準平均的ヨーロッパ語(SAE)の特徴について説明されています。この言語は、特に英語やフランス語の構造や語順において興味深い側面を持ち、名詞の格変化や漢詩の使用などの特徴が強調されています。

サピア・ウォーフの仮説
ベンジャミン・ウォーフという言語学者がかつていました。このウォーフは、サピア・ウォーフの仮説でよく知られているのではないかと思います。
サピア・ウォーフの仮説というのは、言語相対論とも言われて、言語によって思考とかあるいは世界の見え方というのが左右される、言語によってそういったものが異なるという説でございます。
このサピア・ウォーフの仮説というのは、別にサピアとウォーフが共同で作り上げた仮説というわけではありませんが、ウォーフ自身はそういう考え方だったんですね。
ウォーフはアメリカの言語学者で、人類学者的な側面もかなりありましたが、対象としていたのがネイティブ・アメリカン、新大陸の先住民の言語だったんですね。
そのネイティブ・アメリカンの言語は、それまで知られていたヨーロッパもアジアも含めて、今まで知られていたどんな言語とも違う特徴を示していたんですよね。
そういう新大陸の言語と対象する形で、ウォーフは標準平均的ヨーロッパ語というのを提唱しています。
これは略してSAEと言われることもあります。
Standard Average Europeanで標準平均的ヨーロッパ語、SAEです。
始まりました4月15日のツボ。皆さんいかがお過ごしでしょうか。昭和のイルコイルです。
このSAE、標準平均的ヨーロッパ語という言い方は今でも使われることがあります。
それがウォーフの想定したSAEと完全にイコールとは言えないかもしれませんが、SAEというのは現代でも使われてはいるんですよね。
具体的にどういった言語が含まれるかというと、やはり英語ですね。
英語、フランス語、イタリア語、スペイン語、ドイツ語など、こういったものがSAE、Standard Average Europeanと考えられています。
系統で言えば全部インドヨーロッパ語族の言語ではあるんですが、英語とドイツ語はゲルマン系で、フランス語、スペイン語、イタリア語はロマンス系で、一応2つの語派が混じってるっていう感じですね。
地理的に言えば、西ヨーロッパの国々の言語で、世界史を引っ張っていたような、そういった言語と言えるかもしれません。
政治的に力があると言えるような言語だし、植民地化をどんどんしていったような、そういう列強と言われるような国々の言語でもあります。
そういう、ある意味強い言語ということで、英語やフランス語みたいな言語が世界の言語のある意味、基準みたいに思われるかもしれません。
外国語といった場合、すぐに思い浮かぶのが英語やフランス語だと、そういう方もいると思うんですよね。
ただ、このSAEは世界の言語を見回したときに、むしろ変わった特徴を持っていると言えます。
英語やフランス語の方が、むしろマイノリティというかね、変わった特徴もたくさんあります。
SAE、標準平均的ヨーロッパ語の特徴の一つとして、SVO語順というのがあります。
SVO、つまり主語、動詞、目的語という語順です。
I like dogs みたいなものですね。
このSVO、つまり動詞を挟んで前に主語が出てきて、後に目的語が出てくるというのがSAEの特徴で、
このSVOという語順自体も世界で最も多いわけではないです。
むしろSOV語順、日本語みたいに動詞が最後に来る語順の方が多いんですよね、数としてはね。
SVOも決して少なくはないですが、一番多いというわけでもありません。
このSAEのSVO語順、ちょっとややこしいですけど、SAEのSVO語順は単に語順がSVOだっていうだけではなくて、
かなり徹底してSVOを好むという、そういった特徴があります。
例えば、所有文。
私は何々を持っているみたいなのが、英語だったらhaveっていう他動詞を使いますよね。
I have money。
日本語だったら、私にはお金があるみたいに、ある意味所有者が場所扱いになって、
存在動詞を使ってお金があるみたいな言い方をしてるんですよね。
つまり、所有は他動詞文では表されていません。
I have moneyっていうのは、かなりちゃんとした他動詞文で、
所有者が主語、所有物が目的語として出ています。
所有表現だけではなくて、例えばわかるとか、理解するとかもそうかもしれませんけど、
日本語だったら、彼に英語がわかるみたいに、所有文と同じようににとがが出てくるような、
そういった公文を使うんですけど、英語だったらunderstandとかknowっていうのは、かなりデッキとした他動詞ですね。
こういうふうに、私にお金がある、彼に英語がわかるみたいな、
こういう2で主語を表すことを予格主語と言ったりします。
今言ったように日本語にはあって、ヨーロッパの言語にもないわけではないです。
しかしSAEにはこの予格主語っていうのがないんですね。
その代わり、SVOで全部済ませてしまっていると、そういった特徴があります。
なぜSAEでSVO語順が優勢になってしまったかというと、
名詞の格変化がかなり乏しくなっちゃったからなんですね。
格変化というのは、名詞がその文の中の役割に応じて形を変えるというもので、
日本語だったら、私がとか私をみたいにがとかをっていう助詞をつけるわけですけど、
格変化っていうのはそれより一歩進んだっていうか、名詞自体が形を変えるというものです。
英語だったら代名詞に一応あるかなと思うんですけど、
主格がiで、目的格とかいう言い方しますけど、目的格がmiになるみたいな、
そういったi-miみたいな変化がかつてはあらゆる名詞にあったんですね。
犬だろうが本だろうが何だろうが、普通名詞にもそういった格変化がありました。
フランス語とかイタリア語、スペイン語、そういったSAEの親の言語であるラテン語は、
まさにそういった格変化がきちんと整っていたというか、変化がしっかりあった言語でした。
そういったものがだんだんなくなってしまっているというのがSAEの特徴です。
言語の構造について
英語はないんですよね、そういうのがね。
道具っていうのは主語だろうが目的語だろうが間接目的語だろうが形が変わることはありません。
そうなると、名詞を見てもその名詞が主語なのか目的語なのかっていうのは判断できなくなっちゃうんですよね。
そこで活躍するのが語順で、主語が動詞の前、目的語が動詞の後、
動詞を挟む形でそのように固定してしまえば、どっちが主語で目的語かというのがはっきりわかります。
つまり、名詞の格変化がだんだん変化しなくなっていった結果、SVO語順を好むようになったということです。
SAEのまた別の特徴として、漢詩を使うというものもあります。
英語だったら不定漢詩があ、定漢詩だったらざというものですが、これも格変化がだんだんなくなっていったということと関係があるといえばあります。
英語の場合は当てはまらないですが、SAEの言語の中には漢詩によって
単数とか複数、つまり数を示したりとか、男性名詞、女性名詞、性を示したりとか、あるいは資格対格みたいな格を示したりとか、そういった機能が漢詩に集中しているということがあります。
こういった整数格と言われるような、文法カテゴリーと言われることもありますが、そういったものは全部名詞の変化形で示していたんですよね。
たださっきも言ったように、そういった変化形がSAEではなくなっちゃったので、それを名詞の前に出てくる漢詩でカバーしているというのがSAEの特徴です。
なかなか面白いですよね。
SAEの他の特徴としては、主語唯一な言語であるとか、そういった話もあるんですが、今回はここまでということにしようと思います。
それではまた次回のエピソードでお会いいたしましょう。番組フォローも忘れずよろしくお願い致します。
お相手はシガ15でした。
10:48

コメント

スクロール