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始まりました、志賀十五の壺。みなさんいかがお過ごしでしょうか。嵐を呼ぶ男です。
今回のテーマは、ズバリ多動性です。英語だとtransitivityと言われるもので、
多動詞らしさと言っていいんではないかと思いますね。
この番組でもね、よく自動詞と多動詞のどのこうのみたいな話を、日本語のみならずいろんな言語での例を挙げてね、
お話ししてるんですけど、そもそも多動詞と自動詞っていうのは、きっちり分けることができるのかっていうような議論があります。
そこで登場したのが、この多動性という考え方で、多動詞らしさということですね。
多動詞と自動詞っていうのは、連続対応なしていて、きっちり2つに分けられるようなものではないというような考え方です。
この多動性という考え方は、ホッパー&トンプソンの1980という論文が最もメジャーで、古典的な位置づけにあると思います。
その多動性に関する、より多動性が高い、多動詞らしいものの特徴として、
ホッパー&トンプソンは10個特徴を挙げております。
全て言うのもアレですが、分かりやすいのは参加者?参与者?
そのイベント自体の参与者が2人以上であるっていうのが、多動性が高い事態ということになります。
逆に参与者が1人だけだったら多動性は低いということで、
普通は自動詞と言われるものですね。これが一番分かりやすいと思います。
それから多動性には意思性というものも関わっていて、
意思的だと多動性が高くて、非意思的だと多動性が低いと言われています。
これはね日本語にまさに当てはまると言っていいと思いますね。
例えば、
花瓶を割るみたいに多動詞を使えば意思的にやったっていう感じがして、
花瓶が割れるっていう風にこの字動詞を使うとね、
意思的にやってないっていうようなことが含みされると思います。
この割る割れるみたいに、
多動詞の方が意思的で、字動詞の方が非意思的だみたいな話は関連エピソードがあるので、
ぜひそちらもあわせて聞いていただけたらと思います。
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この多動性と関連して、
角田多作という先生は、
二項述語階層というものを提案しております。
これは過去のエピソードで、
多分取り上げたことあると思うんですけどね、
ちょっと探すのめんどくさいんですけど、
書籍としては世界の言語と日本語というものがございまして、
そこで二項述語階層が意思を使って取り上げられております。
この書籍も過去のエピソードで何度も取り上げてると思うんですよね。
すごく面白いんですよ。
この二項述語階層というのは、
二項ということは、簡単に言えば参加者、参与者が2人2つ以上の述語っていうのが、
多動性の高いものから低いものに階層なしてるみたいな、
そういった仮説というかね、提案なんですね。
ここで二項述語と言って、二項動詞と言ってないのは、
動詞以外のものも2つ項を取れる。
主語っぽいものと目的語っぽいものが取れるということなんですね。
例えば好きとか嫌いとかね、こういったものは、
動詞ではありませんけど、主語っぽいものと目的語っぽいものが出てきます。
意味的に言うと、階層の高いものから直接影響、知覚、追求、知識、感情、関係、能力っていうふうに、
だんだん階層が下がっていくんですね。
一番多動性の高いものは、最初に言った直接影響、
さらに変化を伴うような直接影響です。
これは殺すっていう動詞が一番何て言うかな、
最も多動詞らしい多動詞なんですよね。
さっきのホッポー&トンプソンのところでもありましたけど、
意識的に動作を行って、参与者は2人ですし、目的語に何か変化をもたらすっていうのが、
意味的には最も多動詞らしい多動詞、多動性が高いということになります。
二項述語階層でも一番上にそういったものがあるんですね。
あとは壊すとか温めるとか、こういったものも目的語にあたるものに何か状態変化をもたらしますので、
多動性は高いということになります。
直接影響の次に多動性の高いと考えられるものは、近くと言われるもので、
見るとか聞くとか、こういったものは確かに主語っぽいものと目的語っぽいものが出てくるということなんですけど、
直接影響と違って、見たからと言って聞いたからと言って、何かその対象に状態の変化が起こるわけではないですよね。
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そういった意味で多動性は低いということになります。
さらに階層の下の方になると、感情とかね、
さっき言った好きとか嫌いとかそういったものですが、
こうなってくると、むしろ対象の方からこっちに働きかけているような感じもありますよね。
さらにこの感情みたいな二項述語階層でも、階層の下の方になると、
動詞じゃなくなってくるっていう特徴があるんですね。
ずっと言っているこの好きとか嫌いとかもそうですし、
逆に階層の高い直接影響とか、あるいは近くとか、こういったものは動詞が出てくる傾向にあります。
感情とかなると動詞以外の品種も出てくると。
さらに言うと格枠組というのも変わってきて、
どういうことかというと、これも多動性の高い方、殺すとか壊すとかそういったものだと、
がで主語を表して、をで目的語を表すみたいな感じなんですけど、
感情とかになると目的語の方もがで出てきたりします。
私がピーマンが嫌いなことみたいにね。
なので意味的に多動性が高いものになると、
動詞が出てきて、がとを使ってっていうような、よりプロトタイプなっていうかな。
意味と連動して形の面でもそういう多動詞らしい特徴が出てきて、
多動性が下がると、ちょっと動詞っぽくないような特徴も出てくるということです。
この二項述語階層は日本語だけではなくて、世界のあらゆる言語に当てはまるということが、
角田先生の提案ということになります。
例えば、能格型の言語だと、多動性の高い直接影響みたいな動詞だと、
能格絶対格で表れて、多動性が低くなるとその格枠組みが崩れるっていうようなことがあるそうです。
能格型の言語って何なのかっていうのは、関連エピソードを聞いていただけたらと思います。
あとは階層の高い述語の方が受動態とか作りやすくって、
階層が低くなると受動態とか、そういったボイスの適用ができないというようなことも言われております。
実際、階層が低くなると動詞ですらなくなったりするし、
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あるいは階層の低い関係みたいなものだと、「ある」とか、「にる」みたいなものがここにあるんですけど、
「にられている」とかちょっと厳しいですからね。
彼は父親に似ているを受動態にするっていうのはやっぱ厳しいですよね、おそらくね。
そういうふうに、この二項述語階層という意味的な階層が、
形態の面でもそうだし、受動態みたいなその統語の面でもそうだし、
いろんな言語の現象と連動しているというかな、そういったことが二項述語階層で示されています。
というわけで今回は多動性と二項述語階層についてのお話でした。
ぜひね、世界の言語と日本語、みなさん読んでみてください。
というわけで今回はここまでということで、また次回のエピソードでお会いいたしましょう。
チャンネル登録と番組フォローも忘れずよろしくお願いします。
お相手はシガー十五でした。
またねー。