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―想像してみてください。静かな土曜日の昼下がり、東京の練馬の住宅街を歩いているとですね、見慣れたお米屋さんの店先に、突然煙を上げる巨大で、年季の入った壺がずらりと並んでるんですよ。
―ちょっと異様な光景ですよね。
―そうなんです。なんか、1980年代のキョンシー映画、霊言同士のセットに迷い込んだみたいな感じで。
―あー、わかります。その例え面白いですね。
―ですよね。実はここ、70年続く相原屋米店という地域密着型のお米屋さんなんですが。
―えー、普段は真面目なお米屋さんですよね。
―そうなんです。でも土曜日だけ、〇いもという熱狂的なファンを生む、激レアな壺焼き芋屋に変身するんですよ。
今日はリスナーの皆さんと一緒に、この不思議なお店の正体を深盛りしていきます。
―これ、平日は街のお米屋さんで、週末になると昭和レトロな壺焼き職人に姿を変えるっていう、このギャップがまず魅力的ですよね。
―いやー、まさにスーパーヒーノーの裏の顔みたいで。
―本当にそうですね。でも単なるレトロ趣味とか、最近流行りのSNS映えを狙ったパフォーマンスではないんですよ。
―あ、やっぱりそうなんですか。私たちはちょっと疑ってて。だって、現代には温度管理できる便利な最新オーブンがいくらでもあるじゃないですか。
―えー、いくらでもありますね。
―なんでわざわざ、あんな重くて扱いづらい巨大な壺とレンタンを使うのかなって。
―そこが本当に面白いところなんですが、実はあの壺、科学的に見ても究極の焼き芋メーカーなんですよ。
―え、究極のメーカー?壺がですか?
―はい。ポイントは、塩石栓と水分を閉じ込めなんです。レンタンを壺の中で燃やすとですね、壺の壁面全体から強烈な塩石栓が放射されるんです。
―なるほど。オーブンとは違うわけですね。
―そうなんです。熱風で外から直接焼いて水分を奪うのではなくて、塩石栓がさつまいもの中心までじわじわと浸透するんですよ。
―へー。じゃあ、外側がパサパサにならないってことですか?
―その通りです。しかも壺の中は密閉に近い状態になるので、さつまいも自身の水分が外に逃げないんです。
―あー、自分自身の蒸気でしっとり焼き上がるんだ。すごいですね。
―そうなんですよ。特にこちらで使っているホウマサリという品種なんかはですね、
―はいはい、ホウマサリ。
―この手法で約2時間かけてじっくり加熱することで、澱粉が膜が糖へと変化する酵素の働きが最大限に引き出されるんです。
―2時間もかけるんですか?
―ええ。だからこそ、あの蜜があふれるような極上の甘さとねっとりとした食感が生まれるんですよ。
―いやー、最新家電じゃなくて、物理学と科学の理にかなった昔ながらの装置だったんですね。
―まさにその通りです。
―例えるなら、最高級のステーキを焼くときに、あえて分厚い鉄板と炭火を使うようなものですよね。
―その例え、すごくわかりやすいですね。これをより大きな視点で捉えると、彼らはただ古り道具を使っているわけではないんです。
―と、言いますと?
―このつぼ焼き歴は30年になるそうですが、ルーツは昭和初期から続く、川越えのさつまいも文化にあるんですよ。
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―あー、川越えの、なるほど。
―つまり、今では絶滅危惧種ともいえるこの調理法を、食の文化遺産として保存し続けているんです。しかも驚くことに。
―はい。
―お披露頃にはお店の奥で、ウスとキネを使って人力で餅つきまでしているんですよ。
―うわー、それはすごい。圧倒的な手間ですね。妥協が一切ない。
―ええ。
―でもですね、私が今回一番ハッとさせられたのは、実は焼き芋そのものじゃなくて、
―おっ、なんでしょう?
―栗おこわなんですよ。
―あー、なるほど。お米屋さんのならではの隠れた名品ですね。
―そうなんです。焼き芋が焼き上がるのを待つ前に偶然買ってみたんですけど、スーパーのものとは全く次元が違って、
―えー、全然違いますよね。
―巨大な栗がゴロゴロ入っていて、おこわ自体の甘みが信じられないほど深いんですよ。
―はいはい。
―これ例えるなら、ライブでメイン役との前に登場したとんでもない実力派の新人バンドみたいな衝撃で。
―ははー、面白い例えですね。
―コーヒーの自家保育船の専門店に入ったら、そこで出されたホットチョコレートが街で一番美味しかった、みたいな。
豆の配線を完璧に理解しているからこその天才的な扱いというか。
―いやー、その例え非常に的確です。そのおこわの美味しさこそが、70年続くお米屋さんとしての揺るぎない土台を証明しているんですよ。
―やはりお米のプロフェッショナルだからですね。
―ええ。長年培ってきたお米のメキキとか、水分の含み具合、炊きかけ煮えの完璧な理解ですよね。それがこのクリオコアに存民に生かされています。
―なるほどな。夏にはかき氷も提供しているんですよね。
―そうなんです。でも、どの商品を出しても一切の手抜きがないのは、その土台となる技術と食への成熟さがあるからなんですよ。
―いやー、単に週末だけ壺を出している面白いお店ってわけじゃなかったんですね。
70年のお米に対する深い知識と妥協のない手仕事、これが魔法の空間の正体だったわけだ。
―そうですね。70年の歴史と川越発祥の伝統技術、そして予想外の絶品クリオコア、本当に魅力が詰まっています。
―本当に。土曜日の練馬の秘密が今日ですべてつながりました。
―そして、リスナーの皆さん、ここで一つ重要な疑問が浮かびますよね。
―何でしょうか?
―あなたが毎日通勤や買い物で通る道や近所にも、一見普通のお店に見えて、
実は驚くべき歴史や、週末だけの秘密の顔を持つ場所が隠れているのではないでしょうか。
―ああ、確かに。そう考えると、毎日の散歩止めが宝の地図みたいに見えてきますね。
―そうなんですよ。
―皆さんも、今週末はイヤホンを外して、少しだけ視点を変えて街を探索してみてはいかがでしょうか。
―思いがけない絶品と、その裏に隠された歴史に出会えるかもしれませんよ。
―それでは皆さん、次回の深掘りでお会いしましょう。