講談協会の若手初席
一月三日、池之端しのぶ亭から移動し、暫く時間を潰してから神田連雀亭で、講談協会の若手初席というのがありまして、こちらに行って参りました。
講談協会の要請というか、講談会ですので、まず何が違うかというと出囃子がない。でも講談聴きに来たなっていう感じはしますね。
開口一番、神田山慶さんという山に慶應の慶ですね。
台本を尺台の上に置くオールドスタイルですね。『三方ヶ原軍記』「金覆輪の」というやつですよ。
いかにも講談に取り組み始めた前座さんという感じのですね。頑張ってるなという感じですね。僕は平場修羅場好きなので楽しく聴きました。頑張っていただきたい。
次に出てきたのが神田伊織さん。笹野権三郎が出てくる『笹野名槍伝 道場破り』講談のあの楽しみの一つはね講談ネタが多いんでも知らない奴がねしょっちゅう出てくるんですよね。
この笹野権三郎はねいろんな話ありますけども、その中でねこの道場破りって全然知らない話でまたすごい面白いんですよね。またそれを伊織さんがうまい具合にやるんだ迫力あるし、洒落もあるし。
あとねあのまくらでねちょっとあの謎かけやってましたけどね謎かけもお上手。いや伊織さんはいいですね。いやいい高座だったなぁと思ったら伊織さん最後にしくじりました。神田連雀亭高座。非常によくできた。あの面明かりもちゃんとあるね。
いい高座なんですが残念ながらビルの構造上、天井が低い。思いっきり頭ぶつけてましたね。大丈夫だったんでしょう。続いて神田菫花さん。違う、菫花先生だ。失礼しました神田菫花先生。
これもまた知らない話なんだよなぁ。『渋川伴五郎』というですね。この人は柔術ですね。柔道になるものですね。使い手らしいんですけども。広々あって魚屋をやってた時の話っていうのがね。『魚屋伴五郎』という。これがねまたね面白い話なんですよね。
伴五郎さんいろいろあって勘当くらっちゃうんですけど勘当くらって魚屋をやって。その魚屋が酔っ払った乱暴な武士をね懲らしめちゃうっていう話なんですけど。面白い噺でまた菫花さんが面白くやるんですよね。こういうのはやっぱり講談を聞く喜びだなっていう風に思いますね。
基本この明るい噺なのでお正月向きでもあったりなんかしますよね。これ長い長い噺らしくてですねちょっと続きも気になったりする。この辺りも講談ですね。
仲入りがあった後、田辺凌天さん。これねあの凌天さんはね前に聴きたいなと思って文吾さんとの二人会に行ったら残念ながら体調不良でいらっしゃらなかったんですよね。なのでまあ今日楽しみにしてたんですけど、いい感じでございますね。柔らかい表情柔らかい声で締めるとこピシッと締める感じですね。
またねあのお正月に合わせてという話なんですけど非常に今回はユーモラスな話でね。本当に講談っていうのはもう歴史の人物が主人公なんでもいろんなキャラ持ってきますね。なんと一休さんですよ。
『一休禅師 婿入り』という噺で。まあこれもねまあシンプルな噺なんですけど、なかなかにぶっ飛んでいて。商売がうまく回ってない。もうダメだっていうところに3歳の孫娘がいて、その3歳の孫娘のところに一休禅師が婿入りをするっていう噺で。
まあ婿入りって言ってもね最後離縁しちゃうんですけど。要はねあの婿入りしたことによってそのお店の業績急回復で借金を全部払っちゃうというそういう噺なんですけど。
まあ実に柔らかくてね。この凌天さんの声、表情にも合っている話でまあ確かにおめでたい話でもありますのでお正月向きだなというふうに思いました。凌天さんいいですね。
でトリが一龍斎貞寿先生ですよ。私が演芸界で一番可愛い人だと思っている一龍斎貞寿先生。可愛いところでピシッと決める。ぐっとドスが入る。非常に素晴らしい講談師で僕は大好きなんですが。
伊織さんと菫花さんの講談
予想はしていたんですが、まくらは全部箱根駅伝ですね。箱根駅伝全部見たそうです。またこの箱根駅伝ね、僕もちらちらは見てますしニュースなんかでね。
だいたいどういう感じだったかっていうのも知ってるわけですけど、まあその貞寿先生のこの生き生きとした語りでね。何が今回面白かったかっていうところを語るとね本当楽しいんですよね。正直僕は駅伝そんな好きでもないわけでございますが、本当貞寿先生に語らせるとね。
相撲もそうだし、貞寿先生が貞寿先生の好きなものを語るときの貞寿先生のね、その生き生きとした感じとその楽しさってのは本当に格別ですね。そこから全然関係のない話に入っていくんですが、これが『亀甲縞』というね。僕は初めて聴きましたけど、あと浪曲でもよくかかるネタなんだそうでございます。
商売ものですね、ビジネスものです。しかもですね、マーケティングリサーチ、マーケティングリサーチと言っちゃってましたけどね。マーケティングリサーチであり、広告であり、タイアップであり、プロダクトプレスメントでもあるというですね。
非常に現代に通ずるところの多い噺で、これはね、なかなか面白かったですね。やっぱりその噺の面白さはもう十分あるんですけど、この貞寿先生のその料理の仕方ですよね。
フッと現代に戻してまたスッと帰っていく。往年の立川談志みたいですよ。今この手ができるのは柳家喬太郎師匠だと思うんですけど、貞寿先生の話の中と話の外である現代に行ったり来たりをコントロールできる力っていうのはやっぱり僕はすごいなと思うんですよね。
これがね、一回現代に戻すとそこそこは笑うところなんですよ。ガッツリ笑ったところで、例えばその武士のね、武士同士の会議っていうかね、みんな下を向くっていうところからいきなり講談協会の寄り合いの話になったとかね。
そこで笑いを取ってまたスッと戻っていくと。この辺はね、非常にダイナミックで面白くて、講談にそれほど慣れてない人でもその集中力が切れそうなところをパッとこうね、一回息を入れさせてまたスッと話に戻っていくというあたりがもう本当このあたりは絶妙でございますね。
僕はもう貞寿先生好きで、そこで終わってもいいんですけども、やっぱりその技をね感じますね。力と技を感じるなというような『亀甲縞』というお話。とっても良かったです。
まあ初席ね、講談の初席を若手を集めて神田連雀亭亭でやるっていうのが非常にいいですよね。ただ連絡亭の周りのお店もみんな閉まっているので、三ヶ日ですと、まっくらですね、あたりが。神田連雀亭だけがポツンとあるというですね。
そんな感じでございましたけども、これはね穴場だなというふうに正直思いました。予約をね入れた方がいいですけども、都合次第で来年もまた来てみたいなと思える講談の初席でございました。
講談の良い会ってね、わりとその平日の昼間とかが多くてね、なかなか行けないので三ヶ日で講談を、これだけ良い講談を楽しむことができたというのは、なかなかに幸せなことだったなというふうに思っております。シェアする落語の四家でした。ではまた。