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2021-12-30 03:37

小説「白鯨」で1番好きなシーン

小説「白鯨」で、僕が1番好きなシーンについてお話しています。 

鯨脳油を揉んでいる内に、自分と鯨脳油の境界、 自己と他者の境界すらも曖昧になっていく様子は、 さながら旧作エヴァンゲリオン映画版のようです。 

#小説 #クジラ

※この回は、2021年2月19日にStand.fmで収録した収録の再アップロード版です。

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皆さん、こんにちは。
自然を愛するウェブエンジニア、せみやまです。
今日は、僕の大好きな小説、
メルヴィルの白鯨についてお話したいと思います。
この白鯨という作品自体は、
もののけ姫にも通じるところのある神殺しについて語った作品だと思うんですが、
作品全体を語るのは結構大変なので、
今日は、僕がこの白鯨で1番好きなシーンについてお話したいと思います。
高段車文芸文庫版の白鯨の94章、
手を握るという章が、僕の1番好きなシーンが入っているんですけれども、
主人公たちは真っ黒鯨の漁をしていて、
取った真っ黒鯨の頭の脂を、
固体化した頭の脂を揉みしだいて、
液状に戻すという作業をしている章なんですが、
鯨の頭の脂、芸農油と書いてあるんですけれども、
芸農油の手触りがすごくよくて、
揉みしだいているうちに、
自分が芸農油を揉みしだいているのか、
俺が芸農油なのかわからなくなってくる、
繊維たちの姿を揉みしだいて、
その繊維たちの姿が描かれています。
一部引用しますと、握りしめ揉みしだく、握りしめ揉みしだく、
午前中ずっとそれを繰り返していた。
握りしめ揉みしだいて、始まりに俺は、自分自身がそこに溶け出し、
溶け込んでいくのではないかと感じ始める。
消去をしない変な気持ちになってくる。
俺の手は隣で作業している仲間の手を握り、
それを揉みしだいているではないかと。
鯨を揉みしだいていると思ったら、
いつの間にか一緒に作業している仲間の手を握っていたという。
そして、おしまいには、
瞳をきらめかせて、お互いの目をじっと見つめ合うという。
男臭い捕鯨戦の話ですから、
むざ苦しい男同士が、
ドロドロの鯨の湯にまみれながら、
キラキラとした瞳で見つめ合っているという、そういうシーンですね。
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このまま永久に芸の湯を揉みしだき続けていたいという、
名ゼリフも入っています。
この高段車文芸文庫版の白芸、名訳と言われていまして、
白芸に触れる、これから読んでみたいという方は、
この高段車文芸文庫版から入ることをぜひお勧めしたいと思います。
今日は小説、白芸の僕が一番好きなシーンについて、
お話しさせていただきました。
ご視聴ありがとうございました。
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