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お月さまとぞう
小川未明
しょうちゃんとよしこさんが、御門のところへたらいを出して、
水を入れると、まんまるな月の顔がうつって、
にこにこと笑いました。
さあ、私をよく見てください、と月が言いました。
大きなお月さまねえ、とよしこさんが喜びました。
あの黒いのがうさぎかしらん、としょうちゃんが頭をかしげました。
本当のうさぎ、とよしこさんが聞きました。
あ、望遠鏡があるとよくわかるのだよ。
しょうちゃんは仰向いて、お月さまを眺めました。
私、首が痛くなるから、おたらいのを見ましょうよ。
この時、あちらがガヤガヤしました。
ごらん、象が来た、としょうちゃんがびっくりしました。
大きな象が往来を歩いてきました。
サーカスがどこかへ行くのです。
チカチカ光る青い着物を着たお姉さんと、
黒いズボンをはいた男がムチを持ってついてきます。
怖いわ、とよしこさんはお家へ入ろうとしました。
象はお利口だから怖くないよ、としょうちゃんは止めました。
五門の前に来ると、象はこちらを向いて、
長い鼻でたらいの水をスーッと飲み干しました。
あら、お月さまを飲んでしまったわ、とよしこさんが言いました。
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置いたおしてはいけません、と
象はお姉さんのムチでぴっしりと叩かれました。
