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2024-09-29 04:20

手紙 三/宮沢賢治

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作品名:手紙 三
著者:宮沢賢治

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#青空文庫 #朗読 #児童文学
BGMタイトル: Maisie Lee 作者: Blue Dot Sessions 楽曲リンク: https://freemusicarchive.org/music/Blue_Dot_Sessions/Nursury/Maisie_Lee/ ライセンス: CC BY-SA 4.0

サマリー

宮沢賢治は顕微鏡を通して、肉眼では見えない微細な世界や分子の存在について考察しています。

顕微鏡と微細世界
手紙 三
宮沢賢治
普通、中学校などに備えつけてある顕微鏡は、
拡大度が600倍、ないし800倍ぐらいまでですから、
蝶の羽の輪辺や、バレーショの澱粉流などは実にはっきり見えますが、
割合に小さな細菌などはよくわかりません。
1000倍ぐらいになりますと、下のレンズの直径が非常に小さくなり、
したがって視野に光があまり入らなくなりますので、
下のレンズを油に浸して、なるべく多くの光を入れて、
ものが見えるようにします。
2000倍という顕微鏡は、数も少なく、
また、これを調節することができる人も、幾人もないそうです。
今、一番度の高いものは、2250倍、あるいは2400倍と言います。
その見うるはずの大きさは、0.00014ミリですが、
これは人によって見えたり、見えなかったりするのです。
一方、私どもの目に感ずる光の波長は、
0.00076ミリ、赤色。
ないし、0.0004ミリ、スミレ色ですから、
これより小さなものの形が、完全に私どもに見えるはずは決してないのです。
また、普通の顕微鏡で見えないほど小さなものでも、ある装置を加えれば、
約0.00005ミリくらいまでのものならば、
ぼんやり光る点になって視野に現れ、その存在だけを示します。
これを超絶顕微鏡と言います。
ところが、あらゆるものの分割の終局たる分子の大きさは、
水素が0.000016ミリ、
砂糖の一種が0.00000055ミリというように計算されていますから、
私どもは分子の形や構造はもちろん、その存在さえも見えないのです。
しかるに、このようなあるいはさらに小さなものをも明らかに見て、
少しも誤らない人は昔から決して少なくありません。
この人たちは自分の心を治めたのです。
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