作品名:セロ弾きのゴーシュ
著者:宮沢賢治
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card470.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
BGMタイトル: そりのこし
作者: もっぴーさうんど
作者ページ: https://dova-s.jp/_mobile/_contents/author/profile060.html
DOVA - SYNDROME楽曲リンク: https://dova-s.jp/_mobile/bgm/play17520.html
7・15・23・31日更新予定
#青空文庫 #朗読 #podcast
著者:宮沢賢治
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card470.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
BGMタイトル: そりのこし
作者: もっぴーさうんど
作者ページ: https://dova-s.jp/_mobile/_contents/author/profile060.html
DOVA - SYNDROME楽曲リンク: https://dova-s.jp/_mobile/bgm/play17520.html
7・15・23・31日更新予定
#青空文庫 #朗読 #podcast
サマリー
ゴーシュは毎晩セロを弾いていると、カッコウの鳥がやってきて音楽を教えてほしいと頼みます。二人は音楽の違いについて議論を交わし、ゴーシュは次第にカッコウの歌に感銘を受けていきます。
ゴーシュの音楽練習
次の晩もゴーシュがまた黒いセロの包みを担いで帰ってきました。
そして水をごくごく飲むと、そっくり夕べの通り、ぐんぐんセロを弾き始めました。
12時は間もなく過ぎ、1時も過ぎ、2時も過ぎてもゴーシュはまだやめませんでした。
それからもう何時だかもわからず、弾いているかもわからずゴーゴーやっていますと、
誰か屋根裏をコッコッと叩くものがあります。
「猫、まだ来れないのか?」 ゴーシュが叫びますと、いきなり天井の穴からポロンと音がして、
一匹の灰色の鳥が降りてきました。床へ止まったのを見ると、それはカッコウでした。
鳥まで来るなんて、なんのようだ。
ゴーシュが言いました。 音楽を教わりたいのです。
カッコウ鳥は済まして言いました。 ゴーシュは笑って、
音楽だと?お前の歌はカッコウ、カッコウというだけじゃないか。
するとカッコウが大変真面目に、
それなんです。けれども難しいですからね。 と言いました。
難しいもんか。お前たちのはたくさん泣くのがひどいだけで、泣きようはなんでもないじゃないか。
ところがそれがひどいんです。 例えば、カッコウとこう泣くのと、カッコウとこう泣くのとでは、聞いていてもよほど違うでしょう?
違わないね。
ではあなたにはわからないんです。 私らの仲間なら、カッコウと一万言えば一万みんな違うんです。
勝手だよ。 そんなにわかってるなら、何も俺のところへ来なくてもいいではないか。
ところが私はドレミファを正確にやりたいんです。 ドレミファもクソもあるか。
ええ、外国へ行く前にぜひ一度いるんです。 外国もクソもあるか。
先生、どうかドレミファを教えてください。 私はついて歌いますから。
うるさいなあ。そら、三弁だけ弾いてやるから。 すんだらさっさと帰るんだぞ。
ゴーシュはセロを取り上げて、ボロンボロンと糸を合わせて、 ドレミファソラシドと弾きました。
するとカッコウは慌てて羽をバタバタしました。 違います、違います。
そんなんでないんです。 うるさいなあ。では、お前やってごらん。
こうですよ。 カッコウは体を前に曲げてしばらく構えてから
カッコウと一つ泣きました。
なんだい、それがドレミファかい? お前たちにはそれではドレミファも第六公教学も同じなんだな。
それは違います。 どう違うんだ。
難しいのはこれをたくさん続けたのがあるんです。 つまりこうだろう。
セロ弾きはまたセロを取って カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウと続けて弾きました。
するとカッコウは大変喜んで途中から カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウとついて叫びました。
それももう一生懸命体を曲げていつまでも叫ぶのです。 ゴーシュはとうとう手が痛くなって
こら、いい加減にしないか と言いながらやめました。
するとカッコウは残念そうに目をつり上げて まだしばらく泣いていましたがやっと
カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウ、 カッコウ、カッコウ、カッコウ、カッコウと言ってやめました。
カッコウの挑戦
ゴーシュがすっかり怒ってしまって こら鳥、もう用が済んだら帰れ
と言いました。 どうかもう一遍弾いてください。
あなたのは良いようだけれども少し違うんです。
何だと、俺が貴様に教わっているんではないんだぞ。 帰らんか。
どうかたったもう一遍お願いです、どうか。 カッコウは頭を何遍もコンコン下げました。
ではこれっきりだよ。 ゴーシュは弓を構えました。
カッコウはクッと一つ息をして ではなるべく長くお願いいたします。
と言ってまた一つお辞儀をしました。 嫌になっちまうなぁ。
ゴーシュは苦笑いしながら弾き始めました。 するとカッコウはまたまるで本気になって
カッコウ、カッコウ、カッコウ
と体を曲げて実に一生懸命叫びました。 ゴーシュは初めはむしゃくしゃしていましたが
いつまでも続けて弾いているうちに ふっとなんだかこれは鳥の方が本当のドレミファにハマっているかなという気がしてきました。
どうも弾けば弾くほどカッコウの方がいいような気がするのでした。 ええ、こんなバカなことしていたら俺は鳥になってしまうんじゃないか。
とゴーシュはいきなりピタリとセロをやめました。 するとカッコウはドシンと頭を叩かれたようにフラフラっとして
それからまたさっきのように カッコウ、カッコウ、カッコウ
カッ、カッ、カッ、カッ、カッ と言ってやめました。
それから恨めしそうにゴーシュを見て なぜやめたんですか。
僕らならどんな意気地ない奴でも喉から血が出るまでは叫ぶんですよ と言いました。
何を生意気な こんなバカな真似をいつまでしていられるか。
もう出て行け。見ろ。夜が明けるんじゃないか。
ゴーシュは窓を指差しました。東の空がぼーっと銀色になって そこを真っ黒な雲が北の方へどんどん走っています。
ではお日様の出るまでどうぞ。もう一ぺん。 ちょっとですから。
カッコウはまた頭を下げました。
黙れ。いい気になって、このバカ鳥め。
出て行かんと虫って朝飯に食ってしまうぞ。 ゴーシュはドンと床を踏みました。
するとカッコウはにわかにびっくりしたように いきなり窓をめがけて飛び立ちました。
そしてガラスに激しく頭をぶっつけてバタッと下へ落ちました。
なんだ、ガラスへ。バカだなぁ。
ゴーシュは慌てて立って窓を開けようとしましたが 元来この窓はそんなにいつでもスルスル開く窓ではありませんでした。
ゴーシュが窓の枠をしきりにガタガタしているうちに またカッコウがバッとぶっつかって下へ落ちました。
見るとくちばしの付け根から少し血が出ています。 今開けてやるから待っていろったら。
ゴーシュがやっと二寸ばかり窓を開けた時 カッコウは起き上がって
何が何でも今度こそというようにじっと窓の向こうの東の空を見つめて 荒ん限りの力を込めた風でパッと飛び立ちました。
もちろん今度は前よりひどくガラスに突き当たって カッコウは下へ落ちたまましばらく身動きもしませんでした。
捕まえてドアから飛ばしてやろうとゴーシュが手を出しましたら いきなりカッコウは目を開いて飛びのきました。
そしてまたガラスへ飛びつきそうにするのです。 ゴーシュは思わず足を上げて窓をバッと蹴りました。
ガラスは2、3枚ものすごい落として砕け 窓は枠のまま外へ落ちました。
そのガランとなった窓の跡をカッコウが矢のように外へ飛び出しました。 そしてもうどこまでもどこまでもまっすぐに飛んでいって
とうとう見えなくなってしまいました。 ゴーシュはしばらく呆れたように外を見ていましたが
そのまま倒れると部屋の隅へ転がって 眠ってしまいました。
12:10
コメント
スクロール