作品名:セロ弾きのゴーシュ
著者:宮沢賢治
図書カード:https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/card470.html
青空文庫:https://www.aozora.gr.jp/index.html
ブンゴウサーチ for Kids:https://bungo-search.com/juvenile
BGMタイトル: そりのこし
作者: もっぴーさうんど
作者ページ: https://dova-s.jp/_mobile/_contents/author/profile060.html
DOVA - SYNDROME楽曲リンク: https://dova-s.jp/_mobile/bgm/play17520.html
7・15・23・31日更新予定
#青空文庫 #朗読 #podcast
著者:宮沢賢治
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サマリー
セロ弾きのゴーシュは、野ネズミに出会い、彼らの病気を治すことになります。ゴーシュは音楽が動物たちの病気を癒す力を持っていることを理解し、彼らとの交流を通じて絆を深めます。
野ネズミとの出会い
次の晩も、ゴーシュは夜通しセロを弾いて、明け方近く、思わず疲れて楽譜を持ったままうとうとしていますと、また誰か、戸をコツコツと叩くものがあります。
それもまるで聞こえるか聞こえないかのくらいでしたが、毎晩のことなので、ゴーシュはすぐ聞きつけて、
お入り、と言いました。 すると、戸の隙間から入ってきたのは一匹の野ネズミでした。
そして大変小さな子供を連れて、ちょろちょろとゴーシュの前へ歩いてきました。
そのまた野ネズミの子供と来たら、まるで消しゴムのくらいしかないので、ゴーシュは思わず笑いました。
すると野ネズミは、何を笑われたろう、というふうにキョロキョロしながらゴーシュの前に来て、
青い栗の実を一粒前に置いて、ちゃんとお辞儀をして言いました。
先生、この子が安倍が悪くて死にそうでございますが、先生、お慈悲に治してやって下さいまし。
俺が医者などやれるもんか。
ゴーシュは少しむっとして言いました。 すると野ネズミのお母さんは舌を向いてしばらく黙っていましたが、
また思い切ったように言いました。
先生、それは嘘でございます。 先生は毎日あんなに上手にみんなの病気を治しておいてになるではありませんか。
何のことだかわからんねえ。 だって先生、先生のおかげでウサギさんのおばあさんも治りましたし、
たぬきさんのお父さんも治りましたし、 あんな意地悪のミミズクまで治していただいたのに、
この子ばかりお助けをいただけないとは、あんまり情けないことでございます。
おいおい、それは何かの間違いだよ。 俺はミミズクの病気何度治してやったことはないからな。
もっとも、たぬきの子は言うべきで、 虐待の真似をしていったがね。
ははん。 ゴーシュは呆れて、その子ネズミを見下ろして笑いました。
すると野ネズミのお母さんは泣き出してしまいました。
ああ、この子はどうせ病気になるなら、もっと早くなればよかった。
さっきまであれぐらいゴーゴーと鳴らしておいでになったのに、 病気になると一緒にピタッと音が止まって、
もうあとはいくらお願いしても鳴らしてくださらないなんて、 なんて不幸せな子供だろう。
ゴーシュはびっくりして叫びました。 何だと?
僕がセロを引けばミミズクやウサギの病気が治ると? どういうわけだ、それは?
野ネズミは目を片手でこすりこすり言いました。
はい、ここらの者は病気になると、 みんな先生のお家の床下に入って治すのでございます。
すると治るのか?
はい、体中とても血の周りが良くなって、 大変いい気持ちですぐ治る方もあれば、
家へ帰ってから治る方もあります。
ああ、そうか。俺のセロの音がゴーゴー響くと、 それがアンマの代わりになってお前たちの病気が治るというのか。
よし、わかったよ。やってやろう。
ゴーシュはちょっとギューギューと糸を合わせて、 それからいきなり野ネズミの子供をつまんで、
セロの穴から中へ入れてしまいました。
私も一緒について行きます。どこの病院でもそうですから。
おっかさんの野ネズミはキチガイのようになって、 セロに飛びつきました。
お前さんも入るかね。
セロ引きはおっかさんの野ネズミを、 セロの穴からくぐしてやろうとしましたが、
音楽の力
顔が半分しか入りませんでした。
野ネズミはバタバタしながら、中の子供に叫びました。
お前、そこはいいかい?
落ちるときいつも教えるように、 足をそろえてうまく落ちたかい?
いい、うまく落ちた。
子供のネズミはまるで蚊のような小さな声で、 セロの底で返事しました。
大丈夫さ、だから鳴き声出すなと言うんだ。
ゴーシュはおっかさんのネズミを下に下ろして、 それから弓を取って、
なんとかラプソディとかいうものを ゴーゴーガーガー弾きました。
するとおっかさんのネズミは、いかにも心配そうに その音の具合を聞いていましたが、
とうとうこらえきれなくなったふうで、
もうたくさんです。どうか出してやってください、 と言いました。
なんだ、これでいいのか?
ゴーシュはセロを曲げて、穴のところに手を当てて待っていましたら、
まもなく子供のネズミが出てきました。
ゴーシュは黙ってそれを下ろしてやりました。
見るとすっかり目をつぶって、ブルブルブルブル震えていました。
どうだったの?いいかい?気分は?
子供のネズミは少しも返事もしないで、 まだしばらく目をつぶったまま、
ブルブルブルブル震えていましたが、 にわかに起き上がって走り出した。
ああ、よくなったんだ。ありがとうございます。 ありがとうございます。
おっかさんのネズミも一緒に走っていましたが、 まもなくゴーシュの前に来てしきりにおじぎをしながら、
ありがとうございます。ありがとうございます。 と、とばかり言いました。
ゴーシュは何がなかわいそうになって、 おい、お前たちはパンは食べるのか?と聞きました。
するとのネズミはびっくりしたようにキョロキョロあたりを見回してから、
いえ、もうおパンというものは小麦の粉をこねたり蒸したりしてこしらえたもので、
ふくふく膨らんでいておいしいものなそうでございますが、 そうでなくても私どもはお家の戸棚へなど参ったこともございませんし、
ましてこれくらいお世話になりながら、どうしてそれを運びに何度参りましょう? と言いました。
いや、そのことではないんだ。 ただ食べるのかと聞いたんだ。
では食べるんだな。 ちょっと待てよ、その腹の悪い子供へやるからな。
ゴーシュはセロを床へ置いて、戸棚からパンをひとつまみむしって、 のネズミの前へ置きました。
のネズミはもうまるでバカのようになって、 泣いたり笑ったりおじぎをしたりしてから、
大事そうにそれをくわえて、子供を先に立てて外へ出ていきました。
あー、ネズミと話しするのもなかなか疲れるぞ。
ゴーシュは寝床へどっかり倒れて、 すぐぐーぐー眠ってしまいました。
09:46
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