00:05
デンデンムシノ カナシミ
新美 南吉 一匹のデンデンムシがありました。
ある日、そのデンデンムシは大変なことに気がつきました。
私は今までうっかりしていたけれど、
私の背中の殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっているではないか。
この悲しみはどうしたら良いでしょう。
デンデンムシは、お友達のデンデンムシのところにやっていきました。
私はもう生きていられません。 と、そのデンデンムシはお友達に言いました。
何ですか? と、お友達のデンデンムシは聞きました。
私は何という不幸せなものでしょう。
私の背中の殻の中には、悲しみがいっぱい詰まっているのです。
と、初めのデンデンムシが話しました。
すると、お友達のデンデンムシは言いました。
あなたばかりではありません。
私の背中にも悲しみはいっぱいです。
それじゃ仕方ないと思って、初めのデンデンムシは別のお友達のところへ行きました。
すると、そのお友達も言いました。
あなたばかりじゃありません。
私の背中にも悲しみはいっぱいです。
そこで、初めのデンデンムシはまた別のお友達のところへ行きました。
こうしてお友達を順々に訪ねていきましたが、
03:02
どのお友達も同じことを言うのでありました。
とうとう初めのデンデンムシは気がつきました。
悲しみは誰でも持っているのだ。
私ばかりではないのだ。
私は私の悲しみをこらえていかなきゃならない。
そして、このデンデンムシはもう嘆くのをやめたのであります。