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カタツムリノウタ 新美南吉
ある朝、王様は石の壁に一匹のカタツムリを見つけました。
カタツムリが角を振ってるのを見ていると、
王様は子供の自分、なんだかカタツムリの歌をよく歌ったことを思い出しました。
デンデン、ムシムシ、ツノダセヤ、だったかなぁ
と、いろいろ考えたが、ちっともその歌は思い出せませんでした。
お前たち、デンデンムシの歌、知らないか
と、おそばの者に聞いても、知りません。
と言って首をかしげています。
王様は、デンデンムシムシ、と口の中で言いながら、庭をぐるりと回ってきました。
それでも思い出せないので、とうとう怒って、カタツムリを潰してしまおうとした時、
ふっと王様の心に、デンデンムシムシ、ツノフレオ、夜明けにヌストがやってくる、という歌が浮かびました。
それと一緒に、その歌をよく歌ってくださった、優しいお母さんのことも思い出しました。
そこで王様は、カタツムリをつぶさないで、青い葉の上にそっとのせてやりました。