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星の銀貨 グリム兄弟
楠山雅雄役 昔々
小さい女の子がありました。この子には お父さんもお母さんもありませんでした。
大変貧乏でしたから 姉妹には
もう住むにも部屋はないし もう寝るにも寝床がないようになって
とうとうおしまいには 体につけたもののほかは
手に持ったパンひとかけきりで それも情け深い人が恵んでくれたものでした
でもこの子は 心の素直な
信心の熱い子でありました。それでも こんなにして世の中からまるで見捨てられてしまっているので
この子は優しい神様のお力にだけすがって
ひとりぼっち 野原の上を歩いていきました。
するとそこへ 貧乏らしい男が出てきて
「ねえ、何か食べるものをおくれ。
お腹が空いてたまらないよ。」 と言いました。
女の子は持っていたパンひとかけ残らず その男にやってしまいました。
そして
どうぞ神様のお恵みのありますように と祈ってやって
また歩き出しました。 すると今度は
子供がひとり泣きながらやってきて
「あたい、頭が寒くて凍りそうなの。 何かかぶるものちょうだい。」
と言いました。 そこで女の子は
かぶっていた図巾を脱いで子供にやりました。 それから女の子がまた少し行くと
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今度出てきた子供は 着物一枚着ずに震えていました。
そこで自分の上着を脱いで着せてやりました。 それからまた少し行くと
今度出てきた子供は スカートが欲しいというので
女の子はそれも脱いでやりました。 そのうち女の子はある森にたどり着きました。
もう暗くなっていましたが またもう一人子供が出てきて
肌着をねだりました。 あくまで心の素直な女の子は
もう真っ暗になっているから誰にも見られやしないでしょう。 いいわ
肌着も脱いであげることにしましょう。 と思って
とうとう肌着まで脱いで やってしまいました。
さて それまでしてやって
それこそないといって 綺麗さっぱりなくなってしまった時
たちまち高い空の上から お星さまがバラバラ落ちてきました。
しかもそれが全くの チカチカと白銀色をした
ターレル銀貨でありました。 その上
つい今しがた 肌着を脱いでやってしまったばかりなのに
女の子はいつのまにか 新しい肌着を着ていて
しかもそれは この上なくしなやかな朝の肌着でありました。
女の子は銀貨を拾い集めて それで一生豊かに暮らしました。
