本書は彼女が32歳から42歳という油の乗った時期に発表された7編を収録した日本では初の短編集。
現代韓国屈指の作家による魂を震わす7つの物語となっております。
短編集なので、ちょっといくつかピックアップしてこの後お話ししたいと思ってます。
具体的には2本と、回復する人間と人影という作品をご紹介しようと思ってます。
僕がこの回復する人間を読んだのが、ちょうど1年前の2020年の1月に読みまして、
最初は図書館で借りてきて、ギリシャ語の時間と回復する人間の2冊を順番に読んだんですけども、個人的にはすごい、どっちも好きだったんですけど、
回復する人間の方が読みやすくて、なんかスッと小説に入っていけたなというのが最初のあの時の印象で、
あとやっぱハンガーさんがすごい作家だなぁと、あの本当この短編集でも思ってですね、これをそれから話していくと思うんですけど、
本当になんかね、今回7個収録されている、7編収録されているんですけど、ほんとハズレがないというか、
うんうんうん、わかる。
一個一個が結構ね、なんか読みごたえが短編ですけどすごいずっしりとあるという感じで、おすすめの短編集になってます。
確かに私もギリシャ語の時間よりは、こっちの回復する人間の方が入りやすいかなっていうのはすごく感じましたね。
でもめちゃくちゃいい作品だから、あ、ちなみに私は今年の1冊目でした。
2021年1冊目、回復する人間から。
記念出撃、いいですね。
なかなかやっぱり良かったですね。
ではですね、ちょっと最初短編の話に入る前に全体的な印象の話を触れていきたいと思うんですけど、感想も含めて触れていきたいと思うんですけど、
どうしようかな、じゃあちょっと私の方から。
ハンガーさんの作品これだけじゃん、私読んでるのはギリシャ語の時間と彩色主義者と全ての白い者たちか。
今回が4冊目で、感じるのはどの作品もそうなんですけど、死に関する匂いというかなんか存在感みたいなのがめちゃくちゃ毎回濃いなって思ってて、ハンガーさんの作品って。
で、その分すごく生きることに関しての感触と言っていいのかなんて言うのかわからないですけど、
そういうものが生きることに対する意識っていうみたいなのが濃くなっていってるなっていう印象がどの作品もあって、その辺は本当ハンガーさんの作品の魅力だなって思います。
死に向かっていってるなとか思ってる一方で、急になんか生の匂いが強くなるというか、生きることへの渇望が湧いてくるっていうか。
なんかこれってすごく難しいな、難しいことなんじゃないかなと思って表現するのが。
でもハンガーさんは結構なんていうかサラッと入り込んでくるし、そしてなんて言っていいんですかね、なんかその切実さの度合い、生きることに対する切実さの度合いが、なんか引き方あれなんですけど、なんか違うんですよね、ほかの。
これ、ちょっと不思議な、あまり見ないタイプの小説だと思うんですけど。
二人称の作品になってますね。主語があなたという。主語というか、あなたという語りかけで。
語りかけではないのか。あなたがあったからちょっとまたあれかもしれない。
二人称であなたという形で話が進行します。
さらに面白いのが、未来の時勢と現在の時勢かな。
なんか入り乱れますよね。
その辺りの作りはものすごく半岸さんらしいなと思って。
上手く作ってるなと思って。めちゃくちゃそれが魅力的な作品になってますね。
この未来の時勢って、なかなかイメージしづらいかもしれないですけど。
例えば、あなたが何々をまだ知らないまま、今こういうことをしているみたいな語り口になるんですよね。
そうですね。例えば、三重さんが今日のカフェでこういうお客さんと会うことを知らないが、今ラジオを収録しているみたいな。
不思議な感じで。
そういう未来の時勢っていうのがところどころにたくさん入っているんですよ。
入ってますね。これちょっと読まない。使い方としては今言ったような感じなんですけど、
表せる効果としては多分読まないとイメージしづらいと思うんですけど。
結構この話自体、あらすじ読んで結構こういう話だって整理されたところが実はあるんですけど、
結構よくわかんない状況で、過去の話も入ってくるし、現在の話も入ってくるし、先の話も入ってくるしみたいな。
で、ちょっとごちゃごちゃごちゃっとしていくんですけど、それが個人的にはむちゃくちゃ良い効果を出たなっていう。
自分の中でごちゃごちゃになっていって、この話ですね、要はお姉さんとうまくいってなかった女性が主人公で、
そのお姉さんが死んでしまって、不和だったまま、あまり関係が良くない状態のままお姉さんが死んでしまって、
主人公は足が細菌感染によって手術をするのかしないのかみたいな、そういう話があって、
最後、手術しないで済むぐらいな形で回復が始まっていくんですよ。で、回復が始まった瞬間に痛みが生じてみたいな、感覚が戻ってきて痛みが生じてみたいな。
で、それのことは知らないんですよね、この話の時世でいうと。
そうですよね。まだ現在時点では知らない。
で、回復しないことを祈る場面で終わる。でも、読者はこの女性が回復することを知ってるっていう、
すごく不思議な感じの話ですよね。
今の説明だと時系列とか複雑になってるんですけど、実際読んでるとそんな変な違和感とかないんですよね。
さっき大地さん言われてたみたいに、いい感じで過去、現在、未来があって、そこに対して比較的すんなりと読んでいけるかなと。
読者体験としてもすごく面白かったし。
いや、扱ってることがすごくいいですよね。
これが単純にお姉さんの不安が最初に描かれてて、
あ、ここ現在時点で傷を診察されてるところが始まるんですけど、
じゃなくて、お姉さんとうまくいってない、お姉さんの葬式、傷を負います、診察されます。
で、火傷が治りましたっていう感じの流れで描かれると、なんかあんまり感じないかもしれないなと思って。
ちょっとした時勢で描かれるから、すごくその回復するっていうことに関して、
主人公の感覚、自分がお姉さんとの関係があって、
でも、だからこそ自分は回復していいのかみたいな感じのところ、
その思いみたいなのがすごく描かれてるなと思って、うまいなと思いました。
みえさんどうでした?
姉妹の話なんですけども、主人公が妹で、
で、そのお姉さんとのエピソードを小説では過去を振り返って書いてあるんですけども、
結構このお姉さんと妹が、なんか隔たりがあるっていうか、別の世界で生きてるような人たちですかね。
これちょっと言い方あれですけど、お姉さんがどっちかというとリア充みたいな。
あ、そうですね。
社会的にちょっと成功してる人と結婚したりとか、
で、社会でうまく生きていけていてとかですかね。
で、妹の方はちょっと影が薄いというかですね。
小説の中だと30歳過ぎていても全身黒のファッションで、
小学生の高学年ぐらいの子供に見えるような見た目であるとかですね。
そういうのが書かれていたり、あと足を怪我したときもそれをほったらかしにして、
で、あわや手術というところまで行っていたので、それを会社の人に怒られたりとか。
で、ちょっと時系列で言うと過去になるんですけど、
主人公の妹さんとお姉さんがちょっと学生時代に決定的な隔たりのエピソードとかもあったりして、
それによって妹さんの方が、お姉さんってすごい冷たい人間だって思ってしまうんですよね。
こんなに冷たい人間なんだと。
でも結構この小説のすごい肝になってくるところで、
お姉さんのことずっと冷たい人間だと思っていたこの妹さんが、
現在なんですけど、お姉さんのことをすごい強烈に思い出して、
そこで本当はお姉さんより自分の方が冷たい人間なんじゃないかと。
そことかすごく悲しかったんですけど、
短い短編の中で、お姉さんと妹の関係もあるんですけど、
この主人公の妹さんの自分とは何なのかみたいなところ、
そこも読んでるとなかなか胸が痛くなるようなところであるんですけど、
面白いところでもあります。
あなたと姉さん、2人のうちどちらが冷たい人間だったのかと、
自分に問いかけたことがあると。
その人が最初は左手を事故で怪我するんですけど、
それで使えなくなって、右手もダメになって、
そこでちょっと旦那さんとの関係も悪くなっていって、
そういうところから始まる小説になっています。
斉藤万里子さんが「人影」という名前で訳してはいるんですけど、
韓国の現代を直訳すると黄色い模様の永遠っていうことになって、
この永遠っていうのが陽音って発音するのかな?
両生類の一種、トカゲみたいなものの何かと読みが一緒らしくて、
そこをかけてるらしいんですね。
なんですけど、ちょっと日本語じゃうまく表現できなかったというか、
変換できなかったので、「人影」というタイトルになってるみたいですね。
今回の短編集の中で一番長いですかね、80ページぐらいあって、
ちょっと中編ぐらいの長さになるかなと思います。
これは、「人影」は僕は最初に読んだ時にすごい一番良かったなと。
小説で、この回復する人間の中で一番外せない作品かなと思いますね、
ラインナップの中では。
この回復する人間を総括する感じもありますよね。
まとめる感じがすごいあって、すごく最後にこの作品があってすごく良かったなって思いました。
手が使えなくなっちゃう女性の話で、
トカゲって途中で描写出てくるんですけど、再生するじゃないですか。
手が切れて。
ちょっとずつ。
その辺のこともちょっとかけて、その回復という意味にもかけてると思うんですけど、
個人的にはこの手が使えなくなるっていう設定がすごく、
もともとは事故で左手が使えなくなり、
その代わりに右手ばっかり使ってたら、右手がダメになっちゃったっていう。
両手を失う。
全く使えないわけじゃないんですけど、
でもほぼ仕事をしたりとかするのはもう無理ですよね。
そうですね。日常生活は結構危ういかなというレベルですよね。
マグカップを持てるか持てないかとか。
夫のサポートなしでは生きていけなくなってしまったっていうところで、
個人的にはそれって人としてもマイナス。
主人公はすごくそれを感じてると思うんですけど、
足でまといって言い方よりはもっと適切な言い方があると思うんですけど、
自分はもうマイナスな人間なんだっていう意識がすごく強くて。
自分もこの状況に陥ったら、もうなんか辛いだろう。
誰かの力を借りないと生きていけないって結構しんどいですよね。
その夫も最初はすごい理解のある人やったのが、
やっぱり主人公が入院して、そこからなんかだんだん不中になっていくんですよね。
あらすじにもあったんですけど、やだたちを隠さないってあるんですけど、
主人公これできないって話をすると、なんだ本当にできないのかよみたいな。
この状況でなんか潰れないっていう感じがすごくあって、
なんかハンガーさんらしいこの話の進め方だなとはちょっと思いましたね。
あとその後半になって、これ完全にネタバレになっちゃうんですけど、
なんか一回だけ一緒に山陰を登った男性のことを思い出すじゃないですか、
写真館でその人が撮った写真がなぜか飾られてるんですけど、
それで思い出すんですけど、その人に対して主人公が結構好意を寄せていて、
好きだったと、その人の消息をちょっとたどろうとするところで話が進んでいくんで、
個人的には自分、たぶんその人との出会いで、再会で、
なんか自分を取り戻していくのかなって思って読んでたら、
その人は結局死んでいたってことがわかるじゃないですか。
何年前だっけ、もう結構前ですよね、もう学生時代だから。
10年前ですね、一緒に山を登ったのは。
だからその10年間の間にもうその人が死んでいて、
もう一回しか会ったことない人だけど、死んでいてみたいな。
結局、自分がこれですごく感じたことは、
主人公一人、一人だけじゃないのかもしれないですけど結局は、
なんかいろんなことから影響を受けて立ち上がっていくんですけど、
でもなんか自分が立ち直る力を、
いろんなところから見つけて吸収して、
最後立ち上がっていくっていう姿が描かれてるなと思っていて、
なんかすごくハンガンさんらしいなってすごく思いました。
そんなにハンガンさんのこと知るわけじゃないですけど、
すごくハンガンさんの作品っぽいなって本当に感じてて、
そこに感動する自分がいて、
本当に良い作品だなって思いましたね。
思ったところは、やっぱり10年前の出来事を思い出すじゃないですか。
偶然のきっかけで、本当に初恋の相手みたいなものかなと思うんですけど、
もしかすると、男性の方ですよね、出会った主人公の女性に、
10年前に初めて会った時に後悔しますねと、もっと早くここに来ればよかったと。
結構主人公の女性が、家の近所という言葉って山登りを日課にしていたんですけど、
その男性はそこの山に初めて来た人で、
もしかするとその2人ってもっと別の人生があり得たのかなと。
本当にちょっとした何か、2回目の出会いがあったらとか、
そんなことをすごく感じさせるような、そういう過去のエピソードがあってですね。
そこのドラマチックなところですよね、その10年前と、
あと2年前というのも一つのキーワードになってくるんですけど、
10年前、2年前という、そういう時間の重なりというのかな。
そうですね、この男性とのね。
それでその主人公の女性が人生のどん底をやったところに、
自分の過ごしていた時間、そこには自分一人じゃなくて他の人の人生もやっぱりあって、
そういう重なりとかを得ての今があるっていうので、
なんかすごい光を見たような気がしてですね、結構最後の方に。
なんかね、結構その初めて読んだ時はその後半の部分で泣いてしまったんですけども、
なんかそれだけすごい、最初の前半から後半にかけて、
ちょっと回復していくというか、光が差し込んでいく感じがすごい僕は好きですね。
あとこの小説に出てくるのが、93歳で亡くなった芸術家の人の話というかをちょっと差し込まれていて、
なんかそういうのもね、ちょっとパンチが効いてていいですよね。
そうですね。この93歳がなんか表現した黄色っていう色があって。
そうですね。なんか太陽、昼の太陽の黄色とかを光の塊みたいなとは言ってますね。
そうですね。その私というか、主人公が表現する黄色はまたちょっと違った黄色でみたいな。
ここもいいですよね、このね。
というような小説で、以前にハンガンさんのインタビューで、
この人影についてコンモレビに出会う話と言いますか、
結構黄色というのを言及していて、色の。
なんかその自然の中で光の黄色っていうのもあれば、
なんか人間にもそういう光のような黄色のようなものってあるんじゃないかというのを描いていて、
インタビューを聞いていたときは、それってどういうことなんだろうと思ってたんですけども、
改めて読んでみると、確かに人生の中で本当に光が差し込んでいる瞬間というか、
ちょっと垣間見えたような気もしますし、
なんかすごいその光とか色とか、なんかそういうのが溢れている小説だなと思っていて、
本当にそういうのが最初前半読んでいるときと最後後半読み終えたときの、
この感情のギャップと言いますか、
なんかそういうのがすごい味わえるんじゃないかなという、
そういう小説だなと思っています。
そうですね、本当にそれはすごい、それは本当この小説じゃないと味わえないかもしれないですね。
で、ちょっと他の作品もちょっと触れたいんですけど、