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おはようございます。鶴岡慶子です。 この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。
司会やナレーションを通じて日々感じたことなどを語る声の日記です。 毎朝更新しています。
こちらは、最も敷居が高い掲示板です。 重要な連絡、周知したい事項については、こちらを使ってください。
一方で、こちらは最も敷居が低い掲示板です。 細かいルールを設けずに、自由にお使いください。
皆さんは、この文言を聞いてどう思いますか? 私はこれを聞いて、どういうこと?というふうに思いました。
こんな使い方をするのは、若い世代を中心に多くなっているようなんですが、 本来の使い方ではないんですね。
本来、敷居が高いという言葉は、 不義理や面目のないことがあって、その人の家に行きたくないという意味で使います。
掲示板の言い方を正しく言い換えるとすれば、 こちらは最も敷居が高い掲示板です。ではなく、
最もフォーマルな掲示板です。公式な掲示板です。 というふうになるんじゃないでしょうか。
一方で、こちらは最も敷居が低い掲示板です。ではなく、 最もカジュアルな掲示板です。
形式ばらない掲示板です。気楽な掲示板です。 というような言い方になるかもしれません。
他には、これ本当によく聞きます。 あの店は高級すぎるので、敷居が高い。
こう聞くと、私なんかは、以前そのお店となんかあったの?って聞きたくなります。 なんか不義理をしたの?っていうことになっちゃうんですよね。
あくまでも敷居が高いという言葉は、不義理や面目がないことがあって、その人の家に行きたくないという意味だったので、
高級だったり格が高かったりして、その家や店に入りづらいというような、そんな使い方はしません。
もしもこの場合、正しく使うとしたら、分不相応という言葉が当てはまるかもしれません。
ただ、文化庁が行った国語に関する世論調査によりますと、敷居が高いという言葉について、相手に不義理などをしてしまい、行きにくいという伝統的な意味で使うと答えた人は、
平成20年の時点では42.1%だったものが、令和元年では29%になんと減りました。
一方で、高級すぎたり上品すぎたりして入りにくいという意味で使うと答えた人は、平成20年の時点では45.6%だったものが、令和元年ではなんと56.4%に増えました。
もう逆転しているっていうことなんです。
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さらに言うと、年代別の調査では、70歳以上を除くすべての年代で、本来の意味とは違う使い方をしている人が上回ってしまったんです。
ここまで来ると、もはや漢用句は原形をとどめていなくって、言葉が変化してしまったと言わざるを得ません。
どちらの意味としてもとれるとしたら、共通語としては、もはや使えないということになりますね。
新しく使われるようになった意味で使って、それ間違ってるんじゃないとか、本来の意味の言葉を知らないのとか、そんな評価を受けるよりは、ハードルが高い、ハードルが低いという言葉を使うのがいいんじゃないかなっていう気がしています。
ただ、ハードルというのはカタカナなので、これを日本語で使うとしたらどうなるんだろうと思って、類語を調べてみました。
そうしたら、非常に困難なとか、難易度が高い、非現実的、たかのぞみという言葉が挙げられていました。
さっきの分不相応も当てはまりそうです。
ハードルが高いに比べますとニュアンスがそれぞれ少しずつ違っていて、使う場面も狭まるような言葉になっちゃうんですけれども、上手に使い分けていきたいなと思いました。
なお放送上ではどう考えるかって言いますと、NHK放送文化研究所はこういうふうに言っています。
敷居が高いの新しい意味は、若い世代を中心に既に定着してきており、放送で使ってはいけないとは言えない。
ただし伝統的な使い方ではないこと、また年代によって捉える意味が違う場合があることを踏まえて、使う場面を選ぶ必要があるとしています。
例えば時代劇で、近寄りにくいという意味で敷居が高いを使うのはおかしく感じますし、戦前の新聞記事では敷居が高いを元々の意味で使う例しか見られませんので、第二次世界大戦よりも前の時代を描くようなドラマでは、元々の意味の敷居が高いを使うことになるということでした。
ただ私は、やっぱりなんとなく新しい意味では使いにくくって自分では、だから敷居が高いっていうことを聞くと、あなたが入りづらそうにしているそのお店、本当に敷居が高いんですかって聞きたくなるんですね。
それとも自分にそぐわないと感じて近寄りがたいだけなのか、そういうふうにも聞いてみたくなってしまいます。
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