00:00
おはようございます。花火鑑賞士、気象予報士の鶴岡慶子です。
この配信では、花火や天気、言葉に関することなどをお話ししています。毎朝更新している声の日記です。今日も最後までお付き合いください。
はばきの意味
昨日は、さなぶりについてお話をしました。 そこでもう一つ私は思い出した言葉があって、それはタイトルにもなっているんですが、
これ、はばきはき、はばきぬぎと読むんです。ご存知ですか。
秋田とか東北地方の方言で、修学旅行など旅に出る時によく使われていた言葉です。
今の子どもたちは、もしかしたら知らないかもしれません。私も大人になってから、この言葉に出会ったような気がします。
私は以前、学校の先生だったんですけど、学校の先生になったばかりの頃、はばきはきをして、元気にいってらっしゃいとか、
無事に帰ってきて、はばきぬぎだね、なんて言っているのを聞いて、何かをはいたりするんだなとか、何かをぬいだりするんだなっていう、
なんかそんなイメージは浮かんだんですけど、自分では実は当時は意味がわかっていませんでした。
で、自らこの言葉を使うっていうこともなかったですし、誰かがそれを言っている時には、なんか旅に出る前に、
なんかをはいて、なんか帰ってきたらぬぐんだなみたいな、そんなことで意味はなんとなくわかるっていうことで、
とりあえずコミュニケーション取れてるから、まあいっかと思って、それ以上調べたりすることはなかったんです。
で、昨日、さなぶりをこういう字をはてるんだ、みたいなこととか、いろいろ深掘りしていたら、この言葉を思い出したんですよ。
はばきはきとか、はばきぬぎ、そういえばそういう言葉を言ってたなと思って。
これは古語、古い言葉なのか、あるいは秋田弁なのか、ちょっと調べてみようと思って、
それでわかったことが、秋田弁であり、そして東北地方でよく使われていた言葉だ、ということがわかりました。
今日のタイトルにあるように、はばきはすねにぬのと書きます。
すねにぬのをまくと書いて、はばきと読むということですね。
つまり、すねにまくぬののことなんです、はばきって。
それをはいて、いざ旅に出るぞっていう身じたくを整えるという意味なんですね。
そして、はばきぬぎは、旅を終えて家に帰ってきて、無事を感謝して、はばきをぬぐ。
つまり、おかえりなさい、よく帰ってきたね、という安堵したりとか、ねぎらいの気持ちが込められているということで、
はばきはき、はばきぬぎという言葉を使う。
旅と文化
なるほど、と思いました。
似たようなものに、きゃはんというものもあります。
これは、江戸時代とか、それ以前の旅人とか、飛却、農作業をする人たちが、
足を守るために布とか、革製品を巻きつけていたっていう、その防具のことをきゃはんって言うんですけど、
このきゃはんについては、歌舞伎にも出てくるので、私も知っているんですけど、
旅に出るときに、けがをしないようにだったりとか、冷えから足を守るために使われていたものなんですね。
で、今では実際に、はばきをはく人っていないですし、きゃはんも使うっていうことはないと思うんですけど、
こういう言葉が残っているっていうのは、なんともあったかくないですか?
これを履いていきなさいって持たせるわけですよね。
そして、帰ってきたときに、よかったねって言って、それをきっとボロボロになっているはばきをちゃんと脱がせるという。
よく修学旅行とかに行って帰ってきたら、例えば学校で解散式みたいなのをやりますけど、
そのときによく言われるのが、うちに着くまでが旅ですよと。
気を抜かないでね、みたいなことを言われると思うんですけど、うちに着いたときにやっとはばきが脱げるんですね。
はばきには、まよけだったり、やくよけの意味もあったそうですから、
こうやって無事に帰ってきたっていうこと、旅の安全を守ってくれたんだなって、そんな気持ちにもなります。
このはばきは、何も旅人だけじゃなくて、田んぼとか畑、山仕事をする人たちにも欠かせないものだったようです。
長い旅だったり、大きな仕事の前に身を清める、そんなおまじないの要素もあったかもしれません。
地域の文化だったり、先人たちの暮らしの知恵が受け継がれているなって思います。
ちなみに、はばきとか華反もそうなんですけど、明治時代の軍隊とか警察官の制服にも採用されていた時期がありました。
この配信はApple Podcasts他各種プラットフォームでお届けしています。
Listenではこの配信のテキスト版を公開しています。合わせてご利用ください。
それではまた明日。
