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つながっていないからつながるノベーション(1784回)
2026-03-12 15:24

つながっていないからつながるノベーション(1784回)

「風の電話」という電話ボックスがあります。


電話線はつながっていません。

でも、その電話は世界中の人とつながっています。


亡くなってしまった人。

今はもう会えない人。

あるいは、生きているけれど、どうしても言えないことがある人。


そんな人に話しかけるために、多くの人がこの電話を訪れます。

今では海外からも人が訪れるそうです。


この電話を取材された

NHK番組ディレクターの 伊藤麻衣さん の言葉が、とても印象的でした。


「あのボックスだと2人きりになれる。

電話だと一対一で話すから、他の人にも聞かれないし、生前とまったく行為が一緒だから、今もいる気がするっていうふうに言ってたのがすごく印象的で」


(参考:NHK「週末のNスペは…それからの、風の電話」2026年3月7日放送)


この言葉の中に、私はイノベーションの本質を見た気がしました。


私はそこから3つの気づきを思いました。


1、見えないから「いる」と思える

2、繋がってないから繋がっている

3、思いは時空を超える


1、見えないから「いる」と思える


普段、私たちは見えるものだけを現実だと思いがちですが


哲学者 マルティン・ハイデガー は

人間の存在についてこう言っています。


「人間は世界の中で、すでに関係の中に投げ込まれている存在である。」

(『存在と時間』)


つまり、人間は

物理的な存在だけで生きているのではなく、関係性の中で存在しているということかなと思います


だからこそ、


姿が見えなくても

関係が残っていれば

その人はまだ「いる」。


風の電話は、

この 関係の存在 を思い出させてくれる装置なのだと思いました。


イノベーションも同じで、

新しい価値は、

見えるものからではなく


見えない関係性


そこを如何に捉えていくか?

から生まれることもあるなあと思いました


2、繋がってないから繋がっている


電話線はつながっていません。


でもその電話は世界中、さらには、全宇宙、もっと言えば、現世を超えた場所ともつながっています。


ここに、デザインの本質を感じました。


デザイナー 佐藤卓さん は、こんなことを言っていました。


「ありとあらゆるものは、人に届くとき必ずデザインを経る。」

(NHK「最後の講義」)


つまり、デザインとは

形を作ることだけではなく


いろんなものや、ことの、意味をつなぐこと、だと言ってもいいのかなあと思いました。


風の電話は、通信機能はありませんが


でも

• 電話ボックス

• 受話器

• 一対一の空間


この 行為のデザイン によって、つながっていないものをつなげる意味を持たせることができる。


技術はゼロでも意味は最大。


ここに、イノベーションの面白さがあるなあと、改めて思いました。


3、思いは時空を超える


芸術家や哲学者は、昔から「思いは時間を越える」

と言い続けてきましたように思います。


詩人 リルケ はこう書いています。


「愛する者は、死者であっても私たちの中で生き続ける。」

(『若き詩人への手紙』)


人間の記憶や感情は、時間に閉じ込められません。


だからこそ、亡くなった人にも電話をかけることもできる。


そしてそれは、ただの感傷ではなく


人間の精神の構造そのもの


なのかもしれないと思いました。


我々は、いろんなものや人の、かけらでできている。


だからもしかしたら、そのかけら達と、改めて会話をしているのかもしれないなと。


これまで、接続できなかった、かけらたちと、新しいつながる意味を与えることで、改めて会話をすることができるようになるのかもしれないなと。


このイノベーションは


人の心の奥にあるかけらの関係を、

そっとつなぎ直すこと


なのかもしれません。


風の電話は、

そんなことを教えてくれる


とても静かで

とても深い


イノベーション


なのだと思いました。


一言で言えば

つながっていないからつながるノベーション


そんな話をしています


参考:NHK 週末のNスペは...それからの、風の電話

3月7日(土)


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