星一の実業家としての功績
- こんにちは。さてピョン吉さん、今回お預かりした資料がありますので、これをもとに星一、星はじめという人物、この方の人生を一緒に見ていきたいと思います。
- SF作家の星真一さんのお父さんですね。- そうですそうです。実業家、そして政治家という2つの大きな顔を持つ、まさに二刀流の人ですよね。
特に実業家としては、東洋の製薬王とまで呼ばれた人物です。ピョン吉さんからいただいた資料にも、彼のいろんな活動が記録されてますね。
- 今回はですね、その資料から星一さんの行動とか、その考え方の革新みたいなところに迫って、それが今にどう繋がるかみたいなところも探っていけたらなぁと、
ピョン吉さんの知的好奇心をくすぐれたら嬉しいです。では早速ですが、彼の製薬王としての面から見ていきましょうか。まず星製薬、これを立ち上げました。
モルフィネとかキニーネ、当時輸入に頼ってた重要なお薬を国内で作れるようにしたと。
さらにですね、商品を一括で仕入れてたくさんの店舗で効率的に売るっていう、当時の日本ではまだ珍しかったチェーンストア方式も導入してますね。
- なるほど。
- これは医療をもっと多くの人に届けたいっていう、そういう経営の工夫でもあったわけですね。
- まさにそうですね。会社のモットーが新設第一。で息子さんのお名前も星一さん。ここからもその理念が伺えますよね。
- へぇー。
- へぇー。単に薬を作るだけじゃなくて、社員教育にもすごく熱心で、社内講習会が後の星薬科大学につながっていくっていうのは、やっぱり人材とか知識をすごく大事にしてた証拠ですよね。
- あーなるほど。
- 当時国内で薬を自給しなきゃっていう、そういう時代の流れもあったんでしょうね。
- その人を大事にするっていう姿勢は会社の外でも見られますよね。
- うんうん。
- アメリカに渡った時に、同じ福島出身の野口英生。彼と出会って強力なパトロンになる。
- へぇー。
- あの有名な、母に会いたい、金をくれっていう伝報。あれにお答えて帰国費用を全部出してあげただけじゃなくて、野口さんの業績を宣伝するチラシまで作って配ったとか。
- あーその話ありますね。そのチラシが日本で野口さんの名前が広まる大きなきっかけになったとも言われています。
さらに第一世界大戦の後には、ドイツの科学者フリッツ・ハーバー。この人が日本に来た時も経済的に支援してるんです。
- フリッツ・ハーバー。
- ええ。この人は肥料の開発、ハーバーボッシュ法でノーベル賞も取ってるんですが、一方で毒ガスの開発にも関わったっていう、ちょっと評価が難しい人物ですけども。
- うーん、複雑な方ですね。
- そうなんです。ただ、星さんの支援っていうのは、敗戦国だったドイツの科学界が立ち直る、その一助になったと言われていて、その功績でドイツ政府からの懸賞費が今もいわき市に残ってるんですよ。
- ほー。科学技術とその社会的な影響っていう点で、なんか考えさせられますね。
星一の政治家としての活動
- ええ、本当に。
- そしてもう一つの顔。政治家ですね。尊敬していた後藤新平さんを支えるためか、ご自身も国会議員になる。
- うーん。
- 初めて出馬したときは無所属で、なんか街頭演説とかじゃなくて、有権者に民主主義とか投票って大事ですよって説いて回ったそうです。ポスターには、政治は奉仕と、たったそれだけ。
- いやー、すごいですね。彼のその社会貢献への強い思いが伝わってきますよね。実業家として成功した経験を、もっと社会全体にために活用しようとしたということでしょうね。
で、その先進性っていうのは、1925年に出した冷凍製造法の発明っていう本にもよく現れてるんです。
- 冷凍製造法。
- 自社のその冷凍技術の特許の内容を、なんと公開しちゃってるんです。他の産業でもどんどん使ってくださいって。
- えっと、100年近くも前に、今で言うオープンイノベーションみたいな。
- そうなんですよ。驚きますよね。非常に先を見ていたというか。
- いやー、すごい。
- ただ、そんな彼も常に順調だったわけではないんですね。同じ1925年に、アヘンの輸入とか保管をめぐって起訴されるっていう事件が起こるんです。
- あー、アヘン事件。資料にもありましたね。これはなんか、性的が後藤新平さんを攻撃するために、星さんを狙ったんじゃないかっていう説もあるみたいですね。
- その可能性はよく言われていますね。この事件が、星製薬の経営にかなりの打撃を与えたことはどうも確かなようです。
生きとの星新一さんが、この頃の経験を元にして、人民は弱し、管理は強しっていう作品を書いているくらいですから、一家にとって本当に大きな大変な出来事だったことが分かります。
- なるほど。じゃあ、星さん個人の問題というよりは、当時の政治の力学みたいなものに巻き込まれた面が強いっていうことなんですかね。
- まあ、そういう見方が有力ですね。成功の裏には、やっぱり時代の波とか、権力とのぶつかり合いとか、個人の力だけではどうにもならない困難もあったということですね。
- うーん。製薬王であり、教育者であり、パトロン、政治家、そして技術を公開する先駆者。星一さんって本当に色々な顔を持っていたんですね。
ぴょんきさんは彼の人生のどのあたりに一番、なるほどって感じられましたか。
- そうですね。一つの分野に留まらずに、本当に色々な領域で大きな足跡を残したわけですけども、
彼の人生を見ると、多彩であることの可能性と同時にそれに伴う複雑さとか、リスクみたいなものも見えてくる気がしますね。
- では最後にぴょんきちさんに一つ、ちょっと考えてみていただきたい問いかけです。
星一さんは約100年前に、自社の重要な冷凍技術を、いわば社会のために公開しようとしましたよね。
現代において、特にその医療とか環境技術みたいに、人類全体に関わるような大事な分野で知識とか技術を共有するっていうことと、
それを開発した企業とか個人が独占するっていうことのバランス、これについてぴょんきちさんはどうお考えになりますか。
さて、今回の深掘りはここまでとしましょうか。
- ええ、ぴょんきちさんの知的な探求のささやかなヒントにでもなれば嬉しいです。
- 次回の配信もお楽しみに。
さようなら。
- さようなら。