不快な音の正体
第一発見者は、私の夫だ。
なんかピピピ、ピピピって聞こえるぞ。
え?なんだそれ?
子供部屋。あんたが寝てる部屋だぞ。
夏の終わり。夕食前。
あと数分で太陽が落ちる時間帯。
昨日寝てた時には聞こえなかったよ。
今聞こえるだろ?
よく耳を澄ませてみると、確かに聞こえる。
ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピピ。
聞こえるか聞こえないかと思わせて、ちゃんと聞こえる音量。
そして、不快である。
1分くらい鳴り続け。
1分間くらい鳴り止む。不快である。
電池が入っているものに違いない。
しかしここは子供部屋。
電池の入ったおもちゃなんぞ。
5万とある。
俺はここで寝ないから、お前、探しとけよな。
第一発見者、戦線離脱。
第一発見者は、だいたい犯人か、次の犠牲者だからね。
軽明な判断だとも言えるだろ。
あ、この名探偵ミキティしかいない。
しかしこの名探偵、探偵だけでは食っていけず、
今はまだ仕事を掛け持ちしている状態。
まずは五つ星レストランのコックとして、
買ってきた冷凍食品をチンして、
いい感じに並べて、夕食を提供する方が先だろう。
コックとしての仕事を全うした後、
名探偵に戻る。
ピピピの犯人は、俺が見つける。
じっちゃんの名にかけて。
これは電池の入ったものを一つずつ、
別の部屋に持っていくしかない。
まず時計。
もらったでかい時計。
でかいから怪しい。
別の場所に運んでおき。
子供部屋に戻る。
ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピピ。
鳴ってるわ。
不快である。
次に小さいドローン。
室内で飛ばせるらしいが、
あちこちぶつかってうまく飛ばない。
なんなら捨てたい。
別の部屋に運んでおき。
子供部屋に戻る。
ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピピ。
違ったわ。
不快である。
次に電池で動く猫のぬいぐるみ。
娘が猫を飼いたいと言った時に、
ダメ!と一周した年のクリスマスプレゼントだったと思う。
ピピピ、ピピピ、ピピピ、ピピピ。
おい、どれなんだよ。
そうだ、私は確かに名探偵だが、
名探偵には大抵優秀な助手がいるもんだ。
ホームズにはワトソン、
金大地にはミユキ、
おっちゃんにはコナン、
古畑忍者風呂には今泉くん。
おい、娘って。
ピピピって音、どこからか聞こえる?
あそこ。
え?
え?秒で答えた?
早。
早すぎるよ。
え?
壁?
あー。
火災放置機か。
娘って。
ありがとう。
めっちゃありがとう。
これで安眠できる。
ありがとう。
さすが名探偵の助手。
助手じゃない。
私が名探偵。
だよね。
ですよね。
そして、名探偵から助手に降格した私は、
脚立に登り、
犯人である火災放置機を壁から取り外し、
電池を抜き、
そのまま新しい電池を入れずに、
そっと壁に戻した。
これで二度と断末魔の叫びを発することはないだろう。
