1. ポッドサイエンティスト:ライフサイエンス
  2. S4E14 交尾後の競争がなくな..
S4E14 交尾後の競争がなくなったとき
2026-11-05 25:40

S4E14 交尾後の競争がなくなったとき

おたよりを送る

オスはメスをめぐって競いますが、この競争は交尾後にも起きます。この競争がなくなったゴリラで見られる遺伝的な変化を解析し、そこから見つかった遺伝子群と、ヒトの精子異常との関連を示した研究を紹介します。

https://elifesciences.org/articles/94563

感想

まだ感想はありません。最初の1件を書きましょう!

00:02
その、進化における自然選択っていうのは、生存競争に勝ち、生き残った個体の性質が残っていくっていうものになります。
例えば、食べ物をうまく捕まえられる個体や、捕食者からうまく逃げられる個体は生き残りやすく、
その結果、そうした性質に関わる遺伝子を持つ個体が、より多く子孫を残すことになります。
しかし、生き残るっていうことだけを考えると、なぜ、進化したのか説明しにくい特徴っていうのがあります。
例えば、オスの鹿が持っている大きな角です。こんなものを作るにはエネルギーが必要ですし、動き回るのにも邪魔になりそうです。
それでも大きな角が進化したのは、オス同士がメスをめぐって争うときに有利だからだと考えられます。
遺伝子を残すっていうのは単に生き残るかだけではなくて、子孫を残せるのかで決まるので、
交尾相手を得たり受精に成功したりするのに有利な性質が選ばれ、これを性選択と呼びます。
性選択はオス同士が直接競争する場合だけではなく、メスが交尾相手を選ぶことによっても起こります。
それに関係する代表例が、孔雀のオスが持つ派手な羽なわけです。
さらに、メスによる選択は、交尾相手を決めたところで終わるとは限りません。
交尾をした後にメスの生殖器の中で、どのオスの精子が受精しやすいかを物理的あるいは科学的な仕組みによって左右されることがあります。
こうした外からは見えにくいメスによる選択は、隠れたメスの選択、クリプティックフィーメールチョイスと呼ばれます。
なのでオスとしては、その選択に合うような精子を持つ個体が有利になるんです。
そしてオス同士の競争も、交尾後にも起こります。
一頭のメスが比較的短い期間に複数のオスと交尾する動物では、メスの生殖器の中に異なるオスから来た精子が同時に存在することになります。
03:14
そうすると、どのオスの精子が卵にたどり着いて受精するかっていう競争が起こり、これを精子競争と呼びます。
精子競争が激しい状況では、より多くの精子を作れるオスの方が有利になると考えられます。
例えばチンパンジーでは一夫一夫ではなくて、メスもオスも複数の相手と交尾するんですが、
チンパンジーは他の霊長類と比べて体重に対して大きな精巣を持っています。
他にも精子競争が強い種では、男性器が効率よく射精できるようになっていたり、精子の運動性が高かったりします。
これに対してオス同士の競争のほとんどが交尾する前に決着してしまう動物もいて、その代表例がゴリラです。
ゴリラでは一頭のオスが複数のメスとの交尾の機会をほぼ独占するような一夫多妻の繁殖システムが見られます。
ゴリラでオス同士の競争というのは非常に激しいんですが、その競争は交尾の前に起きるわけです。
大きな体を持ち群れの中で一番の順位を獲得すれば、メスとの交尾機会をほぼ独占できます。
このため精子同士の競争はほとんどないっていう状態になります。
そうなると精子競争に関する性選択はあまり起きなくなると考えられます。
つまり受精させる能力の高い精子をたくさん作る個体が選択されるっていう圧力はあまりないと考えられるわけです。
実際にゴリラのオスでは大きな体の割に精巣が非常に小さいことが知られています。
また精器の構造とか精子自体にも他の霊長類と比べて劣る点が見られます。
さらには生殖に関わるいくつかの遺伝子についてゴリラでは異常が見られることも報告されていました。
06:05
ですから性選択の観点から予測される違いがゴリラでは見られるということになります。
しかしこれがゲノム全体、すべての遺伝子のレベルでどうなっているのかはまだよくわかっていません。
今日はゴリラではどのような選択圧がかかっていたのかを解析し、
そこから見つかった遺伝子群と人の精子異常との関連を示した研究を紹介します。
ポッドサイエンティストへようこそ。
サトシです。
今日紹介するのはバッファロー大学のジェイコブ・ウォーマンらによる研究で、
2026年7月にe-Lifeに発表されたものになります。
この論文ではゴリラだけを見るのではなくて、ゴリラを含む261種類の哺乳類の遺伝子を比較しています。
タンパク質を作る遺伝子13310個について、そのDNA配列がどのように変化していったのかを調べているのですが、
これによってそれぞれの遺伝子にどのような選択圧がかかっていたのかを調べています。
まず、なぜそのようなことを調べることができるのかを少し説明します。
DNAにはATGCという4種類の構成する単位となる分子があって、それらが樹脂つなぎに長くつながってできています。
だからDNAは文字配列のようなものなんです。
この配列情報を元にタンパク質が作られて、タンパク質が働くことで生物として機能しています。
タンパク質も構成単位がつながってできているのですが、それがアミノ酸で、タンパク質を構成するアミノ酸は20種類あります。
ですから4種類でできた配列から20種類でできた配列へ情報が変換されるわけです。
この変換がどのように起こるかというと、DNA3個ずつ区切って読んで、この3文字の組み合わせによってタンパク質を構成するアミノ酸が指定されます。
09:10
例えばGGGだったらグリシン、GAGだったらグルタミン酸みたいな感じに決まっているんです。
一つ大事な点として、DNA3個ですから4種類×4種類×4種類で64種類のDNAの組み合わせがあるんですが、それで20個のアミノ酸が決まっているので重複があります。
だから例えばGGGはグリシンなんですが、GGAもグリシンなんです。でもGAGは違うものでグルタミン酸。こんな感じで決まってるんです。
DNAには世代を重ねるうちに変異が起こります。
ですから共通祖先から別れてから時間の経った人とゴリラではDNAの配列にある程度違いがあります。
そうするとこのDNA3文字のうち1文字が別の文字に変わることがあるわけですね。
でもDNAの文字が変わったからといって必ずタンパク質の配列が変わるわけではないんです。
今話したように重複があるからです。
GGGだった配列がGAGに変わるとグリシンからグルタミン酸に変わるけど、
GGGがGGAに変わってもどちらもグリシンだから、DNAは変わっても出来上がるタンパク質は変わらないということになります。
このアミノ酸は変わらない変異を同義知観、アミノ酸が変わる変異を非同義知観と呼びます。
同義知観の場合はタンパク質の機能には何の影響もないわけですね。
生き物の機能はタンパク質によってもたらされることが多いので、
タンパク質が変わらなければ生物としての機能というのは変わらない場合が多いんです。
非同義知観についてはタンパク質の機能が変わる可能性があって、
場合によってはタンパク質の機能が失われることもあるし、
何か新しい機能を獲得することもあり得るということになります。
でも機能が失われることの方が多いという傾向があります。
12:08
この同義知観と非同義知観の起こった数の比で、
そのタンパク質にどのような選択が働いていたのかを推測できるんですね。
もしあるタンパク質の機能が非常に重要で、その形が変わると困るのであれば、
アミノ酸を変えてしまう変異は多くは不利になります。
だから非同義知観は減るわけなんですが、
アミノ酸が変わらない変異は起きても問題ないので、
同義知観の量は変わらないと考えられます。
そうすると、そのタンパク質では非同義知観は同義知観に比べて少なくなります。
これがタンパク質を変えないようにする方向の選択圧が働いているときになります。
逆に選択圧が小さいとき、そのタンパク質の機能が重要でないときには、
非同義知観が起きても問題が少ないですから、
これは非同義知観と同義知観の比が1に近づいていきます。
さらに非同義知観が多いときっていうのがあるんですが、
これは環境などが変化して、タンパク質を積極的に変える方が有利な状態だったということを示していて、
これをポジティブセレクションと言います。
ですからまとめると、非同義知観が少ないときは、
そのタンパク質の機能が重要なとき、つまり選択圧が強いときになります。
非同義知観と同義知観が同じぐらいのときは選択圧が弱いとき、
非同義知観が多いときはポジティブセレクションがあったときということになります。
ここでゴリラの話に戻ると、ゴリラでは一夫多妻になり、
オス同士の生殖競争がほとんどない状態になったので、
オスの生殖器官や生殖に関する遺伝子について選択圧が弱くなっているのではないかということでした。
そうであれば、生殖関係の遺伝子では非同義知観と同義知観の比が1に近づいているのではないかと考えられます。
15:02
だからこの基準で全ての遺伝子を調べて、ゴリラでは選択圧が下がっていると考えられる遺伝子をリストアップすれば、
その中には生殖関係の遺伝子がたくさん含まれていると想像されるわけです。
それでこの研究ではまず1万個以上の遺伝子についてたくさんの動物の遺伝子を比較することで、
特にゴリラという種が分かれたところで選択圧が弱くなっていた遺伝子をリストアップしました。
そうしたらそのような遺伝子が578個ありました。
ちなみにポジティブセレクションが見られたのが96個、選択圧が上がっていたのは114個でした。
次にこの選択圧が弱くなった578個の遺伝子にはどのような共通点があるのかを調べました。
その遺伝子からどのような機能を持つタンパク質ができるのかがすでにわかっているものや、
出来上がるタンパク質の配列から機能が予測できるものがたくさんあります。
そのような情報から遺伝子の機能を分類していくことができるんですが、
それをするとこの578個の遺伝子の中にはオスの生殖に関連する遺伝子が確かに多く含まれていました。
具体的には生殖、原数分裂、生殖形成、生殖の運動などオスの生殖に関連する遺伝子が多くあったんです。
さらにこれらの遺伝子についてどこで働いているのかについてのデータを調べてみました。
そうしたら洗濯圧が下がっていた遺伝子については清掃で働いているものが多いということも確認できました。
ですからゴリラで洗濯圧が緩んでいた遺伝子群は単に偶然いろんな遺伝子が集まったものではなく、
オスの生殖、特に生殖を作り成熟させ働かせる過程に関わるものに偏っていたわけなんです。
ただこの578個の遺伝子の中に生殖に関わるものが多いと言っても全部ではなくてまだ機能がわかっていないものもかなりあったんです。
ですからそれらについては生殖に必要なのかはわかりません。
そこで研究者たちは次に実際に生物を使った実験を行いました。
18:04
ゴリラで遺伝子を改変するのは難しいので、ここでは症状倍を使っています。
生殖形成の基本的な仕組みは進化的にかなり保存されているので、種が違っても遺伝子の働きは同じものが多いだろうという考えです。
実験としては最終的に144個のゴリラの遺伝子に対応する症状倍の遺伝子について、その働きを生殖細胞の中で抑制するということをしています。
そうしたらそのうち41個の遺伝子についてオスの繁殖能力が低下することがわかりました。
つまりゴリラのゲノムで洗濯圧が弱くなっているものを候補として選び、その対応する遺伝子を症状倍で調べたところ、新たに41個のオスの生殖に必要な遺伝子が見つかったということになります。
ランダムに遺伝子を選んで同じことをやってもこのような高い頻度で生殖に必要な遺伝子が見つからないこともこの研究では示していて、確かにゴリラで洗濯圧が下がっている遺伝子は生殖関係のものが多いと言えます。
最後にこの研究では人の男性不妊との関係も調べています。ゴリラで洗濯圧が弱くなっていた遺伝子が本当にオスの生殖に重要なら、その一晩の遺伝子が壊れた場合に男性不妊が起こるかもしれません。
まず過去の研究を調べると、ゴリラで洗濯圧が弱くなっていた578個の遺伝子のうち、24個はすでに人でも無精子症や精子数の減少、精子の運動異常、形態異常などとの関係が報告されていました。
さらに男性不妊の人の遺伝子データを解析しました。対象になったのは重度の精子形成障害を持つ2100人の男性です。さらにこの比較として一般集団の大規模な遺伝子データも用いています。
ゴリラで洗濯圧が弱くなっていた遺伝子の一晩568個について調べているんですが、このうち109個で不妊男性では機能がなくなる変異が多く見つかったんです。
21:09
つまり不妊男性の方が一般集団の男性よりもこれらの遺伝子が壊れていることが多かったということになります。比較のためにゴリラで洗濯圧が特に変化していなかった遺伝子を同じ数だけ選んで調べると、このよう
な遺伝子は84個でした。
つまりゴリラで洗濯圧が緩んでいる遺伝子の方が不妊男性で変異が見られることが約1.3倍多かったんです。
この差は大きいわけではありません。それでもゲノム解析で選び出した遺伝子群が、症状場合で実際にオスの繁殖に必要で、さらに人でも男性不妊に関連していたわけで、複数の全く違う方向から同じ結論を支持する結果が
得られたわけです。
その結論というのが、ゴリラでは生死に関係する遺伝子の洗濯圧が小さくなっているというものになります。
そしてこの結論は、ゴリラでは生死競争がほとんどなくなったことで、オスの生殖機能に関わる多くの遺伝子への洗濯圧が弱くなり、多少機能を損なうような変異でも排除されにくくなったという考えにあいます。
ただし、この研究だけで因果関係まで証明されたわけではありません。
一頭のオスがメスを独占するようになり、その結果として生死競争が弱くなった可能性もありますが、逆に先に生死に異常が生まれ、その後一夫多妻になった可能性もあります。
進化が起きた順番については必ずしも明らかにはなっていないということになります。
それからヒッシャラは少し大胆な可能性について議論していました。
人でもゴリラと似たような変化が起き始めているのではないかというものです。
人の生死とゴリラの生死には似た点があります。
他の種のものと比べると泳ぐ速度が遅く、形に異常がある割合が高いんです。
24:07
また、今回ゴリラで洗濯圧が弱くなっていた遺伝子に対応する人の遺伝子を調べると、アミノ酸を変える変異が比較的多く見つかっています。
そこでヒッシャラは、こうしたオスの生殖に関わる遺伝子への洗濯圧が、人でも弱い可能性を推測していました。
ただし、実際に今回使った解析法では、人の系統でゴリラのような明確な洗濯圧の低下は検出されていません。
なので、人での洗濯圧の低下があったとしても、今回の方法では検出されない、進化的にごく最近のことではないかという考えのようでした。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
25:40

コメント

スクロール