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2024-08-01 19:27

Extra3 自然災害が寿命を伸ばすとき

今回は、過去回の再放送です。。


自然災害が寿命を伸ばすとき、壊れたピアノが傑作を生むとき、 電車が止まって通勤ルートが最適化されるとき

https://www.npr.org/transcripts/1197954148

https://freakonomics.com/podcast/does-where-you-live-affect-how-long-you-live/

https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/aer.20181026

https://www.aeaweb.org/articles?id=10.1257/app.20160307

https://www.npr.org/transcripts/542091224


サマリー

イリノイ大学の研究によれば、ハリケーン・カトリーナの被害を受けたニューオーリンズの人々は、経済状況が良くなり、寿命も伸びていると報告されています。この結果から、自然災害がプラスに働くこともあるということが示唆されています。最近の野球界の動向から解析を行った人々は、通勤者がストライキ中に通った経路を継続して使っていたことや、コンピューターのアルゴリズムにショックを与えることで効率よく最適な解を見つけることができるという話をしています。

自然災害による影響
あの、普通に生活をしていても、突然その安定を乱すことっていうのが起きるんですよね。
小さなところでは、例えば電車が止まって、なかなか家に帰り着けないなんていうことが起きたりしますし、
もっと大きな、例えば会社が倒産して仕事を失うなんていうことも起こり得るわけなんです。
それから、自然災害なんかが起きれば、生き残ったとしても住む場所とか財産を失って、
住み慣れた場所から移住せざるを得ないなんていうことも起きたりするわけなんです。
で、そんな出来事があれば、それは間違いなく最悪なことなわけで、
しかもそうやって多くのものを失えば、その後の人生にとっても重荷となって、悪影響を残すと思えるわけなんです。
で、この点について調べた研究っていうのがあるんですね。
イリノイ大学のタチアナ・デリュージーナらによって行われたものなんですけれども、
自然災害がその後の人々の生活にどのような影響があるかっていうのを調べて、
その結果を2018年、2020年に発表しています。
2005年にアメリカ南部を巨大なハリケーン、カトリーナというのが襲ったんですね。
特にニューオーリンズという都市に非常に大きな被害をもたらしていて、
2000人以上が亡くなって、町も壊滅状態になったんです。
浸水などの被害が大きくて、多くの人が住む場所、仕事を失って移住を余儀なくされたんです。
この研究者たちは、ハリケーン・カトリーナが襲った時にニューオーリンズにいた人たちのその後を追跡して、
経済状況がどうだったか、そして寿命がどうだったかっていうのを調べたんです。
その結果、ハリケーンの被害があったことによって、経済状況は良くなっていたし、寿命も伸びていたという結論に至ったんです。
ニューオーリンズと比較都市
ホットサイエンティストへようこそ。
この研究についてなんですけれども、この研究者らは経済状況については税金に関するデータ、それから寿命に関しては健康保険に関するデータを入手して、
ハリケーン当時にニューオーリンズに住んでいた人の追跡調査をしています。
ただ経済っていうのは国全体で好景気だったり不景気だったりして変化するし、寿命もそうなんですね。
だから何か比較の対象が必要なんです。
そこでこの研究ではニューオーリンズと同じ規模で同じ程度に経済成長していた都市に住んでいた人っていうのを比較の対象にしたんです。
そういうふうにすれば同じような環境にいたんだけれども、一方では自然災害が起きて、もう一方ではそうでなかったという比較ができるっていう考えなんですね。
その結果驚くべきことなんですけど、ニューオーリンズにいた人の方が寿命が伸びていたし、平均として収入も増加していたんです。
そのハリケーン・カトリーナがやってきた時にニューオーリンズにいたので、当然かなりの財産を失っているんですね。
一部の人っていうのは仕事を失って移住をしているわけなんです。
それでも全体の平均としては収入が増えていたっていう結果だったんですね。
さらにこのハリケーンでは2,000人人が亡くなっているわけなんですね。
でもそれを含めても平均としては寿命が伸びていたんです。
これはすごく意外な結果なので、より細かくデータの中身を見ていったんです。
それでわかったのはですね、ニューオーリンズから出て行った人では、その収入、寿命の伸びが顕著だったということなんです。
そのどの国でもそうなんですけど、住んでいる場所ごとに寿命が違うんですね。
日本でもこの県は長寿だとか、この県は収入が多いとかそういうのがあるじゃないですか。
同じように、というかそれ以上にアメリカでも年ごとに寿命も違うし年収も違うんです。
ニューオーリンズを出た人の中には平均寿命とか平均の収入が多い都市に移住した人がたくさんいて、
そういう人では寿命、収入両方とも増えて平均が増加していたということなんです。
でですね、寿命の方の解析のために追跡してた人っていうのは結構年配の人だったんですね。
そうしないと寿命が解析できないわけなんです。
それでこういう結果が出ているっていうことは、結構年を取ってから移動してもその場所の効果が出て寿命が伸びるっていうことなんです。
そのイメージとして持つのは、やっぱり若い頃から特定の土地に住んでその土地の文化とか習慣とか
教育にずっと晒されてきているから寿命が変わるんじゃないかって思うんですけど、でもどうも年を取った後でも結構効果があるっていうことがわかったんです。
年収も同じで、ハリケーン直後はニューオーリンズに住んでた人っていうのは収入が低下してたんだけど、
年収の多い都市に移住した人っていうのは数年で年収が増えていっていたんです。
普通に考えると自然災害っていうのは多くの人の人生をめちゃくちゃにするものっていうふうに認識されるわけなんです。
でも今話したように、少なくともこのケースでは平均として寿命も伸びているし年収も上がっているというわけなんです。
それは主に良い場所に移住をして、より良い人生を手に入れたからっていうことなんですよね。
そのニューオーリンズってまあそれなりの大都市なんです。
でももっと良い都市っていうのもあって、ハリケーンが来たことがそういう場所に行く契機になったということなんです。
だったら自然災害なんかなくても移り住めばいいわけなんですけど、でも実際はどうしても動かないといけなくなって初めて動くっていうのがあって、
だから自然災害がプラスに働くということもあり得るっていう話だったわけです。
この話を聞いて、かなり前に聞いた話をちょっと思い出したんです。
これはヒドンブレインっていうポッドキャストで聞いた話で、ティム・ハーフォードっていう人のインタビューだったんです。
そこで話されていた一つのエピソードが、キース・ジャレットっていうジャズピアニストの話だったんです。
この人かなり実績があって有名なピアニストなんですけれども、ある時とある会場でコンサートをすることになってたんです。
そこでは即興の演奏をするっていうことになっていて、つまり決まった曲をやるんではなくて、その場で考えながら弾くっていうのをやる予定になってたんです。
でも何かの手違いがあって会場に着いてみたら、もう壊れたような小さいピアノが置いてあったんですね。
調律なんか全然されてないし、鍵盤の一部のキーについては音がうまく出ないような状態だったんです。
それで最初ジャレットはもうこんなんじゃ演奏できないって言って断ろうとしたんですけど、そこのオーガナイザーに泣き疲れて仕方なく演奏することになったんです。
でも蓋を開けてみたら演奏は大成功だったんですね。
その鍵盤の一部しか使えないんで、弾きやすい場所だけを使ってすごくシンプルなメロディを作ったんだそうです。
しかも小さいピアノなんでしょうがないんで思いっきり叩きつけるように弾いていて、それがシンプルなメロディと一緒になって感情のこもったような演奏になったということなんです。
このコンサートの演奏っていうのがちゃんと録音をされていて、そのレコードも発売されたんです。
結果大ヒットでジャズピアノのコンサートとしては最も売れたレコードになったということなんです。
注目すべき点はこのジャレットっていう人は実績のある有名なピアニストなんですね。
だからこれまでもずっとピアノの練習はもちろんしているし研究をし続けてたくさんの作曲をしている人なんです。
でもこんなトラブルがあった最悪の状況の時にこれまでなかった傑作ができたんです。
通勤者の行動分析
それからこのポッドキャストではまた別の話もしていて、以前ロンドンの地下鉄であったストライキの話だったんです。
これは48時間のストライキだったんですけど、すべての線が止まったわけではなくて一部動いてたんですね。
それで通勤者は動いている路線とかバスを利用してその期間を乗り切って仕事まで通っていたんです。
ある経済学者がこの期間とその前後に通勤者がどういう行動をとったかっていうのの解析を行ったんですね。
その結果わかったのが通勤している人の多くっていうのはストライキ中に通勤経路を変更したわけなんですけれども、
ストライキが終わった後もそのストライキ中に通った経路を継続して使っていたっていう人が結構多くて全体の5%いたっていうことなんです。
これかなり大きな数値だと思うんですね。
通勤っていうのは毎日のことなんで、通勤者っていうのはなるべく効率の良い経路を取ろうって努力してたはずなんです。
それでもストライキになって初めて違った経路をとってみてそれの方が良いって気づいてそれが定着した人っていうのが5%もいたっていうことなんです。
この地下鉄の例っていうのもさっきのピアニストの話と同じなんですよね。
普段最適を追求していると考えられるんだけど、
偶発的に大きなショックが起きて、それで普段とは違うことをやらざるを得なくなって、それで初めていつもよりも良いものができるっていう、そういうことが起きているわけなんです。
こういうことがなぜ起きるのかについての説明もあったんですけれども、それはコンピューターにおいて問題解決のアルゴリズムを作るっていう話でした。
問題を解決するアルゴリズムを作るときに、現行の手法よりも少しずつ改善していくようなプログラムを開発することがあるそうなんですね。
でもこういったプログラムを単純に作ると、その極大みたいなところにたどり着いてしまって、本当の最適な界が見つからないことがよくあるんだそうです。
たぶんイメージとしては、例えば東京駅をスタートしてなるべく高いところに行きたいっていうケースで、自分の身近にある一番高いところへ進んでっていうのを繰り返すみたいな形にしておくと、
最初は段々高い場所に近づいていくんですけれども、周りの中で比較的高い場所、例えば高尾山みたいな場所に行ったところで、その頂上の場所に留まってしまうみたいなことが起きると思うんです。
でも本当はもっと高い場所、富士山とかエベレストがあるわけなんだけれども、その高尾山の頂上から動けなくなっているわけなんですね。
で、こういった場合にショックを与えて、そこから動かすっていうことをやる必要があるわけなんです。
で、そのコンピューターのアルゴリズムの場合も、時々ショックを含むようなプログラムを作っておくと、より効率よく最適の界を見つけることができるみたいな、そんな話をしていたんです。
で、ピアニストもそうだし、例えばスポーツ選手なんかも、少しずつ向上しようと努力し続けているわけなんです。
でも時々もう途中で行き詰まってしまうことがあるんですよね。
で、そういうふうに行き詰まったとき、抜本的な変化っていうのが必要になって、例えばスポーツ選手であればフォームを完全に変えてしまうみたいなことをやったりするんだと思うんです。
でも、なかなかそういうのをやるのって難しいことで、そもそもどうやって取り組んだらいいかわからないなんていう場合も多いわけなんです。
で、スポーツ選手とかピアニストとか、そういう特別な仕事をしている人だけじゃなくて、普通の仕事をしている人でも、いろんな局面で行き詰まったりすることがあるんですよね。
でも、こう生活をしていると日々いつも忙しいわけなんですよ。
で、特にそれなりに満足できるような生活であれば、あまり大きな変化とか挑戦をするのが難しいっていう現実があるんですよね。
だから、何もなければその日常が続いて停滞をするっていうことはよくあるわけなんです。
今話してきた例みたいに、災害とか壊れたピアノとかストライキとか、そういう困難なことがあって、普通はそれが最悪だって感じるわけなんだけど、
でも実はそれが変化を生み出す契機になるわけなんです。
というわけで、人間万事、災央が馬っていうのは真理なのかもしれないなと思うわけです。
今日はこの辺で終わりにしたいと思います。最後までお付き合いありがとうございました。
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