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音声業界の海外史上が見えてくる番組、PODCAST AMBASSADOR。
この番組では、自称ポッドキャストアンバサダーことあらいりなが、
海外で人気のポッドキャスト番組のレビューやおすすめ、
そして業界の注目ニュースまで、さまざまな視点でお送りしています。
さて、先週からポッドキャストランキングを基にしたエピソードを配信しているのですが、
今回は、ポッドキャストニュースと題し、
アメリカのポッドキャストランキングから読み取る大手企業の音声配信への本気度について掘り下げていきたいと思います。
ポッドキャストもいろんなジャンルがあるのですが、
その中でもやはり人気ジャンルといえばニュース。
通勤時間中や移動中に気軽に耳から情報を収集できて、
しかも毎日のルーティンにも組み込みやすいたって人気なんです。
そんな中でも、アメリカのニュースジャンルのランキングでは
常に1位を独占していると言っても過言ではない番組があります。
その配信をしている企業は、日本でも誰もが聞いたことのある会社、ニューヨークタイムズです。
今回はこの会社がどれだけ音声事業に本気なのか、
競合他社はどうなのか探っていきたいと思います。
本編の書き起こしをご覧になりたい方は概要欄にリンクを貼っておりますのでそちらからご覧ください。
さて今回はアメリカのニュースジャンル番組で常に1位を取っているザ・デイリーという番組。
この番組の配信者であるザ・ニューヨークタイムズがどれだけ音声事業に本気なのかというのを掘り下げていきたいと思います。
まずこのザ・デイリーという番組についてそもそもどんな番組なのか簡単に説明をしておきますと、
2017年からザ・ニューヨークタイムズが配信するニュース番組です。
だいたい20分から30分程度で毎日週7本配信をしています。
構成としてはメインパーソナリティであるマイケル・バルバロがニューヨークタイムズのジャーナリストや専門家を迎えて
1本のエピソードで1つのニュースや事象を深く掘り下げるストーリーテリングタイプの要素を持ったニュース系番組です。
それこそ毎日配信されているだけではなく、1つ1つのニュースの掘り下げ方がすごく深いんですね。
これぞニューヨークタイムズのジャーナリズム精神が詰まった番組で、専門的でもあり一般人向けにもある程度噛み砕いて説明をしてくれる内容なので、
耳からだけでも聞きやすく本当にうまく構成されています。
そんなニュースの人気番組、ザ・デイリーなんですが、ニューヨークタイムズが配信しているポッドキャストというのは実はこれだけじゃないんです。
新聞社だからニュース系番組1つにだけ力を注げばいいというスタンスでは全然なくてですね。
実はいろんなジャンルの番組を合計今までに20本以上に上る番組を配信してきています。
例えばその中にはアメリカの中間選挙だったり大統領選挙などに特化した特別番組的な立ち位置の番組も過去に何本か配信をしていたり、
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あとは特定のテーマ、例えばトゥルークライムジャンルとして殺人事件を扱ったシーズン物というものもあります。
このシーズン物というのはですね、毎週毎週配信をしないので、ある一定の期間に1、2週間ごとに、例えば5話完結というような配信の仕方をするんですね。
こういった番組も特に2019年以降に配信をしているようです。
一方で、この2021年3月時点でも現在進行形で定期的に配信をしているのはそのうち7、8本といったところです。
この数もすごいですよね。
この定期的に更新される番組のジャンルはというと、ニュースジャンルもあるんですが、
例えば本のレビュー番組だったり、映画や音楽などのカルチャー系というのもあります。
社会問題がテーマのものもあれば、インタビュー系の番組というのもあってですね、本当にここ数年でバラエティに富んだラインナップになっています。
ここで気になるのは他社の動きです。
The New York Timesというのはそもそも新聞社なんで、新聞社としての競合を調べてみたところ、新聞発行物のランキングの第1位はウォールストリートジャーナルなんですね。
2位がUSA Today、続いて第3位がThe New York Timesでした。
上位2位というのは全国誌なので発行物も桁違いなんですが、The New York Timesは地方誌としてはダントツの1位です。
ここで出てきたウォールストリートジャーナルとUSA Today、こちらもですね、ポッドキャスト配信をしています。
ウォールストリートジャーナルはしっかりとしたニュース番組という立ち位置での番組の住み分けをしているようで、例えばITニュースで1本、政治ニュースで1本という風にですね、ニュースジャンルによって住み分けをしています。
あとは2分程度のめちゃくちゃ短い番組もあればですね、掘り下げる30分番組というのもあって、いろいろ合わせて大体10本程度のポッドキャスト番組を配信しているようですね。
そしてUSA Today、こちらは過去に配信している番組数は20本を超える本数だったんですが、そのうち今年に入っても更新されているのはそのうち半分といったところでしょうか。
ここもニューヨークタイムズと似ていて、いろんなジャンルの番組を揃えています。
そんな新聞社トップ2社も頑張っている音声事業には見えるんですが、この2社にはですね、ちょっと共通点があるんです。
それは番組を他のポッドキャスト制作会社と共同制作をしていることですね。
ウォールストリートジャーナルの方はニューヨークのポッドキャスト制作会社ギムレットメディアと組んで、ザ・ジャーナルという番組を毎日配信しています。
この番組、雰囲気的にはですね、ニューヨークタイムズのザ・デイリーとよく似た作りの番組です。
他のニュース番組は共同制作のロゴはついていないので、社内のリソースを使ってですね、配信をしていると思われるんですが、このザ・ジャーナルという番組はストーリーテリングの要素を加えた一つのニュースを深掘りしていく番組です。
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なので、普段のニュース番組とは違って番組の組み立て方というか、配信のテクニックというのが違うんですね。
この番組を共同制作しているギムレットメディアというのは、このストーリーテリング系のポッドキャストを専門とする制作会社です。
なので、ウォールストリートジャーナルとしてはこのテクニックを他社の手を借りて配信しているといったところなんではないかなと思っています。
そして、USA Todayのほうはというと、こちらもですね、ワンダリーというポッドキャスト制作会社との共同制作番組がいくつもあるんですね。
このワンダリーという会社、このポッドキャストアンバサダー第2話で取り上げたAmazonが昨年2020年に買収したポッドキャスト制作会社で、
こちらもストーリーテリングタイプ、特にドキュメンタリー番組チックな番組構成を得意とする会社です。
こちらも単にニュース番組では出せないテクニックというのを、ワンダリーの手を借りているというような構造だと思われます。
このようにですね、新聞社トップ2社が他のポッドキャスト制作会社の共同制作でコンテンツを拡充しているという一方で、
それではニューヨークタイムズはどうなのかというと、ポッドキャスト制作会社を丸ごと買収をしました。
昨年2020年の7月にニューヨークタイムズがシリアルプロダクションという人気ポッドキャスティング会社を買収したんですね。
このシリアルプロダクションという会社、どんな会社なのかというと、
シリアルという史上一番ダウンロードされたと言われている調査報道系のポッドキャストの制作会社なんです。
トゥルークライムというポッドキャストのジャンルをこの番組が作り上げたと言っても過言ではない番組です。
これまでに3シーズンほどリリースされているシリアルという番組なんですが、
実際にあった凶悪事件を取り上げて、この番組の制作者であるジャーナリスト、サラケ・エニヒさんが、
警察レベルを超えるような調査能力とジャーナリズム精神で、事件の司法判断にまで影響を与えたのではとも言われているほど、
アメリカでは話題となった番組なんですね。
ただこの番組、ポッドキャストのタイプの中でも一番人、物、金がかかるとも言われているストーリーテリングタイプの番組なんです。
ここで双方、それぞれの買収の狙いといったところなんですが、
シリアルプロダクション側にとっては、このリソースのあるニューヨークタイムズと協力をすることで、
番組制作のスピードアップやニューヨークタイムズの読者へリスナーをシリアル側へ誘導するというような狙いがあるようです。
そして今回のテーマであるニューヨークタイムズ側からすると、
自社コンテンツの中にこれほどアメリカで人気なジャーナリズム系の制作者が加わることで、
ポッドキャストリスナーからも大きくニューヨークタイムズが注目を集めますし、
さらにコンテンツ内容が充実させることができるということが挙げられます。
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そしてもう一つは、新聞社をはじめとするニュースメディアの中でも、
この買収で音声という面から頭一つ抜き出ることができるんじゃないかなと思っています。
現段階でここまで音声メディアに力を入れている新聞社というのはなかなか見ませんね。
日本国内の例を見ても、まだまだ新聞社内のリソースを使ってポッドキャストなどの音声メディアを配信するか、
または例えばボイシーなどのプラットフォームと手を組んで公式チャンネルを立ち上げるという段階です。
新聞社というのも、ここ10年で印刷されたものからオンラインに媒体が移ってきましたよね。
出版業界がこうしてディスラプトされていく中で、ニューヨークタイムズが次なるメディアと言われる音声メディアに先手を打ったという見方、
ここからできるんじゃないかなと思います。
さて今回はニューヨークタイムズがどれだけ音声事業に本気なのかということを、
共合他社の動きとともに探っていきました。
アメリカの人気ポッドキャスト制作会社を丸ごと買収というトップの全国紙もしていない大胆な行動に、
音声メディアに先手を打ったニューヨークタイムズの本気度が見えるような気がします。
さて次回のエピソードでは、そんなニューヨークタイムズがシリアルプロダクションを買収した後、
早速配信された共同制作の番組をご紹介したいと思います。
これ昨年タイムズ氏が発表した注目すべきポッドキャストランキングにも入っていた一本です。
次回はその番組レビューをお届けしたいと思います。どうぞお楽しみに。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
ポッドキャストアンバサダーの新井里奈がお送りしました。
それでは次回のエピソードで。