2022-03-26 07:02

(16)揺らぐ自信 焦り、取り戻せない平常心

阪神が21年ぶりにリーグ優勝した昭和60年。感動で身震いしたバース、掛布雅之、岡田彰布の甲子園バックスクリーン3連発。古葉竹識率いる広島との死闘。日航ジャンボ機墜落事故での球団社長死去の衝撃…。そしてつかんだ栄冠。「吉田義男監督誕生秘話」から「栄光の瞬間」まで、トラ番記者だった田所龍一の目線で、音声ドキュメントとしてよみがえります。

昭和60年の阪神の快進撃を象徴する〝伝説〟の試合―とくれば、誰もが4月17日の巨人戦での甲子園バックスクリーン3連発―と言うでしょう。

 でも、トラ番記者たちが「今年の阪神は違うで」「何かが起こりそうや」と感じたのは、この3連発が出発点ではありませんでした…

 


【原作】 産経新聞大阪夕刊連載「猛虎伝―昭和60年『奇跡』の軌跡」
【制作】 産経新聞社
【ナビゲーター】 笑福亭羽光、内田健介、相川由里

■笑福亭羽光(しょうふくてい・うこう)
平成19年4月 笑福亭鶴光に入門。令和2年11月 2020年度NHK新人落語大賞。令和3年5月 真打昇進。特技は漫画原作。

■内田健介(うちだ・けんすけ)
桐朋学園短期大学演劇専攻科在学中から劇団善人会議(現・扉座)に在籍。初舞台は19 歳。退団後、現代制作舎(現・現代)に25 年間在籍。令和3年1月に退所。現在フリー。
テレビドラマ、映画、舞台、CMなどへの出演のほか、NHK―FMのラジオドラマやナレーションなど声の出演も多数。

■相川由里(あいかわ・ゆり)
北海道室蘭市出身。17歳から女優として、映画、ドラマ、舞台などに出演。平成22年から歌手とグラフィックデザイナーの活動をスタート、朗読と歌のCDをリリース。平成30年「EUREKA creative studio合同会社」を設立し、映像作品をはじめジャンルにとらわれない表現活動に取り組んでいる。
猛虎伝原作者田所龍一

【原作】
■ 田所龍一(たどころ・りゅういち)
昭和31年生まれ。大阪芸大卒。サンケイスポーツに入社し、虎番として昭和60年の阪神日本一などを取材。 産経新聞(大阪)運動部長、京都総局長、中部総局長などを経て編集委員。 「虎番疾風録」のほか、阪急ブレーブスの創立からつづる「勇者の物語」も産経新聞(大阪発行版)に執筆

 

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調子を落とした試合
第16話 揺らぐ地震、焦り、取り戻せない平常心
球団社長が日高機墜落事故の犠牲に?
第17話 バスに乗り込んだ吉田監督は、熱いおしぼりで何度も顔を拭った。
第18話 岡田孝夫のホームランなどで8回表を終わって3対2と1点のリードを奪っていた。
マウンドでは6回から当番した中西が、巨人打線をノーヒットに抑えている。
第19話 中西がワンナウトから腹にフォアボールを与える。ここで中畑がピッチャー前へ送りバント。
第20話 続く吉村もフォアボールで歩かせ、ワンナウト満塁で交番だ。
第21話 後を託された山本一雄も気力を振り絞り、山本雄を空振りの三振に切って取った。
第22話 続く三村のバットも内閣級でへし折った。ところがバキッと鈍い音を発してフラフラっと上がった打球は三類種賭け夫の頭上を超えてレフト前へポトリ。
二人が精悍して3対4。まさかの逆転負けだ。
試合後吉田監督は唇をかみしめた。
中畑のバントがそれでしたな。相手の嫌がることをやり、相手に嫌なことをさせない。そういう野球をしていかんことには飽きません。
今まで自分たちがやっていたことが音を立てて崩れていく。選手への熱い思いも通じない。
ショーとして指導者として自分は本当にふさわしい人間だったのかと疑うほどこの時の吉田監督は追い詰められていた。
もうこの試練は続いた。
社長の遺体確認とプレッシャー
15日の3戦目も1回に巨人の先発江川から吉竹・加計夫・岡田がホームランを放ち3点を奪った。
だがまたしても当主人が踏ん張れない。先発のゲールが1回、いきなり松本・篠塚に連続フォアボールを与え、クロマティにレフト前へタイムリー。
そしてワンナウト後、中畑にレフトスタンドへ13号スリーランを叩き込まれてあっという間の逆転撃。
終わってみれば8対12の完敗だ。
当たり前のことが当たり前にできない。それが大事なゲームに出るのはやっぱり力のない証拠ですな。
私自身汗が出るほど反省しているんです。指導者としてそれを教えきれていなかった自分の未熟さをです。
これほどまでに正直に自分の気持ちをトロする指導者を見たことがなかった。
この時の吉田監督は意地もプライドもすべて脱ぎ捨てていた。
失意の中での巨人戦3連敗。それでもまだ試練は終わらない。
8月17日の広島戦、広島市民球場のセンターポールには反旗が掲げられた。
この日、墜落した日光機に乗っていた中野球団社長の遺体確認が行われ、追悼の意を込めて阪神広島の両球団旗を反旗に掲げたのだ。
亡くなった社長のためにも今日こそは勝つで。
だがその思いは強烈なプレッシャーとなって先発投手陣を襲う。
4対9。またしても東海で4連敗。
その夜のことだ。
密かな集会
広島での先週宿舎、菊川観光ホテルの一室に、加計府や岡田、真由美、川戸裏、主力選手たちが密かに集まったのである。
お相手は正福天皇と、私、内田健介がお送りしました。
07:02

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