産経Podcastでお届けする、「スポーツ、ここが知りたい。産経新聞運動部の田中美鶴です。
今回は、柔道の総本山と呼ばれる東京文京区にあります、工道館から、館長であり、オリンピック金メダリストでもある植村晴樹館長、
そして産経新聞論説院の森田恵一記者とともにお送りします。植村館長、森田記者、本日はよろしくお願いします。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
ここからは、一旦森田記者にバトンを渡しして進行していただきたいと思います。よろしくお願いします。
産経新聞の森田です。植村館長、よろしくお願いします。
よろしく。
まず、簡単な語略歴からご紹介します。
植村館長は、最強の柔道家を決める全日本選手権で、1973年、昭和48年と75年の2度、日本一になられました。
1975年には、世界選手権の体重無差別でも金メダルを獲っていらっしゃいます。その翌年のモントリオール五輪では、体重無差別で金メダルを獲得されました。
現在は第5代、工道館長でいらっしゃいます。本日はよろしくお願いいたします。
まず、工道館は、4月から動画投稿サイトYouTubeで、工道館柔道技というシリーズの動画配信をスタートされました。
すでに何問か配信されまして、アテネ、北京、両オリンピックで連覇されました。
女子の谷本由美さんが得意の内股などについて実演され、解説もなされています。
この技という動画シリーズですけれども、どのような狙いがあるのでしょうか。
元々ですね、工道館では戦前の有名な柔道家から、全て技は実は残してあります。
これはもう本当にね、世界選手権とかオリンピックだけではなくて、日本の名人と言われた人たちの技っていうのは、将来にわたって是非残しておくべきであろうということで、
私がちょうど前10年のヘッドコーチをやっている頃、実は編集に携わりました。
へー、だいぶ前のスタートですね。
そうですね。実はその技っていうのは、もちろん基本に忠実な技からスタートするわけなんですが、
それぞれ体の大きさや、本当に力が強かったりスピードがあったりとか、いろんな個人によって顔形が違うぐらいにですね、
実は同じ技でも足の突き方とかいろんなところが違いがあります。
やっぱりそういうところをね、やっぱり後世の人たちにきちんと、やっぱり自分はあの体型とあのスピードぐらいだから、こういう突き方がいいかなという、
そういうね、やっぱり一つ見本になればと思って実は作ってきました。
しかしながら、実は斉藤博史くんまでしか作ってなかったんですね。
その後の人たちが実はありませんで、私もこれはいかんということで、
もう近年、やっぱりこの人の技は素晴らしいっていう人たちの技、
そしてオリンピックで頂点を極めた人たちの技を残そうっていう発想のもとに実は収録してまいりました。
はあ。会長、ちなみにその最初の初期の斉藤さんの前までっていうのはどういう方々、監督ご自身もいらっしゃる?
私も出ております。まだ体、やっと、そうですね、35歳ぐらいでやっと体動かしておりますけどね。
まあそういう時に、この前もちょっとたまたま見てみましたけど、
まだきちんとおうち狩りと対応とし、ちゃんとかけれてたなと思いました。
当時はビデオだったんですか?
ビデオです。VHSのビデオでね、作って、それこそもう一番古くは、
第五先生とか大沢先生、柔軟の先生方が自分の得意技を披露されてますし、
その後、上永先生とかね、いろんな先生方がやっぱり出て、技をきちんと説明されております。
このタイミングで、このような、英語の字幕なんかもありましたし、世界を向けてということだと思うんですけれども、
このタイミングで発信されたっていうのは何か狙いというのはありますか?
これはね、やっぱり柔道の技そのものが、だんだんと変化してしまったところがあります。
投げるとかね、もうほんと狩るとか払うとか、それをきちんとやっぱり体現していかなければ、
技はね、やっぱりきちんと組んで、そしてやっぱりこれを崩して、そしてそこにタイミングよく入るのがやっぱりこれ大事ですので、
やっぱりそれのお手本となるような技っていうのをね、外国人の人たちも見てもらって、
これこそ技だっていうのをね、やっぱり示していかないと、
柔道そのものがただ足取ったりね、ひっくり返したり、押し倒したり、それでは面白くありません。
ちっちゃな人が大きいものを投げるためにはどうしたらいいかとかね、
もうほんとに足先で狩るような足技とかね、やっぱり押すとありでも、いろんな角度から入って投げるのは押すとありとか、
内端でも足をパッと上げて、あの斬新の姿とかね、そういうものをね、やっぱり見て、
外国の人たちもね、できないわけありません。昔から技うまい人もいっぱいいますので、
やっぱりその自分のね、一番いい特性、手足の長い人は手足の長いものを武器にして、
力のある人は力を武器にして、やっぱりそういうものをね、きちんと体現できるような技っていうのを、
私らはやって、そして真心の試合をして、試合の場で戦っていただくっていうもとに、
これはだから日本だけではもったいないです。世界の柔道家の人たちに、
やっぱり私は見て勉強してほしいと思います。
すでに何問か私も拝見したんですけれども、音声も非常にきれいな音声が入ってますし、
映像も非常に美しくて、もちろん技を掛けられる方も非常に美しい技を掛けられていらっしゃいまして、
行動感の思い入れっていうのをすごく感じるんですけれども、
館長ご自身はこの今回の配信にどのような思いっていうのを持って臨んでいらっしゃいますか?
やっぱりこれ本当に今、この時に残さなきゃいけない技っていうのは、
私はちょっと何年か相手、本当は現役終わったらすぐみんな元気なうちに取っておこうよという話をしてたんですが、
私もちょっとバタバタしてて忘れておりました。
これは技っていうのは、やっぱり現役中はなかなかやっぱり丸裸にして技を見せるわけにはいきません。
やっぱりそれぞれが工夫して、それぞれの特徴のある技っていうのを個人で発見して作り上げた技ですので、
それを分解してしまってみんなに提供するわけにはいきませんので、
現役終わった後にきちんと残しておこうと。
本人たちの技っていうのもその元気なうちに、
私も久しぶりに自分の技を古いビデオの中で見てみましたけど、
ちゃんと体動いてるなと思いました。
今はとてもじゃないけど、そういう低く入ったりはできませんけどね。
そういうものを残していくっていう技っていうのは、
その一番光を輝いているときに私を残してあげたいと思ったのが一番です。
柔道を創始されました加納二五郎師範が生み出した行動感の柔道と、
それから私たちがオリンピック、あるいは世界選手権で目にする競技スポーツとしての柔道という部分は、
随分と技とかあるいはルールに大きな違いがあると思うんですよね。
世界では足取り技の禁止っていうふうなことも、
今は競技スポーツの柔道ではなしで行われていますし、
小さい方が大きい方を倒すような柔欲豪勢するというような場面というのが、
あまり見られなくなったような気がするんですけども。
いや、私はね、それがもう柔道だと思います。
全て私たちは、例えばその時代によってルールは変わっていく。
そんなもんだと思っています。
その中で力を出し切るっていうのが、私は柔道の本質だと思っています。
小さいものが大きいものを投げる時にどうやって投げるか。
私は比較的に、無差別の中で戦った中で一番ちびでした。
1メートル74、100キロしかありませんでした。
ほとんど戦う相手が2メートル近くある相手で、140キロ越すような人たちでした。
それでも腰を曲げて戦えたっていうのは、やっぱり柔道の持つ技っていうのを
私は追い求めた結果だと思っています。
体さばきもそうだし、投げるだけが技じゃありません。
自分の体を微妙に動かしたりずらしたりすかしたりするのも技ですので、
私はそういうものを全てみんな体得してほしいと思います。
ただ、足取りが禁止とか、それはもう仕方ないです。
足取りばっかりして始まったら、どうしても直線的な動きの柔道になってしまいますから、
それはある一時期に禁止してもいいと思います。
ただし、それも柔道だ。
それで日本が、合同館が、もしあれは柔道じゃないって言ったら、私は負けだと思っています。
私たちは今海外に行っても、柔道ってこういうものだって、私が真っ直ぐ組んでみせます。
もうなかなか年取ってうまくはいきませんけど、
それでも柔道技をいかに上手に動かすかとか、
手首とか肘の関節の動かし方っていうのを今もやってみせますけど、
そういうものを私らができるうちにきちんと指導していかなきゃいけないと思います。
日本国内でも、私らはそれを残していかないと、そのうちに誰もできなくなってしまう。
それからまたゼロからスタートするっていうことは、大変な力が要ります。期間が必要です。
でも、せっかくここまで残してくれた技があるから、
それを見て、ああすればいいんだっていう大きなヒントになったり、
自分の参考になってくれたらいいなと思います。
ある意味では、日本の美しい技を世界に発信して、柔道が戻れる場所を作っておくという、そのような…
柔道っていうより、技っていうのは、私、いろんな書き方があるけど、
私は綺麗じゃなくちゃいかんと思うんです。
技って何が綺麗かっていうと、無理のない姿で立つ姿勢、
無理のない姿で投げる姿勢が一番綺麗だと思っています。
だから、やっぱりちょっと横向きになって、力でこうやってどうにか巻きつけて投げるっていうのは、
綺麗じゃないと皆さんが見ても思うと思います。
やっぱりきちんと崩し作りかけを体現した技っていうのを、
私らは目指して、それを見せてあげないと、やっぱり見たことのない技ってなかなか難しいです。
でも一回そうやって映像で見たら、やっぱりあの投げ方、あの形が必要なんだと。
それと、今のビデオっていうのは音を拾います。
実は投げる音とか、足をさばく音、人に当たる音っていうの、
あの音っていうのだけはごまかしかいかないんですね。
それをやっぱり微妙に取られて、この高等館の特別道場で周りを遮断して、
そしてあの音を拾うために下にマイクを入れたりとか、いろんなこともしています。
やっぱりその音の大切さっていうのも体現してほしいなと思います。
伝統ある高等館がそういう近代的なハイテクしたデジタルを使って伝統を残していくっていう、
そういう工夫をされているっていうことですか?
残すっていうことは単なるね、私は難しく教えることじゃないと思うんですよ。
やっぱり分かりやすく見やすく、そして目安となるものをつけて、
そして初めて子供たちにね、もう本当物理を教えて難しいのを教えてもなかなか理解できないと思うんですよ。
でも重たいのと軽いのどっち持った方がいいか、それを動かせるかっていうのをやっぱり自分でやってみせてね、
やっぱり簡単に難しいことを簡単に教えるのが私は指導だと思っています。
だから今回やってるのは見て分かりやすく、自分がどうしたらできるかっていうことのヒントを渡せるようにと思っておりますけどね。
シリーズの動画に登場されているのは早々たる方々だと思うんですよね。
まず谷本愛美さん、先ほどご紹介しました。
それから山本陽介さん、男子65キロ級の元世界チャンピオンでありソウルの同メダリストですね。
それから塚田牧さん、アテネの女子78キロ長級の金メダリストで、
全日本女子選手権9連覇、クイーンオブ女子銃闘と私は呼んでますけど、
それから田辺陽子さん、バルセロナアトランタの両五輪の女子72キロ級の銀メダリストで、
全日本女子選手権も6連覇されています。この方もレジェンドですよね。
そういった方々がご出演されて、今後上村館長を出演される予定っていうのはありますか?
今年はもう古いやつに出ておりますので、
今実はたくさんの選手たちに撮っております。
やっぱりそれをね、小出しじゃって言ったらおかしいですけど、順次配信していきたいと思っています。
やっぱりこれはね、噂のキレとか、最初の谷本選手の足を見ましたか?
内股の相手があの足を上げてピッとあの上げて静止できる姿っていうのは、実はそう簡単にできません。
私らはとてもじゃないけどもできないですね。
でも彼女はあの噂ができるっていうことを、できるうちにやってほしかったです。
今回一番かなりインパクトあったと思いますけど。
その後にね、どちらかというと軽量級の山本耀介さんがやって、
そして重量級の塚田さんがやって、それぞれ同じ技でもね、少しだけかけ方が違うっていうのを
やっぱり皆さんに聞いてほしいなと思うんですよ。
皆さんこう、なかなかお忙しい中だと思うんですけども、
その行動感の依頼には割と技を残すというその意図を理解して、
すぐ開学してくださった方々。
そうですね、皆さん協力的で非常にね。
私も編集をしているとき見に行きましたけど、
やっぱ音が違うねっていう話をしましたけど。
ちなみに今後どのような方のご出演が今のところ予定されているんでしょうか?
おっしゃっていただける範囲で。
いろんな人が出ますけど、中村さん兄弟も出るんじゃないですか。
あんまりタレは明かしたくないですけど。
いろんな近年メダル取った人たち、男女問わずたくさん出ていただくつもりでいます。
配信をご期待としております。
そうですね、ぜひ月に1回ぐらいの目安で出していくと思いますので。
課長、ちなみに先ほどおっしゃられた技というもので、
やっぱりいろんな見え方とか体の使い方とかいろんなものがあると思うんですけど、
課長ご自身が現役時代であったりとか、指導者として、
日本、国内、国外、多くの選手を見てこられたと思うんですけども、
この選手の技というのはすごいなというか。
みんなね、技はそれぞれ工夫しています。
私は参考になるところはそれぞれの選手たちにあります。
それは技って何なのってよく言われます。
私は一言で言えちゃったら、力の抜き方だって言います。
それは大人がしてしまっていることであって
子供たちのせいではないと思います。
大人も一緒に私はそういう修行を学んでほしいと思います。
過激なことを教えない。
おじいちゃんの気持ちになって教えなさいとか言うんだけど
子供たちにあまり負荷をかけたり減量させたりとかそういうのは反対です。
でも実は5月5日にここで少年団の万代戦の試合をやります。
それはもうみんなそれを目指してくる人もいるし
私一緒になってチームで協力しながら負けても
一緒に誰かがかばってあげたりとかいろんなことをして
その中で絆というのが生まれてくると思いますし
そしていろんな人たちと知り合うということは大事なことだと思うし
そういうものを体験してあげたい。
私は逆に国際的なイベントもやりたいなと思うぐらいです。
日本だけではない、世界の人たちとの交流をする場を
いろいろ作れたらいいなと思っています。
交流することによって貴重な人生経験を彼らに積んでもらう。
そうですね。
今から先というのはね、今日も私の頃海外行くときには
まずスーツを新調してトランクも買ってとか
そういう気持ちで行ってましたけど
今の選手たちはGパンツTシャツで行ってたりとかね
もうそのくらいフランクに外との付き合いができるようになりました。
もともと海外に、私がナショナルチームを率いている頃
海外に合宿行くと言ったら大反対でしたからね。
なんていうか、海外に柔道を習いに行くかと言われました。
いや、ちょっと待ってください。習いに行くんじゃありません。
慣れに行くんですって言って、そういう言い方をしながら
合宿行っていましたけど、海外合宿がタブーな頃でしたからね。
でも今はもう平気でみんな交流してますし
それによっていろんな世界の人たちとも友達ができて
私はカノシアンが目指されたのは、もちろん柔道を通じて
心身の成長させて人格形成して
世の中のためになる人間になれっていう教えがあります。
子どもたちには元気に体を鍛えて、そしてまずは体鍛えなさい
そこには健全な心が宿ると。そしていろんな交流することによって
いろんな世界平和につながると。だから私はもう
カノシアンが目指されたことは間違いじゃないと思ってますし
私はそれを実践していきたいと思います。
今は国際セミナーとかできませんけど
海外の人たちが来たり、子どもたちも来てもらったり
ロシアからも実は子どもたちが来てくれたりもしてました。
私はそういうものは続けていきたいと思います。逆に。
館長、今年で71歳になられたんですね。
はい、ありました。
本当にまだまだご尊敬で、何か健康、柔道にまつわる
これをやってるから尊敬があったというような
特別なことはやっておりません。