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こんばんは。今夜もまた、おやすみ歴史ラジオの時間がやってきました。
ベッドに入って、一番リラックスできる姿勢で聞いてね。
長篠・設楽原の戦い(第2話のお時間です。
前回は、命を賭して長篠城へ寄宝を届け、壮絶な最後を遂げたトリース・ネーモンの忠義と、
救援に駆けつける小田・徳川連合軍の動きについてお話ししましたね。
スネーモンの叫びによって長篠城の城兵たちが息を吹き返し、見事に牢城を持ちこたえていた頃、
織田信長と徳川家康が率いる3万8千の大軍は、長篠城の少し西側に位置する下らが原に到着していました。
下らが原は、つらなる小高い丘と、その間を流れる小さな川や湿地帯が広がる複雑な地形をした場所でした。
兵力で圧倒的に勝る信長でしたが、正面から武田の無敵の騎馬軍団とぶつかる危険性を誰よりも熟知していました。
風のようにかけ、敵の陣形を粉砕する武田の騎馬隊は、これまで幾多の戦で恐れられてきた戦国最強の精鋭たちだったからです。
そこで信長は、ただ大軍で押しつぶすのではなく、下らが原の地に巨大な罠を仕掛けることにしました。
信長が兵たちに命じたのは、攻めるための陣作りではなく、徹夜での大規模な防衛工事でした。
つらなる丘と丘の間に、木々を固く組み上げた二重、三重の馬坊柵を途切れなく張り巡らせていったのです。
馬坊柵の足元には掘り下げた溝を掘り、馬が飛び越えられないような工夫が凝らされました。
さらに信長は、全国からかき集めた三千体もの火縄銃を陣内に配置しました。
従来の戦では、火縄銃は一度撃つと次の段を込めるまでに長い時間がかかるため、集団での決め手にはなりにくいと考えられていました。
しかし信長は、兵を三列に並べ、一列目が撃ち終わったら後方へ下がり、二列目、三列目が順番に引き金を引くという、連続して途切れることなく弾を放ち続ける画期的な作戦を考案していたのです。
静まり返る暗闇の中、木を打つ音と土を掘る音が徹夜で下良ヶ原に響き渡り、武田の騎馬隊を迎え撃つ完全な要塞が完成していきました。
下良ヶ原に強固な策と大規模な陣地が築かれていく一方で、武田勝頼の陣営では激しい軍議が行われていました。
山形正影や馬場信晴といった七神原の時代から武田家を支えてきた老練な名将たちは、織田軍の不可解な動きにただならぬ危険を感じ取っていました。
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織田は圧倒的な大軍でありながら、攻めて来ず強固な策を築いて待ち構えている。
これは我らを誘い込む罠に違いない。一度引き、体制を整えるべきだ。
宿郎たちは口々に大撃を買い進め、無謀な正面突破を強く押し止めようとしました。
しかし、長篠城の攻略が難航し、若き闘士としての威信を示したかった勝頼は、獣神たちの決心に耳を傾けようとはしませんでした。
天下の武田騎馬隊が高高きの策などに阻まれるものか。
敵の数が多かろうと、我が騎馬の突進力をもってすれば一気に陣形を粉砕できる。勝頼はついに全軍へ突撃の命令を下しました。
獣神たちは主君の決断に深く息をのみながらも、武田武士の誇りを胸に静かに覚悟を固めました。
これが己の最後の戦になるかもしれないと悟りながら、兜の緒を固く締め直したのです。
天正三年五月二十一日、未明、湿り気を帯びた朝靄がしたらが原を薄く覆う中、武田軍一万五千の兵が動きました。
風鈴火山の旗印が朝風にはためき、凄まじい地鳴りのような馬蹄の音が大地を揺らし始めます。
先陣を斬ったのは、赤い甲冑で身を包んだ名将、山形政影率いる赤備えの騎馬隊でした。
赤き疾風のごとき騎馬軍団が、一列となって織田、徳川連合軍の待つ滋賀原の策へ向かって一直線に突き進んでいきます。
対する織田陣営の策の後ろでは、兵たちが静かに火縄銃を構え、息を殺して迫りくる赤備えを引き寄せていました。
両軍の距離がみるみるうちに静まり、運命の瞬間が刻一刻と近づいていました。
赤き鎧を身にまとった武田の騎馬隊が、地鳴りを立てて滋賀原の斜面を駆け下りてきます。
大地を揺るがす馬蹄の音と猛烈な気迫は、並の兵であれば立ちすくんでしまうほどの圧迫感でした。
しかし馬蹄の後ろで静かに火縄銃を構える織田の兵たちに、同様の色はありませんでした。
信長は敵を十分に引きつけるよう厳しく命じ、射程距離に入るその一瞬を、じっと息を殺して待っていたのです。
武田の戦法が策の手前、わずか数十歩の距離にまで迫ったその瞬間、信長の号令と共に一斉に銃声が響き渡りました。
雷鳴のような号音が滋賀原の谷間にこだましかきならし、白い硝煙が一瞬にして辺りをくるみ込みます。
一列目の射手が放った弾丸は、突進する騎馬隊の前列を容赦なくぶち抜きました。
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通常であれば、弾を込め直すわずかな隙をついて武田の騎馬が迫るところですが、信長が編み出した三段構えの陣形がその常識を打ち破ります。
一列目が尻賊と同時に二列目が前衛で、途切れることなく次の雷鳴を響かせました。
次々と繰り出される十段の雨の前に、無敵と謳われた武田の騎馬隊は馬防策を超えることすらできず、次々と倒れていきました。
焦った武田軍は側面に回り込もうと試みますが、ぬかるんだ湿地帯と張り巡らされた溝に足を取られ、そこへ再び激しい射撃が浴びせられます。
武田の将兵たちは凄まじい執念で何度も押し寄せましたが、固く閉ざされた馬防策と絶え間なく放たれるひなわじゅうの壁を打ち破ることはできませんでした。
かつて数々の戦場で勝利を重ねてきた名将たちの血によって、したらがはらの大地は深く染まっていったのです。
時代の大きな変化を告げる銃声が激しく響き続けていました。
今夜のお話はこれでおしまいです。
硝煙が立ち込める戦場の緊迫感と、新時代へと移り変わる歴史の息吹を感じながら、どうか今夜は心も体もゆっくりとお休みさせてあげてくださいね。
次は一体どのような激動の瞬間があなたを待っているのでしょうか。
それではおやすみなさい。