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スピーカー 1
人間の目的は、生まれた本人が本人自身に作ったものでなければならない。
始まりました。「大人の近代史」よろしくお願いします。
スピーカー 2
よろしくお願いします。
なんか、哲学的だね。
スピーカー 1
そう、哲学、まあそうだね。
あのね、これ、夏目漱石の「それから」っていう小説の一節なんだけれども、
スピーカー 2
ただちょっとこれ、全文がないとわかりづらいから、ちょっと全文も読みます。
スピーカー 1
人間はある目的を持って生まれたものではなかった。
これと反対に、生まれた人間に初めてある目的ができてくるのであった。
最初から客観的にある目的をこしらえて、それを人間に付着するのは、
その人間の自由な活動を、既に生まれる時に奪ったと同じことになる。
だから人間の目的は、生まれた本人が本人自身に作ったものでなければならない。
っていう風に続くんだよね。
スピーカー 2
おお、すごいね。
夏目漱石って、人生にすごく思い悩んで、それを作品に投影してるっていう人なんだよ。
スピーカー 1
というか、夏目漱石に限らず、自分が生きている目的は何なんだろうみたいなのは、
たぶん1回ぐらいみんな考えたことあると思うんだよね。
夏目漱石もこう言ってるんだけど、自分が生きている目的は何かっていうのを考えるっていうのは、
誰しも思い悩むことはあるんだけれども、その答えはなかなか見つかるものではありません。
スピーカー 2
で、それでも自分で考えて行動して、自力で見つけ出すしかないのですっていう形で言ってるんだよね。
スピーカー 1
そんな感じでちょっと前置き長くなりましたが、今日は夏目漱石をやります。
スピーカー 2
いやー、来た。なんかすごい。もうこの出だしから期待感いっぱいですね。
スピーカー 1
この夏目漱石ね、俺やっぱりね、結構好きなのよ。好きだからさ。
今日その好きなのを語るっていうところで、温度感が若干心配なんだけれども、
どちらかというと概略というか、夏目漱石ってこんな感じの人生でした、こんな感じの人でしたっていうのをちょっと分かるように言っていきたいと思いますので、お付き合いいただければと思います。
スピーカー 2
はい、ぜひお願いします。
スピーカー 1
早速ちょっとおいたちから入るんだけれども、まず夏目漱石っていうのはペンネームなんだよ。
スピーカー 2
あ、そうなの。
スピーカー 1
そう、漱石がペンネームね。本名は夏目金之助って言うんだよ。
スピーカー 2
へー。
スピーカー 1
で、今日は、もちろん金之助って言ってもピンとこないと思うので、漱石で統一させていただきますので、そこはご了承ください。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、夏目漱石なんだけれども、1867年に生まれて、家族、親は、父親ね、は町名主だったんだよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
ただ、1867年っていうのを聞けば分かるけれども、江戸時代は町名主だったんだけれども、明治に切り替わって町名主っていうのが廃止されちゃうんだよ。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
だから、没落していくことになるの、夏目家っていうのは。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
まあ、すごいお金持ちだったんだけれども、どんどん貧乏になっていくっていう風にイメージしてもらえればいいかなと思います。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
で、漱石は8番目の子供だったんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だからさ、8番目だからさ、もう親も結構高齢なのよ。父親が51歳で、母親が41歳の時の子供なのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、まあそんなんだから、もうお母さん、母親はもうお父が出なかったのね。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
だから、育てるのがちょっと厳しいなってなって、漱石は里子に出されることになるのよ。
スピーカー 2
うん。
ただ、里子に行った先がちょっとひどい扱いをしてたから、それをちょっとかわいそうだなって思ったお姉ちゃんがいるんだけど、お姉ちゃんが連れて帰ってくるのよ、結局。
うん。
スピーカー 1
ただ、やっぱり家は家で、どんどんどんどん困窮していくし、お父も出ないしっていう状態だから、塩原家っていうところに養子に出されるのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
まあ、この時はちょうど1歳の時だったんだけれども。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
で、その塩原家でちゃんと息子として育てられるんだけれども、
その行った先の塩原家の夫婦が、漱石が9歳の時に離婚しちゃうのよ。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
で、離婚したからしょうがなく夏目家に戻されることになるの。
スピーカー 2
うん。
つまり、9歳になって初めて、本当の家族と暮らすようになるんだよね。
うん。
スピーカー 1
ただし、この時は塩原家の両親が本当の父親母親だと思ってて、夏目家の両親っていうのは祖父母だと思ってたのよ。
勘違いしてたって言えばいいのかな?
スピーカー 2
ちゃんと説明されなかったんだ。
スピーカー 1
そうそうそう。で、家族としてもそれでいいやって感じになってて。
で、ただ、これは後々にその夏目家で働いてたお手伝いさんから本当のことを聞かされるっていうところで、後々知ることにはなるんだけれども。
スピーカー 1
とりあえずそういう感じで、なんか夏目家にいるんだけれども、ちょっとこうよそ者感っていうのはずっとあった。
まあ、要はちょっと壮大感だよね。はずっと持ってたらしいのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、母親はとは言ってもすごくやっぱり、まあ自分のお腹を痛めて生んだ子供だからやっぱり愛おしかったんだろうね。
母親はすごく優しくしてくれたんだって。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
なんだけれども、その母親は漱石が14歳の時に病気で亡くなっちゃう。
で、結局そうすると漱石の味方をしてくれるような人が身内にはいなくなっちゃうのよ。
父親はすごく厳しかったし。
あの、兄とか姉とかいたんだけど、どっちかっていうとこうよそ者扱いはされちゃうから。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、漱石は通ってた中学も辞めちゃって、で、漢学の塾に入るんだよ、その後。
スピーカー 2
はい。
漱石って漢学みたいな、そのいわゆる中国の古典がすごく好きだったんだって、その当時。
うん。
スピーカー 1
ただ、親とかからも結構反対されて漢学の塾入ったんだけれども、なんかその塾といっても寺子屋みたいな感じだったらしくって、漱石はちょっと肌に合わないって思って、
自分でこう選んで中学辞めてまで入った漢学の塾を結局辞めちゃうんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
なんかそんな感じで結構行動力があるというか、思い立ったらすぐ辞めたとか、そういう感じの人なんだよね。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
で、漢学を辞めた理由って一応あるんだけども、なんか漢学って古臭いんだよ、学問としては。
スピーカー 2
うん。
当時明治維新でさ、西洋のさ、新しい知識っていうのが入ってくるわけじゃん。
うん。
スピーカー 1
そんな中、中国のさ、古代の、もう古典みたいなものを勉強してても、これは自分が時代に取り残されるんじゃないかって思って、一応それで辞めるんだよね。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
で、漢学の代わりに、ここで文学にものすごく興味を示すようになるのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
ただ、さっきも言った通り、明治維新を迎えて、世の中は文明改革っていう時代なわけよ。
だから、西洋の勉強をしないと取り残されるんじゃないかっていう思いはあったから、文学はすごくやりたかったんだけれども、結局洋学を学ぶようになるのよ、ここからは。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、英語が別に好きだったわけじゃないんだけれども、一生懸命英語の勉強をして、東京大学の予備文予科までに入学することになるんだよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、そこで夏目家からは離れて、簡単に下宿することになるんだけれども、その予備文の学生って、昔で言うバンカラって呼ばれる、ヤンキーとか荒くれ者みたいなさ、そういう人ばっかだったらしいのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だから、漱石もそういう人たちと友達になるから、漱石自体も遊び回るような感じになっちゃうんだね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だから、せっかく入った予備文なんだけれども、落題しちゃうんだよ。
スピーカー 2
えー、なんかそんなイメージないね。
スピーカー 1
そうそう。あんまりそういうイメージないと思うんだけれども、この時は落題することになって、しかも追試を受ければ、合格ができれば別に進級はできたんだけれども、追試すら受けさせてもらえないことになっちゃうの。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
これは素行が悪かったから、お前なんか追試受けさせないよってピシャって切られちゃったわけ。
スピーカー 2
えー。
スピーカー 1
で、そのことがきっかけで、漱石は人から信用を得るっていうのはものすごく大事なんだっていうことを学んだって言ってるんだよね。後々で。
スピーカー 1
で、漱石はその後東大出て英語の講師になるのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、松山に行って働くことになるのね。松山に行った理由は正岡四喜の故郷だったからなんだけれども。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、そこで正岡四喜ともう一時的にだけど同居したりするのよ。
スピーカー 2
すごいね。
スピーカー 1
うん。だからすごい仲良かったんだよね。
で、ちょうどその頃にね、結婚する奥さんとお見合いをするの。中根京子っていうあの女性なんだけれども。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、これもまた漱石のヘックスなところで、なんでその中根京子がいいかなって思ったかっていうと、なんか歯並びが悪いのにそれを隠そうとしないところが気に入ったって言ってるのよ。
スピーカー 2
へー。
スピーカー 1
よくわかんない理由。
スピーカー 2
あーでもすごい笑顔が素敵だったんじゃない?
スピーカー 1
うーん、まあ多分そういう意味なんだろうけどね。別に歯並びが悪いとか言わなくていいじゃんって。笑顔が素敵だから気に入ったって言えばいいじゃんって。だからちょっと変わってんだよねやっぱ。そう思わない?
確かにね。
で、その後松山で働いてたんだけど熊本に結婚してね、引っ越すことになるのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、京子との間に子供を授かるんだけれども、その初めの子供が流産しちゃって、その京子が精神的におかしくなっちゃうってことがあるのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、その後ただ無事に今度はちゃんと流産せずに長女が生まれるっていうような感じで、結婚してからもあんまり良いことだらけではなかったっていうところがまずあるんで。だから結局人生に常に山あり谷ありの人なんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、この頃教授にもなるんだよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だから普通に考えたら人生としてさ、結婚もしてさ、職務もちゃんと手につけて、まあそこそこいい給料の教授なわけじゃん。だから決して今で言ったら割と勝ち組みな人生だと思うんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
ただ、漱石はものすごく思い悩んでるの。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
なぜかというと、漱石がやりたいのは文学でしょ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
やれてないんだよ。英語の講師だからね。全然関係ねえじゃんっていう。
スピーカー 2
はいはい。
スピーカー 1
だから自分が本当にやりたいことについてもうずっと思い悩んでるんだよね。ただ、結局生活だ、何だとかいろいろ結婚をしちゃってるしとかいろいろそういうのを考えると、まあこのまま仕事を続けていくしかないかなみたいな、でもなあみたいなのはずっとこう悶々としてたわけよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
そんな中、ちょっとチャンスというか天気が訪れるんだけれども、ちょうど文部省から英語研究のためにイギリスに留学してこいっていう通達が届くのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
それで、まあ結婚もしてるし子供も生まれてたんだけれども、留学することに決めるのイギリスに。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
まあこれはもちろん悶々としてたっていうのもあるし、なんかこう変えるきっかけが欲しかったのかなとかとも思うんだけれども、まあいろいろそういうなんか内情、個人的な理由とかもあってイギリスには結局留学することになるのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、ちょうどパリ万博やってたからパリ万博を見てその後ロンドンに行くんだけれども、あ、ちなみにこの頃のイギリスっていうのはビクトリア女王知性化のもう最盛期の頃で、例えば教育だったり経済だったり科学技術とかそういったものっていうのはものすごく世界一発達してたわけよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、その繁栄の象徴が首都ロンドンだったのよ。で、そのロンドンに夏目漱石は行くわけ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、ただロンドンで華やかな生活を送れたかっていうと全然そんなことはなくて、お金は多少支給されるけど全然生活するのにはもう本当にギリギリのような感じのお金しかもらえないからすごく大変、まあ大変ね、貧しい生活をしてたと言われてるんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
加えて勉強もなんかこう思うようにはかどらなかったのよ。で、だから結局精神的にこうどんどんどんどん追い詰められてっちゃうんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
しかもこれ追い打ちかけるような出来事があって、ちょうど留学してる時に親友の正岡式は亡くなっちゃうのよ。
スピーカー 2
へえ。
スピーカー 1
それは手紙で知って亡くなったっていうことも、それを知ってなんかどんどんこう精神的に参っちゃうんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、そんな感じでロンドンで結局何か得たものがあったかって言われると、まああるんだろうけどなんかあんまり目に見えた成果もなく帰ってくることになるのよ。
スピーカー 2
わかんないね。
スピーカー 1
うん。これね、これもなんかね、やっぱ漱石っぽいなって思うんだけれども。
沈石走流っていう言葉があるのよ。石を枕に流れに口すすぐっていう意味なんだけれども、これをなんか間違えて沈流走跡って言っちゃった人がいるのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
沈流走跡って言っちゃって、でもなんか、いや、それは間違いじゃないんだぜみたいなことを言い出してその人が。
私は流れに枕するのは耳を洗うためだし、石に口すすぐのは歯を磨くためであるみたいなことを言って負け惜しみを言ったんだよね。
何のことだかわかんないけど。
漢字で書くとわかるんだけど、沈石走流っていうのが枕の石、層は層石の層ね。で、流れるで、層って口すすぐって意味なんだよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だから、沈石走流は石を枕に流れに口すすぐって意味なんだけれども、沈流走跡って言い間違えちゃったから、沈流、沈、枕が流れるでしょ?口すすぐ石でしょ?っていうことで、それは間違いだって指摘されたんだけれども、
いやいやいや、流れに枕するのは耳を洗うためにやってたんだよって。で、石に口すすいだのは歯を磨くためにやったんだよみたいなことを言ってよくわかんないことを言い出したのよ。
その人は。
で、そういうことを、そういう何だろう、話があって、じゃあこれは自分にぴったりだなっていうんで、要は頑固で意地っ張りな人なわけじゃん。それを言った人っていうのは。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
自分が間違えたって認めないで、無理やりこじつけて、負け惜しむ言ってる人だから。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
だから、沈流走跡の走跡っていうのを使ったのよ。
スピーカー 2
へぇー。
スピーカー 1
そんな感じの名前なんだよね。だから、でも走跡っていい名前だなってちょっと個人的には思ったんだけどね。
スピーカー 2
なかなかないけど、いい名前、響きだよね。
スピーカー 1
うん。そうなんだよね。で、あの、我輩は猫であるで、小説家としてちょっと注目されて、その後、ぼっちゃんとか草枕っていうのを出筆するのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、どちらも雑誌が売り切れるほどの人気作になって、世間は走跡を人気作家として認めるというか、もてはやすことになるんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、やっぱりそうやって成功したことによって、やっと文学に対する決意が固まって、走跡この時40歳なんだけれども、40歳にして今までやってた講師職を辞めて、新聞社専属の作家に転職するのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、これ新聞社っていうところがミソで、要は、会社、ま、イメージとしてだよ。
会社員として新聞社に勤めながら、ただ専属の作家として、あの、新聞に載せる原稿を書くみたいな、そんな人なんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だから、なんだろう、やっぱりこう、安定をちょっとこう求めたっていうところもあるのかな。そういう意味で言うと。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
そう。で、この時に漱石が言ったことは、とにかく辞めたきは教師、やりたきは創作って言ってたぐらいで、もう本当に教師辞めたかったんだろうね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、やっと自分のやりたいことに手を出せるようになってったっていうところなんだよね。
ただ、あの、新聞社勤めになって、今度逆にプレッシャーを感じるのよ。
だってね、大学の教授職を、教授というか講師職を辞めてさ、ぶっちゃけグレードとしては落ちるわけよ、新聞社勤めっていうのは。世間体で言ったらね。
だけど、そういうちょっと変なことをやっているからには、いい作品が書けないと、なんかダメじゃないっていうプレッシャー感じちゃうんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
でもそのプレッシャーを何とか跳ねのけて、グビジンソーっていう今度作品を出すんだけれども、これもう人気作になるんだよ。
スピーカー 2
あ、そうなんだ。
スピーカー 1
で、この後立て続けに幸福とか夢中夜とか三四郎っていうものだったりっていうのを出してくるわけね。
スピーカー 1
まあ結構この辺は有名作。
で、この三四郎を執筆の間に福を呼んだ福猫は亡くなっちゃっているっていう、まあちょっとね、残念なことは起きるんだけれども。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、作家として成功を収めた曹石の元には多くの文化生も集まったんだけれども、曹石って割とそういう若い作家たちにも面倒見が良かったんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
これは講師をやってたからかもしれないんだけれども、でも講師ってすごい嫌だったわけじゃん。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
でも不思議と作家になってからは、なんかそういう面倒見がとても良くなったらしいの。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
だから若い作家たちのために紙面にここにお前の作品載せていいぞみたいな感じで言って、載せさせてあげたりして注目を集めるようになんか手伝ってあげたりしてたんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、ちなみに曹石って結構近現実直なコアモテみたいなイメージが世間体的にあったらしいんだけれども、これ文化生が言うには割と常に厚くて、なんか皮肉だったりダジャレとかいうちょっとね、お調子者みたいな側面もあったって言ってるんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だから結構人間味のある人なのかなとは思うんだけどね、そういう意味で。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
で、この後、曹石三部作って言われるさっき言った三四郎をそれから、それからは冒頭で言った一節の本ね。で、門っていう小説を書いていくんだけれども、ちょうど門の執筆が終わった頃に曹石が大量の隔絶をしちゃうのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、しかもこれ一時的にだけれども既得状態にまでなっちゃうの。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
だけどここでは何とか一命を取り留めることになるっていう感じで、ここから今度病気との戦いが始まっていくのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、ちょうど門部長から曹石に文学博士号を授与するっていうような通知が来るんだけれども、そういうのは全部断って、もう私は要らないものは要らないんだって言って、なんか権威とかそういったものじゃなくてやりたいことをやるっていうような意思表示をするようになるのね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
多分どこかで、病気で一時既得状態になっちゃったぐらいだから、どこかでやっぱ自分の死っていうものを意識してるんじゃないかな、この頃になると。
だから、やりたいことをとにかく徹底的にやりたいっていう気持ちはすごく強くなってるんだと思う。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
まあ、病気のせいもあるし、ちょうどまたこの頃に今度、後女を、娘を生まれてすぐ亡くしちゃうっていうことに見舞われちゃうのよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、精神的にも結構追い込まれちゃって、で、例えば胃肺炎だったりとか、胃の症状が出たりしてどんどん悪化してって、そんな中でも作品を出していくのよ。
スピーカー 2
はい。
スピーカー 1
ただ、やっぱり作品は書いていくんだけど、自分の健康っていうのは失われていって、疲弊してっちゃうんだよね、体は。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
だから、体はもうめっきり衰えちゃって、で、そんな中で1916年の5月から連載始まった名案っていうのがあるんだけれども、
名案の188回目の原稿を書き終えたところで、ソウセキは189番目の原稿の上で倒れちゃうんだよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、そのまま、床に着いたまま息を吹き取っちゃったっていうところで、ソウセキはその時ちょうど49歳だったんだけれども、
で、そんな感じで名案っていう作品は幻の未完成作品として世に知り渡ることになるんだよね。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
こんな感じでちょっとソウセキの一生をバーって説明していったんだけれども、ちょっと最後にソウセキの文化祭の一人に芥川龍之介が実はいるんだよ。
スピーカー 2
うん。
スピーカー 1
で、その芥川龍之介たち、文化祭、そこにいた文化祭たちに言った言葉っていうのをちょっと最後締めくくりの言葉としたいんだけれども、
どうぞ偉くなってください。しかし焦ってはいけません。牛のようにズーズーしく進んでいくことが大事です。
私たちはとかく馬になりたがるが、牛にはなかなかなりきれないのです。根気です。
世の中は根気の前に頭を下げますが、火花は一瞬で忘れてしまうでしょう。
牛のようにウンウン死ぬまで押すのです。何を押すのかというと人間を押すのです。って文化祭に伝えてるんだよ。
スピーカー 2
へー。