こんにちは、株式会社KAZAORIの矢澤彩乃です。
推し活未来研究所へようこそ。
この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活をビジネスの視点から、
そして時には私自身に経験を交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
私は普段、推し活をテーマにしたビジネスを提供すると同時に、
ベーシストとしてアーティストさんのバックを務めることもあるので、
押す側と押される側、両方の視点から推し活の面白さや可能性を皆さんと共有できたらと思います。
さて、今回のテーマは、選手のアイドル化、Jリーグが見つけた勝敗に頼らない推し活モデルです。
この収録をしているのは、2025年10月12日なんですが、
一昨日のサッカー日本対パラグアイ戦の要因に浸っております。
この番組でも何回かお伝えしているんですが、私の推しはASモナコの南野巧選手なんですね。
イケメンなのはもちろんなんですが、彼の血気盛んな、投資に満ち溢れたエピソードの数々を聞いて、
スポーツ選手はこうじゃないと、と尊敬する気持ちが生まれたんですよね。
自分もこのくらい熱くいきないとダメだなって思わされました。
今回、日本代表の現キャプテンでリバプール所属の遠藤渉選手が、怪我で招集されなかったんですね。
ブライトンの三戸間選手もいないという状況の中、なんとスタメン発表で南野がキャプテンと発表されたんですよ。
キャプテンマークを巻いて、先頭でピッチに入場する姿が、なんだかすごく大きく見えてとてもグッときました。
責任感と覚悟がひしひしと伝わってきました。
私の推しが日本代表のキャプテンになる日が来るなんて、というその感動と誇らしさが止まらなかった一戦でした。
ラプテンという大役を背負って挑んだパラグアイ戦でしたが、試合展開も激アツで、最後の最後に上田彩人選手のゴールで追いつくというドラマのような展開に大興奮でした。
次のブラジル戦も本当に楽しみです。
そして、テレビの中継を見ていて思ったんですが、スタジアムの観客が若い女性がものすごく多いんですよ。
というわけで、今回はサッカー推しと推し勝つの交差点について深掘りしていきます。
なぜ私たちはスポーツ選手を推すのか、スタジアムでの応援、SNSでの言及、グッズの購入、アイドルや声優とどう違ってどこが同じなのか、
そんな話を先日の代表戦の余韻とともにお届けします。
サッカー好きさんも推し勝つ勢もぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです。
去年の夏にプレミアリーグのブライトン対カシュマ・アントラーズの試合を見に行ったんですが、
スタジオのグッズ売り場では、三友選手のグッズが飛ぶように売れていて、ブライトンのユニフォームを着た女性グループがいたり、
ビールの横に三友選手のアクスターを並べて写真を撮っていたり、そこはスポーツ観戦というよりも巨大な推し勝つイベント会場でした。
Jリーグは伝統的なスポーツリーグから多角的なエンターテインメントと変貌を遂げているんですね。
そして、それがファンとビジネスの未来に何をもたらすのか。
2024年の調査では、952万人も上ると推計されるJリーグのファン人口、彼ら彼女らは一体何を求めてスタジアムに足を運ぶのでしょうか。
これは、クラブにとってより商業的に安定し、新規ファンにも開かれた管理しやすく収益性の高いファンベースを構築するための意図的な文化の再設計といえるかもしれません。
さらに選手側にも変化が起きています。
ファンが選手個人の人間性に惹かれるようになったことで、選手自身が一個のメディアとしての価値を持つようになりました。
まさに私のようなファンですね。
選手が自らYouTubeチャンネルを開設し、ファンと直接コミュニケーションを取るケースも増えています。
この流れはJリーグだけでなく、さらに下のカテゴリーで、より顕著な形で現れています。
その象徴が、日本一バズっているJリーガー、J3の栃木シティに所属する田中パウロ純一選手です。
彼はTikTokで40万人以上のフォロワーを持つサッカー選手兼インフルエンサーで、
サッカー初心者の彼女パウちゃんに奮して有名選手のスーパープレイを再現する〇〇みたいな彼女シリーズなどのユニークな動画がZ世代を中心に絶大な人気を博しています。
彼の目的は明確で、サッカーを知らない人にも栃木シティを知ってもらい地域を盛り上げたいというもの。
批判の声を浴びながらもSNSへの発信を続けた結果、彼の人気はチームの会心劇とともにJリーグ公式が特集するほどの注目を集め、
J3というカテゴリーそのものにスポットライトを当てる相乗効果を生み出しています。
なんと実際に1試合ごとの平均来場者数が1000人増えたそうですよ。J3での1000人ってものすごいことだと思います。
さらに彼は日本初のプロサッカー選手としてZ世代に人気のSNS、Bリアルの公式アカウントを開設するなど、常に新しいファンとの接点を模索し続けているんです。
これはファンがチームを知る前に、まず選手個人のファンになるという新しい動線を生み出します。
選手のパーソナルブランドが、クラブのブランドへの入り口となる。この力学の変化は、選手の価値がピッチ上でのパフォーマンスだけで図られる時代が終わりつつあることを示唆しています。
そしてJリーグのクラブが推し文化を育てるために、アイドル業界の成功法則を驚くほど忠実に取り入れている事実は、この変革を理解する上で欠かせません。
これは単なる模範ではなく、スポーツビジネスを根本から変えるための戦略的な設計図の導入なんです。
最もわかりやすいのは、アイドルグループとの直接的なコラボレーションでしょう。
2023年には、人気コンテンツラブライブシリーズとJリーグが大規模なコラボを実施、また川崎フロンターレが後藤内アイドル川崎純情小松と連携するなど、各クラブがアイドルと手を組み、ファン層の総合乗り入れを図っています。
さらに踏み込んでいるのが、選手自身をアイドル化する戦略で。
鹿島アントラーズの若手選手が雑誌に出演して、アイドルのようなグラビア写真を公開、公式ストアで未公開写真のチェキ風カードを販売したり、清水エスパルスがファン投票でイケメン総選挙を開催するなど、選手の魅力をルックスというわかりやすい切り口で商品化しています。
これはAKB48の選抜総選挙に代表されるようなファンの参加意欲と競争心を煽るアイドルビジネスの王道そのものです。
この流れは販売されるグッズにも革命をもたらしました。
かつてはレプリカユニフォームやタオルマフラーが中心でしたが、今やそのラインナップはアイドルのコンサート会場と見間違うことです。
押し勝Tシャツや押し勝タオルといったネーミングはもちろん、ペンライト、アクリルスタンド、そして選手の私服ショットまで含むシークレット選手カードや缶バッジといったランダム性の高い商品が次々と発売されています。
アイドルの魅力がステージ上だけで完結しないように、Jリーグもまた選手のオフステージの姿を積極的に見せるようになりました。
各クラブの公式TikTokやYouTubeチャンネルでは、試合のハイライトだけでなく、選手の素顔が垣間見える企画動画が人気です。
これは海外のトップクラブも同様で、レアルマドリードやバルセロナといった巨大クラブもTikTokで選手の面白い一面を見せる動画を積極的に投稿し、若い世代のファンを獲得しています。
これにより、ファンは選手のプレイだけでなく、そのキャラクターに感情移入し、より深い関係性を築くことができるんです。
そして、ファンとの絆を決定的にするのが特別な体験の提供です。
FC東京が企画した推し勝ちシートや推し探しピッチサイドシートは、選手の直筆賛入り推し認定賞や限定動画といった特典を提供し、
アイドル業界の握手会やファンミーティングをもたらすようなパーソナルで特別な体験をファンに与えています。
従来のスポーツビジネスは、どうしても勝利という不確実な要素に収益が大きく左右されました。
負けが続けば観客が減り、スポンサーの関心も薄れます。
しかし、アイドルビジネスは個々のタレントというIP、知的財産にファンが付くため、人気の浮き沈みはあっても、より安定した収益構造を持っています。
ファンは応援するアイドルのCDやグッズを、その時のランキングに関わらず購入します。
Jリーグが選手をIP化し、そのキャラクター性を商品化することで、
クラブは試合の勝敗に一喜一憂するだけのビジネスモデルから、より安定的で予測可能なIPマネジメントビジネスへと移行しようとしているんです。
選手のグッズは、チームが不調でも売れる可能性があります。
また、シークレットやランダムといった商品を導入することで、コンプリートしたいという人間の収集力や、当たりを引いた時の高揚感を刺激するような商品も増えています。
これは以前この番組で分析した、ポップマートのブラインドボックス戦略と共通していますね。
さて、Jリーグにおける推しの対象は、もはやピッチをかける選手だけに留まりません。
クラブを取り巻くあらゆる要素が推しの対象となり、それぞれが独立した魅力を持つことで、Jリーグは多様なファン層を引きつける強固な魅力のポートフォリオを築き上げています。
その筆頭が、クラブマスコットの存在です。
ウィンファーレン・長崎のViviくん、名古屋グランパスのグランパスくん、横浜Fマリノスのマリノスケといった人気マスコットは、チームの成績とは関係なく独自のファンベースを持つ強力なIPとなっているんです。
彼らは単なる子供向けのキャラクターではありません。
その愛らしい見た目や、時にシュールな振る舞いは、サッカーそのものには興味がなかった層をスタジアムに呼び込む重要なフックの役割を果たしています。
次に、監督推しという新たな流れです。
かつては戦術を語るクロートファンだけのものでしたが、今や監督の個性そのものが推しの対象となっています。
2025年シーズンのJリーグには、まさに推せる監督が揃っています。
例えばJ版で会心劇を続けるFCマチダ・ゼルビアの黒田豪監督。
高校サッカーの名称として知られた彼が見せる、勝利に徹したリアリスティックな戦術は時に仏業かもし出すこともありますが、
そのぶれない姿勢と歯に衣着せぬ言動は、多くのファンにとって目が離せない強烈なキャラクターとなっています。
またサフレッジ広島を率いるミヒエルス・キッペ監督の常に前へ前へと選手を駆り立てる超攻撃的サッカーは、見るものを熱狂させます。
ピッチサイドで見せる情熱的な姿も相まって、そのスタイルそのものがクラブの大きな魅力です。
さらに、2025年から上昇軍団カシマ・アンドラーズの式を取ることになったオニキ・トール監督のように、
長年川崎フロンターレで数々のタイトルを築き上げた哲学やそのカリスマ性に惹かれ、新展示での挑戦に注目するファンも少なくありません。
このように、選手のプレーとは異なるゲームの知的な側面や監督一人一人のリーダーシップ論、
人間的魅力に価値を見出すファン層が、Jリーグの新たな深みを生み出しているのです。
そして、おそらく最もユニークな推し活が、スタジアムグルメ、通称スタグルです。
Jリーグの各スタジアムは、その土地ならではの絶品グルメの宝庫であり、スタグル巡りは観戦の大きな目的の一つとなっています。
鹿島アントラーズのハラミ飯や、モンテディオ山形のオノオノカリーパン、長居グランパスの台湾混ぜそば、天むす、カレーうどん、味噌カツ、アンバターなどの名古屋名物グルメなどが、アウェイ遠征の動機にすらなっています。
湘南ベルマーレでは、チームカラーの押しカツかき氷が販売されるなど、スタグルは単なる食事ではなく、SNSで共有されるべき体験であり、コレクションの対象となっています。
サッカーのルールに詳しくなくても、可愛いマスコットが好きなら楽しめる、美味しいものが好きならスタグルを目当てに来ることができる、戦略的な思考が好きなら監督の采配に注目できる、それぞれのカテゴリーが異なる興味を持つ潜在的な感想に対するマーケティングチャンネルとして機能しているんです。
そして重要なのは、一度スタジアムというエコシステムに入れば、他の魅力に触れる機会が生まれることです。
スタグル目当てで来た人が、いつの間にか特定の選手に夢中になったり、マスコットのファンがチームの勝敗を気にするようになったりする、この相互作用こそがカジュアルな訪問者を熱心なファンへと育て上げているんですね。
さて、その中でJリーグの全チームのベンチマークとなっているのが、川崎フロンターレです。
川崎フロンターレの哲学は、プロモーション部分を長年率いてきたアムノ・ハルカさんの哲学、試合に負けても楽しかったと言ってもらえるチームにしたいという言葉に集約されています。
これは、結果が全てのスポーツ界において革命的な思想です。
この思想のもと、フロンターレは、真面目なことに遊び心を持って取り組むをモットーに、常識外れのイベントを次々と打ち出してきました。
スタジアムの広場に牧場を作って乳搾り体験ができるフロンターレ牧場、地元の東急電鉄と組んで本物の車両を展示する企画、選手が仮装してファンを出迎えるハロウィンイベント、
さらには地元の小学生のためのオリジナルのフロンターレ算数ドリルを作成するなど、その活動はサッカーの枠を遥かに超えています。
フロンターレの戦略の核にあるのは、徹底した地域密着です。
ファンと一緒に玉川の清掃活動を行ったり、地元の商店街を巻き込んだキャンペーンを展開したり、地域に深く念を張ることでチームの勝敗だけでは揺るがない強化な支持基盤を築いています。
天野氏が語るように、地域の人々と一緒に汗をかくことで、クラブはコミュニティにとって不可欠な存在になるんです。
この体験ファーストのアプローチは、今よりリーグ全体のトレンドとなっています。
各クラブは、女性向けのガールズフェスタや家族向けのファミリージョインウィークといった特定のターゲット層に向けたイベントを積極的に開催しています。
そこでは、トイレが古い、汚いといった女性ファンが感染を止める物理的な障壁を取り除く努力も含め、誰もが快適に過ごせる空間作りが進められています。
そして、この全ての体験を支える土台となっているのが、日本のスタジアムを持つトップクラスの安全性と快適性です。
全席5席が基本で、十分な照明や避難経路が確保され、観客がフィールドに乱入するような事態もまず起こりません。
この安全な環境があるからこそ、女性や子供連れの家族が安心して訪れることができ、テーマパーク化という戦略が可能になるんです。
この一連の動きは、Jリーグのクラブが自らの競合を最低限していることを意味します。
彼らが奪い合っているのは、もはやプロ野球や他のスポーツの観客だけではありません。
彼らの真の競合は、週末の良かの過ごし方の選択肢すべて、つまり東京ディズニーランドであり、映画館であり、大型ショッピングモールなんです。
スタジアムに牧場を作り、ライブを行い、フェスティバルを開催するのは、サッカーの試合というアトラクションだけではなく、
一日中楽しめる多様な体験を提供することで、家族の週末のお出かけ先として選んでもらうための戦略なんです。
さらに、川崎フロンターレのモデルは、サッカークラブが地域経済と社会を活性化させる中心的なプラットフォームになり得ることを示しています。
地元の商店や名産品を積極的にプロモーションし、教育や環境美化といった社会貢献活動にファンを巻き込む。
これにより、クラブは単独のエンタメ企業から、地域にとって不可欠な社会インフラへとその価値を高めています。
この深い結びつきは、行政やスポンサーからの強力な支持を生み、クラブには長期的な安定をもたらす究極のサバイバル戦術と言えるかもしれません。
さて、Jリーグの話をより深く理解するために、少しだけ視野を広げて、世界のサッカーファンダムが今どうなっているのか、一緒に旅をしてみましょうか。
そこには、歴史も史上も全く違うヨーロッパとアメリカ、それぞれの面白いアプローチが見えてくるんです。
まずはヨーロッパから見ていきましょう。プレミアリーグやラリーガみたいに100年以上の歴史を持つリーグでは、もうすでに巨大なファンがいますよね。
だから彼らの課題は、昔からのファンにデジタル技術を使ってもっともっと楽しんでもらうにはどうしたらいいのっていうことなんです。
その先端を走っているのがスペインのラリーガ。なんとあのマイクロソフトとタッグを組んで、試合中の選手の動きとかパスコース、シュートが決まる確率まで膨大なデータをAIがリアルタイムで分析しているんです。
これをビヨンドスタッツという形でファンに提供することで、私たちもまるでプロの戦術分析家になった気分で試合を深く味わえるんです。
一方アメリカのメジャーリーグサッカーはヨーロッパとは全く逆のアプローチです。
あっちは歴史が浅い分、おじいちゃんの代からこのチームのサポーターなんだみたいな人が少ない。
だから彼らは新しいファンをスター選手と参加できるコミュニティで、いかに熱狂の渦に巻き込むかという挑戦を続けてきました。
メジャーリーグサッカーではファンはただの観客じゃないんです。サポーターズグループという応援団が中心になって、クラブと一緒になってホレオグラフィーという巨大な一文字アートを作ったり、スタジアムの雰囲気そのものを自分たちの手で作り上げる主役なんですね。
このメジャーリーグサッカーの戦略を世界中に知らしめた劇的な出来事がありました。
2023年のリオネル・メッシュ選手のインテル・マイアム遺跡です。共同オーナーの一人があのデビット・ベッカムというのもドラマチックですよね。その影響はもう本当に驚異的でした。
メッシュ選手の加入が発表された後、インテル・マイアムのインスタのフォロワーって100万人だったのが、一気に1500万人以上に跳ね上がったんです。これはアメリカの他のプロスポーツ、アメフトや野球のどのチームよりも多いんです。信じられますか?
さらに、リーグの試合を独占配信しているApple TVの契約者数もメッシュ選手の加入後に全世界で2倍以上になったそうです。たった一人のスター選手という最強の推しがリーグ全体のビジネスまで変えてしまう。これって私たちが推し勝ちを持つパワーを考える上で、とてつもなく強烈な事例だと思いませんか?
こうしてみると面白いですよね。ヨーロッパが既存のファンとの関係をデジタルで深く濃くしているのに対して、アメリカはスターという引力で参加できる楽しさで新しいファンをダイナミックに巻き込んでいる。この2つの大きな潮流は、これからのJリーグがどんな未来を描いていくのか考える上で、きっと大きなヒントになりそうですね。
海外の事例も見てきましたが、日本のサッカー界で進む推し勝ち化は、単なるファンの文化の変化に留まらず、スポーツの楽しみ方をより社会的に価値のあるものへと進化させています。
その最も感動的な事例が、Be Supportersというプロジェクトで、これは高齢者施設の入居者が地元のJリーグクラブ、ピッセル神戸などの推しとなり、みんなで応援活動を行うという取り組みなので、その効果は驚くべきものでした。
普段はあまり話せなかった人が、推し選手について生き生きと語り始め、コミュニケーションが活発になる。飛行機が必要だった90代の方が、自力で階段を登れるようになる。応援するスペイン人選手のために、86歳の方がスペイン語の勉強を始める。