こんにちは、株式会社KAZAORIの矢沢矢乃です。 推し活未来研究所へようこそ。
この番組では、ますます盛り上がりを見せる推し活をビジネスの視点から、 そして時には私自身の経験を交えながら、楽しくそして深く紐解いていきます。
さて今回は、前回に引き続き、Jリーグ100年構想の正体の後編をお届けします。 私は普段、推し活をテーマにしたビジネス、
例えばファンの皆さんがイベントを一緒に盛り上げられる、 スクートというサービスなどを提供しています。
それと同時に、ベーシストとしてアーティストさんのバックバンドでベースを弾かせてもらっているので、 押される側の気持ちもいろいろと感じることがあります。
そんな押す側と押される側、両方の視点を持つ私だからこそ見えてくる、 推し活の面白さや可能性を皆さんと共有したいなと思い、推し活未来研究所を始めました。
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前編では、Jリーグの観客動員が過去最多の1300万人を超えたことや、 2026年から始まるシーズン以降、そして公設地域への50億円のインフラ投資についてお話ししました。
まだ聞いてないようという方は、ぜひ前編から聞いていただけるとより楽しめると思います。
今日の後編では、2026年に開催されるちょっと変わった特別大会と、 地元のチームを一生の推しに変えてしまう、次世代スタジアムの話をしていきます。
個人的に今日の後編の方がさらにワクワクする内容だと思ってまして、 特にスタジアムの話は私も調べながら、そこまでやるの?って何度も思いました。
推し活の概念が広がるようなお話ですので、ぜひ最後まで聞いてくださると嬉しいです。
まず2026年の今、ちょっと面白いことが起きています。 前編でお話ししたように、Jリーグは2026年夏にシーズンの開始時期を変えますよね。
そうすると2025年の12月にシーズンが終わってから、 2026年の8月に新シーズンが始まるまで、約半年間の空白期間ができちゃうんです。
普通だったらこの期間はプレシーズンの練習試合とかで過ごすところなんですけど、 Jリーグはここに明治安田Jリーグ100年構想リーグという特別大会をぶち込んできました。
2026年の2月から6月にかけて開催される公式戦です。 この大会のルールがすごいんですよ。大きく3つ特徴があります。
まず一つ目、引き分けがありません。 90分で決着がつかなかったらすぐにPK戦に入ります。
サッカーって通常のリーグ戦だと引き分けって結構あるんですよね。 0対0とか1対1で終わることが珍しくない。
でも正直に言っちゃうと引き分けって見てる側としてはちょっと迷ったしませんか? 結局どっちが勝ったのってなりますよね。
そこでこの大会では引き分けを廃止して必ずPK戦で決着をつける。 しかも勝ち点の設計が面白くて、90分で勝てば3点、PK戦で勝てば2点、PK戦で負けても1点、90分で負けたら0点。
つまり90分で負けていなければ最低でも勝ち点1がもらえる。 PK戦ってサッカーの中でも特別な瞬間じゃないですか。
蹴る選手もめちゃくちゃ緊張してるし、キーパーの駆け引きもあるし、応援してるファンも入れてくれって祈るような気持ちになる。
あの緊張感が毎試合訪れる可能性があるっていうのはエンターテインメントとしてもものすごく強いですよね。
行動経済学にピークエンドの法則っていう考え方があるんですけど、人の記憶って体験の一番盛り上がった瞬間と最後の瞬間に強く影響されるんですね。
試合の最後にPK戦というクライマックスがあることで、スタジアムに来た人の記憶がポジティブなものになりやすい。
2つ目の特徴は昇格と降格が一切ないこと。 通常のJリーグだと成績が悪いと下のカテゴリーに落ちてしまう
降格があるんですけど、この大会の結果では降格はしません。 これ一見するとモチベーションが下がりそうに思えるんですけど、
逆に言えば今だからこそチャレンジしやすいんですよ。 若い選手をどんどん起用してみたり、大胆な戦術を試してみたり、降格のリスクがないからこそできる実験がある。
クラブにとっては新しい試みができるテストの場になるんです。 じゃあ降格がないなら手を抜くんじゃないのっていう心配もありますよね。
そこが3つ目の特徴。 Jリーグは総額30億円以上の賞金と助成金を用意しました。
J1相当のラウンドだけで、総額25億円以上、J2、J3も合わせて6億円以上、しかも価値点1ごと、最終順位ごとに細かく賞金が設定されているので、PK戦の1本1本がクラブの財務に直結するんです。
降格のプレッシャーはないけど、お金のインセンティブはしっかりある。 だから真剣勝負になる。これは頭いいなぁと思いますね。
私、演者の立場でライブに出ることがあるので思うんですけど、お客さんが一番テンション上がる瞬間って何が起こるかわからないハラハラ感なんですよね。
この特別大会はまさにそのハラハラ感を構造的に毎試合作り出す仕組みになっている。 エンターテインメントの設計としてすごく参考になりますね。
あと面白いのが、ACLエリートというアジアのチャンピオンズリーグの出場権にも絡んでいる点なんです。
そもそもACLには各国ごとに出場できる枠が決まっていて、日本の場合は多少調整はあるんですが、基本的にJ1の優勝チームや準優勝チーム、そして天皇杯優勝チームなどが出場権を得ます。
ここでポイントなのが、2025シーズンのJ1の優勝チーム、もしくは準優勝チームがACLエリートで優勝した場合、そのクラブは前回王者枠として翌年も出場権を持つことになるため、日本に割り当てられた枠が1つ余ることになります。
その余った枠がスライドするというルールがあるんです。
だから優勝争いだけじゃない大きな意味がある。バップレベルのクラブも当然手を抜けないし、上位争いに絡むクラブすべてが最後まで本気で戦う理由が制度としてちゃんと設計されているんです。
この大会の名前が100年構想リーグっていうのもいいですよね。
移行期間のつなぎの大会じゃなくて、100年構想の理念を試す場として位置づけている。Jリーグのブランディングの上手さを感じます。
さてここからが後編の本題です。チームを一生の推しにする最大の装置、それはスタジアムです。
皆さんサッカーのスタジアムって試合がある日だけ使われて、それ以外の300日以上はガランとしている、そんなイメージありませんか?
実際昔のスタジアムはそうだったんです。年に20回くらいしか使われない巨大な建物、もったいないですよね。
でも今Jリーグの最先端クラブはこの概念を完全にひっくり返しています。
その代表例がサッカー日本代表監督岡田武史さんが掲げた愛媛県今治市にあるFC今治のアシックス里山スタジアムです。
里山スタジアムっていう名前からしてユニークですよね。里山って昔ながらの日本の自然と人の暮らしが標本している場所のことです。
このスタジアムはまさにそのコンセプトで作られていて、3つの大きな特徴があります。
1つ目は365日にぎわう場所であること。試合がない日も敷地内でマルシェが開かれていたり、カフェがあったり、ドッグランがあったり、
お年寄りが散歩に来たり、お子さんが遊びに来たり、サッカーに興味がない人でも自然と足を運ぶ場所になっているんです。
これってマーケティング的にはものすごく大事な話で、推しっていきなりそうなるものじゃなくて、まず何度も接点を持つことから始まるんですよね。
近所だからなんとなく行ってみた。カフェが気持ちよかった。マルシェでおいしいものを食べた。
そういう日常の小さな体験が積み重なって、そういえばここのチームの試合も見てみようかなってなる。
押し勝ちに例えるなら、これは自然なファネル設計なんです。
いきなりチケットを買ってもらうんじゃなくて、まず生活の中にクラブの存在をそっと置いておく。それが365日の接点作りです。
2つ目は環境に優しい拡張型の設計です。
コンテナやユニットスタンドを使っているので、将来の拡張が簡単にできる。
太陽光発電や燃料電池、雨水を地中に戻す補送なんかも導入されていて、なんと敷地内にはブドウ畑まであるそうです。
ワイン醸造も見据えているんだとか。スタジアムにブドウ畑ってもう概念が変わりますよね。
自然と調和した場を作って、そこに人が集まって交流して支え合うコミュニティができていく。
FC今治はこれを新しい教助のコミュニティと呼んでいます。
3つ目はホスピタリティ。最先端のIoT技術を使った感染体験や多様な感染スタイルの提供で、来た人に心の豊かさを感じてもらうことを目指しています。
今治市自体もこのスタジアムを街づくりの中核として位置づけていて、市の緑の基本計画にも組み込まれているそうです。
サッカークラブのスタジアムが街の未来を描く設計図の一部になっている。これってすごいことですよね。
私がこの事例で一番素敵だなと思ったのは、新しい教助のコミュニティという言葉なんです。
教助って人と人がお互いを助け合うって意味なんですけど、それをサッカースタジアムが起点になって作り出している。
試合を見るだけじゃなくて、そこで出会った人と友達になったり、情報交換をしたり、困った時に助け合ったりする関係が生まれている。
推し勝つコミュニティもそうですよね。同じ推しを持つ人同士につながって、一緒にイベントを楽しんだり、情報を共有したり。
推しを軸にした人間関係ってすごく温かいものがある。FC今治はそれをスタジアムという物理的な場で実現しようとしている。
これは本当に美しい取り組みだなと思います。
そしてもう一つの事例がさらにすごい。
2024年10月にオープンした長崎市の長崎スタジアムシティです。
リファーレン長崎というクラブのホームなんですが、これがもうスタジアムの概念がなくなっています。
東京ドームの1.5倍の敷地にサッカースタジアム、アリーナ、ホテル、商業施設、オフィスビルの5つが全部入っているんです。
開業からわずか半年で約260万人が来場しているという驚異的な数字です。
まず一番衝撃的なのがホテル。
スタジアムシティホテル長崎という日本初のサッカースタジアムビューのホテルなんです。
つまり部屋の窓からサッカーの試合が見える。
プールやサウナからもスタジアムが一望できるんですよ。
私これ知った時めちゃくちゃ行きたいなって思いました。
推しのライブを自分の部屋から見られるようなものですよね。
しかも朝食ビュッフェは長崎の食を満喫できる内容で、地下からは天然温泉が湧いていて、試合がない日でもホテルとしての価値がちゃんとある。
次にオフィスビル。長崎県内最大級の賃貸面積を持つオフィス棟があって、シェアオフィスやコーワーキングスペースもあります。
しかも長崎大学の情報データ科学部まで入居しているんです。
大学と企業が同じ建物で交流して、新しい価値を生み出す拠点になっているんですね。
商業エリアは約90店舗が出店。
直営の開店寿司屋さんや和牛の専門店、長崎初出店のセレクトショップなど。
ピッチからわずか5メートルの臨場感ある客席でサッカーを見て、その後はお買い物をして美味しいものを食べて温泉に入って寝る。
全部同じ場所でできちゃうんです。
しかもですよ、夜にはスタジアムを使ったレーザーショーが開催され、朝にはスタジアムのコンコースが市民にウォーキングやランニングの場として開放されている。
結果、試合がある日もない日も人が来る。
休日には2万5千人から3万人、なんと平日でも約9千人が訪れているそうです。
平日で9千人はすごいですよね。
ちなみにオフィス棟のデザインがまた面白くて、外壁から飛び出した縁側空間があるんです。
日本の昔ながらの縁側をモチーフにしていて、10階から11階にかけて吹き抜けの共有ラウンジがある。
そこでピッチイベントやセミナーが日常的に開催されているそうです。
働く場所にもエンターテイメントが染み込んでいるんですね。
これはもうスタジアムじゃなくて街の一部ですよね。
ビファーレン長崎というクラブの存在が長崎市民の毎日の生活に溶け込んでいる。
推しが生活のインフラになっているということですね。
推し活ビジネスの観点で言うと、これはタッチポイントの最大化なんです。
ホテルに泊まる、オフィスで働く、買い物をする、食事をする、朝のランニングをする、
全部がクラブとの設定になっているので、1日に何回もクラブのブランド空間に触れることで、
もう生活とクラブが切り離せなくなる。これが一生の推しの完成形だなと思います。
さて、ここまでの話を踏まえて、私なりの考察をお話しします。
Jリーグの100年構想の正体って何なのか。
私は一言で言うと、推しを日常化する仕組みだと思うんです。
よく考えてみると、スポーツチームを応援するって実はリスクもありますよね。
好きなチームが負けたら悲しいし、弱いシーズンが続くと気持ちが離れちゃうかもしれない。
試合の勝ち負けってチーム側でも完全にはコントロールできないわけですよね。
でもFC今治の里山スタジアムや長崎スタジアムシティがやっているのは、
試合の勝ち負けだけに依存しないファンとの関係づくりなんです。
スタジアムが心地よい場所だから行く、ホテルが快適だから泊まる、
お買い物ができるから寄る、そういう日常的な接点があるからこそ、
じゃあ今度の試合も見てみようかなってなるんですよね。
これ推し勝つの文脈で言うとすごく重要なポイントで、
推し勝つって推しのパフォーマンスだけで成り立つものじゃないんですよね。
推しがいる場や空間そのものに愛着を感じるかどうか、
そこに行くことが自分の生活の一部になっているかどうか、
それが一生の推しになるかどうかの分かれ目だと思うんです。
Jリーグの各クラブはまさにその輪の力を最大限に利用しているんですよね。
試合という非日常だけじゃなくて、カフェやランニングや買い物という日常を
スタジアムに組み込むことで、ファンとクラブの接点を年間365日に拡張している。
そしてもう一つ、Jリーグのクラブって地域の課題解決にも関わっているんです。
街の活性化、コミュニティの再生、環境問題への取り組み、
クラブが地域のライフパートナーとして一緒に未来を作る存在になっている。
推し活の本質って何だろうって考えた時、
それは自分が時間もお金も感情も自発的に投資したくなる存在を見つけることだと思うんです。
そしてその投資が自分の人生を豊かにしてくれるという実感があること。
Jリーグのクラブが目指しているのはまさにそれなんだと思います。
サッカーの試合を通じて感動を届けるだけじゃなくて、
地域に居場所を作り、人と人をつなぎ、街の未来を一緒に描く。
だから人は一生推したいと思えるのではないでしょうか。
これがJリーグ100年構想の正体。
地元のチームを一生の推しに変える最強のマーケティングの前傍です。
さて、前編後編にわたってお送りしてきましたが、まとめると、
Jリーグの100年構想とはサッカークラブを地域の日常に組み込み、
ファンが一生推し続けたくなるエコシステムを制度レベルで設計した
壮大なマーケティング戦略であると私は思います。
年間1300万人を超える観客動員、
世界基準を目指すシーズン移行と50億円のインフラ投資、
エンターテインメント性を追求した特別大会のルール設計、
そして365日人が集まる次世代スタジアム。
どれもファンの体験をどうデザインするかという視点から
逆算して作られているんですよね。
サッカーに限らず、推し勝つビジネスに関わる方、
コミュニティを作りたい方、地域を盛り上げたい方にとって、
Jリーグの取り組みにはたくさんのヒントが詰まっていると思います。
特に大事なのは非日常だけに頼らないということ。
ライブや試合という非日常のコンテンツはもちろん重要です。
でもそれだけだと年に数回しか接点がない。
日常の中に推しとの接点をどう作るか、
そこまでデザインできた人が一生のファンを手に入れるんだなと感じました。
いかがでしたか?
前編後編合わせてJリーグの100年構想を推し勝つの視点から徹底解剖してみました。
番組を聞いての感想や地元のチームの推しエピソード、
スタジアムで感動した体験など、
ぜひハッシュタグ推し勝つ未来研究所でシェアしてくださると嬉しいです。
それでは今日の推し勝つ未来研究所はこの辺で。
最後までお聞きいただきありがとうございました。
また次回お会いしましょう。ありがとうございました。