自画像の描写
ボイスドラマ アルブレヒト・デューラー 自画像
2025年9月 東京
季節外れの真夏のような暑い日が続いています。 カフェの窓から見える空には力強い赤蘭群。
今日は視覚障害者のトミーさんと健常者のマリアさんが美術鑑賞についてお話をしています。
マリアさん、今日はありがとうございます。 美術館の音声ガイドのことで色々とご意見を聞かせていただけて本当に勉強になります。
こちらこそ、僕たちのために色々と考えてくださって嬉しいです。
いえいえ、それでですね、この音声ガイドの試作版の感想を聞かせていただきたい映画がもう一つあるんです。
アルブレヒト・デューラーという画家の自画像です。 デューラー、名前は聞いたことがあります。
はい、1500年に描かれた自画像です。 彼の代表作の一つでとても有名な作品なんですよ。
では私が絵の全体を言葉で描写していきますね。 絵のサイズは縦が67センチ、横が49センチほどです。
なるほど デューラー自画像の描写
マリアはトミーの正面に座り、まるで絵がそこにあるかのように丁寧に言葉を紡ぎ始めました。 トミーさん、この絵は画面いっぱいに描かれたデューラーの上半身な特徴です。
彼はまるで私たち鑑賞者をまっすぐ見つめているかのように正面を向いて座っています。 彼の後ろには遠くの雪山と淡い青空が描かれています。
上半身の絵で正面を向いているんですね。 はい、ではデューラーの顔について説明しますね。
まず髪の毛は肩まで届くくらい長くてウェーブがかかっています。 明るい栗色で光の加減で少し金色にも見えます。
前髪は真ん中で分かれていて顔の輪郭に沿って両側に優しく流れています。 髭も同じ色で顎まで伸びています。
彼の顔立ちはとても端正です。鼻筋が通っていて唇はギュッと引き結ばれています。 肌はとてもきめ細かで少し青白く見えますね。
そして目の色が印象的です。 透き通るような澄んだ青色をしています。
青い目ですか? はい、その瞳は私たち鑑賞者の方をまっすぐ見ています。
その視線はまるで彼の内面を語りかけてくるかのように、とても力強く真剣な眼差しです。
二人の間の共有
次にマリアは彼の服装と描かれた手について説明し始めました。 リューラーは毛皮で縁取られた濃い茶色のガウンを着ています。
ガウンはとても滑らかな生地でたくさんのひだがあります。 そのひだが光と影を巧みに表現していてまるで生きているかのように見えます。
首元は白いシャツのコリが少しだけ見えています。 そして左手はガウンの胸元にそっと添えられています。
指先まで綺麗に描かれていて細部まで丁寧に描き込まれていますね。 ガウンの質感が伝わってくるようです。
最後にマリアは絵全体の雰囲気と背景を語ります。 絵全体の色彩はとても落ち着いています。
リューラーの肌の青白さ、ガウンの深い茶色、そして背景の淡い単調が絶妙なバランスで調和しています。
背景には遠くに霞む雪山とうっすらと雲が浮かぶ淡い青空が描かれています。 この背景が手前にいるリューラーの存在感をより一層引き立てているように感じます。
そして画面の右側、リューラーの髪の横あたりに金色の文字でドイツ語のサインが書かれています。 ニュルンベルクのアルブレヒト・デューラーは28歳でこの不滅の色彩で己を描いたと書かれています。
なるほど。 28歳の自画像なんですね。
マリアさん、すごく細かく説明してくださってありがとうございました。 目の色やガウンの日玉で想像することができました。
僕の頭の中にリューラーの姿がはっきりと浮かび上がってきました。 よかったです。この説明でトミーさんの心に絵が描けたならとても嬉しいです。
リューラーの自画像を通して二人の間に目に見えない確かな絵が描きました。 それは言葉で紡がれた優しい一枚の絵でした。