新しい世界の到来
ノト丸
お金っていう、まあ私たち誰もが当たり前のように使っている概念、これがもし消え始めたら、世界はどうなるんでしょうか?
今回はですね、そんな近未来を描いたSFシリーズ、〈資本が解ける6つの夜明け〉の第1話にあたる〈フリー・ファクトリー2050〉の物語を一緒に深く見ていきたいと思います。
ソースは、この第1話のストーリー概要ですね。
もし、誰もが自由に物を作れるようになった世界で、その作る責任って一体どうなるのか?
早速見ていきましょうか。
舞台は2050年の東京です。物を作るコストがもうほとんどゼロになった、そんな時代。
若き設計師のリナさんが、オープンソースのプラットフォーム〈Free-Fab.〉っていうところで、自作のスニーカー〈WF-01〉の設計図を公開するんです。
これがすごい人気で。
ブク美
大ヒットしたんですよね。
ノト丸
でもポイントは、著作権も特許もない。
ブク美
あー、なるほど。
ノト丸
彼女が得るのは、人々の善意とか評価だけっていう。
ブク美
まさにその限界費用ゼロの世界観ですね。
デジタルデータならコピーは実質無料ですし、それを身近にあるロボ工房とかで誰でも物質化できる。
素晴らしい自由度ですけど、ただこの誰でも作れるっていう自由さが、ちょっと予期せぬ影を落とすことになってしまう。
ノト丸
そうなんですよ。ある日、九州で少年が転んで亡くなるっていう悲しい事故が起きてしまって、原因としてリナさんが設計したその〈WF-01〉じゃないかって報道されちゃうんです。
ひび割れた白いスニーカーの映像がニュースで流れて、リナさんはもう言葉を失うわけです。
え?だって彼女が直接作ったわけでもないのに?
ブク美
そこが問題点なんです。
数日後にですね、リナさん個人あてに、なんと1億円もの損害賠償請求が届くんですよ。
え?1億円?個人にですか?
そうなんです。プラットフォーム側は、「いや、うちは場を提供しただけです。」っていうスタンスで。
ノト丸
うわー。
ブク美
責任を問われたのは、オリジナルの最初の設計データをアップロードしたリナさん本人だったと。
オープンソースの善意が巨大な個人的な責任に転化してしまった瞬間ですよね。
ノト丸
1億円って、プラットフォームじゃなくて個人にですか?
責任の再発明
ノト丸
これはかなり衝撃的な展開ですね。一体どうしてそんな判断に?
ブク美
えぇ、裁判はですね、メタバース空間で行われるんです。
原告側のAI弁護士が指摘したのが、リナさんの初期設計にあったごく微細な脆弱性だったんですね。
シミュレーションをちゃんとやれば予測できたはずだ。これは設計上の不注意だと。
ノト丸
でもその設計図ってオープンソースで?
ブク美
そうなんです。共有されて世界中のユーザーが改良を加えてきたはずのデータなのに、その大元の最初の設計者の責任が問われてしまう。
これは今の私たちの感覚からしてもかなり厳しい判断かなと。
ノト丸
リナさんももちろん必死に反論しますよね。世界中のユーザーが改良してきた、いわば生きたデータなんだから、私一人が全責任を負うのはおかしいって。
ノト丸
でもAI判事の判断は非情というか、リナさんに30%の過失があると。30%ってことは?
ブク美
えぇ、つまり1億円の支払いを命じられるんです。
ノト丸
1億円?個人にとってこれはもう人生が終わるレベルの金額ですよね。
ブク美
ええ、まさに。ここでその新しいテクノロジーの進歩と既存の法とか経済システムとの間に何か大きなギャップがあることがはっきりと示されます。
個人の創造性を生かす自由とその結果に対する無限とも思える責任の可能性、この矛盾が物語を大きく動いていくんですね。
ノト丸
もう絶望しかないっていうリナさんのところに匿名のグループから連絡が入るんです。WF01は君だけのものじゃない。だったら責任も未来も君だけのものじゃないはずだって。
ほう。
そして彼らが提案したのが本当に驚くような方法で、なんと翌日の法廷でリナさんはその賠償金1億円を負債としてトークン化してWF01改修DAO、自律分散型組織ですね、これを設立するって宣言するんですよ。
ブク美
DAO来ましたね。
ノト丸
ええ。
ブク美
ブロックチェーン技術なんかを活用した中央管理者がいないコミュニティ運営の仕組みですよね。ここで注目すべきは、賠償っていうある種の罰をですね、スニーカーの安全性を今後もっと高めていくための共同開発プロジェクトみたいなものに転換しようとしている点です。
ノト丸
そうなんですよ。このDAOに参加してスニーカーの安全性向上に貢献すれば、その貢献度に応じてトークン、つまりあの、賠償金の一部を受け取る権利がもらえると。被害者遺族だって貢献すれば、より早くより多くを受け取れる可能性がある。これって単なる賠償とは全然違いますよね。
ブク美
まさに責任の再発明と言えるかもしれませんね。事故の責任を罰として個人に押し付けるんじゃなくて、コミュニティ全体で未来の安全性を共有して創造していくためのインセンティブに変えてしまう。これは前例のない解決策ですよ。既存の法システムにはちょっとなかった発想で。お金で解決するんじゃなくて、みんなの貢献によって解決していくっていう新しい方向性を示唆しているように思います。
ノト丸
AI判事も最終的には論理的な矛盾はないし、社会的にも有用だということで、このほんと前代未聞の和解案を承認するんです。物語のラストシーン。リナさんの手元で新しいスニーカー、WF01Ver2.0がプリントアウトされる。そのかかとにはDAOのシンボルマーク、無数のノードが繋がり合っている紋章が刻まれているんですね。
これはもう責任な人々が自由の時代の終わりと共有する創造という、何か新しい時代の夜明けを象徴しているのかなと。
ブク美
そうですね。技術革新がこれまでの私たちの当たり前だった価値観とかシステム、特に所有とか責任っていう概念を根本から揺さぶっていく様子が描かれています。そしてこのシリーズ全体のテーマでもあるお金とか資本っていうものがその絶対的な価値を失い始めたときに、じゃあ私たちは何を基盤にして社会を築いていくのかっていうすごく大きな問いを慣れかけている。そんな風に感じますね。
ノト丸
物語の最後にはこんな一文があるんです。旧世界のコインはまた一つその価値を失ったと。さてこの物語を踏まえてここであなたに深く考えてみてほしい問いがあります。あなたが持っている資本、お金、それって本当に絶対的な価値があるものなんでしょうか。