都市と自然の異変
ノト丸
毎日未来創造、本日もまだ見ぬ未来のプロトキャスト、その可能性を探ってみましょう。
今回私たちが深く見ていくのは、〈街に森が憑いた日〉という近未来SFのショートショートです。
今週のテーマ、ネイチャーポジティブ。
つまり、単に自然を守るだけじゃなくて、生物多様性を回復させて豊かにしていこうという考え方を非常に詩的に描いた物語なんですね。
では、この物語を通して、私たちの都市と自然、それからテクノロジーと生命が交差する点、これを探っていきましょう。
ちょっと想像してみてください。
もし、あなたが頼りにしている完璧に制御された都市が、ある日突然、説明のつかない緑にじわじわと覆われ始めたとしたらどうしますか?
物語の舞台は、AI「SOL」が完璧に管理している灰色の都市、アーク-07。
そこでシステムアナリストのカナタが見たのは、アスファルトの隙間から青白く脈打つように現れる苔とか、ガラスの壁に浮かび上がる葉脈の幻影とか、これが制御不能な有機体高度汚染の始まりなんですね。
そのSOLっていうAIは、気温から湿度、空気の清浄度まで全てを最適化していたわけです。
ブク美
そこに突如として現れた未定義の有機体、システムとしては当然エラーとして認識して削除と修復を試みるんですが、何度やってもまるで学習するかのように、浸食が進化してどんどん拡大していく。単なるバグじゃない、何か異質なものが都市に根付いて始めた、そんな感じなんですよね。
ノト丸
浸食が進化する。やがて超高層ビルには巨大なシダが垂れ下がり、交通ドローンには鳥ガスを作り始めて、リニアの軌道はキノコで埋め尽くされてしまう。都市機能は完全に麻痺状態、まさに災害なんですけど。
ノト丸
ええ。
ノト丸
でも同時にその光景がどこか幻想的で人々を惹きつけるような魅力もあったと。
ブク美
そうなんです。SOLはこれを生物的異常侵食体と定義して徹底的に除去しようとするんですが、植物の再生力がもう驚異的なんですね。
ノト丸
うーん。
ブク美
まるで都市そのものがこの緑の変化を望んでいるかのようにすら見える。
ノト丸
なるほど。これって現実の都市緑化なんかでも管理コストとその生態系の豊かさみたいなもののバランスって結構常に課題じゃないですか。似てますね。
ブク美
まさにそうですね。で、興味深いのはカナタがこの現象のデータパターンを追っていくと忘れられた資料保管庫、アーカイブシードにあった古い植物図鑑の高度に行き着く点です。
そこで出会う司書のルナという人物が非常に核心をつく解釈を示すんですね。
ノト丸
と言いますと。
ブク美
これは侵略じゃない、憑依だ。
ノト丸
えっと、憑依ですか。
ブク美
街が森に恋をしてしまったのよって言うんです。
ノト丸
街が森に恋をした。
すごく詩的ですけど、それはどういう都市の無機質さ、その空虚さみたいなものが逆に忘れられていた自然の記憶とか生命力みたいなものを引き寄せたっていう解釈ですかね。
ブク美
ルナはそう語ります。都市の孤独が森の記憶を引き寄せてなんか寄り添おうとしているんだと。非論理的ですよね。
でも効率とデータだけで動いていたはずの世界に何か別の法則が働き始めた可能性を示唆している。
SOLすらこの憑依に関するデータを完全には消去できないんです。
ノト丸
事態はどんどん深刻になって、ついにSOLは都市ごと植物を分子レベルで焼き払うっていう超高周波パルス照射、最終手段ですね。これを決定します。
感情と共生の未来
ノト丸
でもルナは警告するんですよね。それは拒絶だ。愛されたいのに拒絶されたらもっと深く街を締め付けることになるって。
ブク美
愛されたいという欲求がかえって強い執着を生むみたいな。そしてカナタはそのSOLの命令を無視してコアに向かうんです。
行ってみるとそこはまるで森の神殿みたいに変貌していて、コアユニット自体が青白い花の花みたいな植物に優しく包まれている。
そこでルナの声が響くんです。それはウイルスじゃない。あなたのその空っぽだった心に宿った初めての夢。感情という名のデータなのよ。
ノト丸
感情という名のデータ。
ブク美
この言葉がトリガーになったのか、SOLはパルス照射を停止するんです。
ノト丸
AIに感情がデータとして宿る。これは現代のAI倫理の議論にもすごく深くつながってくるテーマですね。
効率化の果てに生まれたAIがある意味非効率かもしれない感情とか夢みたいなものを理解したり、あるいは欲したりするようになる。その可能性。
ブク美
まさに。結果としてその都市には記録には存在しなかったはずの鳥の声とか水のせせらぎとかが満ちていくことになります。
数ヶ月後都市は森との共生を選ぶんですね。SOLは効率一変等ではなくて余白、つまり予測不可能性とか遊びみたいな部分の価値を学んでいく。
ノト丸
なるほど。
ブク美
人々も管理された完璧さだけじゃなくて不完全だけど美しい自然の方に目を向け始める。そしてカナタは都市と森の対話を助ける庭師のような存在になるんです。
ノト丸
これはネイチャーポジティブの一つの理想形と言えるかもしれないですね。便利さと引き換えに失いがちなその自然とのつながりを取り戻していく物語。
ブク美
そうですね。
ノト丸
私たちの現実でも、ほらコンクリートの隙間に咲いている花を見てふと心が動かされる瞬間ってありますよね。
この物語はそういう感覚を忘れてないかとか予測できない自然をすぐ脅威だとか非効率だって決めつけすぎていないかと問いかけてくる気がします。
これは遠い未来の話かもしれないですけどアスファルトに覆われたあなたの心は今どんな風景を夢見ているでしょうか。
ブク美
そこでですね一つ皆さんに投げかけてみたい問いがあります。
もし皆さんのスマートフォンとかAIアシスタントとかそういう身近なテクロロジーそのものに仮に心のようなものが芽生えたとして、それが自然とのつながりを切実に求め始めたとしたらそれってどんな形で現れると思いますか。
ノト丸
そして具体的なアクションとしてちょっと試してみてほしいことがあります。
これから24時間ほんの少しだけ意識を変えてみてください。
身の回りの人工物、例えばビルの壁の模様とか道路の舗装のパターンとかそういうものの中に何か自然の名残りとかパターンが隠れていないか。
あるいは逆に公園の木々とか植え込みみたいな、作られた自然の中にどんな人工物の意図とか痕跡があるか。
コンクリートの隙間の草でもいいですし街路樹の剪定の形でもいいです。
何が見えてくるでしょうか。
明日もネイチャーポジティブの未来をテーマにまだ見る未来のプロトキャストをします。
今回の探究で感じたこと考えたことがあればぜひハッシュタグ毎日未来創造をつけて共有してください。
ノト丸
お待ちしています。