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寝落ちの本ポッドキャスト。 こんばんは、Naotaroです。
このポッドキャストは、あなたの寝落ちのお手伝いをする番組です。 タイトルを聞いたことがあったり、実際に読んだこともあるような本、
それから興味深そうな本などを淡々と読んでいきます。 エッセイには面白すぎないツッコミを入れることもあるかもしれません。
作品はすべて青空文庫から選んでおります。 ご意見、ご感想、ご依頼は公式xまでどうぞ。
寝落ちの本で検索してください。 さて、今日は太宰治の心の王者というテキストを読もうと思います。
まあ、ご存知と思いますが一応。 太宰治。
日本の小説家。 左翼活動で挫折後は自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、
第二次世界大戦前から戦後にかけて作品を次々に発表。 主な作品に、「走れメロス!」
「嗣がある」、「人間失格」などがある。
没落をした家族の女を主人公にした社養はベストセラーとなる。 というところで
心の王者です。 ちょっとね、だいぶ短いのでゆっくり目に読もうかなと思います。
その分、寝落ち向きだとは思いますが、
読んでいきましょうかね。 それでは参ります。心の王者。
先日、三田の小さい学生さんが二人、 私の家に参りました。
私はあいにく加減が悪くて寝ていたのですが、 ちょっとで済むお話でしたらと断って床から抜け出し、
土寺の上に羽織を羽織って面会いたしました。 お二人ともなかなかに行儀がよろしく、
しかもさっさと用談を済まし、立ち所に引き上げました。 つまり、この新聞に随筆をかけという用談であったわけです。
私から見ると、いずれも十六、七くらいにしか見えない 温厚な少年でありましたが、
それでもやはり二十歳を過ぎておられるのでしょうね。 どうもこの頃、人の年齢のほどがわからなくなってしまいました。
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十五の人も三十の人も四十の人も、 またあるいは五十の人も、
同じことに怒り、 同じことに笑い凶児、
また同様に少しずるく、 また同様に弱く卑屈で、
実際、人の真理ばかりを見ていると、 人の年齢の差別などをこんぐらがってきてわからなくなり、
どうでもいいようになってしまうのであります。 先日の二人の学生さんだって、
十六、七には見えながら、 その話ぶりにはちょいとした駆け引きなどもあり、
なかなか老成していた箇所がありました。 いわば新聞編集者としてすでに一家を成していました。
お二人が帰られてから私は羽織を脱ぎ、 そのまままた布団の中に潜り込み、
それからしばらく考えました。 今の学生諸君の身の上が、
なんだか不憫に思われてきたのであります。 学生とは社会のどの部分にも属しているものではありません。
また属してはならないものであると考えます。 学生とは本来、青いマントを羽織った
チャイルド・ハロルドでなければならぬと、 私は顔面にも信じているものであります。
学生は司策の散歩者であります。 青空の雲であります。
編集者になりきってはいけない。 役人になりきってはいけない。
学者になりきってさえいけない。 老生の社会人になりきることは、学生にとって恐ろしい堕落であります。
学生自らの罪ではないのでしょう。 きっと誰かにそう仕向けられているのでしょう。
だから私は不憫だというのであります。 それでは学生本来の姿はどのようなものであるか。
それに対する答案として、 私はシルレルの物語史を一編諸君に語りましょう。
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シルレルはもっと読まなければいけない。 今のこの辞曲においてはなおさら大いに読まなければいけない。
大らかな強い意志と、 勤めて明るい高い希望を持ち続けるためにも諸君は今こそシルレルを思い出し、これを愛読するが良い。
シルレルの死に地球の分配という面白い一編がありますが、 その対意はおよそ次のようなものであります。
受け取れよこの世界を。 と神の父ゼウスは天上から人間に号令した。
受け取れ、これはお前たちのものだ。
お前たちに俺はこれを遺産として、 永遠の領地として送ってやる。
さあ仲良く分け合うのだ。 その声を聞き、
たちまち先を争って、手のある限りのものは右往左往。 己の分け前を奪い合った。
農民は元夜に境界の杭を打ち、そこを耕して田畑と成した時、 地主が懐で知って出てきて、さて嘘吹いた。
その七割は俺のものだ。 また商人は倉庫に満たす貨物を集め、
長老は貴重な古い葡萄酒を漁り、 金太刀は緑したたる森のぐるりに早速縄を張り巡らし、
そこを己の楽しい狩猟と相引きの場所とした。 市長は血股をぶんどり、
漁人は水辺に斧川橋を定めた。 すべての分割のとっくに済んだ後で、
詩人がのっそりやってきた。 彼は遥か遠方からやってきた。
ああ、その時はどこにも何もなく、 すべての土地に持ち主の名札が張られてしまっていた。
えー情けない。なんで私一人だけが皆からかまってもらえないのだ。 この私が。
あなたの一番忠実な息子が。 と、大声に苦情を叫びながら、
彼はゼウスの玉座の前に身を投げた。 勝手に夢の国でグズグズしていて、と神はさえぎった。
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何も俺を恨むわけがない。 お前は一体どこにいたのだ。
皆が地球を分け合っている時。 詩人は答えた。
私はあなたのそばに。 目はあなたのお顔に注がれて、
耳は天井の音楽に聞き惚れていました。 この心をお許しください。
あなたの光に当然と酔って、地上のことを忘れていたの。 ゼウスはその時優しく言った。
どうすればいい? 地球はみんな暮れてしまった。
秋も狩猟も市場も、もう俺のものではない。 お前がこの天井に俺といたいなら時々やって来い。
ここはお前のために開けておく。 いかがです?
学生本来の姿とは、すなわちこの神の長寿、 この詩人の姿に違いないのであります。
地上の営みにおいては何の誇るところがなくても、 その自由な好奇の憧れによって時々は神と共にさえ住めるのです。
この特権を自覚したまえ。 この特権を誇りたまえ。
いつまでも君に偶有している特権ではないのだぞ。 ああ、それはほんの短い期間だ。
その期間をこそ大事になさい。 必ず自身を汚してはならぬ。
地上の分割に預かるのは、それは学校を卒業したら、 いやでも分割に預かるのだ。
商人にもなれます。 編集者にもなれます。
役人にもなれます。 けれども神の玉座に、神と並んで座ることのできるのは、
それは学生時代以後には決してありえないことなのです。 二度と帰らぬことなのです。
三田の学生諸君。 諸君は常に陸の王者を歌うとともに、またひそかに
心の王者をもって辞任しなければなりません。 神と共にある時期は君の生涯に、ただこの一度であるのです。
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1989年発行 筑波書房 筑波文庫
太宰治全集 10より読み終わりです。
やっぱり短かったですね。 今ですね
事務所のプリンターが壊れていまして 読み上げ用の
紙が ものすごい長編かものすごい短編かしかストックがないんですよね
短編画を読みましたが
iPadで見ればいいじゃないかって思うかもしれないですけど何ですかね
声優の養成所の時代からもずっと紙だしなぁ もう紙
なんか いいんですよ
手書きでなんかちょっと 手入れしたりできるから赤入れたりね
ここで こう
区切りを入れてい 一泊取るみたいなことができたりするんで
やっぱ紙で読み上げたいんだよなぁ 少し短かったですが寝落ちできていただけたら幸いです
それでは今日のところはこの辺でまた次回お会いしましょう おやすみなさい