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2022-03-09 07:47

#129 【本を語る】IT全史(1)ナポレオンが活躍していた頃のデジタル。

ITの歴史を知ることができる良書として、ぼくの場合はよく「IT全史」を挙げます。

ITの世界がどうして今のようになっているのか、その成立過程を知ることができます。

しばらくこの本の中身をかいつまんで、連想することも合わせて話していこうと思います。

今回は、「腕木通信」がテーマです。

ところどころ、「腕木式通信」と言ってしまっていますが、一般的には「腕木通信」と言うようです。

にゃおの考える現代の基礎的なリテラシーは、ITをきちんと使えることが含まれます。そのためにどのような問題があり、どう解決していったらよいか考えてみるPodcastです。

「IT全史」
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をご覧ください。

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にゃおのリテラシーを考えるラジオ、読書と編集の千葉直樹です。
このチャンネルでは、読書とIT時代の読み書きソロ版を中心に、様々な話をしています。
今回のタイトルは、
本を語る IT全史 中野昭著
です。
たまに本の話をしていますが、あまり書評的なことは話していません。
なぜかというと、以前ブログで書評的なことを書いていた時に、記事を書くために本を読むというような、僕にとっては本末転倒なことになってしまったからなのです。
そんなわけで、今はあまり読んだばかりの本のことは話さないとか、本のタイトルは出すけど中身には触れずに思いついたことを話す、というような形にしています。
今回取り上げる本は、しっかり読んでからそれなりに時間が経っていて、通り一辺の話をするには良い感じに内容を忘れているところがあるので、ここで語るのに丁度良いなと考えました。
さらに、ITの世界がなぜ今のようになっているのかを考察するための領所で、僕のような技術の歴史が大好物な人にはぜひ読んでほしいということで、本の中から面白いと思うトピックを拾って語ってみたいと思ったのです。
まず、ITという言葉について考えます。
日本語では情報技術になります。
情報技術というと、今はやっぱりコンピューターのことを考えると思います。
目の前に見えるパソコンとかスマホみたいなものが思い浮かぶことが多いでしょう。
それでも間違いではないのですが、あまり見えない大きな要素として通信技術が隠れています。
誰でもインターネットを使うようになって十数年経ちますが、目に見えないことが多いので通信料金のこと以外はあまり意識に昇らないわけですよね。
しかし、情報と通信は切っても切れない関係があって、ITの歴史は通信から始まると考えた方が良い場合もあるのです。
この本のアプローチはまさにそういうものです。
現在の技術につながる近代からの技術を中心に書かれたものですが、情報と通信という観点で見ると古代の「のろし」に遡ることができるわけです。
そこから情報量を増やした手紙のようなものをその時代のできるだけ早い交通手段で届ける仕組みを経て、
目視を中心に遠距離通信をシステマティックに行えるようになった近代のフランス生まれの腕着通信というものから話が始まります。
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ちょっと体を動かしてみましょう。
腕を左右にまっすぐ伸ばして、片方の肘から先を上に、もう片方は下に折ってみてください。
こんな形の通信機を使います。
建物の屋根の上に今やったような形の木造の器具を取り付けるのです。
先ほどは左右それぞれの腕を上下に折りましたが、両方とも上に曲げてもいいし、下でもいいし、
この腕をまっすぐ横に出すだけじゃなくて、斜めにするということもできます。
これらの組み合わせで文字とかメッセージを表すのです。
できるだけ大きいものを作って、それを遠くから人が見てメッセージを読み取るのです。
そしてそれを街道沿いなどに一定の距離で並べておいて、次々に腕着の形をリレーで伝えます。
そうするとそこそこの速さで遠距離に情報を伝えることができます。
この通信方法は1793年頃発明されたものです。
どんな時代かというとナポレオンが活躍した時代ですね。
他国からの侵略が問題の時代で、国境付近の情報をいかに早く中央に伝えるかが戦いの成否を決定づける状況です。
こんな状況は今もあまり変わっていませんが、やはり戦争では最先端の技術が生まれるわけですね。
この方法で最初のネットワークでは約200km先に信号を送るのに120秒で済んだそうです。
手紙を馬車で運ぶことと比べたらとんでもない速さだったことでしょう。
そしてこの通信の画期的なところは、比較的自由な文章を送れることです。
例えばのろしの場合は、敵が攻めてきたという情報を煙を起こして知らせるという感じで、あらかじめ取り決めた少量の情報しか送れません。
しかし腕儀式通信は様々な腕の形で92の符号を表し、92ページの符号表のそれぞれに92のメッセージを規定して、合計で8000以上の語彙を伝えることができたそうです。
このような符号を使った通信方法は、原理的には現代の通信と変わりありません。
もちろん符号化を使った通信は松明などでもっと古くから行われていたようですが、これだけの汎用性を持つ高速遠距離通信は腕儀式通信が始まりだったでしょう。
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日本の歴史年代と比較してみると、この頃は明治維新よりも7,80年も前のことです。
ちなみに日本では、同じ頃に米などの相場の情報を伝えるために旗振り通信という旗振りリレー通信が行われ、大阪から京都の間で4分ほどで情報を伝えていたそうです。
この通信では旗の振り方で相場の値段の上げ下げを数値で伝えることができ、正しいタイミングの情報であることを担保するためにあらかじめ決めた数値を送ったり、途中で誰かが盗み見ることを考慮して数値にバイアスをかけておくなどの工夫があったそうです。
ヨーロッパでは戦争のために、日本では経済のために発達した通信システムというところがちょっと面白いですね。
今回は腕着式通信の話をしました。
次回は電気が使えるようになってからの初期の通信について話してみようと思います。
読書と編集では、ITを特別なものではなく、常識的なリテラシーとして広める活動をしています。
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今日もワクワクする日でありますように。千葉直樹でした。ではまた。
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