ドッグランでの犬の逃げ方
こんにちは。横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
ドッグトレーナー、ペトロス専門士、アニマルコミュニケーターである私が、犬と人が共に、より幸せになるためのヒントをテーマに配信をしています。
時々、雑談ライブや歌を歌ったりしています。
さて、今回は実際にお寄せいただいた、ドッグランでの犬同士の対応、これでいいの?というお話について、私の感じたことをお話ししていこうと思います。
先日、私はある方にこのように尋ねられました。
自分の愛犬は、まだ犬に慣れていなくて、犬に慣らすためにドッグランに時々連れて行きます。
犬が怖いのか、他の犬が近づいてくると、すごい勢いで逃げてしまうんです。
前回、ドッグランにいらっしゃるトレーナーさんに相談したところ、
愛犬にリードをつけて、逃げられないようにリードを短く足で踏んで、諦めるまでそのままドッグランにいる犬に匂いを嗅いでもらいなさい、と言われました。
それでも、リードを踏んでいる間はおとなしく諦めたように見えたとしても、リードを離すとまたすごい勢いでドッグランの端まで逃げてしまうんです。
これでいいんでしょうか?
皆さん、ここまでの内容は理解していただけましたか?
私はこのお話を聞いて、一瞬ゼックしました。
今は、公共や施設のドッグランに犬の専門家がいることは珍しくありません。
中には、簡単なリクチャーなどを受けないとドッグランに入れなかったり、犬同士のトラブルを仲裁したり、危険予防のための指導をする犬の専門家が配置されているところもあります。
だいたいはそうした専門家は、私のようなドッグトレーナーであることが多いのですが、
実はドッグトレーナーは民間資格であり、国家資格ではありません。
小学校のように学習指導要項などもありませんから、誰がどんなポリシーで、どのような教え方を犬にするのかというのも自由な世界なんですね。
私自身は、それは逆にいいことだなと思っています。
いろんな考え方をする方がいて、いろんな犬がいる、いろんな飼い主さんがいる。
私の考え方やトレーニングへの方針が合わない方や、後悔を感じられないという方も確かにいるでしょう。
私自身は、いろいろなトレーニングの方法を見聞きして、実践してきて、このやり方が効果があり、自分にも合っていると思っていますが、万人がそう思っているとは限りませんよね。
そのため、私は自分以外のトレーナーや訓練士さんが行っている指導法やトレーニングを批判したり、非難するということはしません。
それでも、この話を聞いたとき、正直に言ってしまうと、えー、そんなことをまだ言っている方がいるとは、と驚いてしまったことは否めません。
この話を伺って、私がこの飼い主さんに一番先にお伝えしたことがあります。
それは、そういう犬への鳴らし方の方法も確かにあるとは思います。
ですが、○○ちゃんの場合、リードを付けて足元で逃げられないようにリードを踏んで固定して、他の犬に匂いを嗅がれているときはじっとしていても、リードを外すとすごい勢いで逃げてしまうということですよね。
であれば、○○ちゃんはこの結果、何を学んでいると飼い主さんは思いますか?ということでした。
1月23日に行ったオンラインセミナーでもお話していますが、私はその行動によって犬が何を学ぶかを考えることが、犬の問題行動の解決のための糸口であると考えています。
なぜなら、犬に関わらずすべての動物は自分の身に起きたことから学ぶからです。
動物たちは私たちのように言葉を話しませんが、その感情の多くは行動として目に見えて現れます。
もし、このトレーナーさんの言うように、リードをつけて逃げられないように短く踏み、他の犬が来て匂いを嗅いでも諦めるまで待つということが口をそうしていたとすれば、この犬の次の行動はリードを離しても逃げないはずなのです。
ですが、現実はリードを踏んでいる間はおとなしく、来る犬に匂いを嗅がれているけれど、話すとすごい勢いで逃げる、です。
となると、この犬はドックランでリードをつけられて逃げられないように固定され、他の犬に匂いを嗅がれているという経験から何を学んでいるのでしょう。
このリードにつながれている時間は、この犬はなぜじっとしているのでしょうか。
他の犬が匂いを嗅ぎに来るのを行為を持って受け入れているのでしょうか。
これはリードを離したときに、ダットのごとく逃げるということから見えても、少なくとも飼い主さんの希望している犬になれるということは学んでいないと言えるのではないでしょうか。
少なくともこの方法で犬になれてほしいという飼い主さんの目的は果たされているようには思いません。
セミナーでもお話ししましたが、問題行動を捉えるときに大切なことは、どうなってほしいのかという目標をきちんと設定することです。
そして愛犬さんの今の行動を見て、目標とする行動までの差異を埋めていくということがトレーニングになります。
お話しにあったこの愛犬さん自身はまだ小犬さんで、犬を見て逃げるのは犬に対して嫌な経験やトラウマがあったというよりは、
そもそも犬に対した経験値がないからだと私は踏んでいます。
私自身はこういう小犬さんにはたくさん出会ってきていますが、こういう子たちに必要なのは分別のある落ち着いた大人の犬と穏やかに空間を共有するということで、
その先に相手に対する警戒心や恐怖心が薄れ、小犬らしい好奇心が出てくるという段階になっていくんですよね。
そのためには、わちゃわちゃ活発な若い犬ではなく、小犬の動きには動じない許容範囲の広い大人の犬の存在が必須です。
第一印象が悪いと、後の犬事情に響いてきますからね。
そしてさらに大切なのは、犬自身が感じる心理的安全性です。
つまり、自分の心身が安全であるという前提があって、初めて動物はチャレンジをしていきます。
私は犬のトレーニングを行うとき、この心理的安全性を犬自身が感じているかどうか、これがとても重要だと思っています。
自分が安心や安全、信頼を感じられない状態で物を押し付けられ、逃げ場を立たれて抵抗できないような状況に、
飼い主さん自身に追い込まれてからポジティブな気持ちを持てというのは、これはかなり難しいんじゃないかなと思います。
理性で行動をコントロールできる、私たち人間ですら難しいと思うのに、特に理性ではなく本能に忠実な動物たちには難しさの極みでしょう。
ですから、犬慣れをするにしても、その犬が逃げたいと思うのは、心理的安全性を感じていないから。
安全をその犬自身が感じられるかどうかは、人間が押し付けるものではなくて犬自身が感じるものだからです。
そのため、犬慣れの行程を指導する中で、私が大事にしているのは、心理的安全性と合わせる犬とタイミングと距離感です。
学習性無力感の影響
ですが、実はこのようなやり方で犬慣れを指導されるということは、このドッグトレーナーさんのようにね、こういった指導をされるということは珍しくないんですよね。
それは、動物のトレーニングや状況の歴史の中で当然のように利用されてきたある一つの通念、理論があるからなんです。
その理論は何かというと、動物が逃げられない、抵抗できないという状況にあえておき、諦めて抵抗できなくなる、抵抗する気をなくす状態までその状況にさらす、というトレーニング方法に利用されます。
動物を回避不能なストレス状態に長期間置くことで、何をしても無駄だと学習させ、抵抗することや逃れること、または自発的な行動をしなくなる状態にする方法で、この何をしても無駄だと動物自身が思い込み、諦めて抵抗する気をなくすことを学習性無力感と言います。
この学習性無力感、これは犬たちだけではなく人間も感じるものです。
そして現代に生きる私たち人間ですら、この学習性無力感は外部状況によって感じることがあり、自分なんて所詮何をしたって無駄なんだ、と思い込むことがあります。
自分自身でこの感覚を得てしまうということもありますが、この無力感を鯉に植え付けることで相手の行動をコントロールする方法があり、それはこの理論が確立する前から特に動物の訓練や状況の世界で当たり前のように使われてきたものです。
次回はこの学習性無力感と犬のトレーニングについてお話を深めていこうと思います。
あなただったら自分の愛犬がドックランで他の犬を見ると逃げてしまう。それを相談したときにどんな回答が返ってきたら納得ができますか。
少し考えてみてくださいね。
最後まで聞いていただいてありがとうございました。