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こんにちは。横浜で15年以上、犬の保育園の先生を行っている、なおちゃん先生と申します。
こちらの番組では、たくさんのワンちゃんや飼い主さんと関わってきた私が、
日本の犬と飼い主さんのQOLをあげるおテーマに、犬のあれこれについて、私個人の見解からお話ししています。
時には子育てネタや、留学時代や旅行の思い出などのお話もお届けいたします。
さて、前回は犬の学習方法と効果的なおやつの使い方、なぜ犬のしつけにおやつを使うのかについてお話ししました。
こちらの放送では、オペラント条件付けにおける性の強化の理論を使うことで、動物の学習を深めることができるということをお話ししました。
今回は犬の学習方法のその2と題して、おやつの使い方とは少しずれてしまいますが、性の強化の反対である性の罰、一般的には罰と言われる方法を使うトレーニングのメリット・デメリットをお話ししようと思います。
かつて犬の訓練といえば、罰による訓練や調教が多く行われていました。
これは、動物には感情や魂がないと思われていた中近代の思想から派生したものです。
また犬は狼の進化系であり、狼は力によって群れを支配するという考えの下、つい最近まで犬に対して人間は強く、時に力を示して人間が優位であることを証明しなくてはならないということが信じられていたということでもあります。
性の罰とは、行動することで不快な刺激が与えられる場合であり、結果として行動が減少されるというものです。これは罰とだけ呼ばれることも多くあります。
例えば、噛む犬に対してノーなどの言葉をかけた上で、徹底的に噛まなくなるまで棒で叩く、蹴るということで恐れを感じた犬が、棒やその人を見ただけ、またはノーという言葉を聞いただけで噛まなくなるというような訓練法です。
いわゆる、人に対して都合の悪いことをした時に罰するという訓練方法ですね。
ですが、最近の傾向としては、この罰を極力抑え、性の強化を対応する陽性強化のトレーニングが主流となっています。
また、狼の群れ、これはパックと言いますが、これは原則的には親子を基本とした血縁関係のある集団であり、野生の狼のパックでは、暴力と力による支配というよりは、ほぼほぼ年功序列であるということが明らかになってきた結果でもあります。
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ですので、噛む犬に対しても、噛んだ時に体罰を徹底的に与えるというよりは、噛まない方法を探し、噛む原因の除去、状況の管理、テンションのコントロールをはじめ、今までは噛んでいた状況において噛まないことを強化していくということを、陽性強化で行うという方法が多く取られるようになりました。
かつては、郵便屋さんが来た時に吠えた犬に対しては、吠えなくなるまで犬を叩くといった訓練法が昔は取られていたのですが、今ではその反対の教え方、生の強化トレーニングにおいて、
郵便屋さんが来た時に吠える前におやつをもらう、もしくは郵便屋さんそのものからおやつをもらうということで、郵便屋さんが来たら特別おいしいものがもらえる合図だよという新しい条件を教え込むというような方法ですね。
今でも罰をメインに教えるトレーニング法はありますし、実際においてその方法で犬のしつけを行う方もいらっしゃいます。
私はそれが絶対に悪いことだとは思いません。なぜなら、ある一定の効果を得られるからです。
犬の行動をコントロールする、操縦するという意味では、罰をメインとしたトレーニング方法は確かに効果があります。
また、褒めることをメインとした養成強化のトレーニングよりも、特に噛むことや吠えるといった問題行動は早く治ります。
治ったというより早くなくなりますね。
また、おやつを使うことも少ないので、おやつを多用したくないという飼い主さんには歓迎されることもあります。
ですが、私は基本的には罰を多く取り入れたトレーニング方法は行いません。
どうしても罰をメインとするトレーニング方法をしたいという場合には、罰を上手に使うトレーニング方法をされているトレーナーさんや訓練師さんを探してくださいね、とお伝えすることにしています。
私が罰をメインに使ったトレーニング、特に対罰については絶対に行わないというのは、いくつか理由があります。
一つ目は、犬と人との関係においては、信頼と安心が基本であると思っているからです。
他人である私が、お預かりのワンちゃんたちに対罰を行ってワンちゃんたちを一時的にコントロールできたとしても、飼い主さんとワンちゃんの関係を変えることはできないからです。
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二つ目は、飼い主さんが自分のワンちゃんに徹底的に罰を与えることができないからです。
中途半端に対罰を与えるくらいであれば、やらないほうがいいんですね。
なぜなら、犬は別のことを学んでしまったり、罰に対して力で反抗していくということを学んでしまうからです。
最後の理由は、私が罰を与えるトレーニングをメインに学んできていないため、罰を与えることが下手くそであるということなんですね。
効果的に罰を与えることには、ある程度の練習が必要なんです。
同じ理由で、犬の首を絞めるような鎖や首輪、体を傷つける可能性のある道具の使用はしません。
ただし、非常に的確に上手な罰の与え方は、犬の行動に劇的な効果をもたらすこともまた真実だと思います。
実際、熟練の犬の訓練者の中には、この罰と褒めるということをうまく組み合わせることによって、
いわゆる飴と鞭の使い分けを非常に上手に行うことによって、卓越した訓練成果を素早く上げている方も多くいらっしゃいます。
この罰という言葉は、凶悪な響きですけれども、行動理論では、実際は対罰だけを指すものではなく、犬にとって期待した結果、望むものを得られないということも指します。
その意味では、私も罰を使うことはあるんですが、これも犬からの信頼を裏切る行為ではあるので、回数は減らすようにして、褒めることと必ずセットで使うようにしています。
例えば、ご飯の用意をすると飛びついてくる犬。この場合、飛びついてきたら、手に持ったご飯を棚の上に置いてしまうなど遠ざけてしまいます。
これは犬にとって望んだ結果が得られない、つまり罰になるわけですね。
ただし、飛びつかなかったり、代わりにお座りをしてくれた場合には褒めてご飯をあげます。
これにより、飛びつかなければ早くご飯がもらえるという行動を強化していきます。
実際は、罰もこのようにセットで使うことで学習が早まることもあるんです。
ただし、対罰に関しては犬との信頼関係を損なう以外に得るものはないと思っているので、私はするべきではないと思っています。
今まで罰を使ったトレーニングのメリットとデメリットについてお話をしました。
実はこれ、犬に限ったお話ではなく、人間にも十分通用するんです。
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人間でもダメ出しばっかりされるよりも、良かった点を褒められた方が気分よく行動できるし、次も頑張ろうと思いますよね。
犬に罰というダメ出しをする時も、最後は必ず良い点を褒めてあげることで終わらせるということで、良い記憶として印象つきやすいと言われます。
トレーニングの最後は必ず成功で終わらせることは鉄則なんです。
例えば、玄関に置いてあるまとめたゴミ袋を無視して出勤してしまった旦那さんに対して、
どうしてあそこにまとめて置いておいたのに出してくれなかったのよ。全く気が利かないんだから、と帰宅してからすぐに怒られる旦那さん。
かたや奥さんににこやかに、これお願いね。今夜はあなたの好きな餃子を作って待ってるからね、とゴミを手渡しの上に送り出されて、
帰宅した時には、今朝はゴミ出しありがとう。重たかったから助かった。明日もお願いできるかな、と言われるのと、
どちらの旦那さんの方が気分が良いでしょう。次に繋がる行動になると思いますか。
前者は性の罰、後者は性の強化、となります。前者のパターンでは、旦那さんが翌日ゴミ出しをするとしたら、奥さんに怒られたくないな、という動機づけですよね。
後者であれば、頼りにされたい、ありがとうという言葉を聞きたい、といった動機づけになりますでしょうか。
皆さんなら、どちらの動機づけの方が気分よく動くことができますか。
行動は、良い刺激が与えられる場合には増え、強化されます。不快な刺激が与えられる場合には減っていきます。
対象の犬や旦那さんやお子さんをどう行動に持っていくか、それは飼い主さん、そして奥さんの、お母さんの腕の見せどころかもしれませんね。
もちろん人間の方が、犬よりも遥かに思考回路が複雑なので、必ずしも同じ結果には行きませんけれどもね。
そして不思議と、相手が人間だと、私もより感情的になってしまって、この学習理論をおろそかにしがちなんですけどね。
まだまだ、修行が足りません。
本日も最後まで聞いていただき、ありがとうございました。次回もまた、よろしくお願いいたします。