次のテーマは、悩みを5秒で解決する方法です。
正観さんの講演会での出来事です。 30年間看護師として働いている女性からこんな質問がありました。
彼女は30年間ずっと同じ夢を見ることに悩んでいました。 それは看護師の資格がないのに病院で働いているという夢です。
夢の中では資格がないのに手伝わされてそれがとても辛い。 どうしたらこの夢を見なくなるのかという相談だったそうです。
正観さんは彼女の話を聞いた後、こう言われたそうです。 5秒で治せますがどうしますか?
え、30年続いている悩みを5秒で治せるんですか? 5秒で治せますが治りたいですか?
治りたいです。 彼女はこの日初めて講演会に来られた方だったそうです。
正観さんの本を読んで講演会に来ているということは、少なくとも正観さんのことを嫌ってはいないはずですよね。
もしかしたら信頼しているかもしれない。 女性はこう言ったそうです。
もちろん信頼しています。いろいろな話を聞きたくて、この苦しみを取ってくれるヒントをいただけるのではないかと思ってきました。
私を信頼しているのは本当ですか? はい、信頼しているんですね。
では言いますが、あなたは看護師として十分な力があり、十分な資格があり、ちゃんとした人ですよ。
このやりとりを聞いていた10人くらいの人が、すごいと言って拍手をしたそうです。
その後、この女性はたくさんの涙を流して泣きました。
しばらくして泣きあんだ時には、すがすがしい表情を見せていたと言います。
30年間苦しんでいたものが、本当に5秒で取れたようだったそうです。
この話からわかるのは、信頼されている時の言葉の力です。
もしあなたが誰かに悩み事を相談されたら、まずは私を信頼していますか?と聞いてみましょう。
相手が、はいと答えたら、続けて私は人を見る目があると思いますが、どうですか?と聞きます。
ここでも、はいと答えが返ってきたら、じゃあ私の言うことは信用できますよね?
だったら言いますが、あなたはちゃんとした人ですよ。だからこそ私はあなたを友人にしているんじゃないですか?と言ってあげるんです。
一緒に頭を抱えて、どうやったら解決できるんだろう?と考えても、30年経っても40年経っても答えは出ません。
自分に頼ってきた人に対して少しだけ偉そうに、この人を直してあげられるんだと思って、
あなたはちゃんとした人です。私がそう言うのだから間違いありません。と言ってあげてください。
そうすれば、相手の悩みはあっという間に、まさに5秒で解決できることがあるんです。
次に、得を積む方法についてです。
セイカンさんは、相手のラッキーを一緒に喜んであげることだとおっしゃっています。
人からこんなラッキーなことがあったよ、という話を聞いた時、聞き手には2つの反応があります。
一つは、嫉妬したり、妬んだりすること。そしてもう一つは、よかったねと一緒になって喜び、祝福してあげることです。
お釈迦様は、随機苦毒という教えを残されました。
随機とは、心の底から喜ぶこと、心の底から嬉しいと思うことです。
苦毒とは、得を積むこと、良い行いを重ねることです。
つまり、随機苦毒とは、人の喜びや幸せを一緒に喜んであげるだけで、自分が得を積むことになるという意味なんです。
今日はこんな楽しいことがあった、という話を聞いたら、ただひたすら良かったねと言っているだけで、得を積み重ねていけるわけです。
さらに、他人の幸せを自分のことのように喜ぶようにすると、嫉妬心を克服することもできます。
セイカンさんは、生前、国内ツアーや海外ツアーを年に何回か行っておられました。
その参加者は、セイカンさんの講演を聞いたり、本を読んだりしている方々なので、旅行中、不平不満、愚痴、泣き言、悪口、文句を言う人が一人もいなかったそうです。
いつも、こんな素敵な景色を見た、こんな面白いことがあった、という楽しい会話ばかり、日常の中に喜びを見つける訓練をしている良き仲間たちだったわけです。
旅行はほとんど行き当たりばったりだったそうですが、時には思い通りにならないことや予定外のことも起きます。
しかし、誰も文句を言わず、むしろ予定通りに行かなかったおかげで、かえって面白い体験ができたと肯定的に捉えていたと言います。
天井員さんに威張る人や、自分勝手な行動をする人、飛行機の時間が遅れると苦情を言う人も一人もいなかったそうです。
良き仲間との旅行は、「よかったね!」と喜び合うことの連続です。それだけで得を積んでいるのですから、こんなに素晴らしいことはありません。
そう考えると、いい旅とはどこへ行くかではなく、誰と行くかによって決まることがわかります。
良き仲間に囲まれていれば、どこへ行っても楽しいし、特別どこかへ行かなくても楽しい。
どこかへ行くから楽しいのではなく、どんなところでも楽しいんです。
人生も旅と一緒ですから、これは旅を人生に置き換えても全く同じことが言えます。
喜び分かち合える人間関係、良き仲間に囲まれて人生を歩んでいけるならば、淡々と過ぎる普通の日常であっても十分に幸せを感じられるのではないでしょうか。
結婚して3年経つと、愛情が別の感情に変化する。続いてのテーマは、結婚生活についてです。
どうやら人間の愛情は、結婚してから3年でなくなるらしいとセイカンさんは言われています。
結婚して20年、30年続いている夫婦がいますが、この人たちがどうして長く続いているのかというと、
結婚してから3年の間に愛情以外に別の概念を作り上げることができたからだそうです。
その愛情以外の別の概念というのが尊敬という概念です。
愛情を永遠のものだと勘違いして、その愛情だけに寄りかかっていると、結婚生活は破綻をきたすらしい。
いつまでもこの人を愛し続けようと思っても、いつまでもこの人から愛され続けるだろうと信じていても、
生物学的に見ると、愛情は結婚を3年で終わってしまうようです。
結婚すると普通はゴールインと言われますが、実は結婚した瞬間から3年間の執行猶予が始まっています。
この執行猶予中に愛情以上の価値観、すなわち尊敬を作り上げることが結婚生活のようです。
ではどうすれば相手を尊敬できるようになるのでしょうか。
それは常に相手の良い面を見つけることです。
目の前の夫や妻を自分の思い通りに作り変えようとするのではなく、
相手はこういう個性があって自分とは違うものを持っているんだと丸ごと全部受け入れる。
感謝する。
そして相手の素晴らしいところ、社会の良いところ、宇宙の楽しさを自分の中に見出す訓練ができるようになると、
あれこれと批判や評価をしなくなりお互いを認め合うことができるようになります。
セイカンさんのお宅では結婚する前にこういう話をされたそうです。
喧嘩というものは売る側がいて買う側がいるから成り立つ。
私は売ることもしないし買うこともしない。
だからそちらも売ることもしないし買うこともしないと決めて欲しいのだがどうだろうか。
ご夫婦で売ると買うを慎むようになると喧嘩が起きにくくなるそうです。
同じ言葉を他人から言われたときは怒らないで踏みとどまることができるのに、
同じ言葉を妻や夫から言われるとすぐに腹を立てる夫婦がいます。
外では踏みとどまれるのに、家では踏みとどまらない。
正確に言うと踏みとどまらないのは幼児性があるからです。
結婚は何のために存在するのか。
実は幼児性を克服するために存在しているようです。
家庭というものは自分の思いを通す場所でも甘える場所でもストレスを発散させる場所でもありません。
家庭は幼児性を削って大人になる作業をする場所として存在しているらしいんです。
結婚をしてわがままが言える相手ができた状態になったとき、
いかに踏みとどまって相手を受け入れるか、それを問われているのが結婚の本質のようです。
人生相談の98%は相手を自分の思い通りにしたいというもの。
セイカンさんのところに入ってくる人生相談の98%は、
自分の理想や価値観に合わない人をどうしたらいいかといった人間関係に関する相談だったそうです。
しかしこうした質問は自分以外の人を自分の思い通りにしたいというもので、
セイカンさんは本質的な相談ごとではないと考えていました。
ある70代の女性からの質問です。
先日94歳のお母様が家を新築し一人暮らしを始めたそうです。
新築の際、娘である女性は新しいシステムキッチンを入れたらどうかと提案しましたが、
お母様はガンとして聞かず20年前の古いキッチンを今も使っているとのことです。
女性としては母が死んだ後は私がその家のキッチンに使うことになるので新しいシステムキッチンを入れてほしかった。
どうやって母を説得したらいいでしょうかという相談でした。
セイカンさんは誰の家ですかと尋ねると、彼女は母の家ですと答えました。
次に誰がそのキッチンを使っているのですかと尋ねると、母ですと答えました。
彼女の返事を聞いた後、セイカンさんはこう言いました。
それではあなたに関係ないではありませんか。
この女性は今までの70年間の人生を振り返るとありとあらゆる人間関係が大変だったそうです。
それはそうでしょう。どうしたら自分の周りの人間を自分の思い通りにできるのか。
それだけを考えながら悩みだ苦しみだと騒いできたのですから。
子供をどうしたいとか誰かをどうしたいとか自分の思い通りにならない人をどうしたらいいかという話は本質的な相談ごとではありません。
講演会の後、40歳くらいの女性から質問があったそうです。
おじ夫婦が2人ともがんになってしまいました。
おじはがん科、おばは内科なので週にいくつも病院を往復しなくてはいけません。
しかもおじ夫婦は仲が悪く2人は顔を合わせないようにとあえて別々の病院に通っています。
2人はいつも怒鳴り合っているので穏やかな瞬間はありません。
この2人はどう見ても幸せには見えないので何とか2人を幸せにしてあげたいのです。
私はどうしたらいいでしょうか。
政官さんの答えはこうでした。
私に相談に来たあなた自身が講演会の間もその後の短い時間でも一度も笑っていませんでしたね。
そしてさらにこう言われました。
あなたは今幸せですか。
するとこの女性はいいえと答えました。
ではおじさん夫婦の幸せを考える前にまずは自分の幸せを考えましょう。
この女性は自分が幸せになってもいないのにおじ夫婦を幸せにしてあげようと思う人でした。
自分が幸せでないのに他人の幸せを考えてもその人たちをより幸せから遠ざけてしまうかもしれません。
自分以外のものを自分の思い通りにするという考え方を全部やめる。
人のことは気にせずにまず自分が幸せになることを考える。
自分以外の人を自分の思い通りにするより丸ごと受け入れてしまう。
そして怒ったことに感謝するほうが人生は楽になると思います。