美大における表現の模索
これも多くの美大が抱える問題といえば問題なんですけど、それだけ厳しい訓練で技術を磨いて、じゃあ美大入った後何しようかっていうので、結構つまずく人が多いっていうのもあるんですよね。
そうですね。
これまでは、僕なんかもろにそうだったんですけど、映画描けるって思ってるのは、やっぱり自分がいた田舎とかの学校のクラスの中で人よりも映画上手とか、写実的な映画描けるとか、色使いが綺麗だったりとかっていう、それで保ててたプライドみたいなのがその時はあるんですけど、
それ美大受験して、みんな同じような試験で通ってきた人たちが一つの教室に集められた時に、これまで唯一の自分の強みだったものがなくなっちゃう感覚を味わうんですよね。
それが結構美大あるあるなのかなって思ってて。
それはそうですね。
みんなデッサンできるしってなった時に、これまでそういう自分絵上手いっすよって言って、言われたらもう何でも上手に描けますよっていう武器で来たら、美大入った瞬間、その能力もういらないですよって言われて、今度は自分が何を表現したいかやってくださいみたいな、フリースタイルにいきなり持ち込まれるみたいな。
えーってなって、みんなわけのわからないことを押し出すっていう感じですね。
るきさんって美大入ってから課題とか真面目にやってました?
私ね、結構真面目でしたよ。
本当に?
なんか、一晩で仕上げたりとかもありましたけど、受験の時にまずプライドがズタボロにされるじゃないですか。
で、頑張って、しかも自分一浪してるので、その後で入ったら、本当性格悪いなって今思いましたけど、全員下手くそって思ってました。
そうですね。
うちの大学はストレートで入ってきた子が多かったので、たぶんそれに対するギャップをキラキラした感じ。
ストレートで入った子たちのキラキラと一浪して、ちょっと1年ふけたギャップで、
ちょっと熟成された思いがね。
そうですね。それが下手くそと思って、頑張る私はみたいな。
自己堅持欲がすごかった。
自分を奮い立たせる材料にしてたんですね。
そうですね。
いや、わかるな。
だって、自分が信じられるものが今のところそこしかないわけですからね。
そうですね。
すごいそれわかるんですよね。
僕は割と知識マウント取ってましたね。同級生に対して。
なるほど。
そう。
え、この現代アーティスト知らないの?みたいな感じ。
アートを学びに来てるのに?みたいな。
でも、それみたいにめっちゃあるあるですよね。
いろんなところで知識マウント起こってましたよね。
なるほど。
これ多分音楽とかでもそうなんですけど、割とアングラな人たち知ってる方がかっこいいがあるんですよね。
文化系あるある。
だからもうわっけのわからない、すごいドマイナーなアーティストの話をしてた。
一晩中飲んでるみたいな。
それがあってなんですね。
あの時間は一体何だったんだ?
確かに。
海外美大との違い
私、アーティストしりとりとかしてましたよ。
すげえニッチな名前でつないでいくみたいな。
でも知識ある方が勝つっていう。
なるほどね、確かに。
やばいね、今考えたら超ダサい。
ルキさんから聞いて、そうなんだって最初思ったのは、美大っていっても、さっきも藤野さんが言ってたみたいに、科がいろいろ分かれている。
それがどういうふうに分かれているのかって結構外からよくわからなかったので、美大はアートを学びに行く場所っていう感じで、中で結構細分化されてるんだなっていうのは思ったりしたんですけど、
結局実質油絵化がなんでもあり化になっているというか、そういうもんなんだと思って、ちょっとそれはへえってなりましたね。
いわゆる現代アートっていうのをやっているような人たちが、それを学ぶための科があるわけではないんだっていうのは知らなかったなと思った。
大学によってはあるんですかね。
その現代アート専門のコースみたいなの。
あるはずですね。そういうジャンルを定めてなくてとか、海外の美大とかは割とそういう成り立ちをしていて、先行を2つ以上取らないといけなくて、
片方はアートなんですよ。油絵とか写真とかじゃなくて、アートっていうすごい広いやつで、
総合分野で。
それともう一個先行はアート以外の哲学とか歴史とか、そういうのを先行しないといけないっていう美大もあるんですよね。
それを聞いた時に結構自分たちというかね、伸び台に足りないものをすごい感じたんですよね。
結局作品のテーマ性とか、自分ってどういう人間なんだろうみたいなのを掘り下げて、表現しないといけないってなった時に、油絵の調合の仕方をいくら知ってたって出てこないわけなんですよね。
だからすごくその点で言えば、海外の景色の方が理にかなってる。アート以外のことをしっかりとやる。やった上でアートだよねみたいな。
どうしてもちょっと職人気質が強いんですかね、日本の美大は。
そうかもしれないですね。
なるほど。
技芸を極めるみたいな。
技術訓練校的な側面も結構あるというか。
それも楽しいんですけどね、言っても。
だから油絵、油絵も僕実は結構真面目にやってたんですよ、高校の時とか。
古典技法でテンペラガを描いたりとか、卵の卵黄と樹脂を組み合わせて油絵を描いたりとかね。
なんかそんなんとかやってました。
木炭デッサンの時にパン使うじゃないですか。
あれは消しゴムの役割?
そうそうそう、あれ本当にパンでやるんですけど、描きながらパン食べるっていうのは本当にありますね。
食べてた食べてた。
昔の漫画家のエピソードとかで何かたまに。
あれはガッチリです。
ちょっとピンとこない方のために説明補足しますと、
パンの食パンあるじゃないですか、普通に売ってる。
あれの四角い耳じゃなくて中央の方の白くてふわふわしたところを、これちぎって手のひらでこねまくるんですよね。
あれ若干のちょっと悪いことしてる感覚があった。
いけないことをしてくる感覚。
ちょっと好きだったんですけど。
それでこうこねくり回すと本当に練りゴムみたいになるんですよね、パンが。
そっかそっか。
で、木炭で描いてるデッサンの、いわゆる消しゴムとして使われるって言われるんですけど、
木炭の場合は鉛筆デッサンと違ってちょっと油絵に近いところがあって、
墨を乗っけて剥がして乗っけて剥がしてっていうのを繰り返すんですよね。
それで絵肌というか深みのある表情とかを作っていくみたいな。
その黒が木炭だとしたら、食パンは白の役割みたいな感じで、
それを画面に練りゴム代わりに使うことによって白い線を引いたり、
なんか微妙なトーンの状態を作ったりみたいな、
そういう表情を出すのにすごくいい画材なんですよね。
それで安いパンを買ってきて、それを使うわけなんですけど、
これは僕が画塾行ってる時のエピソードで、
基本的に画学生ってすごい貧乏なんで、
画材いっぱい買うから、
その食パンを墨でちょっと黒くなったパンとかもお構いなしに食べながらデッサンをするんですけど、
僕同級生にちょっとお金のあるお家の子がいたんですよね。
その子が木炭デッサンを同じ教室で描き始めた時に、
なんだっけな、その子が持ってきたパンがちょっと高いやつだったんですよね。
なんか長寿みたいな、何だっけ、法順みたいな。
ありますね。
ちょっとプレミアムなやつ。
そうそうそうそう。
普通に食べる時もちょっと奮発して買うぐらいのいいパンを木炭デッサンに。
考えられないと思って。
で、そこで結構なんかクソって隣で悔しい思いして描いてたんですけど、
これすごいスカッとしたのが、その高いパンってめっちゃ高いからバターがいっぱい練り込まれてて、
木炭デッサンに全然向かないんですよね。
それ使った瞬間に画面がこうぐちゃぐちゃになっちゃったっていうお家なんですけど、
バカめ。
使い方がいいんですよね。
そんな高いパン使うからなんです。
ちっちゃい話だけど、
面白いな。
ちっちゃい話。
絶対美大でしかない。
この話とか本当に今日二人に振られなかったら絶対思い出さなかった話。
みたいなのがありましたね。
面白いな。
教授とかはどうですか?好きだった人とか、印象的だった人。
ずっと下ネタ言ってる人とかいましたね。
基本作家さんが多いんで、先生って言ってもね。
だからめちゃくちゃ偏りはありますよね。
そうですね。
今となってはその教え方どうやらねんと思う人もたくさんいるんだけども、
それを咀嚼して、自分に役立つ教えだったり情報だけをうまく取り入れる訓練にはなったかなという気がしましたね。
クセは強いけど、アートをやっている人たちだから繊細だったし、
彼らなりの優しさみたいなのは感じましたね。
今でもそうだなと思います。
あれは愛情だったんだろうなって思いますね。
あとやっぱなんかアウトプットの仕方がまだ当時はわからなかったり、
何か燃えつくものを持ってるけどうまくそれが何なのかっていうのをたどり着けなかったりするときにすごく良い仕手にはなってくれたかなと思いますね。
教授のそういう部屋みたいなところにずっと入り浸ったりとかもね、やっぱりありましたね。
そうですね。
美大への進路と人間関係
自宅にね、お邪魔させてもらったりとか、生活を見せてもらうことで学ぶこととかもすごいあって。
僕、美大の進路、美大に進みたい人から相談を受けることってたまにないですか?
僕割とあるんですけど、すごく都市の離れた方から相談していただくことがあるんですよね。
その時に美大に行ったら何があるんですか?みたいな話をやっぱりされるんだけども、
割と僕はあそこの有名な教授がいるからとか、あそこは設備がいいからとか、こういうカリキュラムがいいからっていうのももちろんあるんだけども、
それが効果的になるかどうかって結構その人との相性次第みたいなところがあったりするんだけども、
僕これだけは言えるかなと思うのは、ややこしい話に付き合ってくれる人間がたくさんいるっていうのは、僕はすごく美大のいいところかなと思ってて、
なんかやっぱりそういう一般社会に溶け込めない生きづらさみたいなのを感じてる人たちがやっぱ集まってるって側面もあるから、
なんかこう急に理解者が増えたような感覚があったりしたのかなと思って、
一晩中どうでもいい話でずっと俺はこう思う、いやそれはその考え違うと思うみたいなめんどくさい話をして、もう最終的に朝方には殴り合いが始まってるみたいなところが何回かやっぱりありましたしね
後々冷静になって考えてみると、あれなんであんな動画が飛び交ってたんだろうみたいな、そんなに怒るようなことじゃないなとかね
面白いな
ちょっと本当恥ずかしいんですけど、尖っていたというか尖りたかった僕は同級生とやっぱり議論をして、
なんかの時にあるテーマについてすごくいい感じで対立意見が出て、いい感じでその議論が深まりそうな場面があったんですよね
その時に同級生の女の子の一人がまあまあ考えは人それぞれなんだし、いいじゃないって言って話終わらせにかかったんですよね
でそれがもう僕本当に許せなくて、その子をガン詰めして泣かせるっていうことをやってしまった
面白い
今からでは全然想像できない
本当になんか申し訳ないことをしたなと思うんですけど
それは学年が違ったから知らなかったです
それはなんでかっていうとあんなに厳しい思い訓練してやっと得た環境で
このなんか人の人間の多様性がね結構保たれているこの環境で
そんな分かりきったことを言うためにやってんじゃねえみたいなことだったんでしょうね当時の僕としては
だから別にこれ喧嘩してるわけじゃないからみたいな
っていう感じで喧嘩しちゃいましたね
いいですね、若い子の藤野さんいいですね
学生って感じで
学生です
いやいい話
結構なんか思ったよりもいい話だった
結局なんか2人とも真面目にしてたよね
なんかその向き合い方というか
みんなそれだけ厳しい訓練を受けて入っているから
そのぐらいの気持ちじゃないとやっぱ入れないっていうのもあるだろうし
もうちょっとなんかすごいくだらない話になるかなと思って
結構これ美大入りたい人とかはなんか参考になる部分もありそうですね
卒業式前の思い出
イメージ難しいなと思って
普通の学校でね中学高校とかの時点では
なんかそういう環境って存在するんだみたいなのがそもそもなんかイメージできてないと思う
でも本当ね僕含めて周りは本当に頭が悪いやつばっかりだったんで
あと僕卒業式の前日
るきさんこの話しましたっけ卒業式の前日に
してない聞いてないと思います
うちで同級生10人ぐらいで飲んでて
当日の朝までみんな飲んでるんですけど
あと1時間後に卒業式始まるじゃんっていう状態だったんですよね
家でみんなそのスーツを持ってきてて
もうベロベロなんですけどみんなこう着替えて
とりあえず会場に行こうと着替えてる時に
あれっつってそういえばお前単位足りてたっけみたいな
えお前卒業できるのみたいな
そう言ってるやつがいて
でそいつはスーツにネクタイ締めながら
いやわかんないけどわかんないけどとりあえず行ってみようかなと思って
やばい
で一緒に飲んでた仲間たちと卒業式その会場でスーツ着て花束持って
みんな肩組んですごい笑顔で10人ぐらい並んでる写真残ってるんですけど
その写真の中で卒業できたの3人ぐらいだけなんですよね
え?
あんなにいい写真なのに、体に大事なやつばっかりじゃないかっつって、みたいなこともありましたね。
ゆるいね。
僕もギリギリだったんで、るきさんはちゃんと卒業できた方ですよね?
そうですね。でも、あれでしたよ。卒業式の次の日に、就活の面接とか、そんな感じでしたね。めっちゃギリギリ。
ギリギリ。
そうですね。それこそ、スーツ持ってって、みたいなね。
そっかそっか。
あの、ほぼほぼみなさん決まってなかったですよね。
そうそう、同じです、それは。
ここら辺も普通の大学とはちょっと違いね。
みんなおめでたくしつくしていくんですけど、就職先は、みたいな、ない、みたいな。
子が多かったかな。
なんか、そこに対して、あんま悲観的でもないですよね、みんなね。
まあ、そうですね。
焦りはね、それはあるんだけども、なんとかなるか、みたいなところもあるのかな。
とりあえず、無事、2人は卒業。
はい、よかったです。
卒業できて、ということで、とりあえず、今回は、そこら辺で、一区切りしますか。
はい、ということで、美大あるあるというか、なんかあれですね、美大情報いろいろ、なんだろうこれ。
偏ってる気もしますが。
2人の決心したね、美大の話ということで。
はい、ありがとうございました。
ありがとうございました。