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ジェームズ・ワット 動かない蒸気機関を10年かけて動かした男【漫画「自助論」】
2026-11-01 13:40

ジェームズ・ワット 動かない蒸気機関を10年かけて動かした男【漫画「自助論」】

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こんにちは。Lyustyleです。

手のひらに乗るほどの小さな模型は、ちゃんと動きました。ところが、それを大きく作った蒸気機関は、蒸気がもれて途中で止まってしまいます。お金を出してくれていた人は破産し、妻のペギーも亡くなりました。それでもジェームズ・ワットは、機関の図を広げることをやめませんでした。

真ん丸の筒を求めてバーミンガムへ移ったワットは、1776年3月、炭鉱で新しい機関に火を入れます。公園で思いついてから10年あまり。その間、ワットが何を失い、何を手放さなかったのかを、漫画と朗読でお届けします。

このお話は、サミュエル・スマイルズ『自助論』(1859年)の第2章「産業の先導者たち 発明家と生産者」に出てくるワットの話をもとにしています。原書にない場面や会話は、事実から外れない範囲で脚色しています。朗読は私Lyustyleが地の文も台詞も1人で読み、漫画はAIで描いています。

再生リスト「漫画「自助論」」では、『自助論』の偉人の話を1人ずつ漫画と朗読でお届けしていきます。

■チャプター
動かない大きな機関
器械職人ワットと大学の模型
小さな模型は動いた。大きな機関は動かなかった
それでも、ワットは機関を手放さなかった
1776年3月、炭鉱で火を入れた
スマイルズが書き残したこと

■次回
炭鉱で火の番をしていた若者が、機関車を走らせるまで。ジョージ・スチーブンソンの話です。

■関連リンク
ブログ:https://idea4u.net
note:https://note.com/lyustyle

YouTube版
https://youtu.be/bfqps8L0RXU

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00:03
手のひらに乗るほどの小さな機械
ある男が考えた新しい蒸気機関を小さく作って試す模型です。
元は古い注射器でした。
男がその筒にそっと蒸気を送り込みます。
すると中の小さなピストンがスーッと上がってまた下がりました。
もう一度送るとまた同じように動きます。
男は思わず息を呑みました。
動く。ちゃんと動く。
これを大きく作れば炭鉱の水を汲み出す本物の機関になる。
そう思うと胸がドキドキしてその晩はなかなか眠れなかったんです。
それから何年か経って男はいよいよその大きな機関を作りました。
場所はスコットランドの片田舎にある古い屋敷の裏の小屋です。
小屋にはあの小さな模型と同じ仕組みで作った
人の背丈を超える機関が置いてあります。
そばで腕を組んで待っているのは炭鉱の持ち主でした。
この機関にかかるお金を出してくれている人です。
男は手のひらの汗を服で拭ってから火を入れました。
ボイラーが唸り蒸気が太い筒へ流れ込んでいきます。
筒の隙間から白い蒸気が漏れ出ました。
ピストンは少しだけ動いて途中でガクンと止まります。
男は慌てて火の具合を見直してもう一度蒸気を送りました。
ガクン。やはり途中で止まってしまいました。
小さな模型ではあんなにちゃんと動いていたんです。
それなのに大きく作ると動かない。
炭鉱の持ち主はため息を一つついて何も言わずに小屋を出ていきました。
男は何か言わなければと思ったのですが言葉が出てきません。
すみませんの一言さえ喉に使えてしまったのでした。
しばらく男はその背中を見送っていました。
それから機関の方へ向き直って蒸気が漏れていたところにそっと手を当てます。
鉄はまだ熱いままでした。
お前はどうして動いてくれないんだ。
この男がジェームス・ワットです。
後に蒸気機関を大きく作り変えることになる人です。
話はこの日より何年も前に遡ります。
その頃ワットは機械職人として働いていました。
伝わるところではワットは町の職人の組合に
修行の年期が足りないと言われて店を開かせてもらえなかったそうです。
腕はあるのに店が持てない。
そのワットに町の大学が学内の仕事場を用意してくれました。
1763年から翌年にかけての冬、
ワットは大学からある模型を直すように頼まれます。
ワットより前の時代にニューコメンという人が考えた蒸気機関の模型でした。
このニューコメンの機関が当時炭鉱などで広く使われていたんです。
大学の先生はワットにこう言いました。
03:00
どうも調子が悪い。直してもらえないか?
ワットは直して動かしてみて首をかしげました。
この機関ではピストンを一度動かすたびに
筒の中に冷たい水を吹き込んで蒸気を冷やします。
ところが次に動かす時には冷えた筒をまた熱くしなければなりません。
熱くしては冷やし、冷やしてはまた熱くする。
だから蒸気も石炭も山のように食ってしまうんです。
これはもったいない。
ワットは動かした後の筒をじっと見ていました。
さっきまで熱かったのにもう冷えている。
次に動かす時にはまた熱くしなければならない。
筒を冷やさずに済む方法はないのだろうか?
ワットは熱や蒸気の仕組みを片っ端から学んでいきました。
仕事が終わってもそのことが頭から離れなかったんです。
答えが浮かんだのは1765年のある午後のことでした。
ワットの住む町には川沿いに広い公園があります。
その公園を考え事をしながら散歩していた時、ふと思いついたんです。
蒸気を筒の外の別の入れ物に移してそこで冷やせばいい。
そうすればピストンの入った筒はずっと熱いままにしておける。
あ、これだ。
ワットはすぐにでも試したくて気がつくと早足になっていました。
そうして仕事場で生まれたのが冒頭で出てきたあの注射器の小さな模型なんです。
小さな模型は動きました。
ところが何年か後にあの片田舎の小屋で試した大きな機関はうまく動かなかったんです。
その小屋でワットは何度も機械をばらしては組み直しました。
訳の一つは大きな筒でした。
よそで作ってもらった筒や部品にはわずかな歪みがありました。
筒とピストンの間に隙間があるとそこから蒸気が漏れてしまいます。
隙間に詰め物をしても筒を削り直してもうまくいきません。
直したと思ってはまた止まる。その繰り返しでした。
その間も家族を食べさせなければなりません。
ワットは昼間、運河を通す道筋を測る仕事に出ていました。
冷たい雨の中、泥だらけになって荒れ野を歩きます。
他にも測る道具を作って打ったり、バイオリンや笛を直したり、お金になることなら何でもやりました。
それでも夜、クタクタで家に帰ると台所の机に機関の図を広げるんです。
妻のペギーはそんな夫の話をいつも笑って聞いていました。
ワットが図を指さすとペギーも机に顔を寄せてきます。
ワットが身を乗り出して、「ここに別の入れ物をつけてね。」と言うとペギーは、「はいはい、それで?」と先を促します。
外では何をやってもうまくいかない。けれどもこの台所だけはワットが夢の話をしてもいい場所でした。
06:03
1773年になると悪いことが続きます。
まず、機関のお金を出してくれていたあの炭鉱の持ち主が商売に行き詰まって破産してしまうんです。
機械の持ち分は炭鉱の持ち主にお金を貸していたある工場の主が引き取りました。
その工場はスコットランドからずっと南へ下ったイングランドのバーミンガムという街にあります。
これからは機関をその工場で仕上げるということになったのです。
片田舎の小屋であの動かなかった機関がばらされていきます。
ワットは箱に詰められる部品を一つずつ見ていました。
あそこもここも何度も自分で組み直したところです。
最後の箱が運び出されると小屋がやけに広く見えました。
箱はバーミンガムへ送られていきます。
けれどもワット自身はまだスコットランドに残っていました。
ここにはペギーと子供たちとの暮らしがあったからです。
その年の秋、ワットは仕事で遠くへ出かけていきました。
そこへ一通の知らせが届きます。
妻のペギーの具合が悪いという知らせでした。
ワットは取るものも取り合えず家へ向かいました。
どうか間に合ってくれ。
道のりがこんなに長く感じられたことはありません。
けれどもワットが家にたどり着いた時、ペギーはもう息を引き取っていました。
お産の最中のことで生まれてくるはずだった赤ん坊も助からなかったのです。
ワットはペギーのそばに膝をついたまましばらく動けませんでした。
ペギーのいなくなった家はしんと静まり返ってしまいました。
ワットは小さな子供たちを寝かしつけます。
お母さんはどこ?と聞かれてもうまく答えられません。
子供たちが眠った後、ワットはいつものように台所の机に機関の図を広げました。
けれども手が動きません。
ここに別の入れ物をつけてね、そう話しかけても、
はいはい、それで?と返してくれる人はもういないんです。
ワットは図の上に顔を伏せました。
公園で思いついてからもう8年もたっていました。
それからしばらくの間、ワットは子供たちを育てながらスコットランドで仕事を続けました。
悲しみは少しも軽くなりません。
それでもふとした表紙に機関のことが頭に浮かぶんです。
あの筒をもっとまん丸にしたい。
バーミンガムではあの機関がバラバラのままワットの車を待っています。
あの機関を仕上げられるのはワットしかいません。
けれどもここスコットランドはワットが生まれ育った土地です。
ペギーのネミル墓もここにあります。
仕事も知り合いもみんなここにある。
ここを離れるかどうかワットはなかなか決められませんでした。
ある晩、ワットはもう一度機関の図を広げました。
09:01
このままここにいてもあの筒は直せない。
あの機関を仕上げるのは自分の手でなければならない。
ワットはバーミンガムへ行こうと決めました。
もう一度あの機関にかけることにしたんです。
翌年の1774年、ワットはバーミンガムへ移りその工場に入りました。
片田舎の小屋から届いた機関を工場で使う水を汲み上げる機関として
自分の手で一つずつ汲み直していきます。
ところが火を入れるとやはり蒸気が漏れました。
またか。
ワットは機関を止めて蒸気が漏れるところを確かめました。
筒の内側に手を入れて調べます。
爪物だけではふさぎきれない。
筒そのものの形をどうにかしなければならない。
この筒をまん丸にできればなあ。
そうすればきっと動く。
ワットはまん丸の筒を作ってくれる人を探しました。
見つかったのは
大砲の筒を正確にくり抜く機械を作った鉄の工場の主です。
大砲の筒をくり抜くように機関の筒もまん丸にくり抜けるかもしれない。
ワットはその人に新しい筒を頼みました。
そして1775年の春。
待ちに待った筒が届きます。
ワットは筒の内側に手を入れてゆっくり撫でてみました。
すべすべでどこまでもまん丸です。
これならいける。
ワットの手が少し震えました。
ワットは新しい筒を機関に取り付けました。
それから火を入れます。
蒸気が筒へ流れ込んでピストンが上がっていきました。
あの小屋でガクンと止まったところまで来ます。
ワットは息を止めました。
ピストンは止まりません。
そのまま上がり切ってまた下がっていきます。
片田舎の小屋で動かなかったあの機関が
バーミンガムの小屋で水を汲み上げ始めたんです。
見ていたのは工場の職人たちだけでしたが
職人たちがワッと声を上げます。
ワットは声を出さずに一つうなずきました。
ペギー、動いたよ。
次の年の1776年の3月
ワットはバーミンガムから少し離れた炭鉱にいました。
そこには炭鉱の持ち主のために
新しく作った別の機関が据えられていました。
工場の中ではなく本物の炭鉱で働く機関です。
炭鉱の深い口頭には地下水が溜まります。
その水を汲み出せなければ石炭は掘れません。
その日は新しい機関のお披露目で
周りには大勢の人が集まっていました。
本当に動くのかと疑うような顔も見えます。
ワットの合図で機関に火が入りました。
蒸気が流れ込んでピストンが動き出します。
ワットは拳を握りしめてピストンを見つめました。
ピストンは止まらずに上がり下がりを続けます。
やがて深い口頭から水が汲み上げられて
溢れるように流れ出してきました。
12:02
見ていた人たちからどっと声が上がります。
しかもこの機械が燃やす石炭は
ニューコメンの機関よりずっと少なくて済みました。
大学で模型を直した時、
ワットはもったいないと蒸気の無駄が気になりました。
その無駄を減らす仕組みが今炭鉱で役に立っているのです。
お披露目が終わって人々は帰っていきました。
それでもワットは一人機関の前に立っていました。
公園で思いついて注射器の小さな模型で試した仕組みが
今炭鉱の水を汲み出しています。
ワットはピストンが上がるのを見ていました。
上がりきるとまた下がっていきます。
もう一度だけ見届けようと思いながらなかなか帰れませんでした。
日が暮れてもワットは機関の前を離れません。
暗がりの中で機関が水を汲み続ける音だけがずっと響いていました。
このワットのお話を辞書論に書き残したのはサミュエル・スマイルズです。
その辞書論の中でスマイルズはワットのことをこう書いています。
10年の間ワットは考え作り続けた。
望みもほとんどなく励してくれる友もほとんどないままに。
あなたにも何年かかっても手放さなかったことはありますか?
よかったらコメントで教えてください。
次回は炭鉱で火の番をしていた若者が機関車を走らせるまでの話です。
ジョージ・スティーブンソンの話です。
ぜひチャンネル登録をお待ちしています。
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