1. 心の砂地#
  2. 第63回『誰かの夢のつづきを』

押井守監督作『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』(84)と、『うる星やつら』原作の高橋留美子さんの作品についてお話ししています。

1984年という時代。創作の上に創作を重ねること。作品でテーマ、思想を語ること。選ばれし者の恍惚と不安、共に我にあり。

作品そのものの面白さから、どのように本作が製作されたのか、それぞれの作家の立ち位置や環境、そして「高橋留美子先生のアンサー」について、情報を整理しながら、2024年のわたしたちから見た目線で、批評しています。


◇『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』あらすじ

学園祭を翌日に控え、準備に大忙しの友引高校。あたるたちも学校に泊まり込んで作業に追われていた。そんな中、あたるたちの担任・温泉マークと養護教員のサクラは、学園祭の前日が延々と繰り返されていることに気付き、全員に帰宅を命じる。しかし、友引町はすでに異常事態に陥っていた。


◆今回の収録パートナー

ずーみん (同じ鍋のモツを食う)

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サマリー

今回のエピソードでは、ポッドキャスト番組「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」が取り上げられています。アニメ映画や監督の評価、原作者の意見など、さまざまな観点から作品について話されています。 高橋留美子さんは、独自の「るーみっくわーるど」を構築し、短編や長編の作品を発表しています。一方、押井守さんはタツノコプロダクションで演出としてキャリアをスタートさせました。押井守監督のアニメ映画作品の特徴について話されています。『うる星やつら2ビューティフルドリーマー』について話し、高橋留美子さんの作品の一貫性について考察しています。 関わる人は創作に対して創作でアンサーを返すことで、受け取り手は考えることも増えます。

「うる星やつら2 ビューティフルドリーマー」とは
この番組、心の砂地は、様々な文化や日常の築きをヒントに考え続けることで、言葉の記憶装置を見つけることができます。
私、シャーク君です。今回の収録パートナーは、ポッドキャスト番組、同じ鍋のモツを食うより、ずーみんさんに来ていただいております。
ずーみんです。よろしくお願いします。
はい、ということで、前回に引き続き来ていただいております。
はい、来させていただきました。
はい、今回もね、よろしくお願いします。
お願いします。
ということで、本日も始まります。
心の砂地
ずっと二人ずっと歩きたいだけ
今回なんですが、『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』というアニメ映画、84年のアニメ映画を主にトークしていきたいなと思っております。
はい。
うる星やつら自体は、みんな知ってるかなと思うんですけども。
うーん。
ずーみんさんは、高橋留美子という人の作品、見たこと、読んだことあるものでありますかね。
犬夜叉だけですね。
僕たちね、世代的にはもう完全に犬夜叉世代。
はい、アニメもやってましたし。
そう、余談ですけども、成人式の時に、女性が主に着けられている白いふわふわみたいなやつあるじゃないですか。
あー、はい、ありますね。
僕たちは、通称殺生丸って呼んでたんですよ。
あー、はい。
犬夜叉に出てくるキャラクターの殺生丸っていうのが付けてるんですよね。
あー、そうですね、確かに。
そう、なんで、あ、殺生丸のやつ、みたいな感じいうぐらい、犬夜叉はすごいインパクトもありましたし、影響があるなあという感じはしてますな。
うんうん。
今回これ、原作が高橋留美子さん。
はい。
で、監督は押井守監督っていう監督で、こちらも有名なアニメ監督で、代表作って言えば、『攻殻機動隊 GHOST IN THE SHELL』、『イノセンス』という攻殻機動隊のアニメ映画とか、
あとはパトレイバー劇場版の2作とか。
うん。
とか、あとは『スカイクロラ』か。
はいはい。
とかが監督された作品としてあるんですけども、押井守監督作品みたいなので、見たことあるやつみたいなのはありますかね。
はい、今も名前が出た攻殻機動隊とスカイクロラを見ました。
作品の評価と影響
あー、攻殻機動隊はイノセンスとGHOST IN THE SHELLどっちも見てる?
GHOST IN THE SHELLだけですね。
見たことは全然あるって感じなんですね。
はい。
ちなみにそれっていつぐらいに見たかとかって覚えてます?
これほんまに最近なんで、去年とかですね。
あー、そうなんですね。
はい。
それは何かきっかけがあって見たような感じですか?
もともと私、『PSYCHO-PASS』っていうアニメ作品がすごく好きで、『PSYCHO-PASS』は攻殻機動隊を元に作られてるような内容的にも似てるところがあるっていう話を聞いて、
じゃあちょっと見てみようかなと思って見たのがきっかけですね。
そうですね。あれも実際本広監督が総監督に入ってたりとか。
はい。
制作がProduction I.Gなんで。もろ。
どっちかというと神山監督が監督したアニメ版『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』のが一番近いかなという感じはするんですけど。
あー、そうですね。
やっぱり押井版攻殻、以前以後ぐらいのね、ぐらい影響力があるもんなんで、『PSYCHO-PASS』見たことあってたどるっていう人も結構いるんじゃないかなと思います。
いると思います。
という感じでございまして、そういうお二人、原作者が高橋留美子さんで、84年なんで当時27歳。
おー、すごい。
押井守監督は当時33歳でございます。
若いですね。
うん、若いんですよ、二人ともね、作った時が。
で、『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』。
じゃあどういう作品やねんっていうことをちょっとあらすじを紹介させていただこうかなと思います。
《学園祭を翌日に控え、準備に大忙しの友引高校。
あたるたちも学校に泊まり込んで作業に追われていた。
そんな中、あたるたちの担任温泉マークと養護教員のさくらは、学園祭の前日が延々と繰り返されていることに気づき、全員に帰宅を命じる。
しかし、友引町はすでに異常事態に陥っていた。》
というあらすじの作品でございまして。
テレビシリーズがあって、その後の劇場版、2作目っていうのが本作なんですけど、
ずっと学園祭の前日っていうのがループしてるぞみたいなことに気づいてどうのこうのっていうお話ですね。
このループしているっていうのって、すごく今も当たり前にやられていて、
日本のエンタメに、いわゆるこのタイムリープものっていうのは、
明らかにその流れを作ったのは、本作『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』だということはあると思いますね。
実はみんなが何気なく摂取しているものの中に、おしいまむろエッセンスというのが入っているということも言えるかもしれないですね。
今回見ていただいて、84年の映画ですから、今見ておもろいのかっていうところは正直あるんですよね。
でも実際にずーみんさんに今回初めて見るってことで、見ていただいていかがだったかなというのをお聞きできればなと思ってるんですが。
音楽と映像が抜群にかっこよかったです。劇版。
なんかシンセサイザーの感じみたいな。
最後の方に出てくる工場の機械っぽい感じの音が遠くの方で鳴ってるみたいな音があって、そのシーンとかはすごい引きこもれました。
音楽かっこいいよね。
かっこよかったね。
映像っていうのはやっぱり演出面がかっこいいっていう感じかな。
人っていうよりかは人が映らない絵が特に美しい絵画みたいだなっていうふうに思いました。
特にこの段階でもある程度力を入れてやってるんですけど、
原作者の意見
押井守監督っていうのは後の劇場版のパトレイバーとかを作るときにレイアウトシステムっていうのを開発するんですよ。
このレイアウトっていうのはずっとあるんですけど、絵コンテ作って原画に入るまでに構図とかを決めるレイアウトマンがいて、
そこにめっちゃ時間をかけて、レイアウトをバッチリ決めてたら原画にもそんなにクオリティの差が出ないだろうっていう。
実際その演出、こうやってレイアウトをするんだっていう本を作ってて、これ今も再版された買えるようになってるんだけど、っていうぐらい構図にすごいこだわってる人ですよね。
かっこいいのってやっぱ攻殻の1作目『GHOST IN THE SHELL』が本当極まれり、だと思ってるんだけど、
このビューティフルドリーマーの時点、攻殻の10年前ぐらいの時点で、もうこの時からもう決め決めにかっこいいんだっていう感じはやっぱすごいありましたね。
そうですね。
84年って一般的にアニメ映画の当たり年と言われておりまして、何を言っても『風の谷のナウシカ』、トップクラフト(制作)。
これまずジブリ以前ですね、宮崎駿監督。
もう一個、『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』
この2作と『ビューティフルドリーマー』同じ年。
これどれが好きかっていうので、なんとなくこのオタクでも思考がわかるっていうか。
ちなみにこの直しかマクロスにどっちも参加してる原画マンっていうのが1人いまして、それが庵野秀明ですね。
庵野さん。
どっちも描いてるという。
すごい。
そういう時代なんですけれども、だから今もマクロス的なものっていうのは残ってるし、もちろんジブリも。
さっき言った通り、押井守がこのビューティフルドリーマーで作ったようなものっていうのは今でも全然現役なわけですから、アニメが元年の一つみたいな感じで捉えることもできるかもしれないですね。
この前に『カリオストロの城』、宮崎駿で言うとが79年にあったりとか、ほんと直前にガンダムの劇場版があったりとかね。
多分本当の(アニメ)元年みたいなんで言うと、『カリオストロの城』の前年にある『宇宙戦艦ヤマト』の劇場版。
新作の劇場版、『さらば宇宙戦艦ヤマト』っていうのがあるんで、言ったら70年代後半に今のようなアニメ映画の歴史みたいなのがスタートして、
ワンステップ上がった年っていうのが84年っていう感じなのかなっていう感じなんで。
ナウシカも今見ても全然何も古びてないじゃないですか。
いやー、全然鮮やかですね。
『愛おぼえていますか』。やっぱり今見てもちょっと引くぐらい絵が動いてるのよ。
へー。
ぜひ見ていただきたいんですけども。
見たいです。
なんで、そういう歴史みたいな感じで気になった人はそこも比べてみると面白いかもしれないです。
という歴史がございますというあれなんですけれども、
『うる星やつら2 ビューティフルドリーマー』という作品は今も残っている。
しかし先日Amazonプライムで見放題配信みたいなんで、
今結構みんな見直してる人多いタイミングだと思うっていうぐらい、
2024年にも健在、面白いってなる作品だと思うんですけども、
ただこの作品には曰く付きの言論っていうのがずっと付きまとっていて、
実際僕が調べたところ、それはおおむね証明されているようなことがあるっていうか。
何かっていうと、押井守監督が『うる星やつら』という作品の土台の上に自分の作家性を爆発させた作品。
これは間違いない。見てもわかる。
が、原作者の高橋留美子さんは非常に満足いかないという評価だったらしいという話がずっとあって、
実際留美子さんどう言ってるのかなって色々調べたんだけど、
どっちかっていうとこの証言って押井守がめっちゃ言ってるのよ。
「原作者は気に入ってないんです」って色んな書籍で言ってるんですよ。
正直この言説については押井守が結構悪いと僕は思ってるんだけど。
でも高橋留美子さんも84年に出てる対談本に平井和正さんっていうSFの有名な作家さんと対談されてて、
『語り尽くせ!熱愛時代』っていう本なんだけど、
それで自分が作ったものがアニメになってどうだったかっていう話をしていくんだけど、
「ビューティフルドリーマーはどうだったですか」って聞くと、高橋さんは「あれはあれで、
押井守さんのうる星やつら、私のじゃないということね」って言ってて。
で、一作目が『オンリーユー』っていうタイトルなんだけど、
《『オンリーユー』なんかは手を叩いちゃったんですけども、
あの後で見るとちょっと難しいというか、
私は子供のためのアニメや漫画が好きだということですから。
押井さんという方の才能は十分に認めてるんだけど、
これは私のじゃないという気持ちが付きまとうんです》って言ってるんですよ。
ここが高橋留美子サイド証言としての、ちょっと私のじゃないかなとは言ってるんですよね、残ってる証言。
この本に書かれてるから100、高橋さんが言ったかっていうと、これも怪しいと僕は思っていて、
書き起こした人がニュアンス足してる場合もあるし、ただ本として残ってるものとしてはこうあって。
で、結構時間が経って本当に2020年とか最近とかに、
うる星やつらの今新アニメっていうのが、新しい版のアニメっていうのが、
上坂すみれさんがやってるんだけど、その時あたりにちょっと突っ込んで聞いてる人いるんですよね。
で、《押井さんと仲悪いみたいに言われてますけど》みたいなところを突っ込んだときに、
まあなんか言われたりもしますよねみたいな。
別にそんなことないんですけどみたいなことはおっしゃってたりはするんだけど。
ただ何十年も経った後ですから。
そうですね。
っていうのもあるし。
押井守サイドの証言としては、
押井さんのファンってすごい強いファンダムがあって、
ファンサイトに野良犬の寝蔵っていうすごいファンサイトがあって、
そこに書いてあるトークイベントのレポートっていうのから引用するんですけど、
これ2003年、東京国際映画祭の2003年のトークイベントからの引用なんだけど、
《高橋留美子と僕の印象がよく似てるらしいんですよね。
兄弟みたいだと。冗談じゃないと。
二人ともかなり怒ってた。
初号の後、これ初号試写っていう一番初めの関係者の使者ですね。
原作者の言葉をいただく儀式というのがあるんです。
監督にとっては裁判みたいな席なんですが、
「オンリーユー」の後、原作者が何を言ったか覚えてないけど、
2本目はすごかった。
人間性の違いです。
その一言言って帰っちゃった。
これは自分の作品じゃないと言いたかったんですね。
そうなのかもしれないけど。》っていう風に言ってるっていうレポートが残ってて。
これだけだったらまだあれなんだけど、
まじで、押井守が喋ってるだけの本っていうのが年に1回ぐらい出るんですよ。
そんな出るんですか?
めっちゃ出るんですよ。
押井さんってめちゃめちゃ語りたい人で、
映画の批評とかもめっちゃ面白いし、
いろんな人の悪口とかすごい上手くてめっちゃ面白いんだけど、
そういう本も僕は毎回読むんですけど、
定期的にこの話はします。
なんで押井守はめっちゃ言ってる。
なるほど。
っていうのがあって、どこまで高橋さんがね、
それこそどうだったのかっていうのはちょっと分かんないところではあるんだけど。
僕の知り合いのオタクの方々とかに、
うる星やつらにめちゃめちゃ詳しいおじさんとかに連絡を取ってみて、
この辺って当時どうだったんですかっていうのをいろいろ聞いてみたんですけど、
テレビシリーズやってる時から原作の方が最高と、
アニメめっちゃいいじゃん派っていうのは分かれてたっていう。
その辺で劇場アニメも、当時は『オンリーユー』もすごい評価高かった。
だからオンリーユー最高派みたいなのもいたし、
ビューティフルドリーマー最高派みたいなのもあって、
そういう中で多分こういう証言も実際高橋さんが残してたりとか、
当時から押井さんがいろいろ喋ったりみたいなのもあるので、
そういうので今のいわゆる原作者がバチギレたみたいな、
っていう言説が多分出来上がってたところはあるみたいなことは言ってて。
ただ本当に高橋さんから怒ってるとか、
押井守の話でもあんま気に入ってないみたいな、怒ってたみたいなの言ってんだけど、
そんなに世間一般のブチギレみたいな、
(試写の)途中で帰った、みたいなのはちょっと尾ひれがついた話かなとは思う。
原作者と映画っていう、こういう作品関係の作品っていうので。
ただ僕今回のエピソードで喋りたいのは、
後に高橋さんはすぐこの「ビューティフルドリーマー」にアンサーを作品で返してると僕は思っていて。
っていうのがあるんで、やっぱ高橋留美子はすげえなと。
そこまで突っ込んで押井守もすごいけど、
なんかそういうのはすごい思ったりしてるんです。
その辺の話も最後にするんで、よかったら最後まで聞いていただければなと思います。
で、ちょっと押井さんの話、高橋さんの話っていうのをそれぞれ話していきたいんですけども。
高橋留美子の作品と「るーみっくわーるど」
高橋留美子さんっていうのは57年、新潟の生まれの漫画家さんでございます。
78年、勝手な奴らでデビュー。
当時20歳ですね、でデビューしてて。
この頃の漫画家さんは普通に中学生デビュー、高校生デビューとか当たり前なんで、
まあそれでも早いっていうところなんですけども、
代表作としては『うる星やつら』、『めぞん一刻』、『らんま1/2』、『犬夜叉』などね、いろいろあります。
高橋留美子さんの作品の世界観みたいなことを、しばしば「るーみっくわーるど」ってひらがなでいうことがあって、
初期の短編集とかのタイトルみたいなのにも用いられてたりとかしてる感じでして、
単行本の世界累計発行部数は2017年には2億部。
おお、すごい。
すごい、すごい作家です。
だから短編でデビューしてるんだけどもちろん。
始めた連載が78年に『うる星やつら』始まってるんで、デビューから今までずっと現役。
そして発表した長編はすべて当たっているという、とんでもない作家です。
本当に。僕もいろんな漫画の歴史みたいなのを、年表作ったとこに太字になる人を#kokosunaは喋っていこうみたいなのがあるんだけども、
高橋留美子は確実に入る。
で、高橋留美子以前以後ということがあり得る作家さんですね。
一般的には結構長編も長い。らんまも何十巻。
犬夜叉も何十巻。
めぞん一刻とかがちょっと、青年誌だったら短くて、それでも10巻ぐらいはあるかな、みたいな。
とかで、この「るーみっくわーるど」っていう言葉によく集約される話としては、
本当に高橋留美子が作った安全な世界みたいな。
ところで、ずっとドタバタコメディみたいな。
いろんなキャラクター、本当にキャラクター作るのが上手いし、
キャラクターの魅力で、何かテーマみたいなところに向かっていくっていうよりは、
そこのキャラクター同士の関係性の見せ合いっていうので、話をずっと続けていくという。
ところで、これは多分高橋先生はあんまり言われたくないと思うんですけど、
ある種、箱庭的や!っていう評価のされかたをすることが多くて、
ただ長編でいう『犬夜叉』は、その辺を踏み越えた作品だと思うんですよね。
だから、『犬夜叉』を指して「るーみっくわーるど」っていうのはちょっと違うのかなっていう感じは、
僕のニュアンスとしてはするんだけど。
もちろん90年代高橋留美子、2000年代高橋留美子とも全然違うんだけど、
そういうことを言われたりもします。
実際、高橋留美子さんって一般的なイメージ、それこそ「るーみっくわーるど」って言われるような
高橋留美子の世界だねっていうのがすごいある方だと思われてると思うんだけど、
実際あるんだけど。
いわゆる尖った作品というか、サブカル思考みたいなのもしっかり入っている人で。
漫画読みからよく言われるのは、短編面白いよねっていう。
よく言われるんですよね。それこそ「るーみっくわーるど」とか、
いろんな短編集っていうのが出されてるんですけど。
言ったら短編になると関係性で満ちていく感じっていうのではなく、
一種の、一つの創作落語みたいな感じで、バシッと書いた作品がいっぱいあって。
で、うる星やつらの諸星あたるっていうのは、
かっきり言ってしまうと狂った作家ですけども、諸星大二郎っていう作家がいます。
諸星大二郎から来てるとされてます。
そうなんや。
実際、82年に『闇をかける眼差し』っていうシリアスな短編を、
今まで書いてなかった、初めてシリアスな短編っていうのを書くんですね。
サンデーの増刊に。
で、今回読み直したんですけど、めっちゃ大友克洋の童夢に影響を受けてる感があるんですよ。
で、童夢の1年、2年後ぐらいに書いてるんで。
だから、大友克洋の童夢って本当に衝撃的な作品だったんですよ。
壁にドーンってめり込むっていうシーンが有名なあるやつですね。
なんか本当そういうのを、超能力を使う子供がいてみたいな話をもうすでに書いていて、
まあ長編書きながらね。
で、その翌年には『笑う標的』っていう、
これも「るーみっくわーるど」の1位に入ってるんで読んでほしいんですけど、
すごいシリアスな短編を、2作目かな。
『闇をかける眼差し』が1作目だとしたら、シリアスな短編2作目って感じで書いてるんですけど、
この『笑う標的』はもうめっちゃ諸星大二郎なんですよ。
言ったら人を食べる、なんか謎の餓鬼みたいなのが出てくるみたいな。
で、諸星大二郎の『袋の中』っていう、袋になんか入れたら何でも食ってまうみたいな。
だからいろんな動物とか入れても、食ってなくなっていくみたいな。
で、それを見るが趣味みたいになってしまうみたいな、めっちゃ怖い話があるんだけど。
超彷彿とさせるような餓鬼みたいなのが出てくる。
だから、初めて見る人はすごい怖い短編、高橋留美子を書いてるっていう風に読めるし、
やっぱりこの世界観の構築能力が高いんで、
たぶんそこまで変なもん見たなっていう感じはするけど、
高橋留美子の漫画にする能力がめちゃめちゃ高いから。
ちゃんと高橋留美子の世界の中に落ちてるが落ちてるかなっていうところなんですよね。
っていうのが、この『笑う標的』書いてあるの83年。
だから今回の『ビューティフルドリーマー』が公開される前の年に、
チャレンジ的な短編とビューティフルドリーマー
そういうシリアスなやつを出したりっていうところを始めてるとこなんですよね、高橋さんは。
すでにこの時も、言ったらアニメ映画になるぐらいだから、
『うる星』とかはめちゃめちゃブームなわけ。
すごい売れてるわけ。
で、20代っていう感じで、たぶん求められてるもんみたいなのもあるし、
大体そういう『うる星』と『めぞん一刻』か、当時だと、書いてる中で、
こういう実験的な短編も書いてるっていうところだから、
すごいチャレンジングなことをしてる時期なんですよね。
で、その時に言ったら『ビューティフルドリーマー』っていうのは、
原作にも対するちょっと批評精神みたいな、
それこそ「るーみっくわーるど」批判的なところが入ってるっていう、
ちょっと挑戦してるところに押井守から刺されてるんですよね。
だから高橋さんがもし、そういう否定的なリアクションをしたっていうのは、
いや、私もそういうそうじゃないもんをチャレンジしてるのに、
みたいな気持ちもあったんちゃうんかなって、僕はすごい思うんですよね。
うーん、そうね。
っていうところがね、まだ27歳とかですから。
いや、そうやん…!
そういうとこはあっただろうなっていうふうには、僕はすごい思うんですよね。
で、今回の『ビューティフルドリーマー』見て言ったら、
「るーみっくわーるど」的なのがちょっと批判されてる。
そう、『ビューティフルドリーマー』の本当に最後のセリフっていうので、
夢から抜け出したラムちゃんと当たるが、やっぱりドタバタみたいな。
「お前のこと愛してるなんて言ってねえよ!」みたいな。
「ダーリン!」みたいな電撃バーンってくらって。
で、外にいた工事してる奴らが、
「あいつらには進歩とか成長とかもねえもんな」「またやってるか」みたいな感じで。
で、また無邪鬼が、「あの人らと付き合うのは大変ですわ」、みたいな感じで終わるのよ。
だから、すごい「るーみっくわーるど」批判っぽい終わりにめっちゃ見えるよね。
で、僕からすると、そこは「るーみっくわーるど」批判でももちろんあると思うけど、
アニメを作ってる自分たちとか、そういうダラダラしてしまう生活みたいな自己批判でもあると思うから、
まあ全部が全部そうじゃないだろうと思うんだけど、
でもやっぱ最後にセリフでバッって言われると、ちょっとこう、「はあ?」とは多分なると思うんだよな。
実際チャレンジングなことをしてるのに、短編で。
っていうところもね、僕あったんじゃんかなーってね、勝手な解釈ですよ、これも。
とはね、思ったりもしてます。
押井守のキャリアと新スタジオ
で、一方、押井守監督、51年東京都大田区生まれ。
77年にタツノコプロダクションに入社。当時26歳。
ラジオの仕事やってたんやって。大学卒業して。
で、1年ぐらいで辞めちゃうんだけど、結婚するんすよ。
大学の時に合唱サークルみたいなところで出会った人と。
だからちゃんと働かなあかんみたいな感じで、ラジオの仕事やってたんだけど、それで辞めて。
辞めて次にしてた仕事はそれなりに安定してたんだけど、このままでいいんかな感はあったっぽくて。
これは僕、嘘だと思ってるんだけど、電柱に《タツノコプロダクション スタッフ募集》っていうのが貼ってあって。
それを見て電話かけて行くことになったっていう。
電柱にあったかあ。
これは俺、嘘だと思ってるんだけど。一般的にそう言われています。電柱に貼ってあった。なんか知らんけどたまたま。
で、アニメ見てたからタツノコの面白かった。その時タイムボカンシリーズをやってて面白いなと思ってたから。
みんな名前知ってて、後に師匠と言うようになる鳥海さんの名前とかを覚えて、あ!と思って電話して入ったみたいな感じらしいんだけど。
実際そういう感じでタツノコに入った。すごい異例なんですけど、いきなり演出とかやってるんですよ。入って1年目とかで。
なんかできたと。自主映画とか大学生の時に撮ってて、絵コンテとか書いたりとか、そういうのもあったらしいんだけど。
当時タツノコは新卒で新しい人入れて、今までずっと制作進行とかやりながら5、6年して演出とかだったのが、いきなり演出させるっていう社風になってたらしくて。
上についてた人が、絵コンテできるやつとできないやつは決まってるみたいな。できるやつがやったらいいみたいな感じで、いきなり出るよみたいな。
すごい。タツノコでいろんなヤッターマンとか、そういう演出やるんですけど、後に師と仰ぐ鳥海さんという方が、ガッチャマンの鳥海さんが新しいスタジオを作ると。
スタジオぴえろでの働き
スタジオぴえろという、今もありますね。そこに行くっていうことで、鳥海さんの下についてみたいっていうことで、押井さんも一緒に行くと。
そこで、『ニルスの不思議な旅』というアニメで、鳥海さんの下で演出家としてつくという感じですね。スタジオぴえろで作ることになったうる星やつらのチーフディレクターに81年に抜擢と。
だから、この時まで20代ですね。テレビアニメのチーフディレクター、言ったら監督。やってて、劇場版ができるっていうことになったんだけど、テレビシリーズもずっと動いてるから、テレビシリーズだけやってたんだけど、劇場版は違う人がやる予定だったらしい。
急遽、押井守にボールが回ってきて、そんな時間ない。4ヶ月で完成させないといけないとか。やりたくねえなと。テレビシリーズだけやりたいと思ってたけど、師匠の鳥海さんに「作品がかわいいんだったら、お前やれ」と。
うる星やつらのアニメっていうので、違う人がボロボロの作品にするんだったら、お前がやったほうがいいんじゃないの?みたいなことを言われて、やると。映画監督になりたかったっていう人だから。ちょっと飛ばしてたんですけど、アニメの監督になりたいっていう人じゃなくて、映画実写やりたかったらしいんですよね、本当は。
実際受けてたけど、この時期って結構そんなに、実写映画、日本の映画がすごい斜陽にどんどんなっていく頃で、なんで厳しくて入れなくて、アニメのプロダクション、映画作れるかもっていうので入ってっていう人なんで、じゃあっていうのでやったんですよね。
で、『オンリー・ユー』ちゃんと作るんだけど、同時上映が相米慎二監督の『ションベンライダー』っていう映画なんですよ。で、相米慎二監督っていうのは有名なのは台風クラブかな。台風クラブとか、あとは角川映画のアイドルものっていうのも撮ってまして、『セーラー服と機関銃』。薬師丸さんが機関銃持って「カイカン…」っていうやつですね。
『セーラー服と機関銃』撮った後、当時のノリノリの『犬神家の一族』から始まって、ノリノリの角川映画の監督をやってるわけですから。で、『ションベンライダー』っていう、永瀬正敏さんのデビュー作かな。が同時上映なんですよ。
で、相米監督ってすごい演出力、巧みなんだけど。で、『ションベンライダー』って本当に荒唐無稽な映画で、すごい面白い映画なんだけど。で、それ見て、同時上映当時はね、押井守監督がすごいショックだったらしいんですよ。
で、『オンリーユー』頑張って4ヶ月で作って、ファンのためにちゃんとキャラの見せ場も用意して、すごいお祭りっぽい映画にして、やった。頑張ったけど、同時に見た、上映されてる『ションベンライダー』がめっちゃ好き放題やってるのを見て、「こうしないと映画はダメなんだな」ってすごい思ったらしくて。
で、それこそ高橋先生とかもすごい喜んでくれたけど、押井守監督としては、やっぱ好き放題やったやつの勝ちなんだなって思ったらしいな。で、次の年の『ビューティフルドリーマー』に至るという。
そういうことですか。
そういう感じの流れでございまして。で、まあちょっとこれは後半つながるかわかんないですけど、「オンリーユー」の時に結婚されてて、スタジオタツノコとか入る時に結婚してるんだけど、一時の父になってるんですよね。
で、ただもうすごい忙しいもちろんね、当時の。もうほぼ連日帰れないみたいな感じで、まあいろいろあったんでしょうね。父になるんだけども、同時期に離婚されてるんですよね。で、84年に『ビューティフルドリーマー』作った時にまた違う方と再婚されててみたいな感じです。
で、『ビューティフルドリーマー』ですごい自信をつけて、翌年、『天使のたまご』という作品を作ります。キャラクターデザインとか、天野喜孝。でもすごい耽美的なね。話としてはほぼ『ビューティフルドリーマー』とそんなに変わりません。
ただ、そんな天野喜孝のキャラクターがキャッキャキャッキャしてくれるわけはないんで、20分ぐらいセリフがなかったりとか、何を見てるか、より観念的な作品。もうすごい、もうそういうものを作るんだと。行き切ってしまったわけですね。
その結果、3年間干されます。押井守監督は。もう何もやらせてくれないという状態になって、『パトレイバー』とかで復帰みたいな感じではあるんですけど。で、『天使のたまご』の前に『押井版ルパン三世』っていうのが本当はある予定でした。『カリオストロ』(79年)の次に『押井版ルパン三世』っていうのがある予定だった。
で、それは東京ムービー、今のトムスエンタテインメントですね。始めに宮崎駿に話が行ったと。当時宮崎駿の二馬力っていう個人事務所やってたんですよ。そこに押井守監督もいて、ビューティフルトリーマンの後にスタジオぴえろ辞めるんでね。そこで宮崎駿が、押井さんでやりましょうっていう感じで仕事を振ったっていう話なんですよね。
これも多分みんな知ってると思うんですけど、カリオストロの段階で、駿は「ルパンはもう今の時代には無理」と思ってたらしい。宮崎、高畑コンビでやってる時とかは、景気がグーンって上向いてる高度経済成長の時代だったから、お宝を盗むみたいな夢があって見れた。でももう79年とかだと、なんかを盗むみたいなロマンみたいなのもないだろうと思ってたらしいですよね。
で、カリオストロで何を盗むかって考えたところ、宮崎駿は「少女の心を盗む」ということにして終わらそうとしてるんですよね。これで最後だって。最後に盗むのは心だって。もうそれ以上盗むもんないだろう。っていうので終わらそうとしたという。
魂胆があったとか、なんとか。これは後でいいように言えるんで、後からつけてる話もあるだろうなと思うけど、そういう話だったらしいです。でもやっぱり、映画版ルパン作りたい。でも俺はもう言ったら、ケリをつけた。これはいろんな、あんたがケリをつけろって言って、押井さんに振ったとか。で、押井守が考えたルパン三世っていうのは「虚構を盗む」。
わかんないでしょ。
虚構を盗む。
盗めるもんなんですかね。
具体的には天使の化石を盗む。
わからん。わからんな。
この感覚、一般的な感覚なんで大丈夫ですけど。
言ったら、ルパンっていうのはそもそも存在するんかっていう話にしようとしたわけですよ。
なるほど。
でもそんなの許されるわけないんで。
なんかちょっとやばいと思って無茶言った説とかいろいろあるんだけどね。
で、頓挫して『天使のたまご』を作ることになる。
その辺の天使の化石がどう残るのみたいな話は、『天使のたまご』の中にちょっと入ってる感じはするんだけどね。
とか、後のパトレイバーとかにもあったりするし。
っていう感じはするんですけど、そんなこともありました。
おしいさんみたいな感じでございます。
アニメ映画の表現方法
心の砂地
で、ここからはですね、ビューティフルドリーマー。
本編についてもうちょっと詳しく、いろいろ好き放題に話していこうやと、僕が考えたこともありつつというところでございますね。
『オンリーユー』。『ビューティフルドリーマー』の前に、押井さんが『ションベンライダー』と同時上映でショックを受けた時に、
押井守の問題意識っていうのは、「大きい画面に映ったテレビ」だと思ったと。
映画館でかかってるけど。
だから、「アニメ映画」じゃない。
映画館でもちろんかかってるし、映画って言ったら映画なんだけど、
たぶんこれは作品として映画というものが持つ快感原則というか、核というか、そういうものがたぶんある。
ただ、自分はテレビシリーズをずっとやってきて、初めてアニメ映画を作った時に、
テレビを流してしまうだけの作品にしてしまったと思った。
じゃあ、アニメはどう映画にするのかっていうことが、この時の問題意識にあったという。
たぶん参考にした作品って2つあって、1つは『カリオストロの城』だと思うんですよ。
もう1個はこれは押井守監督も自分でおっしゃってるんですけど、
出崎統監督の『劇場版エースをねらえ!』
これはね、僕も大好きな作品でして、『エースをねらえ!』回やりたいぐらい好きなんですけど。
これは後のインタビューみたいなんで言ってるんだけど、
アニメを映画にする時に描くみたいなのを感じた作品っていうのが、この『エースをねらえ!』の劇場版だったらしいんですよね。
これは庵野秀明さんもフェイバリッドにあげてる作品でもあるんだけど、
おしいまむろ監督が言うには、何が違うんかなと比べながら何回も何回も見たところ、
流れてる時間っていうのが違う。
俺の解釈なんだけど、流れてる時間が違う。
俺の解釈では、アニメって全部描かないと動かないじゃないですか。
やっぱりどうしても動かすものっていうのはストーリーの進行と同じ流れになりがちだと思うんですよね。
もちろん関係ないモブの人みたいなのは止まってることが多い。
それが映画というものの奥行きと相性が悪い。
テレビ的なストーリーが流れていくっていうのを見させられてるっていう感じになる。
実写だと勝手にそういうものが撮れるから。
時間がもちろん、みんな流れてる時間が違う。
それを演出でちゃんと意図しないといけない。
コントロールしないといけないんだけど、そういうものが撮れるんだけど。
アニメの場合は描かないといけないし、動かさないといけないところがあるっていうのを多分意識してて。
だから今回の『ビューティフルドリーマー』とかでも、
みんなわちゃわちゃはじめにしてるシーンとかっていうのは、
みんなが準備してる右に行ったり左に行ったりとか、
それぞれが違うことをして、違う目的で動いてるみたいなのを多分オープニングですごい表現してて。
その辺は多分流れてる時間が複数あるっていうことだと思うんですね。
言ったらモブシーンみたいな、モブみたいなものをちゃんと描く。
時間を本当に作るっていう。
ストーリーのための時間じゃないっていうことが多分あるんですよね。
で、押井守監督が言ってるので言うと、
劇場版『エースをねらえ!』で、ダブルスでお蝶夫人と岡ひろみという主人公が試合に出るところで、
ヘリがブーンって途中通るんですよね。
おー、ヘリがね。
ヘリの望遠のショットみたいな感じになってるんだけど。
そこが多分そういう、テニスの試合が始まるっていうところに関係ないヘリが流れていって、
遠くになっていくっていうシーンがあって、すごくかっこいいシーンなんだけど、
そこが多分流れている時間が複数あるっていう話で。
劇場版『エースをねらえ!』、オープニングがすごい面白いんですけど、
猫が近づいてきて、ピンって音が鳴って、
《私、岡ひろみ》みたいな、一瞬で自己紹介して、バンっていくっていうところがあるんだけど、
急に暗転して『エースをねらえ!』出る瞬間、めちゃめちゃかっこいいんですよね。
これが映画だって感じがするんだけど、
ずーみんにもちょっとそこだけ見てもらったんですけど、今回は。
いました、めっちゃかっこよかったです。
かっこいいよね。
で、あそこの感じっていうのが、『ビューティフドリーマー』にも始まってて、
いきなりまず鳥が飛んでるんですよ。
この鳥がバッて飛んでるっていうのは、ヘリがビューンって飛んだみたいな感じの。
ちなみにこれは『カリオストロの城』でも、有名な冒頭のカーチェイス行く前に、
車の上に乗って、ルパンが上見上げて鳥がビューンって飛ぶみたいな、
同じようなシーンがあったりとか、
『ビューティフルドリーマー』のオープニングも撮ると、鳥がビューンって回ってて、
ラムちゃんがビューンってこう。
水上スクーターみたいな。
そう、水上スクーターみたいなのが乗って、
ダーリン!って言って乗ってて、真ん中にカカシみたいになってるアタルがいて、
ラジカセが回転していて、
どれも円を描いてるっていうのは、この円環構造のもの。
あれでバンって次映るのが、廃墟みたいになった時計塔の秒針がない時計塔がガンって映って、
暗転して「東宝、キティフィルム」ってドンって出るっていう、
ここの気持ちよさというか、かっこよさ。
っていうのは、『エースをねらえ!』にすごい影響を受けてるなって言われると、
オープニングの入るのもすごいあるなって思うし、
言ったらドーンって『うる星やつら』って出ないんですよね。
オープニング曲みたいな、前前前世みたいなオープニング、
アニメのオープニングですよみたいなのを入れるっていうオープニングの方法もあると思うんだけど、
そういうんじゃない静かに始まって、
象徴的なものがポンポンポンっていう、
時間がそれぞれグラーンと回ってるものをカセットテープがクルクルしてるとか、
いろんな時間が出て止まった時計台、秒針のない時計台っていうのが映って、
暗転、ガンっていうところが、
名曲喫茶シーンの印象
うわ、この映画かっこいいっていうね。
注目して見てみてください。
いやー、そうですね。
っていうところがありますね。
細かいな。
面白かったシーンとか、印象的なところって何か他にもありますか、
ずーみんさん的には。
そうですね。
名曲喫茶って、喫茶店場所が出てくるときに、
温泉マークの先生とさくら先生が向かい合って話をしているシーンが、
なんていうんですかね、そのシーンだけ異様に緑がすごい鮮やかで、
めちゃくちゃ記憶に残ってるんですよね。
その中でも目の前にあるグラスに水が注がれたとき、
温泉マークの先生の顔がバシンってずれるところとか、
現実と虚構との境目みたいなのを表しているようにも見えたりして、
最後ぐるぐるっと視界が2周ぐらい回って真っ暗になるっていうところで、
めちゃめちゃゾッとしましたね。
あそこはね、名シーンですよね。
本当に温泉マークと、そこのループに気づくっていうところですよね。
そうですね。
あっこは本当に『GHOST IN THE SHELL 』で、
自分の家族がいると思ってるっていう。
最初の方に。
すごい悲しい印象があるんですよ。
そこの構図とすごい似てるんですよね。温泉マークとあの感じっていうのが。
確かに。
なんか多分、人間がゾッとする感じみたいな構図の作り方が多分してあると思うんだよな。
あの緑の感じとか、あの暗さみたいなのが多分そういう演出がされていて。
そこはなんか印象的ですよね。
そうですね。
ビューティフルドリーマーの作品構造
なんかそれまでちょっとさ、部屋入ってこう、めちゃめちゃカビだらけになっててみたいな。
ね、バタバタって感じで。
そうそう、ぶっ飛んでみたいな。
ギャグシーンの後に急にグンってそういうのが入るから。
そこの緩急もすごい良いんだよな。
学校、夜の学校に入っていくシーンの去り際が良かったです。
メガネたちとかがパーってこう吐けていくところで、手だけが最後映っていくんですけど。
かっこいいね。
そこ、そうめっちゃかっこいいってなりました。
確かになんかそういう演出。
全部が良い。
でもさ、やってることがバカバカしいし。
そうね。
これがさ、『イノセンス』とかになると、なんか意味あるんかなと思っちゃってしんどいんよ。
おもろいんやけど。
賢いアニメだ、哲学だって言ってるから、しんどいんすよ。
だから、『うる星やつら』っていうポップなものの中に入ってるから持つんだよな。
そこはもう、高橋留美子さんのキャラクター力があってからこその、
押井さんが作った分身みたいなキャラもあるけど、
やっぱそこのポップな世界観の中で、そこが成り立ってるっていうところがあるよな。
だから奇跡的なバランスの作品だと思うんですよね、『ビューティフルドリーマー』っていうのは。
あとよく言われるのは、最後のラムちゃんの「責任取ってね」っていう。
この夢から覚めさせることはできるけど、責任取ってねっていう。
これどういう意味なん?ってよく言われる一言。
旧エヴァの「気持ち悪い」とか、ああいう感じぐらいの有名な。
「これなんなん?」話みたいな。
まあ、そのままの意味だと僕は思ってるんですけど。
そうですね、私もそうだと思ってます。
現実に帰るのであればちゃんと責任を取れっていうことだと思うんですけど、
これは裏読み的に言うと、83年に離婚されてるんですよね、子供できて。
多分言われたと思います。
ああ〜〜そんな。そこが。
で、再婚もされてるし、どっちに言われたかわからん。
両方に言われたかもしれない。
両方に言われたかもしれない、別れたけど、子供の責任を取ってねって言われたかもしれん。
新しいね、連れ合いの方にもちゃんと責任取ってねって言われたかもしれん。
っていうとこはあるだろうなという。
キツイ。
体重乗ってる感あるやん、「責任取ってね」。
そうですね。
そういうリアルもあるんじゃないかなという裏読みもありますけども。
はい。
『ビューティフルドリーマー』のとこはそういうとこなんですけども、
ずっと振ってたアンサーとしての高橋留美子さんの作品っていうのがございまして、
ループ構造、終わらない学園祭の前日、終わらない日常っていうものを批判してるし、
それはさっきも言った通り「るーみっくわーるど」的な、ずっと毎週同じ。
ラムちゃんがあたるくんを電撃でしばいて終わり、そこまではいろんなパターンがあったりとか、
たまに違うこともするけど、次の週になったら同じようにまた始まってっていう。
日常が終わらないっていうことをずっと楽しんでるお前ら、視聴者に対しての批判とも取れるし、
その作品構造自体でもあるし、高橋留美子の作品そのもの自体の批判っぽいよね。
それを作ってる人っぽいよねっていう。実際そこにも当たってるよねっていうところもあるし。
ただ、さっきも言った通り僕はアニメーション作りも自体も、結構押井さんがいろんな言論で言うのは、
あの頃のスタジオって本当に『ビューティフルドリーマー』の感じだった。
あんな終わらない学祭みたいなのをずっとやってる感じだったっていう。
それも実際楽しんでたと思うのね。
そこも楽しんでる自分への批判っていうところもすごくあったと思っていて、
っていうところではあると思うんだけど、ただ高橋先生はそれは食らったと思うんですよね。
『ビューティフルドリーマー』の公開が84年の2月でございます。
84年の8月に高橋留美子さんは『人魚シリーズ』という、
この時はまだシリーズ化すると思ってなかったと思うんですけども、
紹介したようなシリアスな短編を書いてきたつらなりの中で、『人魚は笑わない』という短編を書くんですね。
これは人魚の肉っていうのがあって、それを食べたことによって永遠の命っていうのを持ってしまった青年「湧太」(ゆうた)っていうのと、
あと同じように食べさせられた少女、「真魚」(まな)っていう、この2人を運命を描いた伝奇シリーズなんですけども、
この不老不死のキャラクター、しかも死ななくなってしまったっていうキャラクターを高橋さんはここで描いてるんですよ。
ここは僕すごい終わらない日常って言われたことへのアンサーなんだろうなってずっと思ってるんですよね。
一般的に言われてるような『ビューティフルドリーマー』に、原作者の高橋さんバチギレみたいな、そういうレベルが低いなと思っててそこは。
いや高橋留美子ちゃんとこれ作品で返してんだよアンサーっていうところすごい痛くて。
ある種、大元で言うと手塚治虫の火の鳥未来編とか、いろいろあるじゃないですか、こういう永遠の命ものって。
たぶん小説家でもいろんなもんあると思うんだよね。でもこう、『ビューティフルドリーマー』の後に短編で書かれていて、やってて。
人魚の肉っていうのを食べてしまった人はずっと若い姿なんですよね。
で、湧太っていう青年はたまたま食べてしまって、その時は釣り合いの方とかもいたんだけども、その人は老いていくけども、湧太はずっと若いままで怖いって言われたりとか。
で、同じように食べた奴らはグロデスクな感じのね、体になってしまって、なり損ないになってしまって、自分の意思みたいな、持てなくなってしまう感じなんで。
高橋留美子のアンサー作品
その中でもずっと若いままでずっと生き続けなければならないっていうアンサーだと僕はこれは思ってるんだけど。
ある種、作家論的なもんでもあると思うし、高橋さんもデビューされてそれなりに、まだ若いですけど、キャリアを重ねられた。
7、8年キャリアを重ねられたところで書いてる中で、漫画家としてやっていく中で、ずっと高橋さんはいいねと思う。
妬みも嫉みもめっちゃ受けたと思うんですよね。そんな中で散っていく漫画家とかもいたわけですよ、たぶん。
でもいきなり連載やめますって言われへんし、ずっと高橋留美子のままでずっと戦い続けてくださいって言われてるわけじゃないですか。
で、実際何年間も同じ話を、終わらない日常の話を書いてるっていうところにすごい、僕は高橋留美子の気持ちみたいなのが乗ってるなって思うんですよね。
ずっと若いままで、一回死んだと思ってもまた生き返って、すぐ傷を受けても治ってしまう。生き続けなければならない。
っていうのはイコール連載を続けなければならない。気持ちも乗ってるだろうし。
だから、そういう高橋さんの『犬夜叉』とかでも、後にね、この辺の話は『犬夜叉』にもつながってくるなと思うんだけど、
全然死なねえ敵がいるっていう、そいつをやりに行くっていう話だから。
だから、ずっと私も「るーみっく」で遊んでるわけじゃないっていうことを言ってるんだと思うんですよ。
殺そうって刺してきたやつもあって、傷を受けるし、痛みを受けるし、首落とされたら死ぬんだけど、そうじゃない場合はもう、めちゃめちゃ致命傷でも生き続けなければならないっていう。
真魚っていうのは歩けないんですよ。足につけられてて。これは手塚治虫の『奇子』とか、その辺が多分イメージあると思うんだけど。
その辺も囲われて弱くして、ずっとそこから出さないようにしてるみたいな。
すごい大人に囲われてる若い作家みたいなところもちょっと感じるし。
ずっと同じ顔の婆さんたちは、人魚の肉っていうのを食べたら、不老不死になった人を食べると、その顔になれるんだよね。
真魚が綺麗だって言って育ててて人形にしてるのは、自分たちを真魚を自分の顔にするために育ててるっていうところがあって。
削除しようとしてやってるみたいなところがあって。
そこを作家論と考えると、すごいいろんなものを考えるし。
『ビューティフルドリーマー』のアンサーとして考えると、老婆の人形が噛んで真魚の顔になるっていうシーンがあるんですよね。
だから噛んで自分を表現されるっていうのは、これはある種違う作品にされても同じ顔なわけやんか。
ラムちゃんは同じ顔なわけやんか。押井さんのラムちゃんでも。
なんかそういうのを多分ね、表現してるんだろうなって僕は思ってて。
違うもんなんだけど、私のこと噛んだら同じ顔で出るから、他の人は真魚だと思うよね。
『うる星やつら』って書かれたら全部高橋さんの作品だと思うわよね、みたいな気持ちが乗ってるんだろうなって僕は思ってて。
すごい作品ですね。
見事ですよ。断面でここまで乗せるのは。
本当に最後の締めのセリフが、「飽きるまで生きてみるのも悪くないよね。」みたいなことを言っていて。
ここはもうそれこそ、「あいつらは進歩や成長がねえからな」、みたいな、「もう付き合いきりまへんわ」。
『ビューティフルドリーマー』への完璧にこれは僕はアンサーだと思ってて。
ずっと生き続けるしかないけど、もう別に飽きるまで生きてみるのも悪くねえだろって多分言ってるんだと思うんですよ、高橋先生は。
うぅ…、応援しますっていう気持ち。
実際、84年から何十年後かの未来にいる私は、もちろん押井さんもその後大変な目にも遭うし、干されるし。
お互いそのまま生き続けて、映画を撮り続け、漫画を描き続け、なうまで来てるわけですよ。
この人魚シリーズもシリーズ化していって、どんどんそういう話になっていくんですよね。
押井さんのキャリアでもずっと夢なんちゃうんか、ここにズレがないんじゃないかみたいな話とかも、だんだん『イノセンス』になると人形の方がいいんだ、みたいなことを言い出したりとか。
意思ないことの方がいいんだ、みたいなことを言い出したりしてるから。
その辺も今僕たちはこの作品からいくと未来人なので、『人魚シリーズ』であり、押井さんの映画作品であり、高橋さんの作品であり、
っていうのを見てみるとすごいいろんなことが見えてくると思うんで、めっちゃ面白いと思うんですよ。
という作品なんで、ぜひ。
今見放題で『ビューティフルドリーマー』見る、これもマストなんですけども、
ぜひ『人魚シリーズ』。人魚シリーズという名前で単行本になっております。
今原稿で書いてあるのは3作かな、人魚シリーズというので3作漫画がありますので、
ぜひ『ビューティフルドリーマー』読んだ後に人魚シリーズも読んでいただいて、
このレベルの高い作品と作品でやり合ってる感じというのをね。
で、前回話したような作家の尊厳みたいな話をちょっと今は泣きにしちゃってるんだけど、
もちろんそれはまた別で、ちゃんと守られないといけないところは守られないし、
作品の見方を考える
そこに対して関わる人はちゃんとしないといけないんだけど、
一作家同士の創作に創作を重ねるっていう形とか、創作に対して創作でアンサーを返すっていう形では、
こういう形があるよっていうことがあって、すごいこれはロマンティックに僕は消費してるし、
ロマンティックに批評してしまったなという感覚があるんだけども、
でもこういうことはあるよっていう、思想に対して思想で広げることで受け取り手はもっと考えることも増えるし、
僕はフィクションはフィクションだと思ってるんだけども、そこにヒントはあるよねっていうのは、
そういう意味でこういった作品の見方っていうのはちょっと考えてほしいなと思って、
今回喋らせてもらったって感じでございます。
ということで今回はですね、以上となります。
心のすなしはお便りをお待ちしております。
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ということで今回もお付き合いいただきましてありがとうございました。
ありがとうございました。
すべさん2回にわたりお付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
ありがとうございました。
また定期的に呼ばせていただきますんで。
頑張ります。
また呼んでください。
はい、ぜひ。
それでは皆様、ごきげんよう。
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